こうやって、今朝の出来事を思い返しながら炎天下の下に外出してみたが心の昂ぶりは抑えられない。

私の目に映る女性のなんと淫靡なことか。

ただ、普通に自転車に乗ってる女子高生。

買い物カゴをぶら下げた主婦。

恋人と腕を組む女子大生。

その姿だけで私の昂ぶりは尋常なものではない。白く悩ましいふくらはぎからその奥の世界に脳内の欲望のエンジンは回転数を増してゆく。

口の中に唾がたまる。無意識に喉を鳴らして唾を飲み込んだ。

燦々と照りつけるあの太陽と女性の薄着にトランス状態に陥りそうなのだ。

駄目だ。やもすれば犯罪すら起こしかねないこの感情を抑えるために私は本屋へと駆け込んだ。

本屋なら文学的な世界が広がってるわけだから私の欲望も抑えられる筈だ。

大きな本屋である。ここで文学的な時間を過ごせば昂ぶりも忘れるだろう。

静かな空間。やはりこの静寂が私には必要なのだ。

涼しくも静かな空間で歩を進めた。

私の前を夏服の女子高生が通り過ぎてゆく。いかにも文学的な地味な少女だ。小柄で二つに結った黒髪などは流行りから無縁と思しきムードを醸し出していた。

「田中 郁絵のコーナーは何処ですか?」

少女はレジのアルバイトらしい女性に尋ねた。どうやら好きな作家の作品を求めてきたのだろう。

レジの女性は少女を案内して店の奥へと向かった。

私の目は少女とアルバイト女性の白い足を追いかけていた。

またもや知らずうちに唾が口の中にたまる。そして無意識に飲み込む。

妄想が膨らむ。

あの地味な少女はどうだ?まだ、無垢で男も知らないのだろう?

アルバイトの女性はどうだ?昨夜、私の知らない男と肌を重ねたのだろうか?

私の中に理不尽な嫉妬がむくむくと膨れ上がる。

私は昨晩、愛人を抱いた。何度も嗚咽を漏らしては私にしがみ付いては果てたのだ。

40も過ぎた私が二十歳を少し過ぎばかりの少女を女にしたのだ。

妻と何度も交わした事務的な性行動ではない。

心が震えるほどの甘美な世界を空が白むまで楽しんだのだ。

私は完全に自信を取り戻した。と、同時に官能の羅針盤が敏感に反応してしまったのである。

抱きたい。

猛烈にくるこの欲求。

白い素足、小ぶりな尻。凛とした背筋。

たとえ、衣服に隠れた宝石でも私にはわかる。

衣の中の輝きが。
最終更新:2012年01月08日 18:24