オーク "Myths Transformed"より -Morgoth's Ring

クリストファー氏の序文
  • ボリュームⅦの406ページのテキストの最後の文章に『エルダールはモルゴスが初期に人間(とエルフ)を捕らえてオークを生み出したと信じていた』とある。これはオークの起源に関する教授の考えが「アマンの年代記」以降変化したことを示している。
  • アマンの年代記のページ72から74、それと78ページのコメンタリー、109から110とそのコメンタリーがある123・124ページを参照のこと。
  • 「オーク」と名付けられた本テキストはテキストⅢやテキストⅥ(メルコール モルゴス)と同じ小さな収集品にあったもの(1959年4月の新聞の中から見つかった)。
  • 1955年6月のマートン・カレッジ・ペーパーに書かれている(テキストⅥやフィンロドとアンドレスの討議と同じように)。

オーク

  • アウレとドワーフの一件に見られるよう、エルのみが独立した意思と理性ある被造物を創れる。でもオークはそのどちらも持ってるように見える。オークはモルゴス/サウロンを騙そうとしたり、反乱したり、批判したりすることが可能。
  • となると、既に存在した何かを堕落させた?
  • でもオークはもういるのに人間はまだ現れてない。アウレとドワーフの時と違い、エルはメルコールの業に、オークの自立性に認可を与えたりはしない。エルフを堕落させたというのは非常に眉唾ものだ。
  • 喋れる動物とか鳥は?変わっちゃいるけど世界に属するものの一つだ。他の生き物も彼らを普通ではないものの、自然物と捉えている。でも本当に理性ある、喋れる生き物は皆人間か人間型をしている。ヴァラール・マイアールのみが意のままに姿をとれる。フアンとソロンタールはマイアールかもしれない。
  • マイアールがオークになるということはありえるだろうか?答えはYes。
  • メルコールは無数のマイアールを堕落させた。サウロンのような上級のもの、バルログたちのような下級のもの、そして最下級のマイアールは原始のオークどもとなった。原始オークは後代のものに比べれば遥かに力があり危険である。
  • ただ肉体をもった原始オークたちは、どんどん世界に縛られるようになったため、死ぬ(殺られる)まで精霊の状態には戻れなくなった。
  • ”話すことができる”というのが必ずしもfëaか理性ある魂を持つとは限らないかも。
  • オークは人間型の獣で、エルフと人間のまがい物。故意に人間に似せてある。彼らが話すのはメルコールが彼らに植えつけた「記録」を暗証してるだけ。
  • メルコールはオーク達に言語を叩き込んだ。それを受け継ぎ増殖していった。が、彼らの話すことは殆ど復唱に過ぎない(オウムみたいなもの)。
  • フアンとワシたちもこれと似たようなものかもしれない。彼らはヴァラールに言語を叩きこまれたが、fëaを持ってるわけじゃない。
  • エルフの血がオーク達に流れているという恐ろしい可能性は残っている。オークたちは獣とさえ番うことができるからだ!また後には人間たちとも番った。
  • 彼らのライフスパンは減少したであろう、そして死んだらマンドスの獄に世の終わりまで繋がれるのだろう。



