ナンドール "Quendi and Eldar"より -The War of the Jewels

ナンドール(Nandor)

 この名はエルフ達のアマンへの行進の後半時に、テレリのあるグループが行進を諦めた時に作られたものに違いない。この名は、ヒサイグリアを横断することを拒んだレンウェ(覚書17、p.412)に従った多数の追随者に特別に用いられたものであった。ナンドールはしばしば「引き返したる者達」の意とされるが、実際はナンドールの内誰一人として引き返したものはなく、またアヴァリと再合流した者もなかった。多くは彼らの到達した地域、特にアンドゥイン河の側に残り、腰を落ち着けた。また、ある者達は脇にそれ、南方へと流離っていった(覚書18、p.412)。しかしながら後に見られたように、メルコールの虜囚期に西方へとゆっくり漂っていたモリクウェンディと、ナンドールのグループが遂にヒサイグリアとエレド・ニムライス間の峡谷を透り、エリアドールに広く散らばっていった。彼らの中のある者達は、モルゴスの帰還よりもそう前ではない時期に、最終的にベレリアンドへと至った。これらの者達は、モルゴスの被造物たちとの最初の合戦の際にエルウェと同盟を結んだ、デンウェグ(Denweg)の子デネソール(覚書17を見よ)のリーダーシップ下にあった。古き氏族名であるナンドールはアマンのノルドリンの歴史家たちの記憶にしか留められていなかったが、彼らはこの民の後の歴史については何一つ知っておらず、彼らに思い出せることは、ただナンドールのリーダーが恐ろしきヒサイグリアを前に離脱したレンウェ(i.e. デンウェグ)であるという事だけであった。シンダリンの伝承の大家たちはナンドールのことをダンワイス(Danwaith)、または、彼らのリーダーの名前との混同からデンワイス(Denwaith)と記憶していた。

 この名は最初、東部ベレリアンドにナンドールたちが入ってきた時に用いられた。しかし、彼らは自身の事を古き氏族名であるリンダイ(Lindai)と猶呼んだ。このリンダイはリンディ(Lindi)が彼らの言語に応じた形となったものである。彼らの多くが小さな独立した民として、最終的に腰を落ち着けた地域を、彼らはリンドン(< *Lindānā)と呼んだ。このリンドンは青の山脈(エレド・ルイン)の西方の山裾の地域で、大河ゲリオンの支流群によって潤っており、以前にはシンダールからオッシリアンド、7つの河の地と名付けられていた。シンダールたちはリンディを、祖先のリンダリンと同族であると直ぐ様認識したものの、同族であるにも関わらず、言語において彼らとの間に大きな違いを感じ取った。また彼らはリンディとリンドンの名を採用し、リンディル(Lindil)(単数形はリンデル Lindel)、もしくはリンデジル(Lindedhil)、またリンドンもしくはドル・リンドンといった語形を得た。追放された者達のクウェンヤに於いては、(シンダール由来か、またはナンドールから直接得たのか)リンディとリンドン(またはリンドーネ、Lindóne)の語形が用いられた。また追放されたノルドールたちは、リンドン地域の東部国境線をその最も高い部分の連なりで形成しているエレド・ルインに言及する際、エレド・リンドンと呼称した。

 これらの名前は、後代のシンダールの間では「緑のエルフ」に変わっていった――少なくともオッシリアンドに住む者達に関する限りは。彼らは自分自身を引っ込め、モルゴスとの闘争において彼らが出来た事は殆ど無かった。この名はSではラエゲル(Laegel)、複数形でラエギル(Laegil)、class-pluralにラエグリム(Laegrim)またはラエゲル(ズ)リム(Laegel(d)rim)があり、これらはどちらもリンドンの青々とした地にちなんだもので、またラエグリムたちが緑の服に身を包むことで隠密の助けとしている事にもちなんでいる。この単語はノルドールによってクウェンヤでライクウェンディと翻訳されたが、この言葉は余り使われることはなかった。


覚書17
  • レンウェの語形はノルドールたちの歴史に記録されている名前であった。
  • 彼の名前はおそらくデンウェゴ(*Denwego)であり、ナンドール語でデンウェグ(Denweg)。
  • 彼の息子はナンドールたちの族長であるデネソール。
  • これらの名はおそらく、『靭やかで活発な('lithe-and-active')』、『靭やかで痩せた('lithe-and-lank')』の意味で、『(*dene-)ほっそりとして強い、柔軟な、靭やかな』と『(*thara-)背が高く(もしくは長く)すらっとしている』から来ている。


覚書18
  • ナンドールの名は*danから派生したもの。
  • *ndan-は、起こした行動の逆転を示すものである。『元に戻す、帰る、撤回する、返す』などのようなアンドゥや取り消しの意味がある。
  • おそらく元となった単語である*ndandō-は、ただ『自身の誓言や決断により戻った人』を指すだけと思われる。





  • かなり時間が開いてしまいましたが、ナンドール投下します。誤訳や、もっと良い訳などありましたら何方でも構いませんので修正お願いします。 -- 名無しさん (2013-06-10 19:26:12)
なまえ:
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最終更新:2013年06月30日 14:09