「【船】航海(緯度×経度)」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

【船】航海(緯度×経度)」(2014/11/16 (日) 13:11:42) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

#contents_line(level=2,sep=/) ※こちらは[[【船】航海>【船】航海]]の続きです。 *ここはどこですかー? 俺にまかせろ♥ By 航海長ナイジェル&ビセンテ 海の現在地は&bold(){緯度×経度が合体したトコ}です。とはいえ、GPSがないF&B時代に現在地を調べるのはとーっても大変。 ナイジェルやビセンテみたいにキッチリした人じゃないとムリ。 ちょっと面倒くさいお話もあるけど、ちゃぶ台ひっくり返したくなる衝動(ええ、何度もきましたよ)に負けないでね♥ &ref(ここはどこ.PNG,【船】航海) **緯度×経度の基準 現在地の緯度×経度は&bold(){基準の場所からどれくらい離れてるか?}ってこと。そーなんです。基準が必要なんです。 こちらは1570年スペイン王フェリペ2世の地理学者[[アブラハム・オルテリウス>http://en.wikipedia.org/wiki/Abraham_Ortelius]]が作った世界地図。 心を鬼にしてF&B時代の地図を見比べると、同じ基準でも地図によって経度の位置がビミョーに違ったりするのでご注意下さい。 &ref(16世紀(地球の中心).JPG,【船】航海) |BGCOLOR(lightgrey):|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:21世紀|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:F&B時代| |BGCOLOR(lightgrey):緯度|赤道|赤道| |BGCOLOR(lightgrey):経度|グリニッジ子午線&br()([[グリニッジ天文台>http://en.wikipedia.org/wiki/Royal_Observatory,_Greenwich]]の窓が経度0度)|経度は××度じゃなく移動距離。ってことで、出発地点とか[[基準は様々>http://en.wikipedia.org/wiki/History_of_longitude]]&br()(地図上は[[トルデシリャス条約>http://en.wikipedia.org/wiki/Treaty_of_Tordesillas]]が経度0度)| |BGCOLOR(lightgrey):日付変更線|経度180度|フェルディナンド・マゼランが世界一周(1519-1522年)して気がついた。&br()が、それで何か決めたのかは分からなかったです。| #region(close,初めての緯度×経度) 地図に初めて緯度×経度の線を描いたのは、天文学者[[クラウディオス・プトレマイオス>http://en.wikipedia.org/wiki/Ptolemy]](83-168年頃:古代ローマ)です。 著書「[[ゲオグラフィア>http://en.wikipedia.org/wiki/Geography_%28Ptolemy%29]]」の世界地図[[プトレマイオス図>http://en.wikipedia.org/wiki/Ptolemy%27s_world_map]]に登場。 基準は緯度=赤道、経度=エル・イエロ島(カナリア諸島)。天才だな、おまい。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Early_world_maps]] &ref(ここはどこ__緯度×経度(プトレマイオス).JPG)プトレマイオス図(1513年版) この地図は大航海時代にも活躍します。 クリストファー・コロンブスは「おっ!アジアは西から行った方が近道じゃん」と誤解して、1492年うっかりアメリカ大陸を発見。 #endregion **航海テキスト 航海テキストは、現在地の緯度×経度を調べる時に絶対必要な&bold(){南中時太陽赤緯表、三角関数表…}がてんこ盛りの[[航海表>http://en.wikipedia.org/wiki/Nautical_almanac]]です。 これがないとヤバイ!死ぬ!? ってくらい重要。出かけるときは忘れずに。 Solar Declination Tableの日本語名が分からなかったので、とりあえず「南中時太陽赤緯表(仮)」ってことで。 |BGCOLOR(lightgrey):CENTER:ビセンテご愛用|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:ナイジェルご愛用| |&ref(ここはどこ_航海テキスト(ビセンテご愛用).JPG,【船】航海,height=200)スペイン(1551年)|&ref(ここはどこ_航海テキスト(ナイジェルご愛用).JPG,【船】航海,height=200)イングランド(1574年と1576年)| *緯度を調べる 緯度は太陽(夜は北極星か南極星)の高さを調べる[[天測航法>http://en.wikipedia.org/wiki/Celestial_navigation]]で分かります。 だからナイジェルやビセンテにとって、北極星を探す[[北斗七星>http://en.wikipedia.org/wiki/Big_Dipper]](英:Big Dipper、西:Osa Mayor)も特別な星座。 GPS大活躍の21世紀も壊れたとき用に天測航法は理解してなくちゃいけません。あっ、昔の飛行機も天測航法を使ってました。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Latitude]] &ref(緯度.JPG)天測航法で大活躍の[[六分儀>http://en.wikipedia.org/wiki/Sextant]](21世紀:イギリス海軍) #region(close,測定って難しいのね) エクアドル(南米)には、けっこう有名でけっこう立派な赤道記念碑[[ミッター・デル・ムンド(世界の真ん中)>http://en.wikipedia.org/wiki/Ciudad_Mitad_del_Mundo]]があります。 1936年地理学者Luis Tufiñoが測定して記念碑を建設。 でもGSPで調べたら、げっ!赤道じゃなかったぁ!ってオチ。測定って難しいんですね。 &ref(緯度(ニセ赤道記念碑).JPG)エクアドルの赤道記念碑。エクアドルは赤道(スペイン語:Ecuador)って意味 #blockquote(){&u(){&bold(){本物の赤道博物館}} あっ、近所に本物の赤道博物館もあります。タマゴ立てやお水の渦巻き実験をお楽しみ下さい。 赤道上ではタマゴが立つ。 お水の栓を抜くと北半球で左巻き、赤道上で直下、南半球で右巻きに渦巻がグルグルします。あーら不思議! &ref(緯度(ニセ赤道記念碑:実験).JPG)赤道の上だと 実はこれって都市伝説らしいです。 でも実験ではちゃーんとタマゴ立つし、お水の渦も右に左にグルグル。21世紀は科学の時代だけど浪漫も必要ですよね。 } #blockquote(){&u(){&bold(){地球規模だと渦巻きが!}} 北半球と南半球は[[コリオリの力>http://en.wikipedia.org/wiki/Coriolis_effect]]で地球規模の渦巻きが逆です。これはホント。ナイジェル、ビセンテ気をつけてー! 左画は北半球の[[温帯低気圧>http://en.wikipedia.org/wiki/Extratropical_cyclone]](2014年2月12日:イギリス) 。 右画は南半球の[[熱帯低気圧>http://en.wikipedia.org/wiki/Tropical_cyclone]]の赤ちゃんTropical Cyclone Timです(2013年3月14日:オーストリア)。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Vortex]] &ref(緯度(ニセ赤道記念碑:渦巻き).JPG) 普段イギリスの冬はカラカラで、こんなに激しい嵐はとーっても珍しいそうです。豪雨と160km/hの強風で大混乱。 あとコリオリの力は緯度によってパワーが違うらしい。へー。 大砲の軌道や海流にも影響する力だそうです。へー。ちんぷんかんぷんだけど、ナイジェル、ビセンテ気をつけてー! } #endregion **緯度を調べる道具 こちらはF&B時代に使ってた緯度(=太陽や星の高さ)を調べる道具です。 波や風でプカプカ揺れる船では、お手軽なクロス・スタッフが人気。占星術師[[ジョン・ディー>http://en.wikipedia.org/wiki/John_Dee]]が1550年頃イングランドに導入。 四分儀は、その後[[八分儀>http://en.wikipedia.org/wiki/Octant_%28instrument%29]](1742年?)や[[六分儀>http://en.wikipedia.org/wiki/Sextant]](1757年?)に進化します。 |BGCOLOR(lightgrey):CENTER:[[航海用アストロラーベ>http://en.wikipedia.org/wiki/Mariner%27s_astrolabe]]|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:[[四分儀>http://en.wikipedia.org/wiki/Quadrant_%28instrument%29]]|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:[[クロス・スタッフ(ヤコブの杖)>http://en.wikipedia.org/wiki/Cross_staff]]| |&ref(緯度測定_道具(アストロラーベ).JPG)|&ref(緯度測定_道具(四分儀).JPG)|&ref(緯度測定_道具(クロス・スタッフ).JPG)| #region(close,大砲と四分儀) 大砲をドーンと撃つときも四分儀が役立ちます。 他にもお城を狙ってる人達が四分儀で測ってる画があったので、ジックリ狙って最大威力でとどめを刺すときに有効っぽい。 波や風でプカプカ揺れる船では…うーん、陸地じゃないとお役に立たなそうですよね。 &ref(緯度測定_道具(大砲).JPG)[[Niccolò Fontana Tartaglia>http://en.wikipedia.org/wiki/Niccol%C3%B2_Fontana_Tartaglia]]著「Dedicatory Letter」(1558年:イタリア) #endregion **緯度の調べ方 人気はスルーして、航海用アストロラーベで緯度の調べ方を。 ここでいう正午はナイジェルやビセンテの船乗りが使う&bold(){「今いる場所が正午=太陽が一番高いとき」}です。 私たちが使ってる「日本中どこでも正午=時計が12時になったとき」じゃないのでご注意。 #region(close,今いる場所が正午ってなに?) むかしむかし、あるところに巨大な王国がありました。 ある日女王は「&bold(){正午にお昼ご飯を食べない者は異端審問ぢゃ}」っと宣言しました。アホアホな宣言です。 でもみんなアホアホな異端審問が恐くてイヤイヤ守りました。そして…このお話には2つの展開があったのでございます。 &ref(現在地(緯度)_なぜ(今いる場所が正午).PNG) |>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:今いる場所が正午 ルート| |ナイジェルもビセンテも&br()&bold(){自分の家が正午(太陽が一番高いとき)になった時}にお昼ご飯を食べました。&br()某国は数百個もの正午ができました。|女王と同じ時計なんか不要だぜ!&br()俺が時計だ♥| |>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:某国中どこでも正午 ルート| |就寝中ナイジェルも、仕事中ビセンテも&br()&bold(){女王の家が正午(フェリペ天文台のお知らせ)になった時}にお昼ご飯を食べました。&br()みんなだんだん腹が立ってきました。税収も減りました。|女王と同じ時計が必要だぜ!&br()時計は必要経費に入りますか?| 女王は「なんかヤバイ?」っとハラハラしてきました。 そして数日後、反省して「やっぱヤメぢゃ」っと宣言を撤回しましたとさ。めでたし、めでたし。 #endregion |&ref(緯度測定_調べ方(アストロラーベ).PNG)|BGCOLOR(lightgrey):1|もうすぐ正午っぽくなってきたら、アストロラーベを水平線と平行に持つ。&br()プカプカな船では難しいけどなるべく頑張る。| |~|BGCOLOR(lightgrey):2|指方規に付いてる2つの穴を覗いて、太陽(夜は北極星か南極星)に照準をあわせる。&br()ひたすら照準を合わせる。&br()目盛りが一番でかい正午(&bold(){南中時刻})になったら、ササッと目盛り(&bold(){南中高度})をチェック。&br()&br()※昼間は目が悪くなっちゃうから、覗かないで穴を通る太陽の光(影?)を見てね。&br()※南半球では北中高度?両方合わせて正中高度っていうみたい。| |&ref(緯度測定_調べ方(南中時太陽赤緯表).JPG)|BGCOLOR(lightgrey):3|航海テキストの&bold(){南中時太陽赤緯表}で今日の&bold(){赤緯}をゲト。&br()&br()※やり方は「ちゃぶ台大爆発!南中時太陽赤緯表の使い方」をどうぞ。| |~|BGCOLOR(lightgrey):4|&bold(){南中高度}と&bold(){赤緯}を計算して緯度をゲト。計算式は&br()&br()&space(4)&u(){今いる場所の緯度=90度-南中高度±赤緯}&br()&br()※やり方は「ちゃぶ台復活!意外に簡単♥ 緯度をゲト」をどうぞ。| #region(close,なんで正午なの?) 正午は、いつでもどこでも条件が一緒でハッキリキッパリしてるから。 同じ経線上の船は&bold(){みんないっせいに正午}だけど&bold(){どこにいるかで角度は違う}。この角度の違いで緯度が分かる。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Culmination]] &ref(現在地(緯度)_なぜ(正午).PNG) |>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:正午の条件|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:季節が違うと|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:同じ経線(子午線)上だと| |BGCOLOR(lightgrey):&bold(){南中時刻}|BGCOLOR(lightgrey):お昼(今いる場所が正午)|一日の中で&br()・太陽の角度が&bold(){一番でかい}&br()・太陽の高さが&bold(){一番たかい}&br()・太陽の方向は真南(&bold(){南中})|季節どころか毎日違う|&bold(){みんないっせいに正午}| |BGCOLOR(lightgrey):&bold(){南中高度}|BGCOLOR(lightgrey):太陽の角度|~|~|&bold(){どこにいるかで角度は違う}| #endregion #region(close,均時差のおかげさまで南中時刻は毎日違う) 1日は24時間、1年は365日。お誕生日だって、新刊発売日だって、キッチリ動く時計があるから安泰♥ キッチリしてるのに南中時刻が毎日違うのは、&bold(){地球と時計の1日の長さが違う}([[均時差>http://en.wikipedia.org/wiki/Equation_of_time]]:時計と太陽の位置のズレ)から。 |BGCOLOR(lightgrey):地球の1日&br()(視太陽時)|リアル宇宙では&br()&bold(){地球の公転スピードはいろいろなご事情で速かったり、遅かったり、ムラがある}。&br()これだと「本日の1日は23時間59分48秒、明日は24時間12秒でお過ごし下さい」ってことになっちゃう。| |BGCOLOR(lightgrey):時計の1日&br()(平均太陽時)|地球の1日だと生活が不便!そこで天文学者さん達がひらめいたナイスなアイディアが&br()&bold(){地球の公転スピードはいつも同じって考えたらいいんじゃね?}&br()あれこれ太陽を観測した結果、ちょうどいいスピードが1日24時間だった。「毎日が1日24時間」で安泰。| う~ん、そう言われても…画だとこんな感じです。 #blockquote(){&u(){&bold(){私達が使ってる「時計の1日」はこーゆー考え方}} もし公転スピードがいつも同じだったら、南中時刻は毎日12時なの。1日も24時間なの。 &ref(現在地(緯度)_なぜ(南中時刻_同じ).PNG) |BGCOLOR(lightgrey):|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:春分(3月20日)|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:夏至(6月20日)|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:秋分(9月22日)|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:冬至(12月21日)| |BGCOLOR(lightgrey):時計の1日|>|>|CENTER:24時間|>|>|CENTER:24時間|>|>|CENTER:24時間|>|>|CENTER:24時間| } #blockquote(){&u(){&bold(){現実の「地球の1日」はこーゆーもん}} 実際の公転スピードはムラムラだから、ロンドン(2012年)の南中時刻も毎日違うの。1日の時間も毎日違うの。 なんかジェットコースターっぽい。 データはこちら[[お星様とコンピュータ>http://star.gs/cgi-bin/scripts/r.cgi]]([[惑星の出没南中>http://star.gs/cgi-bin/scripts/hinodet.cgi]])を使わせて頂きました。 &ref(現在地(緯度)_なぜ(南中時刻_違う).PNG) |BGCOLOR(lightgrey):|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:春分(3月20日)|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:夏至(6月20日)|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:秋分(9月22日)|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:冬至(12月21日)| |~|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:出|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:南中時刻|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:没|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:出|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:南中時刻|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:没|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:出|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:南中時刻|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:没|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:出|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:南中時刻|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:没| |~|6:03|&bold(){12:08:09}|18:15|3:43|&bold(){12:02:28}|20:22|5:47|&bold(){11:53:23}|17:58|8:04|&bold(){11:59:07}|15:54| |BGCOLOR(lightgrey):翌日|6:00|12:07:51|18:16|3:43|12:02:41| 20:22|5:49|11:53:02|17:56|8:05|11:59:37|15:55| |BGCOLOR(lightgrey):地球の1日|>|>|BGCOLOR(skyblue):CENTER:23時間59分42秒|>|>|BGCOLOR(gold):CENTER:24時間13秒|>|>|BGCOLOR(skyblue):CENTER:23時間59分39秒|>|>|BGCOLOR(gold):CENTER:24時間30秒| } 公転スピードがムラムラ!って言ったのは、天文学者&占星術師ヨハネス・ケプラー(1571-1630:ドイツ)。 有名な[[ケプラーの法則>http://en.wikipedia.org/wiki/Kepler%27s_laws_of_planetary_motion]]ってやつ。 中身はすがすがしい程ちんぷんかんぷんでございました。ふぇぇぇ、宇宙って複雑なんだね~orz 南中時刻はほとんど毎日ズレちゃってるけど、1年間で±0になるし、ビミョーなズレも閏年でナシになるそうです。へー。 フラフラしてる太陽も最後はビシッと元の場所に戻るっぽい。 難しいコトは分かんないけど、とりあえずナイジェルとビセンテの航海は安泰だ! &ref(現在地(緯度)_なぜ(南中時刻_グラフ).PNG) #endregion #region(close,正午しかダメなの?) 調べたけど分かりませんでした。ってことで、太陽高度グラフ(2012年)を眺めてみた。 直線グラフじゃないけど、正確な時間と電卓的頭脳と根性があればイケそう?ビスケー湾なら傾斜角データもアリそう? ナイジェルやビセンテならやり遂げそうです。 // //グラフの詳細はこちら[[太陽の動きを知るページ>http://www.gitc.pref.nagano.lg.jp/joho/solar/solar.html]]をどうぞ。 &ref(現在地(緯度)_なぜ(正午以外).PNG) #endregion #region(close,アストロラーベの弱点) たいへん、たいへん!北極点や南極点に近づくと極夜(太陽が昇らない日々)で南中高度が分かりません。緯度が分かりません。 限界緯度66.6度以上の南極圏や北極圏からは、極夜にご注意を! ある日とつぜん「ちみちみ、明日から北極支社に行きたまへ」って辞令下るのがサラリーマン人生だもんね。 