エルダールの婚姻法と慣習他 Vol X pp 209 -

エルダールの婚姻とそれに関するほかの法と慣習、およびフィンウェとミーリエルの規定(statute)と制定におけるバラールの議論

エルフワインの序文

エルダールは人間より体の発育はゆっくりであるが精神の方は速い。彼らは1歳になる前に話すことを習い、同じときに歩くことと踊ることを習う。すぐに彼らの意思が体のマスターになるからである。とはいえ、エルフと人間の2種族の間には幼少期の違いは少なく、エルフの子供たちが遊ぶのを見た人間は、美しくて幸福な人間の子供たちだと思うかもしれない。その昔エルフの子供たちは彼らの周りの世界で楽しんでおり、精神の火に焼き尽くされておらず、記憶の重荷はまだ軽かったからである。

この観察者は言語能力や優雅な動きから判断して、小さい四肢と子供たちの体格に実際不思議がったであろう。死すべき者の子供たちは三歳のおわりにはエルフたちを超え始め、まだエルフたちが幼少期にはじめにとどまっているとき、急いで育ちきってしまう。人間の子供たちの背丈が伸びきったとき、同じ年齢のエルダールの体は死すべき者たちの7歳くらいである。エルダールは50歳にならないと、生涯続く背丈と形状に達しない。ある者は完全に成長するまでに100年かかる。

エルダールは多くの場合50歳になってすぐの若さで結婚する。子供の数は少ないが彼らを慈しむ。家族、もしくは一族は愛情と、精神と身体において強い同族感で結ばれており、子供たちを取り仕切ったり教えたりする必要はなかった。一家族に4人以上の子供がいるのはまれであり、時代と共に子供たちの数は少なくなっていった。とはいえ、上古まだ人数が少ないためエルダールがその数を増やすことに熱心であったとき、フェアノールは7人の息子の父親として名をはせ、彼を超える者は歴史上でていない。

婚姻は極まれな不可解な不幸を除きエルダール全てにとって生涯続く。こういうふうに起きることであった。後に結婚する者同士は子供のときであったりする若いとき(実際平和な時代にはしばしば起きていた)相手を選ぶ。だがすぐに結婚を願いかつ適齢である場合を除き、婚約はそれぞれの両親の判断を待つこととなった。

時がくると婚約が両家の会合で発表され、婚約者たちは互いに銀の指輪を与え合う。エルダールの法によると、この婚約は少なくとも1年間、しばしばもっと長く有効であった。この期間に公に指輪を返すことで解消できた。指輪は溶かされ婚約のためには二度と使われることはなかった。これが法であったが、解消する権利が行使されることは少なかった。エルダールがこうした選択を軽々しく誤ることはなかったのである。彼らは同種族には簡単にだまされることがなかった。彼らの精神は身体のマスターであり、体の欲求に流されることはほとんどなく、性質として自制がきき変わることがなかった。

そうではあるが、エルダールの中にはアマンにあってさえ結婚の願いが常に叶うわけではなかった。愛情がいつもかえってくるわけではなく、ある者を一人以上が配偶者にと望むこともあった。このことでアルダの至福に悲しみがもたらされ、ヴァラールが疑問を持つこととなった。何人かはアルダが傷ついたせい、またエルダールが影の下に目覚めたせいだとした。それによってのみ嘆きもしくは無秩序がもたらされる(と彼らは言った)。ある者たちは愛そのものからもたらされたとし、個々の魂(fea)の自由およびエルの子供たちの性質の神秘からくるとした。

婚約後少なくとも1年が経過したのち、婚約者たちで婚姻の時を決めた。宴の席で、これもまた両家によって共に婚姻を祝った。宴の最後に婚約者たちは起立し、花嫁の母親と花婿の父親が二人の手を繋がせて祝福した。この祝福には厳かな形があったが死すべき者でそれを聞いた者はいない。エルダールが言うには母親によってヴァルダが、また父親によってマンウェが証人として名指され、さらに(他のときにはめったに行われないが)エルゥの名も挙がる。そのあと、婚約者たちはお互いから与えていた銀の指輪を返してもらい(大切にする)、その代わりに細い金の指輪を与え合い右手の人差し指のつけた。

ノルドールの間では慣習として花嫁の母親から花婿へ鎖か首輪に付いた宝石を贈り、また花婿の父親から花嫁に同様な贈り物をした。こうした贈り物は時に宴に先立って行われた。(それでアルウェンの母親の立場でガラドリエルが花嫁側の贈り物の一部として、かつ後に執り行われた婚姻の証としてアラゴルンに贈り物をした。

ただしこうした儀式などは婚姻に必要な式典ではなく、親たちの愛情表現の優雅な形に過ぎなかった。結びつきは単に婚約者たちだけではなく彼らの二家族を結びつけた。体の結びつきが結婚を成就させたのであり、その後解消されることのない結合が完成したのである。幸福で平和な時代にこうした儀式を無視することは不親切で家族への軽蔑と受け取られたが、いつの時代にも両者が未婚のエルダールは誰でも自由意志でお互いに合意すれば、儀式や証人なしに(祝福をあたえ、とある名前を名指すことは例外として)合法であり、このように結ばれた婚姻は同様に解消されないものであった。上古、逃避中や追放中または流浪など困難なときはしばしばこうした婚姻が行われた。