本文+注釈↓↓


1)アウレとドワーフの件から分かるように、独立した意志と知性を持つ生物を創造できたのはエルのみであった。しかしオークはその両方とも持っているように見える。というのも彼らはモルゴスやサウロンを欺こうとしたり逆らったり悪態をつくことができるからである。
2)よって彼らは元々いた存在から堕落した者なはずだ。 
3)しかしオークが生まれたのは人間の出現以前のことだった。またアウレは始まりの音楽の記憶を元にドワーフを創った。だがエルはオークの自立性を認めたからといって(オークが最終的に矯正または改心させられて“保護”されない限りは)メルコールの所業を是認しはしなかっただろう。
 また(“フィンロドとアンドレス”にあるように)メルコールが個々を完全に堕落させ荒廃させる事ができたとしても一定数の人々、まして全ての人々を完全に捻じ曲げ更にそれを世代を超えて遺そうとすることはできないのは明らかだ②。(後に加筆:この後者は(実際のところ)エルの御業に違いない。)
 この場合、オークの起源としてエルフを挙げるのは不適当だ。それにオークはエルフの様に「不死」だろうか?またトロルは?トロルについては、彼ら自身の権利に基づいて生きていたものがメルコールによって“いじくり回され”たのだと指輪物語の中でほのめかされているのは明らかだ③。
4)知性と言葉を持った口を利く鳥獣はどうだろうか。これらについては些細な神話においてごく軽く触れられているにすぎないが、重要な役目を担っているのは変わらない。彼らは確実に「例外」であり多くは登場しないものの、世界を構成する住人として認知されていたことは十分にわかる。その他全ての生き物は彼らの存在を、珍しくはあるが自然なものとして受け入れている。
 しかし“知的”な生物や“口を利く種族”は皆全て人、又は人に似た姿をしているのも事実だ。ヴァラールとマイアールのみが意のままにアルダでの姿を変えられる知的存在である。指輪物語の中でグワイヒアとランドローバルがソロンドールの子孫だと言われてはいるものの④、フアンとソロンドールはマンウェの使者のマイアールかもしれない⑤。
 とはいえ最下級の者だったとしても仮にもマイアールがオークになるなど有り得るだろうか。それは有り得る。なぜならウツムノの陥落以前にメルコールはアルダの内と言わず外と言わず多くの精霊達を堕落させていたからである。その中にはサウロンのように強大な者も、バルログのようにそれ程でない者もいた。低位のマイアールは原始の(ずっと強くて危険な)オークになった。しかし肉体に即した繁殖を繰り返したことで彼らは更に(メリアンのように)地上に縛られるようになり、殺害による死によって解放されるまでは、悪霊としてさえ精霊の姿へは戻れなくなった。そして彼らは皆弱体化していったのである。解放された後、彼らは勿論サウロンのように罰される。そして無力に(限りなく卑小に)なり、依然として悪意を抱きながらも実際にはますます何の力もなくなっていく。(もしかすると死後極度に弱体化したオークはポルターガイストになるのだろうか?)
 しかしながら、このような生物のためにエルはfëarを用意するだろうか。恐らく大鷲にはそうだろうが、オークはそうでなかったに違いない⑥。
 他を堕落せしめようとするメルコールの力は最低でも道徳的理論的面に対して絶えることなく働くものとして考えるのがいいだろう。そして彼を王として戴く者達(特に唯一なるエルに反して彼を父、又は創造主と呼ぶ者達)は間もなくその存在ごと堕落してモルゴス主義、即ち憎しみと破壊、に浸ったbroaに繋ぎとめられてしまうのである。
 確かにエルフは“不死”だが実際にはとてつもなく長命だということであって、彼らもゆっくりと進行する身体の衰えには悩まされるようになるのである。言ってしまえば、“会話”は必ずしも“知性”やfëaの有無の決め手にはならないと私は思っている⑦。オークは人間とエルフを模倣した人型の獣であり、特に人間の方により似せて造られていた。彼らの“会話”は実際にはメルコールが刷り込んだ物の“記録”である。彼らの反抗的な悪態さえメルコールは承知していたのである。彼は言葉を発することを教え込み、そして彼らの自立性とは言うなれば人間の主人の下にいる犬や馬が持っているのと同程度のものにすぎなかった。この場合の会話はこだま(鸚鵡返し)のようなものである。指輪物語内ではサウロンがオークに言語を考案したと言われている⑧。
 同じことはフアンや大鷲達にも言えるだろう。彼らはヴァラールから言葉を教わりそれを高い水準まで伸ばした。だがそれでも彼らにfearは無かった。
 しかしフィンロドの、メルコールはエルのいかなる御業も完全には堕落させることができずもしくはエルが(必要なら)穢れを浄化するために干渉するか彼自身の創造物をその堕落を理由に終焉させるかもしれない、という言葉は恐らく言い過ぎだろう⑨。
 オークにエルフの血が入っている恐ろしい可能性は依然として否定できない⑩。彼らは動物と(無意味なことである)、更に後には人間とも番うことができたからだ。彼らの正は損なわれ、死後はマンドスに行き世界の終わりまで獄に留め置かれたのだろう。