ちなみに南極点に標識アリマス、北極点は海だからナイデス。 &ref(現在地(緯度)_なぜ(アストロラーベの弱点).PNG) #endregion #region(close,赤緯ってなに?) 赤緯×赤経は&bold(){天の赤道(宇宙まで広げた赤道)から見た太陽や星の位置}。緯度×経度の宇宙版ね。 地軸は北極点と南極点にプスッと刺した幻の棒。 &ref(現在地(緯度)_なぜ(赤緯).PNG) ※地球の地軸はちょっと傾いて(&link_wikipedia(黄道傾斜角){黄道傾斜角})るので、赤緯は毎日ビミョーに違います。 ※地球の地軸はちょっとグラグラ(&link_wikipedia(歳差運動){歳差運動})してるので、赤緯は毎年ビミョーに違います。あらまっ! #endregion #region(close,今いる場所の緯度=90度-南中高度±赤緯ってなに?) 語るより見る方が分かる! ふぇぇぇ、地球が傾いてなかったらもっと簡単なのにorz でも傾いてるから四季が楽しめるのね♥ 桜のためにガンバロー! &ref(現在地(緯度)_なぜ(今いる場所の緯度=90度-南中高度±赤緯).PNG) ※あっ!コピーで描いたら3つの緯度がバラバラになっちゃいました。ごめん。 #endregion **ちゃぶ台大爆発!南中時太陽赤緯表の使い方 大爆発したのはビセンテのちゃぶ台でございます。面倒くさい。すごいよービセンテ! 簡単にした方がいいよースペイン! 詳しくはこちら[[John C. Fremont>http://www.longcamp.com/index.html]](http://www.longcamp.com/nav.html)をどうぞ。 もしナイジェルやビセンテが&bold(){1579年7月11日(ユリウス暦)に南中時太陽赤緯表を使ったら?}こんな感じです。 &ref(現在地(緯度)_南中時太陽赤緯表.PNG) |>|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:航海テキスト(ナイジェルご愛用?)の場合| |&ref(現在地(緯度)_南中時太陽赤緯表(ナイジェル).PNG,,width=200)|BGCOLOR(lightgrey):1|>|&u(){&bold(){テーブル}}&br()&bgcolor(tomato){7月11日}…&bgcolor(skyblue){20度42分}&br()&br()ってことで、&u(){&bold(){1579年7月11日の赤緯はズバリ20度42分}} かんたーん♥| |>|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:航海テキスト(ビセンテご愛用?)の場合 ~ご協力♥miru-haさん~| |&ref(現在地(緯度)_南中時太陽赤緯表(ビセンテ).PNG)|BGCOLOR(lightgrey):1|BGCOLOR(lightgrey):黄経を計算&br()↑&br()っぽいもの|&u(){&bold(){テーブル1:黄道十二宮の中にある太陽の位置}}&br()&bgcolor(tomato){7月11日(かに座)}…&bgcolor(skyblue){27度57分}&br()&br()&u(){&bold(){テーブル2:年ごとの太陽の位置の調整(閏年+1日のウニャウニャ)}}&br()&bgcolor(tomato){1579年}…&bgcolor(skyblue){OFF(閏年発動)} / &bgcolor(skyblue){00度44分(なんていうか…)}&br()&br()★閏年発動OFFなので、1579年のズレは&br()&space(4)01度00分-00度44分=00度16分&br()★1579年7月11日の太陽の位置は&br()&space(4)27度57分-00度16分=&u(){黄経(っぽいもの)は27度41分}| |~|BGCOLOR(lightgrey):2|BGCOLOR(lightgrey):赤緯を計算|&u(){&bold(){テーブル3:黄経(っぽいもの)ごとの赤緯}}&br()&bgcolor(tomato){28度}…&bgcolor(gold){20度37分}&br()&bgcolor(tomato){27度}…&bgcolor(skyblue){20度49分}  ←この差は00度12分&br()&br()★27度41分は27度と2/3分。赤緯は27~28度の間2/3のトコだから&br()&space(4)00度12分*2/3=00度08分&br()&space(4)20度49分-00度08分=20度41分&br()&br()ってことで、&u(){&bold(){1579年7月11日の赤緯は20度41分}} かー!めんどくせー!| #region(close,黄道十二宮ってなに?) 黄道十二宮は、[[黄道十二星座>http://en.wikipedia.org/wiki/Zodiac]](太陽の通り道(黄道)にある星座)をキレーに並べてたもの。星座占いでお馴染み♥ 17世紀りんご引力の[[ニュートン>http://en.wikipedia.org/wiki/Isaac_Newton]]が登場するまで、占星術と天文学は一心同体です。 黄道十二星座を選んだのは天文学者クラウディオス・プトレマイオス(2世紀)。へびつかい座は落選。ヘビ苦手なのかなぁ? [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Astrological_sign]] &ref(現在地(緯度)_なぜ(黄道十二宮).PNG) 黄道十二宮は2種類あります。ナイジェルやビセンテはトロピカル方式。 あと春分点の黄道十二星座は、地球の地軸がグラグラ(歳差運動)してるから移動してるそうです。あらまっ! |>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:黄道十二宮|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:春分点の黄道十二星座| |BGCOLOR(lightgrey):トロピカル方式&br()Tropical zodiac|春分点が基準。西洋占星術、日本の星座占い。|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:とっても大昔|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:1~20世紀|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:20世紀末~| |~|~|おひつじ座|うお座|みずがめ座になった?移動中?| |BGCOLOR(lightgrey):サイデリアル方式&br()Sidereal zodiac|ある恒星が基準。バビロニア占星術、インド占星術。|>|>|調べてませーん| #endregion #region(close,黄緯×黄経と赤緯×赤経ってなにが違うの?) どっちも緯度×経度の宇宙版だけど、&bold(){太陽や星の位置を測ってる場所が違う}。単位もちょびっと違う。そんだけ。 赤色、黄色、宇宙ってカラフル♥ 他にも白色とか銀色とか…世の中はあっちこっちから宇宙を測ってます。 &bold(){もし16世紀の夜空に突如かわいい赤毛の星が現れたら?}こう測ります。 &ref(現在地(緯度)_なぜ(黄緯×黄経).PNG) |>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:測ってる場所|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:緯度と単位|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:経度と単位| |BGCOLOR(lightgrey):黄緯×黄経&br()[[黄道座標>http://en.wikipedia.org/wiki/Ecliptic_coordinate_system]]|BGCOLOR(lightgrey):黄道|&bold(){黄緯}、β|度分秒、dms、--°--'--"|&bold(){黄経}、λ|度分秒、以下略| |~|~|>|0度(黄道)~±90度(黄道北極/南極)|>|0度(春分点)~360度(春分点)| |BGCOLOR(lightgrey):赤緯×赤経&br()[[赤道座標>http://en.wikipedia.org/wiki/Equatorial_coordinate_system]]|BGCOLOR(lightgrey):天の赤道|&bold(){赤緯}、δ、Dec|度分秒、以下略|&bold(){赤経}、α、RA|時分秒、hms| |~|~|>|0度(天の赤道)~±90度(天の北極/南極)|>|0時(春分点)~24時(春分点)| #endregion #region(close,黄緯×黄経と赤緯×赤経ってなにが違うの?のおまけ ←緯度にまったく関係ないです。) 測り方も分かったことだし、太陽系でも見てみよー! 地球にくっついて行く月がけなげ…あの2人みたいです。 データはこちら[[お星様とコンピュータ>http://star.gs/cgi-bin/scripts/r.cgi]]([[月、太陽、惑星の位置>http://star.gs/cgi-bin/scripts/tentai.cgi]])と[[国立天文台>http://www.nao.ac.jp/]]([[こよみの計算>http://eco.mtk.nao.ac.jp/cgi-bin/koyomi/koyomix.cgi]])を使わせて頂きました。 |BGCOLOR(lightgrey):観測地|ロンドン|経度:0.200W、緯度:51.500N| |BGCOLOR(lightgrey):日付|2012年の&bold(){春分の日}と&bold(){秋分の日}|| |BGCOLOR(lightgrey):時間|なるべく&bold(){春分点}と&bold(){秋分点}|赤緯と黄緯が0度に近いもの。世界標準時です。| &ref(現在地(緯度)_なぜ(黄緯×黄経おまけ).PNG) #region(close,2012年3月20日05:15のデータ) |BGCOLOR(lightgrey):CENTER:天体名|BGCOLOR(tomato):CENTER:視赤経|BGCOLOR(tomato):CENTER:視赤緯|BGCOLOR(gold):CENTER:黄経|BGCOLOR(gold):CENTER:黄緯|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:方位 °/高度 °|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:距離 AU| |BGCOLOR(lightgrey):太陽|0 0 0.0|+ 0 0 0|0 0 1|+ 0 0 0|79.51|-8.24|0.996| |BGCOLOR(lightgrey):水星|0 5 24.7|+ 4 20 49|2 58 18|+ 3 26 60|75.77|-5.61|0.620| |BGCOLOR(lightgrey):金星|2 50 18.3|+19 2 9|45 49 43|+ 2 34 15|33.03|-13.41|0.763| |BGCOLOR(lightgrey):月|22 13 43.6|- 6 32 59|332 59 4|+ 4 8 2|104.46|3.01|393,480 km| |BGCOLOR(lightgrey):火星|10 43 0.7|+12 12 21|157 38 1|+ 3 46 28|282.23|5.88|0.696| |BGCOLOR(lightgrey):木星|2 34 36.8|+14 12 5|40 47 5|- 0 54 10|38.53|-16.46|5.699| |BGCOLOR(lightgrey):土星|13 48 19.7|- 8 14 17|208 5 40|+ 2 44 13|231.90|16.68|8.825| |BGCOLOR(lightgrey):天王星|0 16 41.2|+ 1 3 17|4 14 49|- 0 41 23|75.51|-9.94|21.066| |BGCOLOR(lightgrey):海王星|22 15 35.6|-11 23 38|331 41 8|- 0 33 22|107.03|-1.12|30.872| |BGCOLOR(lightgrey):冥王星|18 40 4.1|-19 13 60|279 28 28|+ 3 52 32|157.07|16.38|32.335| #endregion #region(close,2012年9月22日14:59のデータ) |BGCOLOR(lightgrey):CENTER:天体名|BGCOLOR(tomato):CENTER:視赤経|BGCOLOR(tomato):CENTER:視赤緯|BGCOLOR(gold):CENTER:黄経|BGCOLOR(gold):CENTER:黄緯|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:方位 °/高度 °|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:距離 AU| |BGCOLOR(lightgrey):太陽|12 0 1.4|- 0 0 9|180 0 23|+ 0 0 0|233.32|25.41|1.004| |BGCOLOR(lightgrey):水星|12 36 45.8|- 3 18 57|189 44 53|+ 0 35 36|222.55|26.71|1.388| |BGCOLOR(lightgrey):金星|9 20 17.9|+15 10 11|137 44 46|- 0 21 37|276.80|14.07|0.997| |BGCOLOR(lightgrey):月|17 50 50.9|-21 45 56|267 52 27|+ 1 39 19|141.74|8.29|370,288 km| |BGCOLOR(lightgrey):火星|15 8 54.7|-18 25 53|229 53 11|- 0 44 60|179.19|20.06|1.906| |BGCOLOR(lightgrey):木星|5 0 10.7|+21 54 28|76 8 44|- 0 48 49|332.93|-12.41|4.698| |BGCOLOR(lightgrey):土星|13 49 6.4|- 8 48 60|208 28 46|+ 2 15 50|201.42|27.46|10.635| |BGCOLOR(lightgrey):天王星|0 26 13.1|+ 2 0 54|6 48 54|- 0 45 5|45.84|-26.74|19.066| |BGCOLOR(lightgrey):海王星|22 13 2.3|-11 42 15|330 59 25|- 0 37 23|84.17|-19.59|29.112| |BGCOLOR(lightgrey):冥王星|18 29 38.5|-19 39 33|276 59 25|+ 3 35 56|132.62|6.07|32.154| #endregion ※視赤経・視赤緯は歳差、章動、光行差などなどを考慮した…とりあえずアータラカータラした赤緯×赤経ってことで。 ※宇宙はとっても広いので、距離の単位は[[AU>http://en.wikipedia.org/wiki/Astronomical_unit]](1AU=地球~太陽の平均距離:約1億4960万km)です。 #endregion #region(close,閏年+1日のウニャウニャってなに?) ウニャウニャは正式名称が分からないので、とりあえず「ウニャウニャ」って呼んでます。 まずはウニャウニャの前におさらい♥ カレンダーの1年は地球の公転周期に0.25日足りない。だから&bold(){足りない日は貯金しておいて、閏年に+1日}してるの。 &ref(現在地(緯度)_なぜ(閏年カレンダーの場合).PNG) |>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:ユリウス暦|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:毎年の不足|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:4年ごとの閏年| |BGCOLOR(lightgrey):①カレンダーの1年|BGCOLOR(lightgrey):②地球の公転周期|BGCOLOR(lightgrey):③日数&br()&space(4)(②日-①日)|BGCOLOR(lightgrey):④角度&br()&space(4)(⑥度÷4年)|BGCOLOR(lightgrey):⑤日数&br()&space(4)(③日×4年)|BGCOLOR(lightgrey):⑥角度&br()&space(4)(360度÷②日)| |365日|365.25日|=0.25日&br()=1/4日|≒00度15分&br()&color(silver){(0.246 406 57度)}|=1日|≒01度00分&br()&color(silver){(0.985 626 283度)}| でも緯度ゲトは太陽の位置が重要。貯金してる場合じゃねー! ウニャウニャするぜー♥  ってことで、&bold(){翌年は足りない0.25日からスタート}。難しいコトはやってないんだけど、こんな画になってしまいました。 &ref(現在地(緯度)_なぜ(閏年緯度の場合).PNG) ついでにテーブル2も書いときます。(パターンあり。読めなかった数字は「?」。) |BGCOLOR(lightgrey):|BGCOLOR(lightgrey):1545|BGCOLOR(lightgrey):1546|BGCOLOR(lightgrey):1547|BGCOLOR(lightgrey):1548|BGCOLOR(lightgrey):1549|BGCOLOR(lightgrey):1550|BGCOLOR(lightgrey):1551|BGCOLOR(lightgrey):1552|BGCOLOR(lightgrey):1553|BGCOLOR(lightgrey):1554|BGCOLOR(lightgrey):1555|BGCOLOR(lightgrey):1556|…|BGCOLOR(lightgrey):1577|BGCOLOR(lightgrey):1578|BGCOLOR(lightgrey):1579|BGCOLOR(lightgrey):1580| |BGCOLOR(lightgrey):θ|1||||1||||1||||~|1|||| |BGCOLOR(lightgrey):φ|0|45|30?|15|2|47|33|18|4|49|34|19|~|14|59|44|?| |BGCOLOR(lightgrey):|BGCOLOR(skyblue):&arrow(3)|BGCOLOR(skyblue):&arrow(9)|BGCOLOR(skyblue):&arrow(3)|BGCOLOR(skyblue):&arrow(3)|BGCOLOR(gold):&arrow(3)|BGCOLOR(gold):&arrow(9)|BGCOLOR(gold):&arrow(3)|BGCOLOR(gold):&arrow(3)|BGCOLOR(skyblue):&arrow(3)|BGCOLOR(skyblue):&arrow(9)|BGCOLOR(skyblue):&arrow(3)|BGCOLOR(skyblue):&arrow(3)|~|BGCOLOR(gold):&arrow(3)|BGCOLOR(gold):&arrow(9)|BGCOLOR(gold):&arrow(3)|BGCOLOR(gold):&arrow(3)| 閏年発動ONの年は&bold(){前年に閏年の+1日でズレが解消される}のでテーブル1をそのまま使用。 が、しかし、0、2、4、…14ってビミョーに増えてる! これはユリウス暦がホントの公転周期よりちょびっと多いから。天文学者さん達すげー! |BGCOLOR(lightgrey):②ユリウス暦が考える&br()&space(4)地球の公転周期|BGCOLOR(lightgrey):a.21世紀が考える&br()&space(3)地球の公転周期|BGCOLOR(lightgrey):b.公転周期のズレ&br()&space(3)(②日-a日)|BGCOLOR(lightgrey):c.ズレの角度&br()&space(3)(⑥度×b日)|BGCOLOR(lightgrey):d.4年で&br()&space(3)(c度×4年)| |365.25日|365.242 189 87日|=+0.007 810 13日|≒0.007 697 69度|≒02分&br()&color(silver){(0.030 791 48度)}| #endregion **ちゃぶ台復活!意外に簡単♥ 緯度をゲト もしナイジェルがロンドンで、ビセンテがマドリードで&bold(){1579年7月11日(ユリウス暦)に緯度を調べたら?}こんな感じです。 &ref(現在地(緯度)_緯度をゲト.PNG) #blockquote(){&u(){&bold(){世の中こーゆーもんです!な緯度の計算}} 北半球が夏のとき:今いる場所の緯度=90度-南中高度+赤緯 ←7月11日はこっち 北半球が冬のとき:今いる場所の緯度=90度-南中高度-赤緯 } こーゆーもんだと思ったら、あとは簡単♥ お次は1579年7月11日(グレゴリオ暦:7月21日、準ユリウス日:-102021.49ET)の南中時刻の太陽です。 データはこちら[[お星様とコンピュータ>http://star.gs/cgi-bin/scripts/r.cgi]]([[月、太陽、惑星の位置>http://star.gs/cgi-bin/scripts/tentai.cgi]])を使わせて頂きました。 |&ref(緯度測定_調べ方(アストロラーベ).PNG)|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:観測|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:南中時刻|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:視赤経|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:視赤緯|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:南中高度 °| |~|BGCOLOR(lightgrey):ロンドン|経度:00度12分00秒(0.200W)&br()緯度:51度30分00秒(51.500N)|12:06:15|7 59 38.9|+20 38 44|&bold(){59.15}| |~|BGCOLOR(lightgrey):マドリード|経度:03度42分00秒(3.700W)&br()緯度:40度24分00秒(40.400N)|12:20:15|7 59 41.3|+20 38 37|&bold(){70.24}| これを計算したら、ぱんぱかぱーん♥ 緯度ゲト♥ 結果はちょびっとおしい。16世紀ってけっこうスゲーっぽくないですか?ちなみに緯度1分の距離は1852m。 |&ref(緯度測定_調べ方(南中時太陽赤緯表).JPG)|BGCOLOR(lightgrey):ロンドン|日時:1579年7月11日 12:06 UT(イングランドの時間だと12:06)&br()南中高度:&bold(){59度09分00秒}(59.15度)&br()南中時太陽赤緯表(ナイジェルご愛用?)でゲトした赤緯:&bold(){20度42分}&br()&br()90度-59度09分+20度42分=&u(){&bold(){ナイジェルが計算した緯度は51度33分}}(誤差+3分)| |~|BGCOLOR(lightgrey):マドリード|日時:1579年7月11日 12:20 UT(スペインの時間だと13:20)&br()南中高度:&bold(){70度14分24秒}(70.24度)&br()南中時太陽赤緯表(ビセンテご愛用?)でゲトした赤緯:&bold(){20度41分}&br()&br()90度-70度14分+20度41分=&u(){&bold(){ビセンテが計算した緯度は40度27分}}(誤差+3分)| *経度を調べる 経度は船が進んだ方向と速度で移動距離を計算する[[推測航法>http://en.wikipedia.org/wiki/Dead_reckoning]]で分かります。 トルデシリャス条約だってカーボベルデ諸島の西370リーグ(1リーグ≒4.2km。1568年王フェリペ2世は[[リーグ>http://en.wikipedia.org/wiki/League_(unit)]]を廃止)だもんね。 この経度、苦労の割にすこぶる正確じゃないです。でも船で使える時計がないからしょーがない。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Longitude]] &ref(経度.JPG)推測航法 正確な経度はとーっても難しくって、1567年スペイン、1636年オランダ、1666年フランスが「測定方法の募集」やってます。 イギリスも1714年「正確な測定方法を考えたら賞金£20,000([[経度法>http://en.wikipedia.org/wiki/Longitude_prize]])」を発足。 1765年クロノメーター(船で使える時計)を発明した時計職人ジョン・ハリソンが£23,065をゲト。みんな頑張った! [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/History_of_longitude]] #region(close,なんで時計で経度が測れるの?) 南中時刻(±均時差)に&bold(){女王と同じ時計}を見れば時差で&bold(){正確な経度}が分かります。なんという楽チン♥ でもクロノメーターはウルトラ高額(造船料の30%くらい)…手が出ないorz みんなが使えるようになるのは19世紀前半、お手頃な値段(熟練労働者のお給料の半年~2年分)になってからです。 &ref(現在地(経度)_なぜ(時計).PNG) |>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:南中時刻の時計|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:女王の時計との時差|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:女王を基準(経度0度)にした経度| |BGCOLOR(lightgrey):王様組|王フェリペ|12時|0時間|15度×0時間=0度 (0度)| |BGCOLOR(lightgrey):イングランド組|ジェフリーとナイジェル|午前6時|-6時間|15度×-6時間=-90度 (西経90度)| |BGCOLOR(lightgrey):スペイン組|ビセンテとレオ|午後5時|5時間|15度×5時間=+75度(東経75度)| #endregion #region(close,時計がお手頃になるまでは月距法) 時計がお手頃になるまでは天文学者[[ネヴィル・マスケリン>http://en.wikipedia.org/wiki/Nevil_Maskelyne]](イギリス)が実用化した&bold(){月距法}で経度を測ってました。 1514年神父[[ヨハネス・ヴェルナー>http://en.wikipedia.org/wiki/Johannes_Werner]](ドイツ)が発案。 残念ながら月距法が使えるのは18世紀になってからです。ナイジェルやビセンテもガッカリ。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Lunar_distance_%28navigation%29]] &ref(現在地(経度)_なぜ(月距法).PNG) 月と星(太陽でもオケ)の距離はどこから見ても一緒。船は距離を測って[[航海年鑑>http://en.wikipedia.org/wiki/The_Nautical_Almanac]]を見ればグリニッジ天文台の時間が分かります。 この時間と今いる場所の時間(砂時計で測ってる)の時差で緯度ゲト。 ちゃんとやれば誤差0.5度以下♥ ただーし!大気の屈折とかアータラカータラするので大変そうです。 #blockquote(){&u(){&bold(){グリニッジ天文台の航海年鑑}} 航海年鑑は1767年から毎年グリニッジ天文台が出版してます。 こちらは1787年8月3時間毎の月と星(太陽でもオケ)の距離一覧表。日によってどの星を測るか変わる? 星はαArietis(おひつじ座α星)、Aldebaran(おうし座α星)、Pollux(ふたご座β星)、Regulus(しし座α星)、Spica Virginis(おとめ座α星)、Antares(さそり座α星)、α Aquilae(わし座α星)、Fomalhaut(うお座α星)、αPegasi(ペガスス座α星)の9種類です。 &ref(現在地(経度)_なぜ(グリニッジ天文台).JPG) イングランドが月距法を知ったのは1674年です。 王[[チャールズ2世>http://en.wikipedia.org/wiki/Charles_II_of_England]]はノリノリだったけど、なにしろ月と星の距離のデータが全然ナイ! そこでグリニッジ天文台を建ててデータを集めまくりました。頑張ったのは初代天文台長[[ジョン・フラムスティード>http://en.wikipedia.org/wiki/John_Flamsteed]]。 } #endregion **経度を調べる道具 こちらはF&B時代に使ってた経度(=移動距離)を調べる道具です。真面目に地道にコツコツ記録しなくちゃいけません。 道具の詳細はこちら[[【船】航海>【船】航海]]をどうぞ。 |BGCOLOR(lightgrey):CENTER:方向の[[水浮きコンパス>http://en.wikipedia.org/wiki/Compass]](30分ごと)|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:速度の[[ログライン>http://en.wikipedia.org/wiki/Chip_log]](1時間ごと)|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:記録の[[トラバース・ボード>http://en.wikipedia.org/wiki/Traverse_board]]| |&ref(どこ行く_コンパス(水浮きコンパス).JPG,【船】航海,height=200)|&ref(測定_ログライン.PNG,【船】航海)|&ref(ここはどこ_経度(トラバース・ボード).JPG,【船】航海,height=200)| **ちゃぶ台ひっくり返したくなるかも!?平面航法で経度をゲト 推測航法は平面航法、距等圏航法、連針路航法、流潮航法…F&B時代はどれでしょ? ってことで、一番簡単っぽそうな[[平面航法>http://en.wikipedia.org/wiki/Plane_sailing]]を。 もしナイジェルとビセンテが&bold(){記録したログブックがこんな感じだったら?}こんな感じです。 ホントは[[ノット>http://en.wikipedia.org/wiki/Knot]]だけど、速度と距離がゴチャゴチャになるからkmでやってみました。ホントはノットね、ノット。 |&ref(方位_32方位.PNG,【船】用語)コンパスの32方位|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:当直|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:1-2点鐘|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:3-4点鐘|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:5-6点鐘|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:7-8点鐘| |~|BGCOLOR(lightgrey):夜半直|BGCOLOR(lightgrey):船の方向|①東北東|②北東|③西|④北北西| |~|~|BGCOLOR(lightgrey):船の速度|5.5km/h|9.5km/h|11.5km/h|4km/h| |~|BGCOLOR(lightgrey):朝直|BGCOLOR(lightgrey):船の方向|⑤西南西|⑥南南西|⑦南|⑧北西| |~|~|BGCOLOR(lightgrey):船の速度|7.5km/h|6.5km/h|4.5km/h|5.5km/h| |~|>|>|>|>|>|コンパスの方位1個は11.25度♥(360度÷32=11.25度)| &ref(現在地(経度)_経度をゲト(平面航法).PNG) #region(close,21世紀は電卓、ナイジェルやビセンテは三角関数表) この平面航法は電卓がホイホイ計算してくれました。 電卓持ってないナイジェルやビセンテが使うのは多分こーゆー表(航海テキストの三角関数表が見つからなかったの)。 これを自力で計算だなんて…たいへーん!カシオ電卓をプレゼントしたいです。 &ref(現在地(経度)_なぜ(三角関数表).JPG)Matthias Berneggerの[[三角関数表>http://en.wikipedia.org/wiki/Mathematical_table]](1619年:ドイツ)。 #endregion *苦労の割にすこぶる正確じゃない平面航法 こちらの地図は16世紀としてはかなり正確で美しい[[フェルナン・ヴァス・ドラード>http://en.wikipedia.org/wiki/Fern%C3%A3o_Vaz_Dourado]]の羅針儀海図(1571年:ポルトガル)です。 経度の基準はカーボベルデ諸島の西370リーグにあるトルデシリャス条約。 21世紀の経線と比べるとカーボベルデ諸島から離れる程、緯度がビシバシ移動する程ズレちゃいます。あちゃー。 &ref(経度_正確じゃない.JPG) 地図に書いた数字は、平面航法の1つ[[マルテロイオ航法>http://en.wikipedia.org/wiki/Rule_of_Marteloio]](14-16世紀地中海で使われた航法)で計算した経度です。 緯度が★の辺になるとズレてる。 こうやって考えてみると、目的地にホイホイ行っちゃうナイジェルやビセンテって優秀な航海長なのねー! #region(close,ってことで、マルテロイオ航法でナイジェルとビセンテにトルデシリャスへ行ってもらいましょう) 蝉がミンミン鳴く夏のある日、セビリアの宿にいたナイジェルとビセンテはとーっても退屈してました。 「暑いしヒマだし、どこかで涼みたい気分だ」 「さっきカイトが持ってきた回覧板に『アロンソ主催!トルデシリャス花火大会開催のお知らせ』と書いてあったぞ」 「カイトはトルデシリャス花火大会へ行くのだろうか?よし、俺達も花火大会に行くぞ」 2人はいそいそと海図を拡げました。 「トルデシリャス条約はカーボベルデ諸島の西370リーグだから、カーボベルデ諸島経由(ABC)だと水と食料は…」 「いや、セビリアからトルデシリャスへ直行(AB’C’)すればいいのではないか?」 さすが航海長の2人。いつでもどこでも安全かつ効率的な航海を求めずにいられない性分でございます。 ここで2人が分かってるのは黒色の線です。 ・セビリアからカーボベルデ諸島(AB)=南西に400リーグ ・カーボベルデ諸島からトルデシリャス(BC)=西に370リーグ ・セビリアからトルデシリャスへ直行(B’C’)=BCと同じ370リーグ   セビリアからトルデシリャスへ直行(AB’C’)するには、足りない距離(AB’)が分かればオケ。三角関数表の出番ですよー! 「しまった!航海テキストは船に置いてきた」 「俺もだ!おっ、何故かベットの下から[[アンドレア・ビアンコ>http://en.wikipedia.org/wiki/Andrea_Bianco]]著「ポルトラノ海図」(1436年:イタリア)が出てきたぞ」 そこには幸運にも三角関数表が載ってました。 こーゆーのを日頃の行いが良いと言うのでしょう。さすが誠実な2人。 &ref(経度_正確じゃない(ポルトラノ海図).JPG) 「セビリアからトルデシリャスへ直行(AB’C’)ということは、足りない距離(AB’)を計算すればいいのだな」 「うむ。それにしてもビアンコの字は下手くそで読みにくいな」 「俺達には理解しがたい手抜きだ。しかしコレしかないのならばコレで全力を尽くすまでだ」 カキカキ…紙の上で計算中。 まず最初に2人は方位ポイント表と三角関数表をチェックします。 ・カーボベルデ諸島はセビリアの南西(45度) → 方位ポイント(Quarter winds:1/4の円を8個に分けたモノ)=④ ・方位ポイント=④ → 方位の距離=71 これはセビリアから南西(AB)へ100リーグ進むと、セビリアから西(AB')は71リーグ進むってコトです。   これってさっきやった平面航法の超お手軽簡単バージョン! 電卓でホイホイ確認したところ、100リーグ×cos45度=70.7106781だからけっこうイケてる数字です。 「やはり計算してると航海長の血が騒ぐな。暑さも忘れる。楽しいぞ」 「いきなりどうした?」 「説明が下手過ぎて、これを読んでる皆さんがポカーンになってやしないかと心配になってきたんだ」 「確かに。俺達が盛り上げないとヤバイ雰囲気だな」 カキカキ…紙の上で計算中。 &ref(経度_正確じゃない.JPG) セビリアから南西(AB)へ100リーグ進むと、セビリアから西(AB')は71リーグ進むってコトが分かりました。 お次に2人はセビリアからトルデシリャスへ直行(AB’C’)するには、足りない距離(AB’)を計算します。 ・セビリアからカーボベルデ諸島(AB)の400リーグは100リーグの4倍。100リーグ×4=400リーグ ・セビリアから直行の足りない距離(AB’)も71リーグを4倍にする。71リーグ×4=284リーグ   ってことで、セビリアからトルデシリャスへ直行(AB’C’)は284リーグ+370リーグ=654リーグ かんたーん♥ 「俺の計算だとトルデシリャスはセビリアから西(AB’C’)に654リーグだ」 「俺の計算でも654リーグだ」 「けっこう近いな」 2人はさっそく出航しました。ひゅードッカーン「たーまやー」トルデシリャス花火大会サイコー! 「綺麗だ…来年も2人で一緒に見よう♥」 美形カプサイコー! おそらく、たぶん、もしかしたら、ナイジェルやビセンテは海図にこーゆーコト書きながら航海してるんでしょうね。 &ref(経度_正確じゃない(花火).JPG,,height=200)これは[[Trafalgar 200>http://en.wikipedia.org/wiki/Trafalgar_200]]の花火大会(2005年:イギリス) 一方★で錨を降ろし中のカイトとカズヤは、ちっとも始まらないトルデシリャス花火大会にポカーンでした。 「ねぇカズヤ。ここってホントにトルデシリャスなの?」 「大丈夫だよカイト。平面航法だとカーボベルデ諸島から離れる程ズレちゃうんだ。ちゃんと経度の補正したよ」 「でもちっとも始まらないじゃん。はあ、ジェフリーも連れてくればヨカッタかも」 「カイトが船長やりたいって言うから、ぼ、僕は(ry」 &ref(経度_正確じゃない(カズヤ).JPG)カズヤの脳内 ああ、なんということでしょう。 トルデシリャス花火大会の主催者も観覧者も、みなさんズレる平面航法をビシバシ使っていたのです。補正なんかしません。 なまじ21世紀の科学を知る2人の悲劇といえるでしょう。チャンチャン。 #endregion **どうして平面航法はズレちゃうの? 平面航法で経度がズレちゃうのは地球がタマだから。タマに三角形を描くとグニャーっとした球面三角形になります。 どー考えても三角形の三角関数表じゃムリ。三角定規でスイカは測れない! 正確な経度の計算は、緯度ごとに移動距離を計算する[[球面三角法>http://en.wikipedia.org/wiki/Spherical_trigonometry]](19世紀末に完成)とか使わないといけません。 &ref(正確じゃない_なぜ.JPG) F&B時代にどれくらい経度の補正してたのかは分からなかったけど、球面三角法の研究は奮闘努力中です。 ただし、これは緯度をビシバシ移動する時のお話し。 平面航法も地中海の中くらいなら問題ナシ。地球規模の航海だとそーとーヤバくなります。 こうやって考えてみると、世界一周してちゃんとイングランドに帰ってきたブランシス・ドレイクってスゴイのねー! #region(close,球面三角法は諦めて…距等圏航法ってなに?) 球面三角法の[[説明>http://en.wikipedia.org/wiki/Spherical_trigonometry]]は読んでもちんぷんかんぷんでございましたorz 航海長の夢は諦めた! ってことで、簡単っぽそうな距等圏航法で雰囲気を…球面三角法もこんな感じでしょか? &ref(正確じゃない_なぜ(距等圏航法).PNG) #endregion **実は平面航法でもへーきへーき トルデシリャス条約のズレは「&bold(){緯度毎に距離を補正する}(球面三角法や距等圏航法)」をしなかったからです。補正すれば万事解決。 ナイジェルやビセンテが補正してもいいけど、海図が補正したら皆さん楽チン! ついでに海図の範囲も小さくしたら「&bold(){平面航法も地中海の中くらいなら問題ナシ}」で平面航法もビシバシ使えます。 &ref(正確じゃない_へーき.JPG) 右の航海図は[[水路学者>http://en.wikipedia.org/wiki/Hydrographer]]のイギリス海軍士官[[グリーンビル・コリンズ>http://en.wikipedia.org/wiki/Greenvile_Collins]]著「Chart of the English Channel」(1693年)です。 [[プリマス湾>http://en.wikipedia.org/wiki/Plymouth_Sound]]の海図に距離尺が登場。 距離尺がいつから登場したのかは分からなかったけど、緯度毎に距離を補正してないと描けませんよね。 #region(close,海図の種類) こちらは21世紀British Admiralty製([[イギリス海軍本部>http://en.wikipedia.org/wiki/Admiralty]]?)の海図。説明は[[海上保安庁>http://www.kaiho.mlit.go.jp/]](海洋情報部)を参考にしました。 細かい数字や線や記号がアレコレいっぱい。 ササッと見たところ、F&B時代も広域と小区域の海図がちゃーんとあります。こんなにアレコレは描いてません。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Admiralty_chart]] &ref(正確じゃない_へーき(海図の種類).JPG)海図ってけっこう大きい(21世紀:イギリス海軍) |BGCOLOR(lightgrey):航海用海図&br()(Nautical Charts)|&ref(正確じゃない_へーき(海図の種類:総図).JPG)|BGCOLOR(lightgrey):総図(General Chart)| |~|~|海図の縮尺は1/400万~。&br()長距離な航海の計画立案用に使用。| |~|~|この海図は&br()BA Chart 4011 - North Atlantic Ocean Northern Part&br()(1:10,000,000)| |~|&ref(正確じゃない_へーき(海図の種類:航洋図).JPG)|BGCOLOR(lightgrey):航洋図(Sailing Chart)| |~|~|海図の縮尺は1/100万~1/400万分。&br()長距離の航海に使用。沖合の水深、灯台の位置…を図示。| |~|~|この海図は&br()BA Chart 4140 - North Sea&br()(1:1,500,000)| |~|&ref(正確じゃない_へーき(海図の種類:航海図).JPG)|BGCOLOR(lightgrey):航海図(General Chart of Coast)| |~|~|海図の縮尺は1/30万~1/100万。&br()陸地を視界に保つ航海に使用。&br()陸上の物標で船位が分かるようにアレコレを図示。| |~|~|この海図は&br()BA Chart 2675 - English Channel&br()(1:500,000)| |~|&ref(正確じゃない_へーき(海図の種類:海岸図).JPG)|BGCOLOR(lightgrey):海岸図(Coast Chart)| |~|~|海図の縮尺は1/5万~1/30万。&br()沿岸航海に使用。沿岸の地形を詳細に描写。| |~|~|この海図は&br()BA Chart 1267 - Falmouth to Plymouth&br()(1:75,000)| |~|&ref(正確じゃない_へーき(海図の種類:港泊図).JPG)|BGCOLOR(lightgrey):港泊図(Harbour Plan)| |~|~|海図の縮尺は~1/5万。&br()小区域の港湾、泊地、錨地、漁港…を詳細に描写。| |~|~|この海図は&br()BA Chart 1967 - Plymouth Sound&br()(1:15,000) | |BGCOLOR(lightgrey):水路特殊図|調べてませーん|BGCOLOR(lightgrey):海流図(Current Chart)| |~|~|海流の状況を月別に表した図。| |~|調べてませーん|BGCOLOR(lightgrey):潮流図(TidalStream Chart)| |~|~|潮流、潮汐曲線…の流向・流速の時刻別に表した図集。| |~|&ref(正確じゃない_へーき(海図の種類:大圏航法図).JPG)|BGCOLOR(lightgrey):大圏航法図(Gnomonic Chart for Facilitating Great Circle Sailing)| |~|~|心射図法(大圏図法)の海図。&br()地球上の2地点間の最短距離の航路が分かる。&br()この航路をフツーの海図上に転記すれば大圏航路の完成。| |~|~|この海図は&br()BA Gnomonic Chart 5095 - North Atlantic Ocean&br()(1:13,000,000)| #endregion #region(close,距離尺とディバイダーを使って距離を測定) ディバイダー(Divider:両脚器)は両方が針のコンパスみたいなヤツ。これで海図に引いた航路線の距離を測ります。 