ヴァラールについて "THE LATER QUENTA SILMARILLION"より -Morgoth's Ring

ヴァラールについて

§1 (新版シルマリルの物語 p.63参照)

§2 これらの精霊をエルフはヴァラール、諸力と名付け、人間は彼らをしばしば神々と呼んだ。彼らと同じ種族である、多くのより劣った精霊たちが、大なる者も小なる者も従者として彼らに随行した。人間のうちのある者達は彼らをエルフと混同したが、これは誤りで、彼らは世界よりも前に創られた者達であるのに対して、エルフと人間はヴァラールの来訪の後に地上で最初に目覚める者達であるからだ。けれどもエルフと人間の創造において、また彼ら各々に与えられた特別な恩寵においても、ヴァラールは何の役割も果たしてはいない。彼らの創造者はイルーヴァタール唯一人だけなのである。それ故に彼らはイルーヴァタール[> エル]の子らと呼ばれるのである。

§3 ヴァラールの首長は9人である。マンウェとメルコール、ウルモ、アウレ、マンドス、ローリエン[> ローリオン]、トゥルカス、オッセ、そしてオロメである。これらはヴァリノールにおいて話されているエルフ語で九大神(Nine Gods)に名付けられたものだが、彼らの名前はノーム(Gnomes[> Sindar])の言語では別のもしくは変化したものとなり、また人間の間においても多数の名を持つようになった。

§4 マンウェとメルコールはイルーヴァタールの考えの中では兄弟であった。そしてこれら世界に入り来たったアイヌアの中でも最も力あるものであった。しかしマンウェが神々の王であり、大気と風の君主であり、天空の支配者であった。彼は妻の、その名も聖なる、星々を創りしものヴァルダ、いと高き永久なる妃と共に住まっていた。[> この世界に入り来たったアイヌアのうち~ (新版シルマリルの物語 p.64 8行目以降参照)] フィオンウェとイルマレは彼らの息子と娘である[この文章は削除された]。力において次ぎ、マンウェと最も近しい友情にあるのが、水の王ウルモである。彼は外洋に独り住まっているが、全ての水、海、河川、大地を通じた噴水と泉の統治権を持っていた。彼に従属しているものがオッセであり、陸地にある人間たちにとっては海の主であり、妻は海の妃ウイネンである。彼女の髪は、空の下にある全ての水の至る所に広がっている。

§5 アウレはウルモと殆ど同等の力を持っている。彼は工人であり手工業の匠である。彼の伴侶はヤヴァンナで、果実を実らすものであり、全ての生い茂るものを愛するものである。彼女は威厳において、姉妹でありヴァラールの女王であるヴァルダに次ぐ。彼女は美しい上に背が高く、エルフは彼女をしばしばパルリエン(Palurien)、広大なる大地の妃と呼んだ。

§6 ファントゥリ(Fanturi)[> フェアントゥリ(Feanturi)]は兄弟であり、マンドスとローリエン[> ローリオン(Lorion)]と呼ばれた。しかしこれらは彼らの本当の名前ではなく、むしろ彼らの住まっている場所の名前である。彼らの本当の名前は滅多に口にされることはなく、秘密の内に守られていた。その名はナーモとイルモである。ルミルは言う。兄の方はヌルファントゥア(Nurufantur)とも呼ばれ[> ナーモとイルモである。兄のナーモは、]、死者の館の主であり、殺された者達の魂を集めるものである。彼は何事も忘れず、イルーヴァタールが隠したことを除く、全ての起こることを知っているが、マンウェの命を受けた時のみ口をきく。彼はヴァラールの裁定者(Doomsman)なのである。織姫ヴァイレが彼の妻であり~(新版シルマリルの物語 p.68 1行目以降参照)、弟の方はオロファントゥア(Olofantur)とも呼ばれ[> 弟のイルモは]~(新版シルマリルの物語 p.68 4行目以降参照)。蒼白きエステ(Este the pale)が彼の妻であり~(新版シルマリルの物語 p.68 6行目以降参照)。しかし彼女はヴァラールの会議にはやって来ず、彼らの女王達のうちに数えられることはなかった。

§7 四肢において最強、武勇において最も優れているのがトゥルカス、剛勇なるポルドレア(Poldorea)の異名を持つものである。彼は遊び、特に組み打ち(wrestling)に興じる際は、裸であった。彼は馬には乗らず~(新版シルマリルの物語 p.69 2行目以降参照)。彼はマンウェの息子、フィオンウェ[> 伝令、エオンウェ]に多大な愛を寄せていた。彼の配偶者は、オロメの妹~(新版シルマリルの物語 p.69 5行目以降参照)。

