ヴァラールやモルゴス、サウロンについての様々な事 "Myths Transformed"より -Morgoth's Ring

  • "始原の音楽"に謳われた内容が実現し、過去のほうが長く未来はより明確になってゆくと、重要な変更の余地は少なくなり、 様々なことが決定・明確になるに連れて、ヴァラールは増々"衰退"し、無力となっていった。
  • 最後にヴァラールによって成された巨大な創造神的活動はペローリ山脈を非常な高さに押し上げたことであった。このことは悪いとまでは言えないものの、誤った行為であった。(ウルモは同意しなかった)
  • アルダの一部分を堕落させぬよう保護するという、道理にかなった良い目的ではあるが、このことは利己的で怠慢な(あるいは絶望的な)動機のようにも思える。
  • エルフを堕落から保護しようという努力も、彼らを自由にさせたため失敗だった。数多くの者達がアマンに来るのを拒否して、其処にとどまったからである。
  • 人間に関して言えば、マンウェやヴァラール全員が人間たちがアマンに来ることは不可能であろうことをよく分かっていた。またヴァラールやエルダールのような寿命(アルダの命と共にある長いもの)は人間には許されていなかった。
  • "ヴァリノール隠し"とは、モルゴスの所有・支配に対する強い願望への対抗的な、ライバルとしての所有・支配の願望に近いものだった。(暗黒と支配に対する光と至福の地域だとか、要塞と地下牢に対する宮殿とよく護られた喜びの庭といったように)

  • この神話における、一見ヴァラールの利己的で怠惰な態度は、私が思うに唯の"見かけ"に過ぎない。
  • しかしその"見かけ"が真実として受け取られがちである――彼らの敵である、中傷者の嘘や影によって影響を受けることで。
  • しかし"神話"が真実の記録から隔たった2つのステージで描写されていることを忘れてはいけない。
  • まず最初に、ヴァラールについてまたは彼らとエルフとの関連に対して記された、エルフの記録と伝承に基づくものである。そしてこのエルフの記録と伝承は、ヌーメノール人(人間)の口伝の遺産を通じて部分的にしか伝わっていない。初期はエルフから得たものであったが、後世になるに従い、人間中心の歴史と物語に補完されていった。
  • これらの伝承は"節士派"とその子孫たちによって中つ国に伝えられたが、ヴァラールに対して反乱を起こしたヌーメノール人の敵意の影響から完全に逃れられたわけではない。


  • 例えそうでも、受け入れられた物語の側からであっても、違った物の見方をすることは可能だ。反乱したノルドール(警告を受けた後自発的に去ったもの)に対して、ヴァリノールが閉ざされたこと自体は正当なものであった。
  • しかし、もし敢えて長上王の意向を知ろうとするなら、動機や欠点など、我々が判断を下す前に忘れず注意すべき事々がある。マンウェはアルダにおいて最も賢明で、智慧のある聖霊である。彼は"始原の音楽"の知識を最も有している者であり、また彼だけが直接エルに訴えることができ、コミュニケーションを取ることが可能な存在であった。彼は、我々が曖昧にしか理解できないようなことさえも、非常に明確に理解できたに違いない。
  • このことはアルダの"歴史"において、絶えず悪が生じまたそこから絶えず新しい善が現れる過程における、欠くことのできない方法であった。このことの特別な一つの面が、傷つける者(Marrer)やその継承者たちの為した悪業を、邪悪に対する武器に変えてしまうという変わったやり方である。
  • もし我々が、モルゴスが中つ国に逃げ延び己の棲家を再建した後の状況を考える際、勇敢なノルドール達はモルゴスに虚無主義的な破壊の狂乱の感情を引き起こすこと無く、実質的に包囲し、少なくとも中つ国の北方の縁を殆ど完全に占拠するなど、モルゴスを寄せ付けない事が可能な最も良い武器であることに気付くだろう。
  • またその間、人間もしくは人間族の最良種は、モルゴスの影を振り払い、祝福された地をその目で見て体験した者達と接触を持った。

  • エルダールと人間の戦争における連合は、彼らが到達できる最大の才能にまで彼らを引き上げた。また2つの結婚のおかげで、なお遥か先のことではあるものの、決して避けることが出来ず近づいてくるエルフの"衰退"する日に備えて、最も高貴なエルフ族の血統の人間族への移譲、または注入が成し遂げられた。

  • 最後のヴァラールによる物理的な力による介入はサンゴロドリムの陥落で終わったが、それは嫌々で甚だ遅すぎるもののように見えるかもしれないけれども、時間としては非常に正しいものであった。介入はエルダールとエダインが根絶やしになる前に行われた。
  • 戦争中におけるモルゴスの勝利は局所的なもので、中つ国の大部分は無視されていたにも関わらず、実のところモルゴスは弱体化していた――力と威信(彼はシルマリルの一つを失い、取り戻すことが出来なかった)、全てのものの精神の上において。
  • 彼は"王権"に夢中になっており、また巨人の如き体躯(ogre-size)と怪物的な力を持つ圧制者となっていたけれども、この事は以前の彼の悪意と憎悪、恐ろしい虚無主義からくる膨大な堕落であった。彼は征服した奴隷たちと、莫大で従順な軍隊を持った暴君のような存在に堕落していた。

  • 戦争は成功に終わり、破壊はベレリアンドの小さな地域に限られた。かくしてメルコールは肉体を持った姿で虜囚の身となり、アマンに犯罪者として連れて行かれ、ナーモ、審判者かつ死刑執行人であるマンドスのもとへ送られることとなった。彼は裁かれ、遂に祝福された地から連れだされて、刑の執行を受けた。それは受肉したものたちの一つを殺すことであった。
  • その時に、モルゴスが彼の力をアルダの物質に遥か遠くかつ広くに"バラ撒いた"事が明白になった(事前にマンウェとナーモは理解していたかもしれないが)。モルゴスはアルダにバラ撒いた彼の力の直接的なコントロールを失い、そして"彼(he)"の全て―存在するのに不可欠なため、残された余りもの―が"彼自身(himself)"として保持されコントロール下にあることは、彼が自身に賦課した(しかし今や愛着のある)肉体に宿る霊が、酷く萎びて零落してしまったということであった。
  • この肉体が破壊された時、モルゴスは弱々しい、完全な"宿なし"となってしまう。そしてそんなモルゴスは無力な、まるで"錨のない(unanchored)"ようなものとなる。
  • モルゴスは虚空へと押し出された。それは彼が時間と空間の外なるところ、完全にエアの外側に置かれたことを意味する。このことはおそらくエルの直接的な介入によるものを暗示する(ヴァラールの懇願によるものかもしれないし、そうではないかもしれない)。これは不明瞭ではあるけれども、モルゴスの霊がアルダから放逐された、または敗走した意味を持つ。





  • 全訳はやめました。全文やクリストファー氏の注釈などを完全に網羅したいという方は買って読んで下さい。 -- 名無しさん (2013-11-15 19:39:32)
  • まぁまぁ長いものなのでちと時間がかかるかもしれません。すいませんが、続きは気長に待ってて下さい。 -- 名無しさん (2013-11-15 19:40:39)
  • 最後に、誤訳等ありましたら修正はご自由に。俺のほうがもっといい訳できるぞ!という方も自由に変えちゃって構いません。 -- 名無しさん (2013-11-15 19:41:39)
  • ここしばらくモチベーションが出なかったので…遅くなってしまって申し訳ないです。 -- 名無しさん (2014-02-09 18:27:40)
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最終更新:2014年02月09日 18:27