ナイジェルやビセンテも御使用。 こちらは地図製作者[[ウィレム・ブラウ>http://en.wikipedia.org/wiki/Willem_Blaeu]]著「The light of navigation」(1608年:ネーデルラント)に登場するディバイダーです。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Calipers]] &ref(正確じゃない_へーき(ディバイダー).JPG) ってことで、21世紀の海図に描いた航路線の距離をディバイダーで測ってみます。 距離尺は緯度線。単位は[[海里>http://en.wikipedia.org/wiki/Nautical_mile]](1929年に標準化:1海里=1852m)。ちなみに速度の1ノット=1海里/h。 ディバイダーをカバーっと開いて一気に測る方法もあります。 &ref(正確じゃない_へーき(ディバイダーの測り方).JPG) #endregion *もう緯度×経度もバッチリだし、さっそく出航だぁ♥ 海図に直線を引けば船の進む方向(視針路)が分かります。これでバッチリ到着?いえいえ、海はそんなに甘くないのでございます。 海流・潮流・風…外力で船は流される。 ってことで、ナイジェルやビセンテは外力をアレコレ考慮(流潮航海算法)して船の進む方向(実航針路)を決めてます。 &ref(正確じゃない_へーき(海図の種類).JPG)実航針路を考え中(21世紀:イギリス海軍) 21世紀は海図に海流・潮流・風…の線も描いて実航針路を決めます。 でもF&B時代の海図は方向・距離・面積を全部スルーの「直線が引けない[[羅針儀海図>http://en.wikipedia.org/wiki/Portolan_chart]](ポルトラノ海図)」。 ナイジェルやビセンテは脳内でウニャウニャしてたんでしょか? **実航針路の決め方 海流・潮流・風…全部考慮するのは難しそうなので、一番簡単っぽそうな「海流だけ」の実航針路の決め方を。 海図がマルだらけになったー! こちらの状況は[[青木ボート免許スクールのDVD教材>http://www.aokiboat.com/index.html]]さんの一級小型船舶操縦士問題集を参考にさせてただきました。 #blockquote(){&u(){&bold(){ナイジェルとビセンテはただ今こんな状況でございます}} ナイジェルとビセンテは話題のスイーツ屋さんアロンソ号を目指して、ウィットサンド湾をウキウキ航海中です。 このままガーッと行けばアロンソ号に到着しそう。 でもこの辺には海流が…さてさてナイジェルとビセンテは実航針路をどうすればいいでしょうか? ・ナイジェルとビセンテの船は灯台エリザベスの南4.4海里、アロンソ号は灯台フェリペの南3海里にいます。 ・海流は北東方向に流速2ノットです。 ・ナイジェルとビセンテの船は速力4ノットです。 } &ref(出航_実航針路.JPG)BA Chart 1900 #region(close,答え) #blockquote(){&u(){&bold(){視針路を探す}} ・ナイジェルとビセンテの船は灯台エリザベスの南4.4海里、アロンソ号は灯台フェリペの南3海里にいます。 &ref(出航_実航針路(答え1).JPG) ①灯台エリザベスを中心に半径4.4海里のマルを描く。 ②灯台エリザベスから南に直線を引く。 ③マルと直線が交差したトコが&bold(){ナイジェルとビセンテの船の現在地}。アロンソ号もやり方は一緒。 ④現在地とアロンソ号を線で結ぶ。これが&bold(){海流ナシの船の進む方向(視針路)}。もし海流がなければ視針路=実航針路です。 &u(){答え:ナイジェルとビセンテの船は現在地から東に進めばアロンソ号に到着します。} } #blockquote(){&u(){&bold(){実航針路を探す}} ・海流は北東方向に流速2ノットです。 ・ナイジェルとビセンテの船は速力4ノットです。 &ref(出航_実航針路(答え2).JPG) ①現在地を中心に半径2海里のマルを描く。現在地から北東に直線を引く。マルと直線が交差したトコが&bold(){海流パワー}。 ②現在地を中心に半径4.4海里のマルを描く。マルと視針路が交差したトコが&bold(){船パワー}。 ③海流パワーと船パワーを[[ベクトルの和>http://en.wikipedia.org/wiki/Euclidean_vector]]で合体する。現在地からの合体した線が&bold(){海流アリの船の進む方向(実航針路)}。 &u(){答え:ナイジェルとビセンテの船は現在地から真方位120°に変針すればアロンソ号に到着します。} } #endregion #region(close,21世紀のコンパスローズ(羅針図)には真方位と磁方位がある) 21世紀の海図には&bold(){北極星が教えてくれる[[真北>http://en.wikipedia.org/wiki/True_north]]}と&bold(){コンパスが教えてくれる[[磁北>http://en.wikipedia.org/wiki/Magnetic_north_pole]]}が描いてあります。 真北と磁北のズレは[[偏角>http://en.wikipedia.org/wiki/Magnetic_declination]](磁気偏差)。 偏角は時間と場所によって違うので、磁気偏差図や海図のコンパス図で航行海域の偏差をチェックします。大変だねー。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Compass_rose]] &ref(出航_実航針路(コンパスローズ).JPG) #blockquote(){&u(){&bold(){なんでコンパスは磁北を指すの?}} コンパスが北を指すのは地球が巨大な磁石([[地磁気>http://en.wikipedia.org/wiki/Earth%27s_magnetic_field]])だからです。磁力線は棒磁石に砂鉄を撒いたときにできるアレ。 地磁気は生体磁石を持ってるイルカ、ミツバチ、ハト…もご利用。 あと[[太陽風>http://en.wikipedia.org/wiki/Solar_wind]]から地球を守ってオーロラも生みます。地磁気すげー!ありがとー! &ref(出航_実航針路(コンパスローズ:コンパスは磁北).JPG) 地球を磁石にしてるのは、どうやら地球の中でドロドロしてる[[外核>http://en.wikipedia.org/wiki/Outer_core]]みたいです。 最初に中身が磁石にしてる?と考えたのは物理学者[[ウィリアム・ギルバート>http://en.wikipedia.org/wiki/William_Gilbert_(astronomer)]]著「[[磁石論>http://en.wikipedia.org/wiki/De_Magnete]]」(1600年:イングランド)。 ギルバートさんは女王エリザベス1世の侍医(1601-1603年)も担当してます。ピップエレキバン!? } #blockquote(){&u(){&bold(){磁北は生きてる}} なんと磁北は移動([[ポールシフト>http://en.wikipedia.org/wiki/Pole_shift_hypothesis]])します。原因は21世紀の科学の力でも分かりません。 こちらは[[アメリカ海洋大気庁>http://www.noaa.gov/]]さんのHistorical Magnetic Declination。 日本も[[地磁気観測所>http://www.kakioka-jma.go.jp/index.html]](気象庁)さんが毎日の地磁気をチェックしてます。ちなみに今日の地磁気活動は「極めて静穏」。 &ref(出航_実航針路(コンパスローズ:磁北は生きてる).GIF) なんと、なんと、なんと磁北は移動するだけじゃありません。N極とS極が逆転もします。 360万年間に11回逆転してるらしい。 最近の地磁気はどんどん弱くなってて、この減り具合だと約千年後にはほとんど消えちゃうんだって。また逆転ですか!? } #blockquote(){&u(){&bold(){なんで地球は巨大な磁石なの?}} 原因は21世紀の科学の力でもビシッと解明されてません。候補の1つが[[ダイナモ理論>http://en.wikipedia.org/wiki/Dynamo_theory]]。 ドロドロの外核が動くと電流が流れる([[フレミングの法則>http://en.wikipedia.org/wiki/Fleming%27s_left-hand_rule_for_motors]]♥)。電流が流れると磁場が作られる([[右ネジの法則>http://en.wikipedia.org/wiki/Right-hand_rule]]♥)。 この[[磁場>http://en.wikipedia.org/wiki/Magnetic_field]]が地表に溢れ出して地球が磁石([[地磁気>http://en.wikipedia.org/wiki/Earth%27s_magnetic_field]])になってるんじゃないかなぁ?と考えられてます。 &ref(出航_実航針路(コンパスローズ:地球は巨大な磁石).JPG) ダイナモ理論は簡単な仕組みの[[ダイナモ>http://en.wikipedia.org/wiki/Dynamo]](自転車のランプをつける車輪に付いた発電機)で考えたらいいそうです。 フレミングの法則♥は[[湯川先生>http://en.wikipedia.org/wiki/Galileo_(TV_series)]]の決めポーズ。 私は湯川先生みたいにフレミングの法則♥と仲良しにはなれません。ムリムリ。 &ref(出航_実航針路(コンパスローズ:フレミングの法則).JPG)眼鏡サイコー! うーん、よく分からない!という方は右手(これは高校物理で習います)でやってみてくださいね。右手なら一発です。 左手は[[【電動機】フレミングの左手の法則>http://en.wikipedia.org/wiki/Fleming%27s_left-hand_rule_for_motors]] 右手は[[【発電機】フレミングの右手の法則>http://en.wikipedia.org/wiki/Right-hand_rule]] } #endregion **どうしてナイジェルとビセンテの船は灯台エリザベスの南4.4海里って分かったの? 船と陸地の距離は[[三角測量>http://en.wikipedia.org/wiki/Triangulation]]で分かります。 &bold(){A地点の船と灯台エリザベスの角度}、&bold(){B地点の船と灯台エリザベスの角度}、&bold(){船が進んだABの距離}を測ればオケ。 三角測量は[[古代ギリシア>http://en.wikipedia.org/wiki/Ancient_Greece]](BC8-6世紀)の頃から大活躍です。 &ref(出航_南4.4海里.JPG) #region(close,直角三角形じゃないと測れないの?) いえいえ、三角測量にはちゃんと公式があります。いつも直角三角形で測るんじゃ気を抜けないもんね。 A地点の船と灯台エリザベスの角度=45度、B地点の船と灯台エリザベスの角度=45度、船が進んだABの距離=8.8海里。 さてさて船と灯台エリザベスの距離はいくつでしょう? &ref(出航_南4.4海里(三角測量の練習).JPG) #blockquote(){&u(){&bold(){三角測量の公式ってこんな感じ}} 公式はちょびっと複雑になったtanθです。 ウニャウニャしてる背景は地図学者[[ゲンマ・フリシウス>http://en.wikipedia.org/wiki/Gemma_Frisius]]著「De astrolabio catholico」(1556年:ネーデルラント)。 [[加法定理>http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_trigonometric_identities]](これは高校数学で習います)は咲いたコスモスコスモス咲いたデス♥ &ref(出航_南4.4海里(三角測量).JPG) これは21世紀のやり方。ナイジェルやビセンテは違う公式を使ってるかもしれません。 } #endregion **三角測量しまくりで地図も描ける 新しい島を発見したら三角測量で地形を正確に測量できます。 三角測量で地図を描こー!と提案したのは地図学者[[ゲンマ・フリシウス>http://en.wikipedia.org/wiki/Gemma_Frisius]]著「土地を表現する方法」(1533年:ネーデルラント)。 ヨーロッパで大ヒット。 航海テキストの[[ウィリアム・ボーン>http://en.wikipedia.org/wiki/William_Bourne_(mathematician)]]も「Rules of Navigation」(1571年:イングランド)で紹介してます。 &ref(出航_地図.JPG)川幅を測定中(16世紀:ネーデルラント) #region(close,三角測量しまくった伊能忠敬) 商人[[伊能忠敬>http://en.wikipedia.org/wiki/In%C5%8D_Tadataka]]は1800年(江戸:[[徳川家斉>http://en.wikipedia.org/wiki/Tokugawa_Ienari]])から17年間ちびちび測量して[[大日本沿海輿地全図(伊能図)>http://ja.wikipedia.org/wiki/大日本沿海輿地全図]]を作りました。17年! 基本は梵天の方向と距離を測定(導線法)。 たまに高い山とかの目標物でデータの整合性をチェック(交会法)。もし間違ってたら山は計算した方向に見えません。 &ref(出航_地図(伊能忠敬).JPG) #blockquote(){&u(){&bold(){地図の第一歩はデータ集め}} 測定は方向と距離はもちろん、北極星の高度などなどのデータも集めてます。 とにかく地図には正確なデータが大切。 左画は交会法で山や島を測量した磁針方位角台帳「山島方位記」。全67冊(約7700頁・推定データ数約20万件)です。 &ref(出航_地図(伊能忠敬:データ).JPG) 伊能忠敬がどんな三角測量の公式を使ったのかは分かりませんでした。たぶん和算をウニャウニャしてるんだと思います。 とりあえず日本はオランダ経由で西洋の測量術をゲト済み。 右画は[[松宮観山>http://ja.wikipedia.org/wiki松宮観山]](1686-1780年)著「分度余術3巻」。測量術と天文学の総合的な内容だそうです。 } #blockquote(){&u(){&bold(){データを集めたら地図を描く}} 集めた数字を線で結ぶと地図になります。完成した伊能図は大図(全214枚)、中図(全8枚)、小図(全3枚)。 伊能忠敬は途中で亡くなっちゃったので[[高橋景保>http://ja.wikipedia.org/wiki/高橋景保]]が完成。 詳細はこちら[[国立国会図書館デジタルコレクション>http://dl.ndl.go.jp/]]さんや[[古地図コレクション>http://kochizu.gsi.go.jp/HistoricalMap/]]さんをどうぞ。 &ref(出航_地図(伊能忠敬:作図).JPG)伊能中図(関東) 心を鬼にして伊能図と21世紀の地図を見比べると経線がズレちゃってます。ズレちゃうのは地球がタマを考えなかったから。 ああ、ここにもタマの犠牲者が…。 伊能図は緯線が東西に直線、経線が北極点に集中する斜交線です。緯線と経線は円弧よ!海岸線も経線に合わせて変形よ! ~[[伊能忠敬と伊能図の大事典>http://www.inopedia.jp/index.asp]]「伊能図における経線のズレについて」さんより~ } #blockquote(){&u(){&bold(){歩いた距離は地球一周分}} こちらは伊能中図(関東)をよーく見た画。緯線と経線は円弧よ!なんて軽々しく言うのが申し訳なくなっちゃいました。 測量にかかった日数は3,736日、歩いた距離は3.5万km、歩数は約5千万歩。 車もコンビニも舗装道路もない時代。おまけに第一次測量のとき伊能忠敬は55歳…21世紀なら役職定年のお年頃です。 &ref(出航_地図(伊能忠敬:地球一周).JPG) } #endregion #region(close,伊能忠敬とイギリス) イギリスは政府機関[[水路部>http://en.wikipedia.org/wiki/United_Kingdom_Hydrographic_Office]](設立:1795年)が海図を作ってます。世界中の海図を作成。もちろん日本だって作っちゃうよー! 日本海の海図「BA Chart 2347」の初版は1828年。 1861年伊能図を見た水路部は日本に伊能図の提供をお願いしてます。その後発行された1863年5月版のお役に立ったらしい♥ あと日本は縦長だから、北海道「BA Chart 4511」、小笠原諸島「BA Chart 4510」、沖縄「BA Chart 4509」です。 ~[[幕末から明治初年にかけての日本近海英国海図>http://www1.kaiho.mlit.go.jp/GIJUTSUKOKUSAI/KENKYU/report/rhr43/rhr43-01.pdf]](pdf)さんより~ &ref(出航_地図(伊能忠敬とイギリス).JPG)BA Chart 2347(1855年) こちらの1855年版はまだまだ日本が正確じゃないイマイチな海図です。シーボルトの地図を採用した部分はけっこう正確。 [[フィリップ.F.B.シーボルト>http://en.wikipedia.org/wiki/Philipp_Franz_von_Siebold]](ドイツ)は長崎のオランダ商館専属医師。 伊能図を海外に持ち出したのがバレて日本追放されちゃいました(1828年:シーボルト事件)。 1855年版の詳細は[[American Geographical Society Library Digital Map Collection>http://collections.lib.uwm.edu/cdm/landingpage/collection/agdm]]の「Japan and Korea 1855」をどうぞ。 #blockquote(){&u(){&bold(){なんでイギリスは1855年版の海図を作ったの?}} 1855年イギリスはロシアと[[クリミア戦争>http://en.wikipedia.org/wiki/Crimean_War]](1853–1856年)の真っ最中です。 遠路はるばる日本の右上[[カムチャツカ半島>http://en.wikipedia.org/wiki/Kamchatka_Peninsula]](ロシア)まで遠征(1854年:[[ペトロパブロフスク・カムチャツキー包囲戦>http://en.wikipedia.org/wiki/Siege_of_Petropavlovsk]])。 ってことで、ロシアをギャフンと言わせるなら「日本に寄港地があったら便利だなー」と海図を作りました。 &ref(出航_地図(伊能忠敬とイギリス:クリミア戦争).JPG)BA Chart 2347(2007年) なんで1855年かっていうと、イギリスと開国ホヤホヤの日本が1854年10月14日[[日英和親条約>http://en.wikipedia.org/wiki/Anglo-Japanese_Friendship_Treaty]]を結んだからです。 この頃の日本はアッチコッチと[[不平等条約>http://en.wikipedia.org/wiki/Unequal_treaty]]を締結。 イギリスどころかアメリカ・フランス・ロシア・オランダも「日本に寄港地だー!寄港地だー!」とウハウハ測量してます。 } #blockquote(){&u(){&bold(){イギリス海軍は日本海軍水路部の先生}} 海図を作ったコトなかった開国ホヤホヤの日本は、イギリス海軍に海上測量の技術をアレコレ教えてもらいました。 1871年[[日本海軍水路部>http://en.wikipedia.org/wiki/Hydrographic_office]](21世紀:運輸省水路部)を設立。 自力で海図を作れるようになります。日本海軍も世界最強イギリス海軍をお手本に作ったの。ありがとー!イギリス海軍! &ref(出航_地図(伊能忠敬とイギリス:陸中國釜石港之圖).JPG) 日本初の自力で作成した海図は「陸中國釜石港之圖」(1872年)。頑張ったのは日本海軍大佐[[柳楢悦>http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%B3%E6%A5%A2%E6%82%A6]](後の水路局長)です。 ポツポツは水深の数字。単位は尋(英:[[ファゾム>http://en.wikipedia.org/wiki/Fathom]]、1尋=約1.8m)。 釜石港が選ばれたのは、東京~函館の重要な中間補給地点で官営釜石製鐵所(操業:1880年)を建設中が理由らしいです。 &ref(出航_地図(伊能忠敬とイギリス:高炉).JPG)高炉ってこんなヤツ(もののけ姫はたたら炉) 官営釜石製鐵所(1885年:[[釜石鉱山田中製鐵所>http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%9C%E7%9F%B3%E9%89%B1%E5%B1%B1%E7%94%B0%E4%B8%AD%E8%A3%BD%E9%89%84%E6%89%80]]、21世紀:[[新日鐵住金釜石製鐵所>http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E6%97%A5%E9%90%B5%E4%BD%8F%E9%87%91%E9%87%9C%E7%9F%B3%E8%A3%BD%E9%90%B5%E6%89%80]])は日本初の洋式[[高炉>http://en.wikipedia.org/wiki/Blast_furnace]]製鉄所です。 鉄は国家なり♥ あっ、製鉄業者さんが旧字体「鐵」を使うのは「鉄=金を失う」で縁起が悪いからです。 } #endregion ---- ---- ※ものすごーくお世話になったサイト。詳細はこちらをご覧下さい。 ・[[数学と計算>http://mail2.nara-edu.ac.jp/~asait/]] ←ナビゲーションの英語版Wikipediaをアレコレ翻訳されてます。 ・[[中学理科の攻略☆りかちゃんのサブノート>http://www.max.hi-ho.ne.jp/lylle/]]([[太陽年周運動>http://www.max.hi-ho.ne.jp/lylle/taiyo2.html]]) ・[[星座図鑑>http://seiza-zukan.com/]]([[天文基礎事項>http://seiza-zukan.com/celestial_sphere.html]]) ・[[国立科学博物館-宇宙の質問箱-星座編>http://www.kahaku.go.jp/exhibitions/vm/resource/tenmon/space/seiza/seiza08.html]] ・[[アストロアーツ>http://www.astroarts.co.jp/index-j.html]]([[天文の基礎知識>http://www.astroarts.co.jp/alacarte/kiso/index-j.shtml]]) ・[[理科年表-オフィシャルサイト>http://www.rikanenpyo.jp/index.html]]([[徹底解説>http://www.rikanenpyo.jp/kaisetsu/kaisetsu_top.html]]) ---- ----