§8 オロメは力強き神であり、奮起した時もしくは激怒した時の彼は、力においてトゥルカスに引けをとらない。彼は世界の陸地がまだ暗いなかにあっても愛しており~(新版シルマリルの物語 p.69 11行目以降参照)。ノームたち[> シンダール]には森の王、タウロス[> タウロン]と呼ばれている。彼の角笛は河口や、ヤヴァンナがヴァリノールに植えた森の中に高らかに響いた。しかし、彼が愛したエルフ達が衰微してからは、彼はこの角笛を中つ国で吹き鳴らすことはなかった。彼の妻は常若のヴァーナ、花々の女王であり、天と地の双方の美が彼女の面と業にあった。彼女はヴァルダとパルリエンの妹である。

§9 しかしヴァーナより力があるのはニエンナで、彼女はマンウェとメルコールの姉妹である。彼女は独り住んでいる。慈悲が彼女の心のなかにあり、彼女は嘆き悲しみ、涙を流す。影が彼女の領域であり、彼女の玉座は隠されていた。彼女の館は西方の西、世界と暗黒[read the Darkness]の縁にあって、彼女は神々の都市、もの皆喜ばしいヴァルマールに赴くことは滅多に無い。彼女はむしろ近くの、さらに北方向にあるマンドスの館に出向く事のほうが多い。マンドスの館に行く者たちは皆、彼女に声をかけて訴える。何故なら、彼女は傷を癒やすものであり、痛みを薬に悲しみを智慧に変えるからである。彼女の住居の~(新版シルマリルの物語 p.68 18行目以降参照)。

§10 最後にメルコールの名が挙げられる。しかし彼の邪悪な行為に最も苦しんだノームたち[> ノルドール]は彼の名を口にせず、彼をモルゴス、即ち黒き神[> 黒き敵]、そしてバウグリア、圧制者と呼んだ。彼はイルーヴァタール~(新版シルマリルの物語 p.73 3行目以降参照)。高慢と嫉妬と欲望が彼の心のなかで育ち、ついに彼は同輩たちとは違うものになってしまった。憤怒が彼を灼き、彼は暴力や破壊、無茶苦茶な行為を行った。火と氷を彼は愛した。しかし彼の全ての邪悪な行為において、最もよく使われたのは暗黒である。彼はエルフと人間の間で暗黒を恐怖と悍ましき名に変えてしまった。

§10a かくして9人のヴァラールと、同様に強大な7人のヴァラールの女王が見られることとなった。メルコールとウルモは独りで住み、またニエンナも同様であった。エステは支配者達の間に数えられることはなかった。しかし、アルダの領域における七大強者は、マンウェとメルコール、ヴァルダ、ウルモ、ヤヴァンナ、アウレ、そしてニエンナである。マンウェが彼らの首長[> 王]であるけれども、威厳という点においては皆同格であり、他の全て――ヴァラールとその氏族であれ、またはイルーヴァタールが考えた他の階級ものであれ――を超越していた。

§10b [次に書かれていることは全て、インクのタイプ原稿で追加されたものである。世界よりも前にヴァラールとともに生まれた精霊たちがいた。彼らはマイアール、偉大なる者たちと同じ階級ではあるが、力と威厳において劣る者たちであった。彼らのうちでは、マンウェの伝令であるエオンウェと、ヴァルダの侍女イルマレが首長であった。他の多くのものたちはエルフと人間の間で名を知られていないが、それは彼らが目に見える姿を取ることは滅多に無いからである。しかし、中でも偉大で尚且つ見目麗しいものが、ヤヴァンナの民のメリアンであった。彼女は中つ国に来る前はエステの庭の世話をしていた。そして賢明なのがオローリン、イルモの助言者であった。彼はメルコールの密やかな邪悪に対する隠れた敵であり、彼の聡明な先見の明が暗黒のたくらみを追い払った。
 メリアンについては後に多くのことが語られる。しかしオローリンに~(新版シルマリルの物語 p.72 10行目以降参照)。
 しかし全てのマイアールがヴァラールに忠実であったわけではない。ある者たちは始まりの頃よりメルコールの力に溺れ、またある者たちは後に堕落させられ、彼に仕えた。後にサウロンの名で呼ばれたものが彼らの首長であった。しかし彼は独りではなかった。]





  • 本記事に関してですが、田中明子先生が翻訳された「シルマリルの物語」の『ヴァラールとマイアールのこと』の部分と内容が非常に似通っているので、似ている部分については翻訳はしていません。あくまでも異なる部分についてのみ載せていく予定です。 -- 名無しさん (2013-08-03 20:21:15)
  • 続きもやるつもりですが、暑さでやる気が今ひとつなので、多分時間がかかります。すみません。 -- 名無しさん (2013-08-03 20:26:11)
  • §10bの後にLQ1からLQ2への変更点についての説明が続くのですが、ポルドレアがアスタルドになったとか、マンウェとメルコールの姉妹がナーモの姉妹となったといった内容で、出版されたシルマリルリオンに近いようなので省略します。ただクリストファー氏のコメンタリーはやるかもしれません。 -- 名無しさん (2013-09-01 11:27:52)
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最終更新:2013年09月01日 17:59