モルゴスの指輪 "Myths Transformed"より -Morgoth's Ring

  • 誰しも(ヴァラールの一人であっても)他の‘同等の存在'の心を読むことは出来ない。
  • ‘同等の存在'→全ての理性ある/エルから直接派生した精神は皆‘同等'である―順序と地位において―必ずしも‘同時代のもの’か同じような起源の力であるわけではない。
  • 「‘同等の存在'の心を読むことは出来ない」というのは、簡単な視察で彼らを直ぐ様完全に‘わかる'(see)もしくは理解するようなことはできない、ということである。
  • ただし、その者の心と考えの傾向や性質等から導かれる結論を一般に比較することだとか、その個人に関する特別な知識だとか、特殊な状況だとかで彼らの考えを推測することは出来る。
  • しかしこれは他者の心を読んだり精査できているわけではない、閉ざされた部屋の中に関する事や視界の外で行われているイベントを推測できないのと同様に。
  • どちらも所謂‘思考伝達'、心を読む過程ではない。
  • 自分の意思による行動で、他者の心に自分の心を開示または明かすことが出来る(自発的または望んでこれをしているにしても、実際に心が他者の心に完全に明かされるかは疑わしいけれども)。
  • このため、強大な力の持ち主は、彼が統べるまたは制約するより弱い他の意思・心を、彼ら自身が明かすよう唆したり強いたりすることに惹かれるようになった。
  • しかしこういった明かすことを強いることや、嘘や欺瞞によって唆すことは、例え‘善なる'目的の為でも決して許されることではなかった。
  • こうした行為は罪に当たり、‘善なる'目的を持つ者であっても、こういった罪を犯したものは速やかに堕落することなった。

  • このため多くのことは‘マンウェの背後で密かに進んでいった’。全ての他者(強大な者もそうでない者も)の心の最も深い部分は、マンウェからは隠されていたからだ。
  • 特に敵(メルコール)に関して言えば、マンウェは彼の考えと目的を、遠方からの心の目(mind-sight)で見通すことは出来なかった。何故なら、メルコールは強固な力ある意思で持ちこたえたからだ。
  • このことは、暗黒の中で形を取ったことと、影が彼の周囲を取り巻いていたことで、物理的に表現されていた。
  • しかしマンウェは、彼自身の優れた知識と、彼の人と物に関する膨大な経験、‘音楽’に関する記憶、彼自身の遠視の力、そして彼のメッセンジャー達の知らせを使うことが勿論出来たし、実際に使った。

  • メルコールは彼のホールや永続的な住居の外、または離れたところで見聞きされるようなことは決してなかった。
  • 何故だろうか? 実は特に深い意味はなかったりする。(イギリス)政府は何時だってホワイトホールにあるし、アーサー王も通常はキャメロットかカーリオンにいる。そして知らせや冒険は他所からそこにくるか、そこで起きたのだ。
  • 少なくとも完全な‘ラグナロック’の前に、‘長上王’が最終的な敗北や破壊を被るわけにはいかない。そのため彼は実際に‘冒険’することは出来ない。
  • しかしもし彼を家に留め置いたなら、特別なイベントの結末が(最終的なチェックメイトにならないため)どっちつかずの生殺しのままになってしまう。
  • その為、モルゴスに対する最後の戦いにはマンウェの息子であるフィオンウェが起用された。
  • マンウェが(住まいから)立ち退いた時、それは最終戦争の時であり、世界(もしくは‘傷ついたアルダ’)の終りであるとエルダールは言う。

  • [モルゴスが家にいるのは全く異なった理由からである。彼は殺されることや傷つくことさえも怖がっていたからで、そこに文学的な動機はない。]

  • メルコールは(モルゴスとして)永遠に‘受肉’した。
  • 彼はアルダのhroa、‘肉体’もしくは物理的物質をコントロールするためにそうした。
  • 彼はそうすることで自己と(アルダのhroaとを)同一視しようと試みた。
  • それはサウロンと指輪たちの作用に似ているけれども、より広大で危険な方法であった。
  • このため、祝福された地の外では、全ての‘物質’は‘メルコールの要素’を孕むことなり、肉体を持つもの、アルダのhroaにより育つものは、偉大な者も小さな者も皆、メルコールの方へ向かう傾向を持つに至った。
  • 肉体を持つものでこのことから完全に逃れる事の出来るものは皆無であり、彼らの肉体はその精神に影響を与えた。

  • しかしこの事により、モルゴスは彼が元々持っていた‘天使的な’力の大部分を失った(もしくは交換した、または変質した)。物質世界の恐ろしい掌握を獲得する代わりに。
  • このため、彼と闘うには主に物理的な力によるものにならざるを得なかった。また彼との直接の戦闘の結果は、勝つにせよ負けるにせよ膨大な物質的破滅になることは明らかだった。
  • これがヴァラールがモルゴスに対して公然と闘うことに常に気乗りしない主な理由である。
  • マンウェの仕事と問題はガンダルフのそれよりも更に難しいものであった。
  • モルゴスとサウロンを比較するに、サウロンの力は小さくまた集約されたものであったが、モルゴスのそれは膨大で散在したものであった。
  • 彼の注意は主に北西に傾けられていたけれども、‘中つ国’全てがモルゴスの指輪となってしまった。
  • もし、迅速な成功を納めていなかったならば、モルゴスに対して起こされた戦争は中つ国全て、もしかするとアルダさえも混沌に還しかねないものであった。
  • 「アルダを統治し、そこに住むエルの御子らが悩むことのないようにするのが、長上王の務めであり職務である」と言うことは簡単だ。
  • しかしここにヴァラールのジレンマがある。アルダを解放するには物理的戦闘を行う以外に方法はない。しかしそういった戦闘はアルダの回復不能な破滅という結果になることは明らかだった。
  • サウロンの最終的な根絶は指輪の破壊によって成された。このような根絶法はモルゴスには不可能である。もしやろうと思ったら完全なアルダの‘物質’の分解が必要となるからだ。
  • 例えるなら、サウロンの力は黄金の中にはない。だが、総黄金量の中の特別な一部分から作られた、特別な形や形状の黄金の中にはある。
  • モルゴスの力は黄金の隅々までばら撒かれており、(彼が黄金を作ったわけではないが)もし純粋な黄金があるとしたら、どこにも存在しないだろう。
  • (こうしたモルゴスの要素の入った物質は、他の邪悪なものども、サウロンなどが業とした‘魔法’といったものに必要なものとなっていった)

  • 無論、一定の‘要素’や物質の状態がモルゴスの特別な注意を惹いた、というのは非常に有り得る話だ。
  • 例えば(中つ国の)全ての黄金は、特殊な‘邪悪な’傾向を持つように思われる。しかし銀にはそれがない。
  • 水もほぼ完全にモルゴスからは自由なものである。(ただし、これは海、川、河、泉、そして壺の中の水さえも毒したり、汚したりすることができないという意味では勿論ない。)





  • 抄訳の体裁をとってますが結構全訳に近いです。おかしい点やベターな訳出来る人は修正お願いします。 -- 名無しさん (2013-03-01 17:29:05)
  • 補足。フィオンウェって何じゃいと思われる方もいるかもしれませんが、これは後のエオンウェです。当初はフィオンウェ・ウーリオン(Fionwe Urion)という名でマンウェとヴァルダの子でイルマレと兄妹という設定でした。 -- 名無しさん (2013-03-01 17:31:57)
  • 更に補足。実は、怒りの戦いはヴァラールの子ら(Children of Valar)とマイアールやエルフによって遂行されたものです。しかし後にこのヴァラールの子設定はなくなったためにマイア主導に変わったわけです。怒りの戦いにヴァラは参加してなかったのかどうか時々議論がありますが、準ヴァラールともいうべきヴァラールの子ら主導だったため参加してなかったようです。しかしこの設定変更の後、教授は怒りの戦いを書きなおしてはいないので、こういった議論が巻き起こるのだと思われます。 -- 名無しさん (2013-03-01 17:39:24)
  • またまた補足。ヴァラールの子設定ですが他にはメリアンがそのようです。彼女は当初はグウェンダリン(Gwendeling)という名でa daughter of the Godsとなってます。ただし両親は不明です。またゴスモグも実はそうで、モルゴスと雌のオーガーであるフルイスイン(Fluithuin)またはウルバンディ(Ulbandi) の間にできた子となってます。だから名前の一部にgothがあるのです。ゴスモグのほうがサウロンより活躍してるんじゃないか?とかサウロンが副官って本当?という質問が度々見られますが、これは当初はゴスモグのほうが重要人物でその当時に書かれたエピソードがそのままシルマリルリオンで使われてるからです。サウロンは当初はネコの悪魔でルーシエンとフアンにやられる役でしかなかったのです。その後設定の変更が重なりサウロンとゴスモグの立場が逆転した後も、エピソード自体の書き直しはされなかった(もしくはその前に教授が亡くなった)ため、このような疑問が生じるのだと思われます。 -- 名無しさん (2013-03-01 17:52:17)
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最終更新:2013年03月01日 17:53