#contents_line(level=2,sep=/) ※こちらは[[【船】航海>【船】航海]]の続きです。 *ここはどこですかー? 俺にまかせろ♥ By 航海長ナイジェル&ビセンテ 海の現在地は&bold(){緯度×経度が合体したトコ}です。とはいえ、GPSがないF&B時代に現在地を調べるのはとーっても大変。 ナイジェルやビセンテみたいにキッチリした人じゃないとムリ。 ちょっと面倒くさいお話もあるけど、ちゃぶ台ひっくり返したくなる衝動(ええ、何度もきましたよ)に負けないでね♥ &ref(ここはどこ.PNG,【船】航海) **緯度×経度の基準 現在地の緯度×経度は&bold(){基準の場所からどれくらい離れてるか?}ってこと。そーなんです。基準が必要なんです。 こちらは1570年スペイン王フェリペ2世の地理学者[[アブラハム・オルテリウス>http://en.wikipedia.org/wiki/Abraham_Ortelius]]が作った世界地図。 心を鬼にしてF&B時代の地図を見比べると、同じ基準でも地図によって経度の位置がビミョーに違ったりするのでご注意下さい。 &ref(16世紀(地球の中心).JPG,【船】航海) |BGCOLOR(lightgrey):|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:21世紀|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:F&B時代| |BGCOLOR(lightgrey):緯度|赤道|赤道| |BGCOLOR(lightgrey):経度|グリニッジ子午線&br()([[グリニッジ天文台>http://en.wikipedia.org/wiki/Royal_Observatory,_Greenwich]]の窓が経度0度)|経度は××度じゃなく移動距離。ってことで、出発地点とか[[基準は様々>http://en.wikipedia.org/wiki/History_of_longitude]]&br()(地図上は[[トルデシリャス条約>http://en.wikipedia.org/wiki/Treaty_of_Tordesillas]]が経度0度)| |BGCOLOR(lightgrey):日付変更線|経度180度|フェルディナンド・マゼランが世界一周(1519-1522年)して気がついた。&br()が、それで何か決めたのかは分からなかったです。| #region(close,初めての緯度×経度) 地図に初めて緯度×経度の線を描いたのは、天文学者[[クラウディオス・プトレマイオス>http://en.wikipedia.org/wiki/Ptolemy]](83-168年頃:古代ローマ)です。 著書「[[ゲオグラフィア>http://en.wikipedia.org/wiki/Geography_%28Ptolemy%29]]」の世界地図[[プトレマイオス図>http://en.wikipedia.org/wiki/Ptolemy%27s_world_map]]に登場。 基準は緯度=赤道、経度=エル・イエロ島(カナリア諸島)。天才だな、おまい。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Early_world_maps]] &ref(ここはどこ__緯度×経度(プトレマイオス).JPG)プトレマイオス図(1513年版) この地図は大航海時代にも活躍します。 クリストファー・コロンブスは「おっ!アジアは西から行った方が近道じゃん」と誤解して、1492年うっかりアメリカ大陸を発見。 #endregion **航海テキスト 航海テキストは、現在地の緯度×経度を調べる時に絶対必要な&bold(){南中時太陽赤緯表、三角関数表…}がてんこ盛りの[[航海表>http://en.wikipedia.org/wiki/Nautical_almanac]]です。 これがないとヤバイ!死ぬ!? ってくらい重要。出かけるときは忘れずに。 Solar Declination Tableの日本語名が分からなかったので、とりあえず「南中時太陽赤緯表(仮)」ってことで。 |BGCOLOR(lightgrey):CENTER:ビセンテご愛用|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:ナイジェルご愛用| |&ref(ここはどこ_航海テキスト(ビセンテご愛用).JPG,【船】航海,height=200)スペイン(1551年)|&ref(ここはどこ_航海テキスト(ナイジェルご愛用).JPG,【船】航海,height=200)イングランド(1574年と1576年)| *緯度を調べる 緯度は太陽(夜は北極星か南極星)の高さを調べる[[天測航法>http://en.wikipedia.org/wiki/Celestial_navigation]]で分かります。 だからナイジェルやビセンテにとって、北極星を探す[[北斗七星>http://en.wikipedia.org/wiki/Big_Dipper]](英:Big Dipper、西:Osa Mayor)も特別な星座。 GPS大活躍の21世紀も壊れたとき用に天測航法は理解してなくちゃいけません。あっ、昔の飛行機も天測航法を使ってました。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Latitude]] &ref(緯度.JPG)天測航法で大活躍の[[六分儀>http://en.wikipedia.org/wiki/Sextant]](21世紀:イギリス海軍) #region(close,測定って難しいのね) エクアドル(南米)には、けっこう有名でけっこう立派な赤道記念碑[[ミッター・デル・ムンド(世界の真ん中)>http://en.wikipedia.org/wiki/Ciudad_Mitad_del_Mundo]]があります。 1936年地理学者Luis Tufiñoが測定して記念碑を建設。 でもGSPで調べたら、げっ!赤道じゃなかったぁ!ってオチ。測定って難しいんですね。 &ref(緯度(ニセ赤道記念碑).JPG)エクアドルの赤道記念碑。エクアドルは赤道(スペイン語:Ecuador)って意味 #blockquote(){&u(){&bold(){本物の赤道博物館}} あっ、近所に本物の赤道博物館もあります。タマゴ立てやお水の渦巻き実験をお楽しみ下さい。 赤道上ではタマゴが立つ。 お水の栓を抜くと北半球で左巻き、赤道上で直下、南半球で右巻きに渦巻がグルグルします。あーら不思議! &ref(緯度(ニセ赤道記念碑:実験).JPG)赤道の上だと 実はこれって都市伝説らしいです。 でも実験ではちゃーんとタマゴ立つし、お水の渦も右に左にグルグル。21世紀は科学の時代だけど浪漫も必要ですよね。 } #blockquote(){&u(){&bold(){地球規模だと渦巻きが!}} 北半球と南半球は[[コリオリの力>http://en.wikipedia.org/wiki/Coriolis_effect]]で地球規模の渦巻きが逆です。これはホント。ナイジェル、ビセンテ気をつけてー! 左画は北半球の[[温帯低気圧>http://en.wikipedia.org/wiki/Extratropical_cyclone]](2014年2月12日:イギリス) 。 右画は南半球の[[熱帯低気圧>http://en.wikipedia.org/wiki/Tropical_cyclone]]の赤ちゃんTropical Cyclone Timです(2013年3月14日:オーストリア)。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Vortex]] &ref(緯度(ニセ赤道記念碑:渦巻き).JPG) 普段イギリスの冬はカラカラで、こんなに激しい嵐はとーっても珍しいそうです。豪雨と160km/hの強風で大混乱。 あとコリオリの力は緯度によってパワーが違うらしい。へー。 大砲の軌道や海流にも影響する力だそうです。へー。ちんぷんかんぷんだけど、ナイジェル、ビセンテ気をつけてー! } #endregion **緯度を調べる道具 こちらはF&B時代に使ってた緯度(=太陽や星の高さ)を調べる道具です。 波や風でプカプカ揺れる船では、お手軽なクロス・スタッフが人気。占星術師[[ジョン・ディー>http://en.wikipedia.org/wiki/John_Dee]]が1550年頃イングランドに導入。 四分儀は、その後[[八分儀>http://en.wikipedia.org/wiki/Octant_%28instrument%29]](1742年?)や[[六分儀>http://en.wikipedia.org/wiki/Sextant]](1757年?)に進化します。 |BGCOLOR(lightgrey):CENTER:[[航海用アストロラーベ>http://en.wikipedia.org/wiki/Mariner%27s_astrolabe]]|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:[[四分儀>http://en.wikipedia.org/wiki/Quadrant_%28instrument%29]]|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:[[クロス・スタッフ(ヤコブの杖)>http://en.wikipedia.org/wiki/Cross_staff]]| |&ref(緯度測定_道具(アストロラーベ).JPG)|&ref(緯度測定_道具(四分儀).JPG)|&ref(緯度測定_道具(クロス・スタッフ).JPG)| #region(close,大砲と四分儀) 大砲をドーンと撃つときも四分儀が役立ちます。 他にもお城を狙ってる人達が四分儀で測ってる画があったので、ジックリ狙って最大威力でとどめを刺すときに有効っぽい。 波や風でプカプカ揺れる船では…うーん、陸地じゃないとお役に立たなそうですよね。 &ref(緯度測定_道具(大砲).JPG)[[Niccolò Fontana Tartaglia>http://en.wikipedia.org/wiki/Niccol%C3%B2_Fontana_Tartaglia]]著「Dedicatory Letter」(1558年:イタリア) #endregion **緯度の調べ方 人気はスルーして、航海用アストロラーベで緯度の調べ方を。 ここでいう正午はナイジェルやビセンテの船乗りが使う&bold(){「今いる場所が正午=太陽が一番高いとき」}です。 私たちが使ってる「日本中どこでも正午=時計が12時になったとき」じゃないのでご注意。 #region(close,今いる場所が正午ってなに?) むかしむかし、あるところに巨大な王国がありました。 ある日女王は「&bold(){正午にお昼ご飯を食べない者は異端審問ぢゃ}」っと宣言しました。アホアホな宣言です。 でもみんなアホアホな異端審問が恐くてイヤイヤ守りました。そして…このお話には2つの展開があったのでございます。 &ref(現在地(緯度)_なぜ(今いる場所が正午).PNG) |>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:今いる場所が正午 ルート| |ナイジェルもビセンテも&br()&bold(){自分の家が正午(太陽が一番高いとき)になった時}にお昼ご飯を食べました。&br()某国は数百個もの正午ができました。|女王と同じ時計なんか不要だぜ!&br()俺が時計だ♥| |>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:某国中どこでも正午 ルート| |就寝中ナイジェルも、仕事中ビセンテも&br()&bold(){女王の家が正午(フェリペ天文台のお知らせ)になった時}にお昼ご飯を食べました。&br()みんなだんだん腹が立ってきました。税収も減りました。|女王と同じ時計が必要だぜ!&br()時計は必要経費に入りますか?| 女王は「なんかヤバイ?」っとハラハラしてきました。 そして数日後、反省して「やっぱヤメぢゃ」っと宣言を撤回しましたとさ。めでたし、めでたし。 #endregion |&ref(緯度測定_調べ方(アストロラーベ).PNG)|BGCOLOR(lightgrey):1|もうすぐ正午っぽくなってきたら、アストロラーベを水平線と平行に持つ。&br()プカプカな船では難しいけどなるべく頑張る。| |~|BGCOLOR(lightgrey):2|指方規に付いてる2つの穴を覗いて、太陽(夜は北極星か南極星)に照準をあわせる。&br()ひたすら照準を合わせる。&br()目盛りが一番でかい正午(&bold(){南中時刻})になったら、ササッと目盛り(&bold(){南中高度})をチェック。&br()&br()※昼間は目が悪くなっちゃうから、覗かないで穴を通る太陽の光(影?)を見てね。&br()※南半球では北中高度?両方合わせて正中高度っていうみたい。| |&ref(緯度測定_調べ方(南中時太陽赤緯表).JPG)|BGCOLOR(lightgrey):3|航海テキストの&bold(){南中時太陽赤緯表}で今日の&bold(){赤緯}をゲト。&br()&br()※やり方は「ちゃぶ台大爆発!南中時太陽赤緯表の使い方」をどうぞ。| |~|BGCOLOR(lightgrey):4|&bold(){南中高度}と&bold(){赤緯}を計算して緯度をゲト。計算式は&br()&br()&space(4)&u(){今いる場所の緯度=90度-南中高度±赤緯}&br()&br()※やり方は「ちゃぶ台復活!意外に簡単♥ 緯度をゲト」をどうぞ。| #region(close,なんで正午なの?) 正午は、いつでもどこでも条件が一緒でハッキリキッパリしてるから。 同じ経線上の船は&bold(){みんないっせいに正午}だけど&bold(){どこにいるかで角度は違う}。この角度の違いで緯度が分かる。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Culmination]] &ref(現在地(緯度)_なぜ(正午).PNG) |>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:正午の条件|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:季節が違うと|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:同じ経線(子午線)上だと| |BGCOLOR(lightgrey):&bold(){南中時刻}|BGCOLOR(lightgrey):お昼(今いる場所が正午)|一日の中で&br()・太陽の角度が&bold(){一番でかい}&br()・太陽の高さが&bold(){一番たかい}&br()・太陽の方向は真南(&bold(){南中})|季節どころか毎日違う|&bold(){みんないっせいに正午}| |BGCOLOR(lightgrey):&bold(){南中高度}|BGCOLOR(lightgrey):太陽の角度|~|~|&bold(){どこにいるかで角度は違う}| #endregion #region(close,均時差のおかげさまで南中時刻は毎日違う) 1日は24時間、1年は365日。お誕生日だって、新刊発売日だって、キッチリ動く時計があるから安泰♥ キッチリしてるのに南中時刻が毎日違うのは、&bold(){地球と時計の1日の長さが違う}([[均時差>http://en.wikipedia.org/wiki/Equation_of_time]]:時計と太陽の位置のズレ)から。 |BGCOLOR(lightgrey):地球の1日&br()(視太陽時)|リアル宇宙では&br()&bold(){地球の公転スピードはいろいろなご事情で速かったり、遅かったり、ムラがある}。&br()これだと「本日の1日は23時間59分48秒、明日は24時間12秒でお過ごし下さい」ってことになっちゃう。| |BGCOLOR(lightgrey):時計の1日&br()(平均太陽時)|地球の1日だと生活が不便!そこで天文学者さん達がひらめいたナイスなアイディアが&br()&bold(){地球の公転スピードはいつも同じって考えたらいいんじゃね?}&br()あれこれ太陽を観測した結果、ちょうどいいスピードが1日24時間だった。「毎日が1日24時間」で安泰。| う~ん、そう言われても…画だとこんな感じです。 #blockquote(){&u(){&bold(){私達が使ってる「時計の1日」はこーゆー考え方}} もし公転スピードがいつも同じだったら、南中時刻は毎日12時なの。1日も24時間なの。 &ref(現在地(緯度)_なぜ(南中時刻_同じ).PNG) |BGCOLOR(lightgrey):|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:春分(3月20日)|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:夏至(6月20日)|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:秋分(9月22日)|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:冬至(12月21日)| |BGCOLOR(lightgrey):時計の1日|>|>|CENTER:24時間|>|>|CENTER:24時間|>|>|CENTER:24時間|>|>|CENTER:24時間| } #blockquote(){&u(){&bold(){現実の「地球の1日」はこーゆーもん}} 実際の公転スピードはムラムラだから、ロンドン(2012年)の南中時刻も毎日違うの。1日の時間も毎日違うの。 なんかジェットコースターっぽい。 データはこちら[[お星様とコンピュータ>http://star.gs/cgi-bin/scripts/r.cgi]]([[惑星の出没南中>http://star.gs/cgi-bin/scripts/hinodet.cgi]])を使わせて頂きました。 &ref(現在地(緯度)_なぜ(南中時刻_違う).PNG) |BGCOLOR(lightgrey):|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:春分(3月20日)|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:夏至(6月20日)|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:秋分(9月22日)|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:冬至(12月21日)| |~|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:出|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:南中時刻|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:没|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:出|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:南中時刻|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:没|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:出|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:南中時刻|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:没|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:出|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:南中時刻|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:没| |~|6:03|&bold(){12:08:09}|18:15|3:43|&bold(){12:02:28}|20:22|5:47|&bold(){11:53:23}|17:58|8:04|&bold(){11:59:07}|15:54| |BGCOLOR(lightgrey):翌日|6:00|12:07:51|18:16|3:43|12:02:41| 20:22|5:49|11:53:02|17:56|8:05|11:59:37|15:55| |BGCOLOR(lightgrey):地球の1日|>|>|BGCOLOR(skyblue):CENTER:23時間59分42秒|>|>|BGCOLOR(gold):CENTER:24時間13秒|>|>|BGCOLOR(skyblue):CENTER:23時間59分39秒|>|>|BGCOLOR(gold):CENTER:24時間30秒| } 公転スピードがムラムラ!って言ったのは、天文学者&占星術師ヨハネス・ケプラー(1571-1630:ドイツ)。 有名な[[ケプラーの法則>http://en.wikipedia.org/wiki/Kepler%27s_laws_of_planetary_motion]]ってやつ。 中身はすがすがしい程ちんぷんかんぷんでございました。ふぇぇぇ、宇宙って複雑なんだね~orz 南中時刻はほとんど毎日ズレちゃってるけど、1年間で±0になるし、ビミョーなズレも閏年でナシになるそうです。へー。 フラフラしてる太陽も最後はビシッと元の場所に戻るっぽい。 難しいコトは分かんないけど、とりあえずナイジェルとビセンテの航海は安泰だ! &ref(現在地(緯度)_なぜ(南中時刻_グラフ).PNG) #endregion #region(close,正午しかダメなの?) 調べたけど分かりませんでした。ってことで、太陽高度グラフ(2012年)を眺めてみた。 直線グラフじゃないけど、正確な時間と電卓的頭脳と根性があればイケそう?ビスケー湾なら傾斜角データもアリそう? ナイジェルやビセンテならやり遂げそうです。 // //グラフの詳細はこちら[[太陽の動きを知るページ>http://www.gitc.pref.nagano.lg.jp/joho/solar/solar.html]]をどうぞ。 &ref(現在地(緯度)_なぜ(正午以外).PNG) #endregion #region(close,アストロラーベの弱点) たいへん、たいへん!北極点や南極点に近づくと極夜(太陽が昇らない日々)で南中高度が分かりません。緯度が分かりません。 限界緯度66.6度以上の南極圏や北極圏からは、極夜にご注意を! ある日とつぜん「ちみちみ、明日から北極支社に行きたまへ」って辞令下るのがサラリーマン人生だもんね。 ちなみに南極点に標識アリマス、北極点は海だからナイデス。 &ref(現在地(緯度)_なぜ(アストロラーベの弱点).PNG) #endregion #region(close,赤緯ってなに?) 