※こちらは【船】航海の続きです。


ここはどこですかー? 俺にまかせろ♥ By 航海長ナイジェル&ビセンテ


海の現在地は 緯度×経度が合体したトコ です。とはいえ、GPSがないF&B時代に現在地を調べるのはとーっても大変。
ナイジェルやビセンテみたいにキッチリした人じゃないとムリ。
ちょっと面倒くさいお話もあるけど、ちゃぶ台ひっくり返したくなる衝動(ええ、何度もきましたよ)に負けないでね♥



緯度×経度の基準


現在地の緯度×経度は 基準の場所からどれくらい離れてるか? ってこと。そーなんです。基準が必要なんです。
こちらは1570年スペイン王フェリペ2世の地理学者 アブラハム・オルテリウス が作った世界地図。
心を鬼にしてF&B時代の地図を見比べると、同じ基準でも地図によって経度の位置がビミョーに違ったりするのでご注意下さい。


21世紀 F&B時代
緯度 赤道 赤道
経度 グリニッジ子午線
グリニッジ天文台 の窓が経度0度)
経度は××度じゃなく移動距離。ってことで、出発地点とか 基準は様々
(地図上は トルデシリャス条約 が経度0度)
日付変更線 経度180度 フェルディナンド・マゼランが世界一周(1519-1522年)して気がついた。
が、それで何か決めたのかは分からなかったです。

+ 初めての緯度×経度


航海テキスト


航海テキストは、現在地の緯度×経度を調べる時に絶対必要な 南中時太陽赤緯表、三角関数表… がてんこ盛りの 航海表 です。
これがないとヤバイ!死ぬ!? ってくらい重要。出かけるときは忘れずに。
Solar Declination Tableの日本語名が分からなかったので、とりあえず「南中時太陽赤緯表(仮)」ってことで。

ビセンテご愛用 ナイジェルご愛用
スペイン(1551年) イングランド(1574年と1576年)


緯度を調べる


緯度は太陽(夜は北極星か南極星)の高さを調べる 天測航法 で分かります。
だからナイジェルやビセンテにとって、北極星を探す 北斗七星 (英:Big Dipper、西:Osa Mayor)も特別な星座。
GPS大活躍の21世紀も壊れたとき用に天測航法は理解してなくちゃいけません。あっ、昔の飛行機も天測航法を使ってました。
wikipedia

天測航法で大活躍の 六分儀 (21世紀:イギリス海軍)

+ 測定って難しいのね


緯度を調べる道具


こちらはF&B時代に使ってた緯度(=太陽や星の高さ)を調べる道具です。
波や風でプカプカ揺れる船では、お手軽なクロス・スタッフが人気。占星術師 ジョン・ディー が1550年頃イングランドに導入。
四分儀は、その後 八分儀 (1742年?)や 六分儀 (1757年?)に進化します。

航海用アストロラーベ 四分儀 クロス・スタッフ(ヤコブの杖)

+ 大砲と四分儀


緯度の調べ方


人気はスルーして、航海用アストロラーベで緯度の調べ方を。
ここでいう正午はナイジェルやビセンテの船乗りが使う 「今いる場所が正午=太陽が一番高いとき」 です。
私たちが使ってる「日本中どこでも正午=時計が12時になったとき」じゃないのでご注意。

+ 今いる場所が正午ってなに?

1 もうすぐ正午っぽくなってきたら、アストロラーベを水平線と平行に持つ。
プカプカな船では難しいけどなるべく頑張る。
2 指方規に付いてる2つの穴を覗いて、太陽(夜は北極星か南極星)に照準をあわせる。
ひたすら照準を合わせる。
目盛りが一番でかい正午( 南中時刻 )になったら、ササッと目盛り( 南中高度 )をチェック。

※昼間は目が悪くなっちゃうから、覗かないで穴を通る太陽の光(影?)を見てね。
※南半球では北中高度?両方合わせて正中高度っていうみたい。
3 航海テキストの 南中時太陽赤緯表 で今日の 赤緯 をゲト。

※やり方は「ちゃぶ台大爆発!南中時太陽赤緯表の使い方」をどうぞ。
4 南中高度赤緯 を計算して緯度をゲト。計算式は

    今いる場所の緯度=90度-南中高度±赤緯

※やり方は「ちゃぶ台復活!意外に簡単♥ 緯度をゲト」をどうぞ。

+ なんで正午なの?