 原稿はここで終わっているが父は続きの文章を付け加えている。下に記載する文は、テキストⅵ,メルコール,モルゴス(p350)への言及である。
 オークやバルログの意志については“メルコール”を参照。メルコールの力は“分散”している。彼らの精神は憎しみの一種である。しかし憎しみから連帯は生まれない(直接の恐怖の下以外では)ので、モルゴスが反乱や反逆を危惧する必要はなかった。オークは獣でありバルログは堕落したマイアールである。またモルゴスと違ってサウロンはオークの意志の源ではない。どんなに強大だとしてもサウロンもまた配下の一人にすぎない。なのでオークは致命的なダメージを彼ら自身に被ることなく彼に歯向かうことができる。アウレは愛されたいと望んだが、無論自分の力を組み入れようという考えは持たなかった。エルのみが愛と自立精神を授けることができる。もしエル以外の有限の者がこれを試みるならば、それがただ愛されることを純粋に望んでの行為だったとしても、やがて感情の伴わない隷属へと変わり悪しきものとなるだろう。

注釈
注① ピーター・ヘスティングに宛てた実際には送られなかった1954年11月の手紙の中で、父はオークが“魂”や“精神”を持ち得る
かどうかについて書いている。“…私の神話はそもそも魂や精神の形成についてや、エルの正当な“代行者”としてのヴァラールにエルと同等の力とまではいかなくても同等の権利として与えられたものに関しては触れていない。なのでとりあえずオークを、冥王が彼らを創造するのではなく変形させ歪めて堕落させることにその力を傾けた、純粋な生物に準じる存在として書い た。”彼はまたオークは“基本的に〝知的人型"生物である”と述べている。
注② アスラベース(p312)の中でフィンロドの言明することには“とはいえ夜の下にあってさえ、我々は(メルコールが)エルの子らに打ち勝つことができると信じたことはない。彼が騙して堕落させた者達の場合は判らないが、エルの子たる人々全ての運命を捻じ曲げることはできない。もし彼がエルの意志の下にこのようなことができたなら、彼は私達の知るよりもずっと恐ろしい者となる違いない...
注③ 指輪物語追補編F(I) にトロルについての記述がある。
注④ 指輪物語該当部分の引用。
注⑤ p138より。“アマンの生き物について。ヴァラールが子らに似せた姿を纏ったように、マイアールの多くは木々や花々、動物(フアン)のような他の準じる生物の姿を纏った。
注⑥ この点に関する“1)、2)、3)(←このXIIIの冒頭)に対する反論”という原稿があるがその大部分は指輪物語の“最後の戦いとバラド・ドゥアの没落”から引用されている。
注⑦ 文章の最後は注③にある1954年の書簡と同じものである。
注⑧ 追補編の引用。
注⑨ 注②のアスラベースからの引用文参照。実際フィンロドはここでの彼の言葉の後半部分は言明していない。
注⑩ この部分は単に彼らが口を利く動物と同じ存在ではないことを強調するために付け加えられたものだろう。章末の文中では再び“オークは獣である。”と繰り返されている。








  • 簡約です。かなり省略しています。というのも、今回のパートの翻訳やっている方が2月頃にいらっしゃったようなので。完訳はそちらに乞うご期待ってことで。 -- 名無しさん (2014-05-19 20:37:25)
  • コメンタリも翻訳予定はないです。 -- 名無しさん (2014-05-19 20:39:17)
  • なおソロンタール(Sorontar)はソロンドールの初期名です。ちなみにフアンとソロンタールはマイアかも?と書かれてはいますがcould beなあたり可能性は低いかも。fëaはないとありますし。 -- 名無しさん (2014-05-19 20:40:57)
  • 先の方の下にひとまず続けて本文の訳を投稿しました。訂正などどうぞよろしくお願いしますm(_ _)m -- 名無しさん (2014-05-28 23:49:22)
  • お疲れ様です!コメンタリーも含めた完訳、有難う御座います。唯一つ気になるのですが、注⑨が注⑧に含まれて見えるので、改行したほうが良くはないでしょうか。 -- 名無しさん (2014-05-29 01:39:12)
  • 注⑨なのですが、勝手に編集してしまいましたがよろしかったでしょうか。ご迷惑でしたらごめんなさい。 -- 名無しさん (2014-05-29 01:47:01)
  • どうもありがとうございます、投稿時に行を詰めてしまったようです;; -- 名無しさん (2014-05-29 21:02:22)
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最終更新:2014年05月29日 21:02