赤緯×赤経は&bold(){天の赤道(宇宙まで広げた赤道)から見た太陽や星の位置}。緯度×経度の宇宙版ね。 地軸は北極点と南極点にプスッと刺した幻の棒。 &ref(現在地(緯度)_なぜ(赤緯).PNG) ※地球の地軸はちょっと傾いて(&link_wikipedia(黄道傾斜角){黄道傾斜角})るので、赤緯は毎日ビミョーに違います。 ※地球の地軸はちょっとグラグラ(&link_wikipedia(歳差運動){歳差運動})してるので、赤緯は毎年ビミョーに違います。あらまっ! #endregion #region(close,今いる場所の緯度=90度-南中高度±赤緯ってなに?) 語るより見る方が分かる! ふぇぇぇ、地球が傾いてなかったらもっと簡単なのにorz でも傾いてるから四季が楽しめるのね♥ 桜のためにガンバロー! &ref(現在地(緯度)_なぜ(今いる場所の緯度=90度-南中高度±赤緯).PNG) ※あっ!コピーで描いたら3つの緯度がバラバラになっちゃいました。ごめん。 #endregion **ちゃぶ台大爆発!南中時太陽赤緯表の使い方 大爆発したのはビセンテのちゃぶ台でございます。面倒くさい。すごいよービセンテ! 簡単にした方がいいよースペイン! 詳しくはこちら[[John C. Fremont>http://www.longcamp.com/index.html]](http://www.longcamp.com/nav.html)をどうぞ。 もしナイジェルやビセンテが&bold(){1579年7月11日(ユリウス暦)に南中時太陽赤緯表を使ったら?}こんな感じです。 &ref(現在地(緯度)_南中時太陽赤緯表.PNG) |>|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:航海テキスト(ナイジェルご愛用?)の場合| |&ref(現在地(緯度)_南中時太陽赤緯表(ナイジェル).PNG,,width=200)|BGCOLOR(lightgrey):1|>|&u(){&bold(){テーブル}}&br()&bgcolor(tomato){7月11日}…&bgcolor(skyblue){20度42分}&br()&br()ってことで、&u(){&bold(){1579年7月11日の赤緯はズバリ20度42分}} かんたーん♥| |>|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:航海テキスト(ビセンテご愛用?)の場合 ~ご協力♥miru-haさん~| |&ref(現在地(緯度)_南中時太陽赤緯表(ビセンテ).PNG)|BGCOLOR(lightgrey):1|BGCOLOR(lightgrey):黄経を計算&br()↑&br()っぽいもの|&u(){&bold(){テーブル1:黄道十二宮の中にある太陽の位置}}&br()&bgcolor(tomato){7月11日(かに座)}…&bgcolor(skyblue){27度57分}&br()&br()&u(){&bold(){テーブル2:年ごとの太陽の位置の調整(閏年+1日のウニャウニャ)}}&br()&bgcolor(tomato){1579年}…&bgcolor(skyblue){OFF(閏年発動)} / &bgcolor(skyblue){00度44分(なんていうか…)}&br()&br()★閏年発動OFFなので、1579年のズレは&br()&space(4)01度00分-00度44分=00度16分&br()★1579年7月11日の太陽の位置は&br()&space(4)27度57分-00度16分=&u(){黄経(っぽいもの)は27度41分}| |~|BGCOLOR(lightgrey):2|BGCOLOR(lightgrey):赤緯を計算|&u(){&bold(){テーブル3:黄経(っぽいもの)ごとの赤緯}}&br()&bgcolor(tomato){28度}…&bgcolor(gold){20度37分}&br()&bgcolor(tomato){27度}…&bgcolor(skyblue){20度49分}  ←この差は00度12分&br()&br()★27度41分は27度と2/3分。赤緯は27~28度の間2/3のトコだから&br()&space(4)00度12分*2/3=00度08分&br()&space(4)20度49分-00度08分=20度41分&br()&br()ってことで、&u(){&bold(){1579年7月11日の赤緯は20度41分}} かー!めんどくせー!| #region(close,黄道十二宮ってなに?) 黄道十二宮は、[[黄道十二星座>http://en.wikipedia.org/wiki/Zodiac]](太陽の通り道(黄道)にある星座)をキレーに並べてたもの。星座占いでお馴染み♥ 17世紀りんご引力の[[ニュートン>http://en.wikipedia.org/wiki/Isaac_Newton]]が登場するまで、占星術と天文学は一心同体です。 黄道十二星座を選んだのは天文学者クラウディオス・プトレマイオス(2世紀)。へびつかい座は落選。ヘビ苦手なのかなぁ? [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Astrological_sign]] &ref(現在地(緯度)_なぜ(黄道十二宮).PNG) 黄道十二宮は2種類あります。ナイジェルやビセンテはトロピカル方式。 あと春分点の黄道十二星座は、地球の地軸がグラグラ(歳差運動)してるから移動してるそうです。あらまっ! |>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:黄道十二宮|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:春分点の黄道十二星座| |BGCOLOR(lightgrey):トロピカル方式&br()Tropical zodiac|春分点が基準。西洋占星術、日本の星座占い。|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:とっても大昔|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:1~20世紀|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:20世紀末~| |~|~|おひつじ座|うお座|みずがめ座になった?移動中?| |BGCOLOR(lightgrey):サイデリアル方式&br()Sidereal zodiac|ある恒星が基準。バビロニア占星術、インド占星術。|>|>|調べてませーん| #endregion #region(close,黄緯×黄経と赤緯×赤経ってなにが違うの?) どっちも緯度×経度の宇宙版だけど、&bold(){太陽や星の位置を測ってる場所が違う}。単位もちょびっと違う。そんだけ。 赤色、黄色、宇宙ってカラフル♥ 他にも白色とか銀色とか…世の中はあっちこっちから宇宙を測ってます。 &bold(){もし16世紀の夜空に突如かわいい赤毛の星が現れたら?}こう測ります。 &ref(現在地(緯度)_なぜ(黄緯×黄経).PNG) |>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:測ってる場所|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:緯度と単位|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:経度と単位| |BGCOLOR(lightgrey):黄緯×黄経&br()[[黄道座標>http://en.wikipedia.org/wiki/Ecliptic_coordinate_system]]|BGCOLOR(lightgrey):黄道|&bold(){黄緯}、β|度分秒、dms、--°--'--"|&bold(){黄経}、λ|度分秒、以下略| |~|~|>|0度(黄道)~±90度(黄道北極/南極)|>|0度(春分点)~360度(春分点)| |BGCOLOR(lightgrey):赤緯×赤経&br()[[赤道座標>http://en.wikipedia.org/wiki/Equatorial_coordinate_system]]|BGCOLOR(lightgrey):天の赤道|&bold(){赤緯}、δ、Dec|度分秒、以下略|&bold(){赤経}、α、RA|時分秒、hms| |~|~|>|0度(天の赤道)~±90度(天の北極/南極)|>|0時(春分点)~24時(春分点)| #endregion #region(close,黄緯×黄経と赤緯×赤経ってなにが違うの?のおまけ ←緯度にまったく関係ないです。) 測り方も分かったことだし、太陽系でも見てみよー! 地球にくっついて行く月がけなげ…あの2人みたいです。 データはこちら[[お星様とコンピュータ>http://star.gs/cgi-bin/scripts/r.cgi]]([[月、太陽、惑星の位置>http://star.gs/cgi-bin/scripts/tentai.cgi]])と[[国立天文台>http://www.nao.ac.jp/]]([[こよみの計算>http://eco.mtk.nao.ac.jp/cgi-bin/koyomi/koyomix.cgi]])を使わせて頂きました。 |BGCOLOR(lightgrey):観測地|ロンドン|経度:0.200W、緯度:51.500N| |BGCOLOR(lightgrey):日付|2012年の&bold(){春分の日}と&bold(){秋分の日}|| |BGCOLOR(lightgrey):時間|なるべく&bold(){春分点}と&bold(){秋分点}|赤緯と黄緯が0度に近いもの。世界標準時です。| &ref(現在地(緯度)_なぜ(黄緯×黄経おまけ).PNG) #region(close,2012年3月20日05:15のデータ) |BGCOLOR(lightgrey):CENTER:天体名|BGCOLOR(tomato):CENTER:視赤経|BGCOLOR(tomato):CENTER:視赤緯|BGCOLOR(gold):CENTER:黄経|BGCOLOR(gold):CENTER:黄緯|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:方位 °/高度 °|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:距離 AU| |BGCOLOR(lightgrey):太陽|0 0 0.0|+ 0 0 0|0 0 1|+ 0 0 0|79.51|-8.24|0.996| |BGCOLOR(lightgrey):水星|0 5 24.7|+ 4 20 49|2 58 18|+ 3 26 60|75.77|-5.61|0.620| |BGCOLOR(lightgrey):金星|2 50 18.3|+19 2 9|45 49 43|+ 2 34 15|33.03|-13.41|0.763| |BGCOLOR(lightgrey):月|22 13 43.6|- 6 32 59|332 59 4|+ 4 8 2|104.46|3.01|393,480 km| |BGCOLOR(lightgrey):火星|10 43 0.7|+12 12 21|157 38 1|+ 3 46 28|282.23|5.88|0.696| |BGCOLOR(lightgrey):木星|2 34 36.8|+14 12 5|40 47 5|- 0 54 10|38.53|-16.46|5.699| |BGCOLOR(lightgrey):土星|13 48 19.7|- 8 14 17|208 5 40|+ 2 44 13|231.90|16.68|8.825| |BGCOLOR(lightgrey):天王星|0 16 41.2|+ 1 3 17|4 14 49|- 0 41 23|75.51|-9.94|21.066| |BGCOLOR(lightgrey):海王星|22 15 35.6|-11 23 38|331 41 8|- 0 33 22|107.03|-1.12|30.872| |BGCOLOR(lightgrey):冥王星|18 40 4.1|-19 13 60|279 28 28|+ 3 52 32|157.07|16.38|32.335| #endregion #region(close,2012年9月22日14:59のデータ) |BGCOLOR(lightgrey):CENTER:天体名|BGCOLOR(tomato):CENTER:視赤経|BGCOLOR(tomato):CENTER:視赤緯|BGCOLOR(gold):CENTER:黄経|BGCOLOR(gold):CENTER:黄緯|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:方位 °/高度 °|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:距離 AU| |BGCOLOR(lightgrey):太陽|12 0 1.4|- 0 0 9|180 0 23|+ 0 0 0|233.32|25.41|1.004| |BGCOLOR(lightgrey):水星|12 36 45.8|- 3 18 57|189 44 53|+ 0 35 36|222.55|26.71|1.388| |BGCOLOR(lightgrey):金星|9 20 17.9|+15 10 11|137 44 46|- 0 21 37|276.80|14.07|0.997| |BGCOLOR(lightgrey):月|17 50 50.9|-21 45 56|267 52 27|+ 1 39 19|141.74|8.29|370,288 km| |BGCOLOR(lightgrey):火星|15 8 54.7|-18 25 53|229 53 11|- 0 44 60|179.19|20.06|1.906| |BGCOLOR(lightgrey):木星|5 0 10.7|+21 54 28|76 8 44|- 0 48 49|332.93|-12.41|4.698| |BGCOLOR(lightgrey):土星|13 49 6.4|- 8 48 60|208 28 46|+ 2 15 50|201.42|27.46|10.635| |BGCOLOR(lightgrey):天王星|0 26 13.1|+ 2 0 54|6 48 54|- 0 45 5|45.84|-26.74|19.066| |BGCOLOR(lightgrey):海王星|22 13 2.3|-11 42 15|330 59 25|- 0 37 23|84.17|-19.59|29.112| |BGCOLOR(lightgrey):冥王星|18 29 38.5|-19 39 33|276 59 25|+ 3 35 56|132.62|6.07|32.154| #endregion ※視赤経・視赤緯は歳差、章動、光行差などなどを考慮した…とりあえずアータラカータラした赤緯×赤経ってことで。 ※宇宙はとっても広いので、距離の単位は[[AU>http://en.wikipedia.org/wiki/Astronomical_unit]](1AU=地球~太陽の平均距離:約1億4960万km)です。 #endregion #region(close,閏年+1日のウニャウニャってなに?) ウニャウニャは正式名称が分からないので、とりあえず「ウニャウニャ」って呼んでます。 まずはウニャウニャの前におさらい♥ カレンダーの1年は地球の公転周期に0.25日足りない。だから&bold(){足りない日は貯金しておいて、閏年に+1日}してるの。 &ref(現在地(緯度)_なぜ(閏年カレンダーの場合).PNG) |>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:ユリウス暦|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:毎年の不足|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:4年ごとの閏年| |BGCOLOR(lightgrey):①カレンダーの1年|BGCOLOR(lightgrey):②地球の公転周期|BGCOLOR(lightgrey):③日数&br()&space(4)(②日-①日)|BGCOLOR(lightgrey):④角度&br()&space(4)(⑥度÷4年)|BGCOLOR(lightgrey):⑤日数&br()&space(4)(③日×4年)|BGCOLOR(lightgrey):⑥角度&br()&space(4)(360度÷②日)| |365日|365.25日|=0.25日&br()=1/4日|≒00度15分&br()&color(silver){(0.246 406 57度)}|=1日|≒01度00分&br()&color(silver){(0.985 626 283度)}| でも緯度ゲトは太陽の位置が重要。貯金してる場合じゃねー! ウニャウニャするぜー♥  ってことで、&bold(){翌年は足りない0.25日からスタート}。難しいコトはやってないんだけど、こんな画になってしまいました。 &ref(現在地(緯度)_なぜ(閏年緯度の場合).PNG) ついでにテーブル2も書いときます。(パターンあり。読めなかった数字は「?」。) |BGCOLOR(lightgrey):|BGCOLOR(lightgrey):1545|BGCOLOR(lightgrey):1546|BGCOLOR(lightgrey):1547|BGCOLOR(lightgrey):1548|BGCOLOR(lightgrey):1549|BGCOLOR(lightgrey):1550|BGCOLOR(lightgrey):1551|BGCOLOR(lightgrey):1552|BGCOLOR(lightgrey):1553|BGCOLOR(lightgrey):1554|BGCOLOR(lightgrey):1555|BGCOLOR(lightgrey):1556|…|BGCOLOR(lightgrey):1577|BGCOLOR(lightgrey):1578|BGCOLOR(lightgrey):1579|BGCOLOR(lightgrey):1580| |BGCOLOR(lightgrey):θ|1||||1||||1||||~|1|||| |BGCOLOR(lightgrey):φ|0|45|30?|15|2|47|33|18|4|49|34|19|~|14|59|44|?| |BGCOLOR(lightgrey):|BGCOLOR(skyblue):&arrow(3)|BGCOLOR(skyblue):&arrow(9)|BGCOLOR(skyblue):&arrow(3)|BGCOLOR(skyblue):&arrow(3)|BGCOLOR(gold):&arrow(3)|BGCOLOR(gold):&arrow(9)|BGCOLOR(gold):&arrow(3)|BGCOLOR(gold):&arrow(3)|BGCOLOR(skyblue):&arrow(3)|BGCOLOR(skyblue):&arrow(9)|BGCOLOR(skyblue):&arrow(3)|BGCOLOR(skyblue):&arrow(3)|~|BGCOLOR(gold):&arrow(3)|BGCOLOR(gold):&arrow(9)|BGCOLOR(gold):&arrow(3)|BGCOLOR(gold):&arrow(3)| 閏年発動ONの年は&bold(){前年に閏年の+1日でズレが解消される}のでテーブル1をそのまま使用。 が、しかし、0、2、4、…14ってビミョーに増えてる! これはユリウス暦がホントの公転周期よりちょびっと多いから。天文学者さん達すげー! |BGCOLOR(lightgrey):②ユリウス暦が考える&br()&space(4)地球の公転周期|BGCOLOR(lightgrey):a.21世紀が考える&br()&space(3)地球の公転周期|BGCOLOR(lightgrey):b.公転周期のズレ&br()&space(3)(②日-a日)|BGCOLOR(lightgrey):c.ズレの角度&br()&space(3)(⑥度×b日)|BGCOLOR(lightgrey):d.4年で&br()&space(3)(c度×4年)| |365.25日|365.242 189 87日|=+0.007 810 13日|≒0.007 697 69度|≒02分&br()&color(silver){(0.030 791 48度)}| #endregion **ちゃぶ台復活!意外に簡単♥ 緯度をゲト もしナイジェルがロンドンで、ビセンテがマドリードで&bold(){1579年7月11日(ユリウス暦)に緯度を調べたら?}こんな感じです。 &ref(現在地(緯度)_緯度をゲト.PNG) #blockquote(){&u(){&bold(){世の中こーゆーもんです!な緯度の計算}} 北半球が夏のとき:今いる場所の緯度=90度-南中高度+赤緯 ←7月11日はこっち 北半球が冬のとき:今いる場所の緯度=90度-南中高度-赤緯 } こーゆーもんだと思ったら、あとは簡単♥ お次は1579年7月11日(グレゴリオ暦:7月21日、準ユリウス日:-102021.49ET)の南中時刻の太陽です。 データはこちら[[お星様とコンピュータ>http://star.gs/cgi-bin/scripts/r.cgi]]([[月、太陽、惑星の位置>http://star.gs/cgi-bin/scripts/tentai.cgi]])を使わせて頂きました。 |&ref(緯度測定_調べ方(アストロラーベ).PNG)|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:観測|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:南中時刻|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:視赤経|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:視赤緯|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:南中高度 °| |~|BGCOLOR(lightgrey):ロンドン|経度:00度12分00秒(0.200W)&br()緯度:51度30分00秒(51.500N)|12:06:15|7 59 38.9|+20 38 44|&bold(){59.15}| |~|BGCOLOR(lightgrey):マドリード|経度:03度42分00秒(3.700W)&br()緯度:40度24分00秒(40.400N)|12:20:15|7 59 41.3|+20 38 37|&bold(){70.24}| これを計算したら、ぱんぱかぱーん♥ 緯度ゲト♥ 結果はちょびっとおしい。16世紀ってけっこうスゲーっぽくないですか?ちなみに緯度1分の距離は1852m。 |&ref(緯度測定_調べ方(南中時太陽赤緯表).JPG)|BGCOLOR(lightgrey):ロンドン|日時:1579年7月11日 12:06 UT(イングランドの時間だと12:06)&br()南中高度:&bold(){59度09分00秒}(59.15度)&br()南中時太陽赤緯表(ナイジェルご愛用?)