子供の受胎と出産に関しては、受胎と出産の間に1年するとエルフの子供が誕生したのそれらは同じ日かごく近い日であったので受胎の日が毎年記憶されたのである。主としてそうした日々は春であった。主は理由はエルダールは体が年をとらなず、(特に男性たちはそう思っていて)生涯のうちどんな年齢でも子供たちを得たからである。だがそうではなかったのである。エルダールは実際にはゆっくりとではあるが年齢を重ねた。彼らの生命の限りはアルダの存続とおなじであり、人類の知り得ないほど長くはあったが終わりがないことではなく、そのように年をとってとっていった。さらに彼らの体と精神は別々なものではなく密着していた。年を経る重荷は彼らの欲望と思いを変え、エルダールの精神の上にのしかかり、欲求や彼らの体の様態も変化していったのである。これがエルダールが精神が彼らを焼き尽くし、アルダが終わる前にこの地上のすべてのエルダーリィは精霊として、ある人間たちにはその思いに直接的に入り込むことによって見られる以外、死すべき者たち誰の目にも見えなくなると言う意味である。

そしてエルダールは、草創期もっと子供たちを得ており、精神と身体において彼らの勢力と力は死すべき者たちの子供たちより強かったと言う。これらの理由によりエルダールは少数の子供たちしか生まなかったのである。また特異で厳しい運命が降りかからない限り、彼らは少年期または青年期の世代であった。だが結婚した年齢に関わらず、彼らの子供たちは結婚後あまり年数をおかずに誕生した。世代に関してエルダールの間では力や意思は違いがわかったからである。意思や欲求が満たされなければいく年月にわたり彼らが世代の力を保持したことは疑いのないことである。しかし力の行使によりすぐに欲求はなくなり、精神は他のことへ向かった。愛情による結びつきは実際彼らに非常な歓喜と子供たちの日々をもたらし、彼らが呼ぶ人生でもっとも楽しい記憶である。だが、彼らには体と精神に他のさまざまな力があり、彼らの性質はそれらの成就へ駆り立てた。

かくして、結婚した者たちは生涯結婚したままではあったが、必ずしもいつも共に住むわけではなかった。不運な日々の別れの機会を考えることがなく、結ばれていれば妻と夫は、お互いに異なる精神と身体の賜物を与えられていた個々だったからである。ではあるがどのエルダールにとっても出産の時に、またはその子供時代の最初の年に結婚した一組が分かれれていることを嘆いているようであった。この理由があってエルダールはできることなら幸福で平和な日々に子供たちを得たのである。

 こうしたことすべての中で、子供を得る関係以外では、エルダールのネリとニッシ(男性と女性)は同等であり、このこと意外では(彼ら自身が言うには)ニッシが物を新しく形成するのは主として彼らの子供たちの形成で現された。そこで発明とその他の変化は主としてネリによっともたらされた。しかしながら、エルダールの間には何事であれ、ネル(ner)だけが考えるとか行えるということも、またニス(nis)だけが心配するということはなかった。確かにネリトニッシの自然な傾向の間に違いはあり、他の違いは慣習(場所、時、またエルダールの種族によって異なる)によって定まっていた。例えば、癒しの技、体の手当てに関するすべてはすべてのエルダールの間で主としてニッシによって行われ、反対に有事に武器をとったのはエルフの男たちであった。エルダールで死に関わる運命の者は、たとえそれが合法であったり必要であるときも、癒しの力が減少した。そしてこれに関するニッシの得は女性がもっているどのような特別な力よりも、彼女たちが狩や戦をしないことによるものであった。事実最悪の状況やどうしようもない防御のさいにはニッシも果敢に戦い、エルフの男たちといまだ子供を産まないエルフの女たちにはその強さも速さも、死すべき者たちに見られるほどには違わなかったのである。その一方で、多くのエルフの男たちは偉大な癒し手であり生きたからだの伝承に優れていたが、こうした男たちは狩をせず、最後に必要になるまで戦争に行かなかった。

そのほかのことについては(中つ国でもっとも知られている)ノルドールの慣習について語ることとする。ノルドールの間ではパンを焼くのは主として女性に見られたが、レンバスを焼くのは古の法により女性に限られていた。だが料理と他の食品の準備は一般的に男性の仕事であり喜びであった。ニッシは畑や庭の手入れ、楽器の演奏、糸紡ぎ、機織、服づくり、糸と布で飾ることに優れていた。伝承については彼女たちはエルダールとノルドールの家々の歴史をもっとも愛し、家族と子孫に関するすべてを彼女たちは記憶にとどめた。しかしネリには鍛冶や、細工匠、木や石の彫り匠また宝石細工の匠としてより優れた技があった。主に彼らが音楽を作曲し楽器や新しい道具を作った。彼らは詩人たちの指導者であり、言語の学び手また文章家であった。彼らの多くは森林や荒野の伝承を喜び、その中で自由に育ちまた生きるすべての物と友になろうとした。しかし、これらまた他の労働また遊びに関して、および生きることとこの世界の生命に関する深遠な知識はノルドールは誰であっても、それがネリであるかネッシであっても、みな時々に考えたのである。

婚姻の終了について pp 225

 

最終更新:2013年01月31日 09:39