+ 均時差のおかげさまで南中時刻は毎日違う

+ 正午しかダメなの?

+ アストロラーベの弱点

+ 赤緯ってなに?

+ 今いる場所の緯度=90度-南中高度±赤緯ってなに?


ちゃぶ台大爆発!南中時太陽赤緯表の使い方


大爆発したのはビセンテのちゃぶ台でございます。面倒くさい。すごいよービセンテ! 簡単にした方がいいよースペイン!
詳しくはこちら John C. Fremont http://www.longcamp.com/nav.html)をどうぞ。
もしナイジェルやビセンテが 1579年7月11日(ユリウス暦)に南中時太陽赤緯表を使ったら? こんな感じです。


航海テキスト(ナイジェルご愛用?)の場合
1 テーブル
7月11日20度42分

ってことで、 1579年7月11日の赤緯はズバリ20度42分  かんたーん♥
航海テキスト(ビセンテご愛用?)の場合 ~ご協力♥miru-haさん~
1 黄経を計算

っぽいもの
テーブル1:黄道十二宮の中にある太陽の位置
7月11日(かに座)27度57分

テーブル2:年ごとの太陽の位置の調整(閏年+1日のウニャウニャ)
1579年OFF(閏年発動) / 00度44分(なんていうか…)

★閏年発動OFFなので、1579年のズレは
    01度00分-00度44分=00度16分
★1579年7月11日の太陽の位置は
    27度57分-00度16分=黄経(っぽいもの)は27度41分
2 赤緯を計算 テーブル3:黄経(っぽいもの)ごとの赤緯
28度20度37分
27度20度49分  ←この差は00度12分

★27度41分は27度と2/3分。赤緯は27~28度の間2/3のトコだから
    00度12分*2/3=00度08分
    20度49分-00度08分=20度41分

ってことで、 1579年7月11日の赤緯は20度41分  かー!めんどくせー!

+ 黄道十二宮ってなに?

+ 黄緯×黄経と赤緯×赤経ってなにが違うの?

+ 黄緯×黄経と赤緯×赤経ってなにが違うの?のおまけ ←緯度にまったく関係ないです。

+ 閏年+1日のウニャウニャってなに?


ちゃぶ台復活!意外に簡単♥ 緯度をゲト


もしナイジェルがロンドンで、ビセンテがマドリードで 1579年7月11日(ユリウス暦)に緯度を調べたら? こんな感じです。


世の中こーゆーもんです!な緯度の計算

北半球が夏のとき:今いる場所の緯度=90度-南中高度+赤緯 ←7月11日はこっち
北半球が冬のとき:今いる場所の緯度=90度-南中高度-赤緯

こーゆーもんだと思ったら、あとは簡単♥
お次は1579年7月11日(グレゴリオ暦:7月21日、準ユリウス日:-102021.49ET)の南中時刻の太陽です。
データはこちら お星様とコンピュータ 月、太陽、惑星の位置 )を使わせて頂きました。

観測 南中時刻 視赤経 視赤緯 南中高度 °
ロンドン 経度:00度12分00秒(0.200W)
緯度:51度30分00秒(51.500N)
12:06:15 7 59 38.9 +20 38 44 59.15
マドリード 経度:03度42分00秒(3.700W)
緯度:40度24分00秒(40.400N)
12:20:15 7 59 41.3 +20 38 37 70.24

これを計算したら、ぱんぱかぱーん♥ 緯度ゲト♥
結果はちょびっとおしい。16世紀ってけっこうスゲーっぽくないですか?ちなみに緯度1分の距離は1852m。

ロンドン 日時:1579年7月11日 12:06 UT(イングランドの時間だと12:06)
南中高度: 59度09分00秒 (59.15度)
南中時太陽赤緯表(ナイジェルご愛用?)でゲトした赤緯: 20度42分

90度-59度09分+20度42分= ナイジェルが計算した緯度は51度33分 (誤差+3分)
マドリード 日時:1579年7月11日 12:20 UT(スペインの時間だと13:20)
南中高度: 70度14分24秒 (70.24度)
南中時太陽赤緯表(ビセンテご愛用?)でゲトした赤緯: 20度41分

90度-70度14分+20度41分= ビセンテが計算した緯度は40度27分 (誤差+3分)


経度を調べる


経度は船が進んだ方向と速度で移動距離を計算する 推測航法 で分かります。
トルデシリャス条約だってカーボベルデ諸島の西370リーグ(1リーグ≒4.2km。1568年王フェリペ2世は リーグ を廃止)だもんね。
この経度、苦労の割にすこぶる正確じゃないです。でも船で使える時計がないからしょーがない。
wikipedia

推測航法

正確な経度はとーっても難しくって、1567年スペイン、1636年オランダ、1666年フランスが「測定方法の募集」やってます。
イギリスも1714年「正確な測定方法を考えたら賞金£20,000( 経度法 )」を発足。
1765年クロノメーター(船で使える時計)を発明した時計職人ジョン・ハリソンが£23,065をゲト。みんな頑張った!
wikipedia

+ なんで時計で経度が測れるの?

+ 時計がお手頃になるまでは月距法


経度を調べる道具


こちらはF&B時代に使ってた経度(=移動距離)を調べる道具です。真面目に地道にコツコツ記録しなくちゃいけません。
道具の詳細はこちら【船】航海をどうぞ。

方向の 水浮きコンパス (30分ごと) 速度の ログライン (1時間ごと) 記録の トラバース・ボード


ちゃぶ台ひっくり返したくなるかも!?平面航法で経度をゲト


推測航法は平面航法、距等圏航法、連針路航法、流潮航法…F&B時代はどれでしょ? ってことで、一番簡単っぽそうな 平面航法 を。
もしナイジェルとビセンテが 記録したログブックがこんな感じだったら? こんな感じです。
ホントは ノット だけど、速度と距離がゴチャゴチャになるからkmでやってみました。ホントはノットね、ノット。

#ref error : ファイルが見つかりません (方位_32方位.PNG)コンパスの32方位 当直 1-2点鐘 3-4点鐘 5-6点鐘 7-8点鐘
夜半直 船の方向 ①東北東 ②北東 ③西 ④北北西
船の速度 5.5km/h 9.5km/h 11.5km/h 4km/h
朝直 船の方向 ⑤西南西 ⑥南南西 ⑦南 ⑧北西
船の速度 7.5km/h 6.5km/h 4.5km/h 5.5km/h
コンパスの方位1個は11.25度♥(360度÷32=11.25度)


+ 21世紀は電卓、ナイジェルやビセンテは三角関数表


苦労の割にすこぶる正確じゃない平面航法


こちらの地図は16世紀としてはかなり正確で美しい フェルナン・ヴァス・ドラード の羅針儀海図(1571年:ポルトガル)です。
経度の基準はカーボベルデ諸島の西370リーグにあるトルデシリャス条約。
21世紀の経線と比べるとカーボベルデ諸島から離れる程、緯度がビシバシ移動する程ズレちゃいます。あちゃー。


地図に書いた数字は、平面航法の1つ マルテロイオ航法 (14-16世紀地中海で使われた航法)で計算した経度です。
緯度が★の辺になるとズレてる。
こうやって考えてみると、目的地にホイホイ行っちゃうナイジェルやビセンテって優秀な航海長なのねー!

+ ってことで、マルテロイオ航法でナイジェルとビセンテにトルデシリャスへ行ってもらいましょう


どうして平面航法はズレちゃうの?


平面航法で経度がズレちゃうのは地球がタマだから。タマに三角形を描くとグニャーっとした球面三角形になります。
どー考えても三角形の三角関数表じゃムリ。三角定規でスイカは測れない!
正確な経度の計算は、緯度ごとに移動距離を計算する 球面三角法 (19世紀末に完成)とか使わないといけません。


F&B時代にどれくらい経度の補正してたのかは分からなかったけど、球面三角法の研究は奮闘努力中です。
ただし、これは緯度をビシバシ移動する時のお話し。
平面航法も地中海の中くらいなら問題ナシ。地球規模の航海だとそーとーヤバくなります。
こうやって考えてみると、世界一周してちゃんとイングランドに帰ってきたブランシス・ドレイクってスゴイのねー!

+ 球面三角法は諦めて…距等圏航法ってなに?


実は平面航法でもへーきへーき


トルデシリャス条約のズレは「 緯度毎に距離を補正する (球面三角法や距等圏航法)」をしなかったからです。補正すれば万事解決。
ナイジェルやビセンテが補正してもいいけど、海図が補正したら皆さん楽チン!
ついでに海図の範囲も小さくしたら「 平面航法も地中海の中くらいなら問題ナシ 」で平面航法もビシバシ使えます。


右の航海図は 水路学者 のイギリス海軍士官 グリーンビル・コリンズ 著「Chart of the English Channel」(1693年)です。
プリマス湾 の海図に距離尺が登場。
距離尺がいつから登場したのかは分からなかったけど、緯度毎に距離を補正してないと描けませんよね。

+ 海図の種類

+ 距離尺とディバイダーを使って距離を測定


もう緯度×経度もバッチリだし、さっそく出航だぁ♥


海図に直線を引けば船の進む方向(視針路)が分かります。これでバッチリ到着?いえいえ、海はそんなに甘くないのでございます。
海流・潮流・風…外力で船は流される。
ってことで、ナイジェルやビセンテは外力をアレコレ考慮(流潮航海算法)して船の進む方向(実航針路)を決めてます。

実航針路を考え中(21世紀:イギリス海軍)

21世紀は海図に海流・潮流・風…の線も描いて実航針路を決めます。
でもF&B時代の海図は方向・距離・面積を全部スルーの「直線が引けない 羅針儀海図 (ポルトラノ海図)」。
ナイジェルやビセンテは脳内でウニャウニャしてたんでしょか?


実航針路の決め方


海流・潮流・風…全部考慮するのは難しそうなので、一番簡単っぽそうな「海流だけ」の実航針路の決め方を。
海図がマルだらけになったー!
こちらの状況は 青木ボート免許スクールのDVD教材 さんの一級小型船舶操縦士問題集を参考にさせてただきました。

ナイジェルとビセンテはただ今こんな状況でございます

ナイジェルとビセンテは話題のスイーツ屋さんアロンソ号を目指して、ウィットサンド湾をウキウキ航海中です。
このままガーッと行けばアロンソ号に到着しそう。
でもこの辺には海流が…さてさてナイジェルとビセンテは実航針路をどうすればいいでしょうか?
  • ナイジェルとビセンテの船は灯台エリザベスの南4.4海里、アロンソ号は灯台フェリペの南3海里にいます。
  • 海流は北東方向に流速2ノットです。
  • ナイジェルとビセンテの船は速力4ノットです。

BA Chart 1900

+ 答え

+ 21世紀のコンパスローズ(羅針図)には真方位と磁方位がある


どうしてナイジェルとビセンテの船は灯台エリザベスの南4.4海里って分かったの?


船と陸地の距離は 三角測量 で分かります。
A地点の船と灯台エリザベスの角度B地点の船と灯台エリザベスの角度船が進んだABの距離 を測ればオケ。
三角測量は 古代ギリシア (BC8-6世紀)の頃から大活躍です。


+ 直角三角形じゃないと測れないの?


三角測量しまくりで地図も描ける


新しい島を発見したら三角測量で地形を正確に測量できます。
三角測量で地図を描こー!と提案したのは地図学者 ゲンマ・フリシウス 著「土地を表現する方法」(1533年:ネーデルラント)。
ヨーロッパで大ヒット。
航海テキストの ウィリアム・ボーン も「Rules of Navigation」(1571年:イングランド)で紹介してます。

川幅を測定中(16世紀:ネーデルラント)

+ 三角測量しまくった伊能忠敬

+ 伊能忠敬とイギリス




※ものすごーくお世話になったサイト。詳細はこちらをご覧下さい。