でゲトした赤緯:&bold(){20度42分}&br()&br()90度-59度09分+20度42分=&u(){&bold(){ナイジェルが計算した緯度は51度33分}}(誤差+3分)| |~|BGCOLOR(lightgrey):マドリード|日時:1579年7月11日 12:20 UT(スペインの時間だと13:20)&br()南中高度:&bold(){70度14分24秒}(70.24度)&br()南中時太陽赤緯表(ビセンテご愛用?)でゲトした赤緯:&bold(){20度41分}&br()&br()90度-70度14分+20度41分=&u(){&bold(){ビセンテが計算した緯度は40度27分}}(誤差+3分)| *経度を調べる 経度は船が進んだ方向と速度で移動距離を計算する[[推測航法>http://en.wikipedia.org/wiki/Dead_reckoning]]で分かります。 トルデシリャス条約だってカーボベルデ諸島の西370リーグ(1リーグ≒4.2km。1568年王フェリペ2世は[[リーグ>http://en.wikipedia.org/wiki/League_(unit)]]を廃止)だもんね。 この経度、苦労の割にすこぶる正確じゃないです。でも船で使える時計がないからしょーがない。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Longitude]] &ref(経度.JPG)推測航法 正確な経度はとーっても難しくって、1567年スペイン、1636年オランダ、1666年フランスが「測定方法の募集」やってます。 イギリスも1714年「正確な測定方法を考えたら賞金£20,000([[経度法>http://en.wikipedia.org/wiki/Longitude_prize]])」を発足。 1765年クロノメーター(船で使える時計)を発明した時計職人ジョン・ハリソンが£23,065をゲト。みんな頑張った! [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/History_of_longitude]] #region(close,なんで時計で経度が測れるの?) 南中時刻(±均時差)に&bold(){女王と同じ時計}を見れば時差で&bold(){正確な経度}が分かります。なんという楽チン♥ でもクロノメーターはウルトラ高額(造船料の30%くらい)…手が出ないorz みんなが使えるようになるのは19世紀前半、お手頃な値段(熟練労働者のお給料の半年~2年分)になってからです。 &ref(現在地(経度)_なぜ(時計).PNG) |>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:南中時刻の時計|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:女王の時計との時差|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:女王を基準(経度0度)にした経度| |BGCOLOR(lightgrey):王様組|王フェリペ|12時|0時間|15度×0時間=0度 (0度)| |BGCOLOR(lightgrey):イングランド組|ジェフリーとナイジェル|午前6時|-6時間|15度×-6時間=-90度 (西経90度)| |BGCOLOR(lightgrey):スペイン組|ビセンテとレオ|午後5時|5時間|15度×5時間=+75度(東経75度)| #endregion #region(close,時計がお手頃になるまでは月距法) 時計がお手頃になるまでは天文学者[[ネヴィル・マスケリン>http://en.wikipedia.org/wiki/Nevil_Maskelyne]](イギリス)が実用化した&bold(){月距法}で経度を測ってました。 1514年神父[[ヨハネス・ヴェルナー>http://en.wikipedia.org/wiki/Johannes_Werner]](ドイツ)が発案。 残念ながら月距法が使えるのは18世紀になってからです。ナイジェルやビセンテもガッカリ。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Lunar_distance_%28navigation%29]] &ref(現在地(経度)_なぜ(月距法).PNG) 月と星(太陽でもオケ)の距離はどこから見ても一緒。船は距離を測って[[航海年鑑>http://en.wikipedia.org/wiki/The_Nautical_Almanac]]を見ればグリニッジ天文台の時間が分かります。 この時間と今いる場所の時間(砂時計で測ってる)の時差で緯度ゲト。 ちゃんとやれば誤差0.5度以下♥ ただーし!大気の屈折とかアータラカータラするので大変そうです。 #blockquote(){&u(){&bold(){グリニッジ天文台の航海年鑑}} 航海年鑑は1767年から毎年グリニッジ天文台が出版してます。 こちらは1787年8月3時間毎の月と星(太陽でもオケ)の距離一覧表。日によってどの星を測るか変わる? 星はαArietis(おひつじ座α星)、Aldebaran(おうし座α星)、Pollux(ふたご座β星)、Regulus(しし座α星)、Spica Virginis(おとめ座α星)、Antares(さそり座α星)、α Aquilae(わし座α星)、Fomalhaut(うお座α星)、αPegasi(ペガスス座α星)の9種類です。 &ref(現在地(経度)_なぜ(グリニッジ天文台).JPG) イングランドが月距法を知ったのは1674年です。 王[[チャールズ2世>http://en.wikipedia.org/wiki/Charles_II_of_England]]はノリノリだったけど、なにしろ月と星の距離のデータが全然ナイ! そこでグリニッジ天文台を建ててデータを集めまくりました。頑張ったのは初代天文台長[[ジョン・フラムスティード>http://en.wikipedia.org/wiki/John_Flamsteed]]。 } #endregion **経度を調べる道具 こちらはF&B時代に使ってた経度(=移動距離)を調べる道具です。真面目に地道にコツコツ記録しなくちゃいけません。 道具の詳細はこちら[[【船】航海>【船】航海]]をどうぞ。 |BGCOLOR(lightgrey):CENTER:方向の[[水浮きコンパス>http://en.wikipedia.org/wiki/Compass]](30分ごと)|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:速度の[[ログライン>http://en.wikipedia.org/wiki/Chip_log]](1時間ごと)|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:記録の[[トラバース・ボード>http://en.wikipedia.org/wiki/Traverse_board]]| |&ref(どこ行く_コンパス(水浮きコンパス).JPG,【船】航海,height=200)|&ref(測定_ログライン.PNG,【船】航海)|&ref(ここはどこ_経度(トラバース・ボード).JPG,【船】航海,height=200)| **ちゃぶ台ひっくり返したくなるかも!?平面航法で経度をゲト 推測航法は平面航法、距等圏航法、連針路航法、流潮航法…F&B時代はどれでしょ? ってことで、一番簡単っぽそうな[[平面航法>http://en.wikipedia.org/wiki/Plane_sailing]]を。 もしナイジェルとビセンテが&bold(){記録したログブックがこんな感じだったら?}こんな感じです。 ホントは[[ノット>http://en.wikipedia.org/wiki/Knot]]だけど、速度と距離がゴチャゴチャになるからkmでやってみました。ホントはノットね、ノット。 |&ref(方位_32方位.PNG,【船】用語)コンパスの32方位|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:当直|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:1-2点鐘|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:3-4点鐘|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:5-6点鐘|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:7-8点鐘| |~|BGCOLOR(lightgrey):夜半直|BGCOLOR(lightgrey):船の方向|①東北東|②北東|③西|④北北西| |~|~|BGCOLOR(lightgrey):船の速度|5.5km/h|9.5km/h|11.5km/h|4km/h| |~|BGCOLOR(lightgrey):朝直|BGCOLOR(lightgrey):船の方向|⑤西南西|⑥南南西|⑦南|⑧北西| |~|~|BGCOLOR(lightgrey):船の速度|7.5km/h|6.5km/h|4.5km/h|5.5km/h| |~|>|>|>|>|>|コンパスの方位1個は11.25度♥(360度÷32=11.25度)| &ref(現在地(経度)_経度をゲト(平面航法).PNG) #region(close,21世紀は電卓、ナイジェルやビセンテは三角関数表) この平面航法は電卓がホイホイ計算してくれました。 電卓持ってないナイジェルやビセンテが使うのは多分こーゆー表(航海テキストの三角関数表が見つからなかったの)。 これを自力で計算だなんて…たいへーん!カシオ電卓をプレゼントしたいです。 &ref(現在地(経度)_なぜ(三角関数表).JPG)Matthias Berneggerの[[三角関数表>http://en.wikipedia.org/wiki/Mathematical_table]](1619年:ドイツ)。 #endregion *苦労の割にすこぶる正確じゃない平面航法 こちらの地図は16世紀としてはかなり正確で美しい[[フェルナン・ヴァス・ドラード>http://en.wikipedia.org/wiki/Fern%C3%A3o_Vaz_Dourado]]の羅針儀海図(1571年:ポルトガル)です。 経度の基準はカーボベルデ諸島の西370リーグにあるトルデシリャス条約。 21世紀の経線と比べるとカーボベルデ諸島から離れる程、緯度がビシバシ移動する程ズレちゃいます。あちゃー。 &ref(経度_正確じゃない.JPG) 地図に書いた数字は、平面航法の1つ[[マルテロイオ航法>http://en.wikipedia.org/wiki/Rule_of_Marteloio]](14-16世紀地中海で使われた航法)で計算した経度です。 緯度が★の辺になるとズレてる。 こうやって考えてみると、目的地にホイホイ行っちゃうナイジェルやビセンテって優秀な航海長なのねー! #region(close,ってことで、マルテロイオ航法でナイジェルとビセンテにトルデシリャスへ行ってもらいましょう) 蝉がミンミン鳴く夏のある日、セビリアの宿にいたナイジェルとビセンテはとーっても退屈してました。 「暑いしヒマだし、どこかで涼みたい気分だ」 「さっきカイトが持ってきた回覧板に『アロンソ主催!トルデシリャス花火大会開催のお知らせ』と書いてあったぞ」 「カイトはトルデシリャス花火大会へ行くのだろうか?よし、俺達も花火大会に行くぞ」 2人はいそいそと海図を拡げました。 「トルデシリャス条約はカーボベルデ諸島の西370リーグだから、カーボベルデ諸島経由(ABC)だと水と食料は…」 「いや、セビリアからトルデシリャスへ直行(AB’C’)すればいいのではないか?」 さすが航海長の2人。いつでもどこでも安全かつ効率的な航海を求めずにいられない性分でございます。 ここで2人が分かってるのは黒色の線です。 ・セビリアからカーボベルデ諸島(AB)=南西に400リーグ ・カーボベルデ諸島からトルデシリャス(BC)=西に370リーグ ・セビリアからトルデシリャスへ直行(B’C’)=BCと同じ370リーグ   セビリアからトルデシリャスへ直行(AB’C’)するには、足りない距離(AB’)が分かればオケ。三角関数表の出番ですよー! 「しまった!航海テキストは船に置いてきた」 「俺もだ!おっ、何故かベットの下から[[アンドレア・ビアンコ>http://en.wikipedia.org/wiki/Andrea_Bianco]]著「ポルトラノ海図」(1436年:イタリア)が出てきたぞ」 そこには幸運にも三角関数表が載ってました。 こーゆーのを日頃の行いが良いと言うのでしょう。さすが誠実な2人。 &ref(経度_正確じゃない(ポルトラノ海図).JPG) 「セビリアからトルデシリャスへ直行(AB’C’)ということは、足りない距離(AB’)を計算すればいいのだな」 「うむ。それにしてもビアンコの字は下手くそで読みにくいな」 「俺達には理解しがたい手抜きだ。しかしコレしかないのならばコレで全力を尽くすまでだ」 カキカキ…紙の上で計算中。 まず最初に2人は方位ポイント表と三角関数表をチェックします。 ・カーボベルデ諸島はセビリアの南西(45度) → 方位ポイント(Quarter winds:1/4の円を8個に分けたモノ)=④ ・方位ポイント=④ → 方位の距離=71 これはセビリアから南西(AB)へ100リーグ進むと、セビリアから西(AB')は71リーグ進むってコトです。   これってさっきやった平面航法の超お手軽簡単バージョン! 電卓でホイホイ確認したところ、100リーグ×cos45度=70.7106781だからけっこうイケてる数字です。 「やはり計算してると航海長の血が騒ぐな。暑さも忘れる。楽しいぞ」 「いきなりどうした?」 「説明が下手過ぎて、これを読んでる皆さんがポカーンになってやしないかと心配になってきたんだ」 「確かに。俺達が盛り上げないとヤバイ雰囲気だな」 カキカキ…紙の上で計算中。 &ref(経度_正確じゃない.JPG) セビリアから南西(AB)へ100リーグ進むと、セビリアから西(AB')は71リーグ進むってコトが分かりました。 お次に2人はセビリアからトルデシリャスへ直行(AB’C’)するには、足りない距離(AB’)を計算します。 ・セビリアからカーボベルデ諸島(AB)の400リーグは100リーグの4倍。100リーグ×4=400リーグ ・セビリアから直行の足りない距離(AB’)も71リーグを4倍にする。71リーグ×4=284リーグ   ってことで、セビリアからトルデシリャスへ直行(AB’C’)は284リーグ+370リーグ=654リーグ かんたーん♥ 「俺の計算だとトルデシリャスはセビリアから西(AB’C’)に654リーグだ」 「俺の計算でも654リーグだ」 「けっこう近いな」 2人はさっそく出航しました。ひゅードッカーン「たーまやー」トルデシリャス花火大会サイコー! 「綺麗だ…来年も2人で一緒に見よう♥」 美形カプサイコー! おそらく、たぶん、もしかしたら、ナイジェルやビセンテは海図にこーゆーコト書きながら航海してるんでしょうね。 &ref(経度_正確じゃない(花火).JPG,,height=200)これは[[Trafalgar 200>http://en.wikipedia.org/wiki/Trafalgar_200]]の花火大会(2005年:イギリス) 一方★で錨を降ろし中のカイトとカズヤは、ちっとも始まらないトルデシリャス花火大会にポカーンでした。 「ねぇカズヤ。ここってホントにトルデシリャスなの?」 「大丈夫だよカイト。平面航法だとカーボベルデ諸島から離れる程ズレちゃうんだ。ちゃんと経度の補正したよ」 「でもちっとも始まらないじゃん。はあ、ジェフリーも連れてくればヨカッタかも」 「カイトが船長やりたいって言うから、ぼ、僕は(ry」 &ref(経度_正確じゃない(カズヤ).JPG)カズヤの脳内 ああ、なんということでしょう。 トルデシリャス花火大会の主催者も観覧者も、みなさんズレる平面航法をビシバシ使っていたのです。補正なんかしません。 なまじ21世紀の科学を知る2人の悲劇といえるでしょう。チャンチャン。 #endregion **どうして平面航法はズレちゃうの? 平面航法で経度がズレちゃうのは地球がタマだから。タマに三角形を描くとグニャーっとした球面三角形になります。 どー考えても三角形の三角関数表じゃムリ。三角定規でスイカは測れない! 正確な経度の計算は、緯度ごとに移動距離を計算する[[球面三角法>http://en.wikipedia.org/wiki/Spherical_trigonometry]](19世紀末に完成)とか使わないといけません。 &ref(正確じゃない_なぜ.JPG) F&B時代にどれくらい経度の補正してたのかは分からなかったけど、球面三角法の研究は奮闘努力中です。 ただし、これは緯度をビシバシ移動する時のお話し。 平面航法も地中海の中くらいなら問題ナシ。地球規模の航海だとそーとーヤバくなります。 こうやって考えてみると、世界一周してちゃんとイングランドに帰ってきたブランシス・ドレイクってスゴイのねー! #region(close,球面三角法は諦めて…距等圏航法ってなに?) 球面三角法の[[説明>http://en.wikipedia.org/wiki/Spherical_trigonometry]]は読んでもちんぷんかんぷんでございましたorz 航海長の夢は諦めた! ってことで、簡単っぽそうな距等圏航法で雰囲気を…球面三角法もこんな感じでしょか? &ref(正確じゃない_なぜ(距等圏航法).PNG) #endregion **実は平面航法でもへーきへーき トルデシリャス条約のズレは「&bold(){緯度毎に距離を補正する}(球面三角法や距等圏航法)」をしなかったからです。補正すれば万事解決。 ナイジェルやビセンテが補正してもいいけど、海図が補正したら皆さん楽チン! ついでに海図の範囲も小さくしたら「&bold(){平面航法も地中海の中くらいなら問題ナシ}」で平面航法もビシバシ使えます。 &ref(正確じゃない_へーき.JPG) 右の航海図は[[水路学者>http://en.wikipedia.org/wiki/Hydrographer]]のイギリス海軍士官[[グリーンビル・コリンズ>http://en.wikipedia.org/wiki/Greenvile_Collins]]著「Chart of the English Channel」(1693年)です。 [[プリマス湾>http://en.wikipedia.org/wiki/Plymouth_Sound]]の海図に距離尺が登場。 距離尺がいつから登場したのかは分からなかったけど、緯度毎に距離を補正してないと描けませんよね。 #region(close,海図の種類) こちらは21世紀British Admiralty製([[イギリス海軍本部>http://en.wikipedia.org/wiki/Admiralty]]?)の海図。説明は[[海上保安庁>http://www.kaiho.mlit.go.jp/]](海洋情報部)を参考にしました。 細かい数字や線や記号がアレコレいっぱい。 ササッと見たところ、F&B時代も広域と小区域の海図がちゃーんとあります。こんなにアレコレは描いてません。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Admiralty_chart]] &ref(正確じゃない_へーき(海図の種類).JPG)海図ってけっこう大きい(21世紀:イギリス海軍) |BGCOLOR(lightgrey):航海用海図&br()(Nautical Charts)|&ref(正確じゃない_へーき(海図の種類:総図).JPG)|BGCOLOR(lightgrey):総図(General Chart)| |~|~|海図の縮尺は1/400万~。&br()長距離な航海の計画立案用に使用。| |~|~|この海図は&br()BA Chart 4011 - North Atlantic Ocean Northern Part&br()(1:10,000,000)| |~|&ref(正確じゃない_へーき(海図の種類:航洋図).JPG)|BGCOLOR(lightgrey):航洋図(Sailing Chart)| |~|~|海図の縮尺は1/100万~1/400万分。&br()長距離の航海に使用。沖合の水深、灯台の位置…を図示。| |~|~|この海図は&br()BA Chart 4140 - North Sea&br()(1:1,500,000)| |~|&ref(正確じゃない_へーき(海図の種類:航海図).JPG)|BGCOLOR(lightgrey):航海図(General Chart of Coast)| |~|~|海図の縮尺は1/30万~1/100万。&br()陸地を視界に保つ航海に使用。&br()陸上の物標で船位が分かるようにアレコレを図示。| |~|~|この海図は&br()BA Chart 2675 - English Channel&br()(1:500,000)| |~|&ref(正確じゃない_へーき(海図の種類:海岸図).JPG)|BGCOLOR(lightgrey):海岸図(Coast Chart)| |~|~|海図の縮尺は1/5万~1/30万。&br()沿岸航海に使用。沿岸の地形を詳細に描写。| |~|~|この海図は&br()BA Chart 1267 - Falmouth to Plymouth&br()(1:75,000)| |~|&ref(正確じゃない_へーき(海図の種類:港泊図).JPG)|BGCOLOR(lightgrey):港泊図(Harbour Plan)| |~|~|海図の縮尺は~1/5万。&br()小区域の港湾、泊地、錨地、漁港…を詳細に描写。| |~|~|この海図は&br()BA Chart 1967 - Plymouth Sound&br()(1:15,000) | |BGCOLOR(lightgrey):水路特殊図|調べてませーん|BGCOLOR(lightgrey):海流図(Current Chart)| |~|~|海流の状況を月別に表した図。| |~|調べてませーん|BGCOLOR(lightgrey):潮流図(Tidal Stream Chart)| |~|~|潮流、潮汐曲線…の流向・流速の時刻別に表した図集。| |~|&ref(正確じゃない_へーき(海図の種類:大圏航法図).JPG)|BGCOLOR(lightgrey):大圏航法図(Gnomonic Chart for Facilitating Great Circle Sailing)| |~|~|心射図法(大圏図法)の海図。&br()地球上の2地点間の最短距離の航路が分かる。&br()この航路をフツーの海図上に転記すれば大圏航路の完成。| |~|~|この海図は&br()BA Gnomonic Chart 5095 - North Atlantic Ocean&br()(1:13,000,000)| #endregion #region(close,距離尺とディバイダーを使って距離を測定) ディバイダー(Divider:両脚器)は両方が針のコンパスみたいなヤツ。これで海図に引いた航路線の距離を測ります。 ナイジェルやビセンテも御使用。 こちらは地図製作者[[ウィレム・ブラウ>http://en.wikipedia.org/wiki/Willem_Blaeu]]著「The light of navigation」(1608年:ネーデルラント)に登場するディバイダーです。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Calipers]] &ref(正確じゃない_へーき(ディバイダー).JPG) ってことで、21世紀の海図に描いた航路線の距離をディバイダーで測ってみます。 距離尺は緯度線。単位は[[海里>http://en.wikipedia.org/wiki/Nautical_mile]](1929年に標準化:1海里=1852m)。ちなみに速度の1ノット=1海里/h。 ディバイダーをカバーっと開いて一気に測る方法もあります。 &ref(正確じゃない_へーき(ディバイダーの測り方).JPG) #endregion *もう緯度×経度もバッチリだし、さっそく出航だぁ♥ 海図に直線を引けば船の進む方向(視針路)が分かります。これでバッチリ到着?いえいえ、海はそんなに甘くないのでございます。 海流・潮流・風…外力で船は流される。 ってことで、ナイジェルやビセンテは外力をアレコレ考慮(流潮航海算法)して船の進む方向(実航針路)を決めてます。 &ref(正確じゃない_へーき(海図の種類).JPG)実航針路を考え中(21世紀:イギリス海軍) 21世紀は海図に海流・潮流・風…の線も描いて実航針路を決めます。 でもF&B時代の海図は方向・距離・面積を全部スルーの「直線が引けない[[羅針儀海図>http://en.wikipedia.org/wiki/Portolan_chart]](ポルトラノ海図)」。 ナイジェルやビセンテは脳内でウニャウニャしてたんでしょか? **実航針路の決め方 海流・潮流・風…全部考慮するのは難しそうなので、一番簡単っぽそうな「海流だけ」の実航針路の決め方を。 海図がマルだらけになったー! こちらの状況は[[青木ボート免許スクールのDVD教材>http://www.aokiboat.com/index.html]]さんの一級小型船舶操縦士問題集を参考にさせてただきました。 #blockquote(){&u(){&bold(){ナイジェルとビセンテはただ今こんな状況でございます}} ナイジェルとビセンテは話題のスイーツ屋さんアロンソ号を目指して、ウィットサンド湾をウキウキ航海中です。 このままガーッと行けばアロンソ号に到着しそう。 でもこの辺には海流が…さてさてナイジェルとビセンテは実航針路をどうすればいいでしょうか? ・ナイジェルとビセンテの船は灯台エリザベスの南4.4海里、アロンソ号は灯台フェリペの南3海里にいます。 ・海流は北東方向に流速2ノットです。 ・ナイジェルとビセンテの船は速力4ノットです。 } &ref(出航_実航針路.JPG)BA Chart 1900 #region(close,答え) #blockquote(){&u(){&bold(){視針路を探す}} ・ナイジェルとビセンテの船は灯台エリザベスの南4.4海里、アロンソ号は灯台フェリペの南3海里にいます。 &ref(出航_実航針路(答え1).JPG) ①灯台エリザベスを中心に半径4.4海里のマルを描く。 ②灯台エリザベスから南に直線を引く。 ③マルと直線が交差したトコが&bold(){ナイジェルとビセンテの船の現在地}。アロンソ号もやり方は一緒。 ④現在地とアロンソ号を線で結ぶ。これが&bold(){海流ナシの船の進む方向(視針路)}。もし海流がなければ視針路=実航針路です。 &u(){答え:ナイジェルとビセンテの船は現在地から東に進めばアロンソ号に到着します。} } #blockquote(){&u(){&bold(){実航針路を探す}} ・海流は北東方向に流速2ノットです。 ・ナイジェルとビセンテの船は速力4ノットです。 &ref(出航_実航針路(答え2).JPG) ①現在地を中心に半径2海里のマルを描く。現在地から北東に直線を引く。マルと直線が交差したトコが&bold(){海流パワー}。 ②現在地を中心に半径4.4海里のマルを描く。マルと視針路が交差したトコが&bold(){船パワー}。 ③海流パワーと船パワーを[[ベクトルの和>http://en.wikipedia.org/wiki/Euclidean_vector]]で合体する。現在地からの合体した線が&bold(){海流アリの船の進む方向(実航針路)}。 &u(){答え:ナイジェルとビセンテの船は現在地から真方位120°に変針すればアロンソ号に到着します。} } #endregion #region(close,21世紀のコンパスローズ(羅針図)には真方位と磁方位がある) 21世紀の海図には&bold(){北極星が教えてくれる[[真北>http://en.wikipedia.org/wiki/True_north]]}と&bold(){コンパスが教えてくれる[[磁北>http://en.wikipedia.org/wiki/Magnetic_north_pole]]}が描いてあります。 真北と磁北のズレは[[偏角>http://en.wikipedia.org/wiki/Magnetic_declination]](磁気偏差)。 偏角は時間と場所によって違うので、磁気偏差図や海図のコンパス図で航行海域の偏差をチェックします。大変だねー。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Compass_rose]] &ref(出航_実航針路(コンパスローズ).JPG) #blockquote(){&u(){&bold(){なんでコンパスは磁北を指すの?}} コンパスが北を指すのは地球が巨大な磁石([[地磁気>http://en.wikipedia.org/wiki/Earth%27s_magnetic_field]])だからです。磁力線は棒磁石に砂鉄を撒いたときにできるアレ。 地磁気は生体磁石を持ってるイルカ、ミツバチ、ハト…もご利用。 あと[[太陽風>http://en.wikipedia.org/wiki/Solar_wind]]から地球を守ってオーロラも生みます。地磁気すげー!ありがとー! &ref(出航_実航針路(コンパスローズ:コンパスは磁北).JPG) 地球を磁石にしてるのは、どうやら地球の中でドロドロしてる[[外核>http://en.wikipedia.org/wiki/Outer_core]]みたいです。 最初に中身が磁石にしてる?と考えたのは物理学者[[ウィリアム・ギルバート>http://en.wikipedia.org/wiki/William_Gilbert_(astronomer)]]著「[[磁石論>http://en.wikipedia.org/wiki/De_Magnete]]」(1600年:イングランド)。 ギルバートさんは女王エリザベス1世の侍医(1601-1603年)も担当してます。ピップエレキバン!? } #blockquote(){&u(){&bold(){磁北は生きてる}} なんと磁北は移動([[ポールシフト>http://en.wikipedia.org/wiki/Pole_shift_hypothesis]])します。原因は21世紀の科学の力でも分かりません。 こちらは[[アメリカ海洋大気庁>http://www.noaa.gov/]]さんのHistorical Magnetic Declination。 日本も[[地磁気観測所>http://www.kakioka-jma.go.jp/index.html]](気象庁)さんが毎日の地磁気をチェックしてます。ちなみに今日の地磁気活動は「極めて静穏」。 &ref(出航_実航針路(コンパスローズ:磁北は生きてる).GIF) なんと、なんと、なんと磁北は移動するだけじゃありません。N極とS極が逆転もします。 360万年間に11回逆転してるらしい。 最近の地磁気はどんどん弱くなってて、この減り具合だと約千年後にはほとんど消えちゃうんだって。また逆転ですか!? } #blockquote(){&u(){&bold(){なんで地球は巨大な磁石なの?}} 原因は21世紀の科学の力でもビシッと解明されてません。候補の1つが[[ダイナモ理論>http://en.wikipedia.org/wiki/Dynamo_theory]]。 ドロドロの外核が動くと電流が流れる([[フレミングの法則>http://en.wikipedia.org/wiki/Fleming%27s_left-hand_rule_for_motors]]♥)。電流が流れると磁場が作られる([[右ネジの法則>http://en.wikipedia.org/wiki/Right-hand_rule]]♥)。 この[[磁場>http://en.wikipedia.org/wiki/Magnetic_field]]が地表に溢れ出して地球が磁石([[地磁気>http://en.wikipedia.org/wiki/Earth%27s_magnetic_field]])になってるんじゃないかなぁ?と考えられてます。 &ref(出航_実航針路(コンパスローズ:地球は巨大な磁石).JPG) ダイナモ理論は簡単な仕組みの[[ダイナモ>http://en.wikipedia.org/wiki/Dynamo]](自転車のランプをつける車輪に付いた発電機)で考えたらいいそうです。 フレミングの法則♥は[[湯川先生>http://en.wikipedia.org/wiki/Galileo_(TV_series)]]の決めポーズ。 私は湯川先生みたいにフレミングの法則♥と仲良しにはなれません。ムリムリ。 &ref(出航_実航針路(コンパスローズ:フレミングの法則).JPG)眼鏡サイコー! うーん、よく分からない!という方は右手(これは高校物理で習います)でやってみてくださいね。右手なら一発です。 左手は[[【電動機】フレミングの左手の法則>http://en.wikipedia.org/wiki/Fleming%27s_left-hand_rule_for_motors]] 右手は[[【発電機】フレミングの右手の法則>http://en.wikipedia.org/wiki/Right-hand_rule]] } #endregion **どうしてナイジェルとビセンテの船は灯台エリザベスの南4.4海里って分かったの? 船と陸地の距離は[[三角測量>http://en.wikipedia.org/wiki/Triangulation]]で分かります。 &bold(){A地点の船と灯台エリザベスの角度}、&bold(){B地点の船と灯台エリザベスの角度}、&bold(){船が進んだABの距離}を測ればオケ。 三角測量は[[古代ギリシア>http://en.wikipedia.org/wiki/Ancient_Greece]](BC8-6世紀)の頃から大活躍です。 &ref(出航_南4.4海里.JPG) #region(close,直角三角形じゃないと測れないの?) いえいえ、三角測量にはちゃんと公式があります。いつも直角三角形で測るんじゃ気を抜けないもんね。 A地点の船と灯台エリザベスの角度=45度、B地点の船と灯台エリザベスの角度=45度、船が進んだABの距離=8.8海里。 さてさて船と灯台エリザベスの距離はいくつでしょう? &ref(出航_南4.4海里(三角測量の練習).JPG) #blockquote(){&u(){&bold(){三角測量の公式ってこんな感じ}} 公式はちょびっと複雑になったtanθです。 ウニャウニャしてる背景は地図学者[[ゲンマ・フリシウス>http://en.wikipedia.org/wiki/Gemma_Frisius]]著「De astrolabio catholico」(1556年:ネーデルラント)。 [[加法定理>http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_trigonometric_identities]](これは高校数学で習います)は咲いたコスモスコスモス咲いたデス♥ &ref(出航_南4.4海里(三角測量).JPG) これは21世紀のやり方。ナイジェルやビセンテは違う公式を使ってるかもしれません。 } #endregion **三角測量しまくりで地図も描ける 新しい島を発見したら三角測量で地形を正確に測量できます。 三角測量で地図を描こー!と提案したのは地図学者[[ゲンマ・フリシウス>http://en.wikipedia.org/wiki/Gemma_Frisius]]著「土地を表現する方法」(1533年:ネーデルラント)。 ヨーロッパで大ヒット。 航海テキストの[[ウィリアム・ボーン>http://en.wikipedia.org/wiki/William_Bourne_(mathematician)]]も「Rules of Navigation」(1571年:イングランド)で紹介してます。 &ref(出航_地図.JPG)川幅を測定中(16世紀:ネーデルラント) #region(close,三角測量しまくった伊能忠敬) 商人[[伊能忠敬>http://en.wikipedia.org/wiki/In%C5%8D_Tadataka]]は1800年(江戸:[[徳川家斉>http://en.wikipedia.org/wiki/Tokugawa_Ienari]])から17年間ちびちび測量して[[大日本沿海輿地全図(伊能図)>http://ja.wikipedia.org/wiki/大日本沿海輿地全図]]を作りました。17年! 基本は梵天の方向と距離を測定(導線法)。 たまに高い山とかの目標物でデータの整合性をチェック(交会法)。もし間違ってたら山は計算した方向に見えません。 &ref(出航_地図(伊能忠敬).JPG) #blockquote(){&u(){&bold(){地図の第一歩はデータ集め}} 測定は方向と距離はもちろん、北極星の高度などなどのデータも集めてます。 とにかく地図には正確なデータが大切。 左画は交会法で山や島を測量した磁針方位角台帳「山島方位記」。全67冊(約7700頁・推定データ数約20万件)です。 &ref(出航_地図(伊能忠敬:データ).JPG) 伊能忠敬がどんな三角測量の公式を使ったのかは分かりませんでした。たぶん和算をウニャウニャしてるんだと思います。 とりあえず日本はオランダ経由で西洋の測量術をゲト済み。 右画は[[松宮観山>http://ja.wikipedia.org/wiki松宮観山]](1686-1780年)著「分度余術3巻」。測量術と天文学の総合的な内容だそうです。 } #blockquote(){&u(){&bold(){データを集めたら地図を描く}} 集めた数字を線で結ぶと地図になります。完成した伊能図は大図(全214枚)、中図(全8枚)、小図(全3枚)。 伊能忠敬は途中で亡くなっちゃったので[[高橋景保>http://ja.wikipedia.org/wiki/高橋景保]]が完成。 詳細はこちら[[国立国会図書館デジタルコレクション>http://dl.ndl.go.jp/]]さんや[[古地図コレクション>http://kochizu.gsi.go.jp/HistoricalMap/]]さんをどうぞ。 &ref(出航_地図(伊能忠敬:作図).JPG)伊能中図(関東) 心を鬼にして伊能図と21世紀の地図を見比べると経線がズレちゃってます。ズレちゃうのは地球がタマを考えなかったから。 ああ、ここにもタマの犠牲者が…。 伊能図は緯線が東西に直線、経線が北極点に集中する斜交線です。緯線と経線は円弧よ!海岸線も経線に合わせて変形よ! ~[[伊能忠敬と伊能図の大事典>http://www.inopedia.jp/index.asp]]「伊能図における経線のズレについて」さんより~ } #blockquote(){&u(){&bold(){歩いた距離は地球一周分}} こちらは伊能中図(関東)をよーく見た画。緯線と経線は円弧よ!なんて軽々しく言うのが申し訳なくなっちゃいました。 測量にかかった日数は3,736日、歩いた距離は3.5万km、歩数は約5千万歩。 車もコンビニも舗装道路もない時代。おまけに第一次測量のとき伊能忠敬は55歳…21世紀なら役職定年のお年頃です。 &ref(出航_地図(伊能忠敬:地球一周).JPG) } #endregion #region(close,伊能忠敬とイギリス) イギリスは政府機関[[水路部>http://en.wikipedia.org/wiki/United_Kingdom_Hydrographic_Office]](設立:1795年)が海図を作ってます。世界中の海図を作成。もちろん日本だって作っちゃうよー! 日本海の海図「BA Chart 2347」の初版は1828年。 1861年伊能図を見た水路部は日本に伊能図の提供をお願いしてます。その後発行された1863年5月版のお役に立ったらしい♥ あと日本は縦長だから、北海道「BA Chart 4511」、小笠原諸島「BA Chart 4510」、沖縄「BA Chart 4509」です。 ~[[幕末から明治初年にかけての日本近海英国海図>http://www1.kaiho.mlit.go.jp/GIJUTSUKOKUSAI/KENKYU/report/rhr43/rhr43-01.pdf]](pdf)さんより~ &ref(出航_地図(伊能忠敬とイギリス).JPG)BA Chart 2347(1855年) こちらの1855年版はまだまだ日本が正確じゃないイマイチな海図です。シーボルトの地図を採用した部分はけっこう正確。 [[フィリップ.F.B.シーボルト>http://en.wikipedia.org/wiki/Philipp_Franz_von_Siebold]](ドイツ)は長崎のオランダ商館専属医師。 伊能図を海外に持ち出したのがバレて日本追放されちゃいました(1828年:シーボルト事件)。 1855年版の詳細は[[American Geographical Society Library Digital Map Collection>http://collections.lib.uwm.edu/cdm/landingpage/collection/agdm]]の「Japan and Korea 1855」をどうぞ。 #blockquote(){&u(){&bold(){なんでイギリスは1855年版の海図を作ったの?}} 1855年イギリスはロシアと[[クリミア戦争>http://en.wikipedia.org/wiki/Crimean_War]](1853–1856年)の真っ最中です。 遠路はるばる日本の右上[[カムチャツカ半島>http://en.wikipedia.org/wiki/Kamchatka_Peninsula]](ロシア)まで遠征(1854年:[[ペトロパブロフスク・カムチャツキー包囲戦>http://en.wikipedia.org/wiki/Siege_of_Petropavlovsk]])。 ってことで、ロシアをギャフンと言わせるなら「日本に寄港地があったら便利だなー」と海図を作りました。 &ref(出航_地図(伊能忠敬とイギリス:クリミア戦争).JPG)BA Chart 2347(2007年) なんで1855年かっていうと、イギリスと開国ホヤホヤの日本が1854年10月14日[[日英和親条約>http://en.wikipedia.org/wiki/Anglo-Japanese_Friendship_Treaty]]を結んだからです。 この頃の日本はアッチコッチと[[不平等条約>http://en.wikipedia.org/wiki/Unequal_treaty]]を締結。 イギリスどころかアメリカ・フランス・ロシア・オランダも「日本に寄港地だー!寄港地だー!」とウハウハ測量してます。 } #blockquote(){&u(){&bold(){イギリス海軍は日本海軍水路部の先生}} 海図を作ったコトなかった開国ホヤホヤの日本は、イギリス海軍に海上測量の技術をアレコレ教えてもらいました。 1871年[[日本海軍水路部>http://en.wikipedia.org/wiki/Hydrographic_office]](21世紀:運輸省水路部)を設立。 自力で海図を作れるようになります。日本海軍も世界最強イギリス海軍をお手本に作ったの。ありがとー!イギリス海軍! &ref(出航_地図(伊能忠敬とイギリス:陸中國釜石港之圖).JPG) 日本初の自力で作成した海図は「陸中國釜石港之圖」(1872年)。頑張ったのは日本海軍大佐[[柳楢悦>http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9F%B3%E6%A5%A2%E6%82%A6]](後の水路局長)です。 ポツポツは水深の数字。単位は尋(英:[[ファゾム>http://en.wikipedia.org/wiki/Fathom]]、1尋=約1.8m)。 釜石港が選ばれたのは、東京~函館の重要な中間補給地点で官営釜石製鐵所(操業:1880年)を建設中が理由らしいです。 &ref(出航_地図(伊能忠敬とイギリス:高炉).JPG)高炉ってこんなヤツ(もののけ姫はたたら炉) 官営釜石製鐵所(1885年:[[釜石鉱山田中製鐵所>http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%9C%E7%9F%B3%E9%89%B1%E5%B1%B1%E7%94%B0%E4%B8%AD%E8%A3%BD%E9%89%84%E6%89%80]]、21世紀:[[新日鐵住金釜石製鐵所>http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E6%97%A5%E9%90%B5%E4%BD%8F%E9%87%91%E9%87%9C%E7%9F%B3%E8%A3%BD%E9%90%B5%E6%89%80]])は日本初の洋式[[高炉>http://en.wikipedia.org/wiki/Blast_furnace]]製鉄所です。 鉄は国家なり♥ あっ、製鉄業者さんが旧字体「鐵」を使うのは「鉄=金を失う」で縁起が悪いからです。 } #endregion ---- ---- ※ものすごーくお世話になったサイト。詳細はこちらをご覧下さい。 ・[[数学と計算>http://mail2.nara-edu.ac.jp/~asait/]] ←ナビゲーションの英語版Wikipediaをアレコレ翻訳されてます。 ・[[中学理科の攻略☆りかちゃんのサブノート>http://www.max.hi-ho.ne.jp/lylle/]]([[太陽年周運動>http://www.max.hi-ho.ne.jp/lylle/taiyo2.html]]) ・[[星座図鑑>http://seiza-zukan.com/]]([[天文基礎事項>http://seiza-zukan.com/celestial_sphere.html]]) ・[[国立科学博物館-宇宙の質問箱-星座編>http://www.kahaku.go.jp/exhibitions/vm/resource/tenmon/space/seiza/seiza08.html]] ・[[アストロアーツ>http://www.astroarts.co.jp/index-j.html]]([[天文の基礎知識>http://www.astroarts.co.jp/alacarte/kiso/index-j.shtml]]) ・[[理科年表-オフィシャルサイト>http://www.rikanenpyo.jp/index.html]]([[徹底解説>http://www.rikanenpyo.jp/kaisetsu/kaisetsu_top.html]]) ---- ----

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: