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#contents_line(level=2,sep=/) *アルマダ海戦でスペインは斬り込み、イングランドは砲撃 ジェフリーやビセンテがやってる[[斬り込み>http://en.wikipedia.org/wiki/Naval_boarding]]は16世紀ヨーロッパの一般的な海戦術です。大砲で一斉射撃したら敵船に接舷。 戦闘員が敵船に乗り込んで白兵戦。 アルマダ海戦でイングランドは脇役の大砲を主役に軍制改革。大砲を撃ちまくってスペインの斬り込みを阻止します。 &ref(アルマダ海戦.PNG) 左側:1795年[[イギリス東インド会社>https://en.wikipedia.org/wiki/East_India_Company]]Triton号に斬り込んだ[[コルセール>https://en.wikipedia.org/wiki/French_corsairs]](フランスの[[私掠船>https://en.wikipedia.org/wiki/Privateer]])。船長は[[Robert Surcouf>https://en.wikipedia.org/wiki/Robert_Surcouf]]。 **斬り込みを工夫したスペイン 1537年スペイン王[[カルロス1世>http://en.wikipedia.org/wiki/Charles_V,_Holy_Roman_Emperor]](王フェリペ2世の父親)は海軍歩兵Infantería de Armada(世界最古の[[海兵隊>http://en.wikipedia.org/wiki/Marines]])を設立します。 海戦を重視した王フェリペ2世は[[海兵隊テルシオ>https://en.wikipedia.org/wiki/Tercio]]Tercio de Galerasにバージョンアップ。 砲撃や斬り込みなどの海戦と[[上陸戦>https://en.wikipedia.org/wiki/Landing_operation]]の専門部隊です。3,000人の海兵隊テルシオが[[ガレー船>http://en.wikipedia.org/wiki/Galley]]や[[ガレオン船>http://en.wikipedia.org/wiki/Galleon]]に常駐。 &ref(アルマダ海戦_スペイン.JPG)スポントゥーンの練習(USS[[コンスティチューション号>https://en.wikipedia.org/wiki/USS_Constitution]]) 斬り込みの武器は[[手榴弾>https://en.wikipedia.org/wiki/Hand_grenade]]、[[マスケット銃>https://en.wikipedia.org/wiki/Musket]]、[[ピストル>https://en.wikipedia.org/wiki/Pistol]]、レイピア(17世紀から短い[[カットラス>https://en.wikipedia.org/wiki/Cutlass]])、…その他アレコレの刃物です。 とっても使えるのは斬り込み斧(boarding axe)。 逆に斬り込まれそうならパイク(17世紀から短い[[スポントゥーン>https://en.wikipedia.org/wiki/Spontoon]])で相手をプスプスします。ヤードから手榴弾を投げてもオケ。 **大砲を工夫したイングランド アンガス・コンスタム著「図説スペイン無敵艦隊」によると、イングランドはスペインの2~3倍多く発射できたそうです。 海戦は大砲を撃ちまくった方が有利だぜ! こちらは1588年アルマダ海戦で使用した大砲です。なんでイングランドの大砲がオマーンにあるんでしょね? &ref(アルマダ海戦_イングランド.JPG) 左:帰還中に[[Glenagivney Bay>http://en.wikipedia.org/wiki/Kinnagoe_Bay]](アイルランド)で沈没したLa Trinidad Valencera号のブロンズ製大砲([[Ulster Museum>http://en.wikipedia.org/wiki/Ulster_Museum]])。 右:最高司令官[[エフィンガム男爵チャールズ・ハワード>http://en.wikipedia.org/wiki/Charles_Howard,_1st_Earl_of_Nottingham]]が乗船した[[Ark Royal号>http://en.wikipedia.org/wiki/English_ship_Ark_Royal_(1587)]]の大砲(オマーン:Barka Castle)。 #region(close,スペインは大砲ドーン!イングランドは大砲ドーンドーンドーン!) スペインの大砲は16世紀のヨーロッパで一般的な2輪の砲台です。大きいし、船の中だと扱いにくいし、とーっても大変。 担当したのは斬り込みがお仕事の兵士(海兵隊テルシオ?)。 タマの装塡が終わると「よーし!敵に乗り込むぜー!」と砲列甲板から離れちゃいます。砲手長が1人ぼっちで大砲ドーン。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Gun_carriage]] &ref(アルマダ海戦_イングランド(大砲).PNG)スペインの砲台は2輪、イングランドの砲台は4輪 イングランドは4輪の砲台を開発します。大きくないし、船の中でも扱いやすいし、とっても楽チン。 担当したのは砲撃がお仕事の兵士(砲撃手)。 砲撃手は「コイツの癖は知り尽くしてるぜー!」だからタマの装塡も早いです。横列甲板でずっと大砲ドーンドーンドーン。 #blockquote(){&u(){&bold(){イングランドは大砲ドーンドーンドーン!}} 大砲はドーンと撃つとガー!と後退します。砲台が4輪だと後ろにガー!の力が分散するから車輪が小さくてもオケ。 車輪が小さいと大砲を砲門の側まで出せて照準が楽チン。 あとロープを引っ張れば大砲を砲門へ出せる[[滑車装置>http://en.wikipedia.org/wiki/Pulley]]も開発。楽チンだから撃ちまくるぜー! &ref(アルマダ海戦_イングランド(大砲_滑車装置).JPG)こんな感じ? アルマダ海戦でイングランドはタマ不足になるまで撃ちまくります。でもスペイン船を破壊する威力はなかった。あちゃー! 実は扱いが大変な2輪のスペインもあちゃー! 沈没したスペイン船を調べると、扱いが大変な2輪の大型大砲より楽チンな小型([[旋回砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Swivel_gun]]とか)が多く使われたそうです。 &ref(アルマダ海戦_イングランド(大砲_砲撃戦).JPG)イングランドの大砲 左:1587年製造の刻印。 右:テューダー朝の花紋[[テューダー・ローズ>http://en.wikipedia.org/wiki/Tudor_rose]]の刻印かしら? その後、アルマダ海戦に負けちゃったスペインも4輪の砲台や滑車装置を採用します。 アルマダ海戦は海戦のターニングポイント。 だんだんヨーロッパの海戦はお互いに大砲ドーンドーンドーン!の砲撃戦が主流になっていきます。大砲もどんどん進化。 } #endregion **ついでに武器 #include(【共通】アルマダ海戦の武器と装備) #region(close,マントもお忘れなく) 16世紀末ジェフリーやビセンテのお洋服3大アイテムはダブレット、ホーズ、マント([[クローク>https://en.wikipedia.org/wiki/Cloak]])のアンサンブルです。 マントは寒さや雨風を防ぐ必須アイテム。 ファッションにも萌えにも欠かせない重要アイテム。18世紀後半になると[[オーバーコート>https://en.wikipedia.org/wiki/Overcoat]]が軍隊で使われます。 &ref(アルマダ海戦_武器と防具(マント).JPG)ひらひらサイコー♥ 右側はコチニールで染めた赤色のサテン製マント(1580-1600年:フランス)です。赤色のマントはとーっても高価。 [[タッセル>https://en.wikipedia.org/wiki/Tassel]]や刺繍は銀、銀糸、絹糸。 マントの刺繍は1590年代に流行。雷文模様(fretwork)の刺繍は1530年代フランスで始まってヨーロッパ中に広まります。 #blockquote(){&u(){&bold(){ジェフリーの着こなし}} 16世紀の絵画を眺めてみるとマントを肩に掛ける自画像が少々あります。 こちらは女王エリザベス1世に「カエル」と呼ばれたアンジュー公[[フランソワ>https://en.wikipedia.org/wiki/Francis,_Duke_of_Anjou]](1555–1584年:フランス王アンリ3世の弟)。 おしゃれなカエルさんだったんですね。 &ref(アルマダ海戦_武器と防具(マント_ジェフリー1).JPG)[[フランソワ・クルーエ>https://en.wikipedia.org/wiki/Fran%C3%A7ois_Clouet]]画「François, duc d'Alençon」(フランス) こちらはマントの胸元リボンを脇の下で結んでる着こなし。胸元リボンを肩の上で結ぶのもアリ。 ジェフリーは襟下に通したベルト? 映画「[[エリザベス:ゴールデン・エイジ>https://en.wikipedia.org/wiki/Elizabeth:_The_Golden_Age]]」(2007年)でも[[ウォルター・ローリー>https://en.wikipedia.org/wiki/Walter_Raleigh]]がマントをアレコレ着こなしてます。 &ref(アルマダ海戦_武器と防具(マント_ジェフリー2).JPG) } #blockquote(){&u(){&bold(){コチニール}} コチニールは[[アステカ>https://en.wikipedia.org/wiki/Aztec]]や[[マヤ>https://en.wikipedia.org/wiki/Maya_civilization]](メキシコ)で愛用された染料です。原材料は検索ご注意な[[コチニールカイガラムシ>https://en.wikipedia.org/wiki/Cochineal]]。 16世紀初めスペインが[[アメリカ大陸を植民地化>https://en.wikipedia.org/wiki/Spanish_colonization_of_the_Americas]]。 銀と一緒にメキシコからガッポガッポ輸入してヨーロッパ中で珍重されます。でもお高級品。 [[wikipedia>https://en.wikipedia.org/wiki/Carmine]] &ref(アルマダ海戦_武器と防具(マント_コチニール).JPG)コチニールの赤色 イングランドはコチニールをスペインから輸入してます。[[英西戦争>https://en.wikipedia.org/wiki/Anglo-Spanish_War_(1585%E2%80%931604)]](1585–1604年)の間は貿易をほぼ中止。 ってことで、スペイン在住イングランド人がこっそり貿易。 イングランド私掠船もコチニールを運ぶスペイン[[インディアス艦隊>https://en.wikipedia.org/wiki/Spanish_treasure_fleet]]から略奪してたらしいです。 } #endregion #region(close,帽子はCopintank?カヴァリエ?) Copintank帽子はぜーんぜん分かりませんでした。 右側の[[Caravaggio>https://en.wikipedia.org/wiki/Caravaggio]]画「The Fortune Teller」(1594年:イタリア)がCopintank帽子に似てるっぽい? でもジェフリーやビセンテの帽子はもっとツバが広い感じがします。 &ref(アルマダ海戦_武器と防具(帽子).JPG) #blockquote(){&u(){&bold(){ビセンテの帽子はカヴァリエっぽい?}} [[カヴァリエ>https://en.wikipedia.org/wiki/Cavalier_hat]]は17世紀に人気のダチョウの羽で飾り付けされたツバが広い帽子です。 ツバの一方をクラウンにピンで留めるのがおしゃれ。 お名前の由来は[[イングランド内戦>https://en.wikipedia.org/wiki/English_Civil_War]](1642–1651年)で王チャールズ1世を支持する[[騎士党(Cavalier)>https://en.wikipedia.org/wiki/Cavalier]]が被ってたからです。 &ref(アルマダ海戦_武器と防具(帽子_カヴァリエ).JPG)詳細不明(1630年頃らしい) } #endregion *大砲 大砲は先っぽの砲口から[[砲弾>http://en.wikipedia.org/wiki/Round_shot]](鉄の丸いタマ)を入れて、薬包の火薬を爆発させた勢いでドーンと撃ちます。 タマを敵の船にぶつけて破壊。 お名前は陸上では「キャノン」、船上では「ガン([[艦砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Naval_artillery]])」と呼び方が違います。数え方は1門、2門、3門…。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Naval_artillery_in_the_Age_of_Sail]] &ref(大砲.PNG)32ポンド砲 32ポンド砲(32-pounders)は重さが32ポンド(≒15kg)のタマを撃つ大砲です。 砲撃手って腰痛になりそう…。 あと砲身を樽(バレル)と呼ぶのは、技術や資材のない人々が木で大砲を作ってたから。樽作りの応用で虚弱ながらも撃てます。 #region(close,大砲は動かないようにロープで固定) 船は波や風でプカプカ揺れます。ってことで、大砲は動かないようにロープで固定。大砲を撃つときは固定ロープをほどく。 ジェフリーが「ロープを解くのは左舷」と命令したアレ。 固定ロープと後退防止ロープは駐退索(breeching)というっぽいです。 &ref(大砲(ロープ).JPG)普段はロープで固定([[36-pounder long gun>http://en.wikipedia.org/wiki/36-pounder_long_gun]]) #blockquote(){&u(){&bold(){ロープは大砲を発射するときも大活躍}} 大砲をドーンと撃った勢いはものすごくて、一発撃つとその反動で大砲がガーっと後退しちゃいます。 巻き込まれたら怪我するくらいハデ。 ってことで、砲台には華麗に後退するようにガン・テークルと、華麗に後退し過ぎないようにロープが付いてます。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Recoil]] &ref(大砲(ロープ:発射).JPG)一発撃つと大砲は&arrow(2)へ動く たぶん大砲を床に固定すると発射の反動で床がベリベリ壊れます。だからガン・テークルなのね。 } #endregion #region(close,大砲ってけっこう身近!?夏を彩る花火も大砲でドーン) なーんと!花火も[[迫撃砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Mortar_(weapon)]](はくげきほう)という大砲を使ってドーンっと打ち上げるそうです。大砲が身近でビックリ。 迫撃砲は大昔の[[投石機>http://en.wikipedia.org/wiki/Catapult]]、[[射石砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Bombard_(weapon)]]の進化形。 持ち運びも使い方も簡単だから戦場でも大活躍。お名前の由来は「敵に迫って砲撃する大砲」です。 &ref(大砲(花火).JPG) #blockquote(){&u(){&bold(){迫撃砲ってなに?}} 迫撃砲は射程距離(小難しく言うと[[砲口初速>http://en.wikipedia.org/wiki/Muzzle_velocity]])を抑えた大砲です。 火薬バーン!が小さいから大砲の強度も下げられるし、大砲ドーン!の反動が小さいから[[ガン・テークル>http://en.wikipedia.org/wiki/Recoil_buffer]]も不要。 ってことで、大砲の構造も簡単です。 &ref(大砲(花火:迫撃砲).JPG) 大砲は構造や用途によって種類がいっぱい。例えば[[高射砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Anti-aircraft_warfare]]は飛んでる戦闘機、[[対戦車砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Anti-tank_warfare]]は堅い戦車を撃つ大砲です。 迫撃砲は自動車や人を撃つ大砲。 命中率は低いけどドーンドーンドーンと撃ちまくれば敵をノンビリさせません([[制圧射撃>http://en.wikipedia.org/wiki/Suppressive_fire]])。 &ref(大砲(花火:制圧射撃).JPG)制圧射撃(ロシア:[[自走多連装ロケット砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Multiple_rocket_launcher]][[BM-21 Grad>http://en.wikipedia.org/wiki/BM-21_Grad]]) 制圧射撃で敵をノンビリさせないことを「[[弾幕を張る>http://en.wikipedia.org/wiki/Barrage_(artillery)]]」と言います。敵がアワアワしてる間に攻撃や撤退できちゃうの。 歩兵の基本戦術の1つ。 初めてのご使用は[[第二次ボーア戦争>http://en.wikipedia.org/wiki/Second_Boer_War]](1899–1902年)のイギリス軍です。 } #endregion #region(close,21世紀の大砲) こちらは21世紀イギリス海軍の主力艦[[45型駆逐艦>http://en.wikipedia.org/wiki/Type_45_destroyer]]。防空能力(戦闘機やミサイルによる攻撃の防御)に優れてるそうです。 グローリア号やサンティアゴ号もビックリなスゴイ武器っぽそう。 イギリス海軍のサイトには戦艦と位置、戦艦の大砲と性能が紹介されてます。あらま!ナイショじゃないのね。 &ref(大砲(21世紀)-1.PNG)&ref(大砲(21世紀)-2.PNG) |BGCOLOR(lightgrey):CENTER:|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:搭載数|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:射程距離|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:解説(えーっと、よく分かってないまま書いてます)| |③[[4.5Mk8 Gun>http://en.wikipedia.org/wiki/4.5_inch_Mark_8_naval_gun]]|1基|22km|穴から113mm口径弾をドンドンドンと毎分25発撃つ大砲。| |④[[Sea Viper>http://en.wikipedia.org/wiki/PAAMS]]|6モジュール|Aster15:&br()1.7–30km&br()Aster30:&br()3–120km|穴から[[Aster15/30ミサイル>http://en.wikipedia.org/wiki/Aster_(missile_family)]]をドーンと発射。&br()②[[Operations room>http://en.wikipedia.org/wiki/Operations_room]]の人達が①[[SAMPSONレーダ>http://en.wikipedia.org/wiki/SAMPSON]]で行き先を操作。&br()ミサイルは最大8発(1モジュール)を同時に発射、最大16発を同時に操作できる。&br()フランス、イタリアとお揃い。| |⑤[[30mm Gun>http://en.wikipedia.org/wiki/30mm_DS30M_Mark_2_Automated_Small_Calibre_Gun]]|2基||穴から[[30mm口径弾>http://en.wikipedia.org/wiki/30_mm_caliber]]をドンドンドンと毎分100-200発撃つ大砲。| |⑥[[Phalanx>http://en.wikipedia.org/wiki/Phalanx_CIWS]]|2基|3.6km|穴から[[20mm口径弾>http://en.wikipedia.org/wiki/20_mm_caliber]]をバババババと毎分4,500発撃つ[[ガトリング砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Gatling_gun]]。&br()銃身は6本。これがものすごーい速さでクルクル回転しながら順番に発射する。&br()アメリカ、海上自衛隊…とお揃い。&br()&ref(大砲(21世紀:ガトリング砲).PNG)ガトリング砲を装備したタチコマ♥| |⑦[[S1850M>http://en.wikipedia.org/wiki/S1850M]]|CENTER:-|CENTER:-|400kmの範囲にいる敵を発見できるレーダ。1,000個の目標を同時に対処できる。&br()監視してるのは②Operations roomの人達。| |⑧[[Life rafts>http://en.wikipedia.org/wiki/Lifeboat_(shipboard)]]|CENTER:-|CENTER:-|救命ボート。普段は船内にしまってあるので見た目がスッキリ。| |⑨[[Lynx Mk8>http://en.wikipedia.org/wiki/Westland_Lynx]]|CENTER:-|CENTER:-|Sea Sprayレーダ(対潜水艦?)を装備、[[Sea Skua>http://en.wikipedia.org/wiki/Sea_Skua]]ミサイルを搭載したヘリコプター。&br()フランス、ドイツ…とお揃い。| #blockquote(){&u(){&bold(){ミサイルによる攻撃ってなに?}} 21世紀は遠くまであっという間に飛ぶ[[弾道ミサイル>http://en.wikipedia.org/wiki/Ballistic_missile]]があります。とーっても遠くまで飛ぶのは[[大陸間弾道ミサイル>http://en.wikipedia.org/wiki/Intercontinental_ballistic_missile]]。 先っぽに核を載せてもオケ。 2015年[[アメリカ国防総省>http://en.wikipedia.org/wiki/United_States_Department_of_Defense]]の[[レポート>http://www.defense.gov/pubs/2015_China_Military_Power_Report.pdf]](pdf)によると中国は全米に届く核ミサイルをいっぱい持ってるそうです。 &ref(大砲(21世紀:ミサイルによる攻撃).JPG)弾道ミサイルの射程距離(2013年:中国) 弾道ミサイルは潜水艦にも載せられます。ウチの弾道ミサイルはそんなに飛ばないわ…の国は潜水艦で近所へ行ってドーン。 こちらはイギリス海軍の潜水艦[[HMS Vanguard>http://en.wikipedia.org/wiki/HMS_Vanguard_(S28)]]の核ミサイル発射テスト(2012年)。 ボタンをポチで発射したミサイルは[[誘導>http://en.wikipedia.org/wiki/Missile_guidance]]されて標的をドカーン。自分で標的を探すミサイルもあります(自立誘導)。 &ref(大砲(21世紀:ミサイルによる攻撃_発射).JPG) この発射テストはイランとアルゼンチンに向けて軍事力の警告(相手をビビらせる)を含んだテストだそうです。 HMS Vanguardは16発の核ミサイルを装備。 ちなみにミサイルには部品や火薬の劣化で有効期限があります。 } #blockquote(){&u(){&bold(){ミサイルによる攻撃の防御ってなに?}} 潜水艦発射弾道ミサイル[[UGM-133 Trident II>http://en.wikipedia.org/wiki/UGM-133_Trident_II]]はマッハ24で飛びます。弾道ミサイルは遠くからあっという間に飛んで来る。 ってことで、迎撃がとーっても難しいの。 皆さん一生懸命[[ミサイル防衛>http://en.wikipedia.org/wiki/Missile_defense]]を考えてます。イギリス海軍の主力艦45型駆逐艦の④Sea Viperも[[対ミサイル>http://en.wikipedia.org/wiki/Aster_(missile_family)]]。 &ref(大砲(21世紀:ミサイルによる攻撃_防衛).JPG)ミサイル防衛 あっという間に飛んで来る弾道ミサイルは、一国で対応するより大勢で協力した方が撃墜の可能性が高くなります。 イギリスやスペインはNATOでご一緒にミサイル防衛。 NATOのミサイル防衛は[[ALTBMD>http://en.wikipedia.org/wiki/NATO_missile_defence_system]](Active-Layered Theatre Ballistic Missile Defense)というっぽいです。 &ref(大砲(21世紀:ミサイルによる攻撃_日本).JPG) 日本のミサイル防衛はBMD(Ballistic Missile Defense)というっぽいです。アメリカとご一緒にミサイル防衛? こちらは護衛艦[[きりしま>http://en.wikipedia.org/wiki/JDS_Kirishima]]の弾道ミサイル迎撃テスト。 飛んできた弾道ミサイルを迎撃したのは艦船発射型弾道弾迎撃ミサイル[[SM-3>http://en.wikipedia.org/wiki/RIM-161_Standard_Missile_3]]です。ちゃんと当たりました♥ } #endregion **ぶつけるタマは「shot」、爆発するタマは「shell」 大砲で撃つタマは砲弾です。中に火薬が入って無い砲弾は[[ショット>http://en.wikipedia.org/wiki/Round_shot]]、火薬が入ってる砲弾は[[シェル(榴弾)>http://en.wikipedia.org/wiki/Shell_(projectile)]]っぽい。 初めて海戦で使われたシェルは1822年[[ペクサン砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Paixhans_gun]](フランス)。 陸戦は16世紀から一般的に迫撃砲などでご使用。19世紀中頃まで[[導火線>http://en.wikipedia.org/wiki/Artillery_fuze]](slow burning fuse)で爆発します。 &ref(大砲(タマ).JPG) 左側:[[Castel Nuovo>http://en.wikipedia.org/wiki/Castel_Nuovo]](イタリア)のブロンズ製ドアにぶつけたスペイン将軍[[ゴンサロ・フェルナンデス・デ・コルドバ>http://en.wikipedia.org/wiki/Gonzalo_Fern%C3%A1ndez_de_C%C3%B3rdoba]]が撃ったショット(1503年:Siege of Naples) 右側:[[Keeler Tavern>http://en.wikipedia.org/wiki/Keeler_Tavern]](アメリカ)の木製柱にぶつけたイギリスが撃ったショット(1777年:[[リッジフィールドの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Ridgefield]]) #region(close,タマはいっぱい種類がある) こちらは昔の皆さんがご使用したタマの一部。ジェフリーやビセンテはたぶんIron shotをご使用してます。 Iron shotはぶつけて相手を破壊。 破壊できるのはタマがすごーい速さで飛ぶからです。気が付いたら「あらま!ぶつかってた!」ってくらい速い。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_cannon_projectiles]] |&ref(大砲(タマ:種類).PNG)|BGCOLOR(lightgrey):①|[[円弾>http://en.wikipedia.org/wiki/Round_shot]]|石弾|石製タマ(gunstone)は17世紀までに鉄製タマに交代。&br()最初の焼玉式焼夷弾は1579年ポーランド王[[ステファン・バートリ>http://en.wikipedia.org/wiki/Stephen_B%C3%A1thory]]。&br()炉で焼いたアツアツの鉄製タマだから相手は火事になる。| |~|BGCOLOR(lightgrey):②|~|Iron shot|~| |~|BGCOLOR(lightgrey):③|>|[[焼玉式焼夷弾>http://en.wikipedia.org/wiki/Heated_shot]]|~| |~|BGCOLOR(lightgrey):④|>|[[ぶどう弾>http://en.wikipedia.org/wiki/Grapeshot]]|最初のぶどう弾は[[フス戦争>http://en.wikipedia.org/wiki/Hussite_Wars]](1419–1434年)。&br()帆船時代の海戦で活躍。&br()中の鉄球が散乱して相手は広範囲の人や[[索具>http://en.wikipedia.org/wiki/Rigging]]が被害を受ける。| |~|BGCOLOR(lightgrey):⑤|>|[[チェーンショット>http://en.wikipedia.org/wiki/Chain-shot]]|最初のチェーンショットは1631年[[マクデブルクの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Sack_of_Magdeburg]]。&br()帆船時代の海戦で活躍。相手の索具を斬って船を動かせなくする。| |~|BGCOLOR(lightgrey):⑥|>|[[バーショット>http://en.wikipedia.org/wiki/Chain-shot]]|~| |~|BGCOLOR(lightgrey):⑦|>|[[カーカス弾>http://en.wikipedia.org/wiki/Carcass_(projectile)]]?|最初のカーカス弾は1672年フランス王[[ルイ14世>http://en.wikipedia.org/wiki/Louis_XIV_of_France]]。&br()中の可燃物が爆発して相手は広範囲の人が死ぬ。火事になる。| |~|BGCOLOR(lightgrey):⑧|>|[[キャニスター弾>http://en.wikipedia.org/wiki/Canister_shot]]|18~19世紀の戦場で活躍。&br()中の鉄球、鉄くず、釘…が散乱して相手は広範囲の人が死ぬ。| |~|BGCOLOR(lightgrey):⑨|>|[[榴散弾>http://en.wikipedia.org/wiki/Shrapnel_shell]]|1784年[[イギリス陸軍砲兵隊>http://en.wikipedia.org/wiki/Royal_Artillery]]が開発。&br()中の鉄球、鉛球が散乱して相手は広範囲の人が死ぬ。| #blockquote(){&u(){&bold(){ぶどう弾ってなに?}} ぶどう弾は帆布製の袋に鉄球が入ったブドウみたいな形のタマです。大砲ドーンで袋が破れて鉄球がブハーと飛び出す。 18~19世紀に大人気っぽい。 大量の鉄球が散乱して相手の帆、帆を繋ぐロープ、甲板にいる水夫…手前のアレコレを一気に破壊します。 &ref(大砲(タマ:ぶどう弾).PNG) 逆にぶどう弾を撃たれそうなら舷側に鉄製ハンモック・ネッティング(hammock netting)を張れば鉄球を止められます。 ついでに斬り込みも阻止。 これは18世紀後半からで斬り込み防止網(anti boarding net)というっぽいです。 &ref(大砲(タマ:ぶどう弾_キャニスター弾).JPG) 19世紀末[[ライフリング>http://en.wikipedia.org/wiki/Rifling]](砲膣が螺旋状の溝)の大砲が登場します。溝があるとタマが「敵にバッチリ当たる」の。 溝の大砲でぶどう弾は使用不可。 あらま!ってことで、[[スズ>http://en.wikipedia.org/wiki/Tin]]や[[黄銅>http://en.wikipedia.org/wiki/Brass]]の容器を[[装弾筒>http://en.wikipedia.org/wiki/Sabot]](たぶん木製)でカバーしたキャニスター弾に代替わりします。 } #endregion #region(close,どうやってシェルは爆発するの?) シェルの中には火薬(起爆剤)が入ってます。火薬を爆発させるのは[[信管>http://en.wikipedia.org/wiki/Fuse_(explosives)]]。爆発のタイミングを調整する時限信管もあります。 F&B時代に大活躍の[[火縄>http://en.wikipedia.org/wiki/Slow_match]]も信管の1つ。 タマの信管構造は複雑でちんぷんかんぷん。ってことで、こちらはシンプルな西洋式花火(aerial shell)の信管構造です。 &ref(大砲(タマ:爆発).JPG)日本式花火とは構造が違う #blockquote(){&u(){&bold(){榴散弾の爆発}} 榴散弾は遠くまで飛ぶタマです。信管から火が出て炸薬が爆発。炸薬の爆発で容器が破れて鉄球がブハーと飛び出す。 信管は相手の近所でブハーとなる時限信管。 皆さんいろいろ考えるんだなぁ。逆に榴散弾を撃たれそうなら[[有刺鉄線>http://en.wikipedia.org/wiki/Barbed_wire]]、[[砂袋>http://en.wikipedia.org/wiki/Sandbag]]、[[ヘルメット>http://en.wikipedia.org/wiki/Combat_helmet]]で鉄球を止められます。 &ref(大砲(タマ:榴散弾).JPG) } #endregion **砲列甲板 砲列甲板は大砲がズラーっと並んでる場所です。撃つときは窓(砲門:Gun port)から先っぽを外に出して、敵船を狙って、ドーン。 ジェフリーが「まだだ…」って覗いてたアレ。 砲門は海水が入らない高さにあるけど、波が荒れると海水が入り込んじゃうから砲門蓋(lid)が付いてます。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Gun_deck]] &ref(大砲_砲列甲板.JPG) #region(close,砲列甲板は大混雑) 砲列甲板はとっても狭いです。戦闘中は人がいっぱいで大混雑。いろんな道具も置いてあってますます大混雑。 もわもわしてるのは大砲を撃った煙のせい。 上半身裸族の絵画が多かったです。パンパン中の砲列甲板は暑いのかも。それにしても皆さん良い体してますのぉ♥ &ref(大砲_砲列甲板(大混雑).JPG)Robert Sticker画「砲列甲板」(1812年:[[米英戦争>http://en.wikipedia.org/wiki/War_of_1812]]) #endregion #region(close,砲門と砲門蓋) 砲門の起源はハッキリしてないげど15世紀後半には登場。16世紀になると砲列についてアレコレ研究が進みます。 こちらは一般的な帆船時代の砲門サイズ([[36-pounder long gun>http://en.wikipedia.org/wiki/36-pounder_long_gun]]の場合)と間隔。 船体に穴を開けてもなるべく軟弱にならないような砲門を考えなくちゃいけません。船尾にも砲門があるんですね。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Gun_port]] &ref(大砲_砲列甲板(砲門と砲門蓋).JPG)[[ジョン・パイン>http://en.wikipedia.org/wiki/John_Pine]]画「Armada 1588」(1739年:イギリス) #blockquote(){&u(){&bold(){砲門は大砲の先っぽを外に出すだけじゃない}} 大砲を撃つときは砲門から先っぽを外に出して、敵船を狙って、ドーンです。火薬のせいで砲列甲板はすさまじい白煙。 何も見えずの手探り状態。 戦闘中にこれはヤバイ!とってもヤバイです!ってことで白煙の換気にも砲門は重要です。 &ref(大砲_砲列甲板(砲門と砲門蓋:砲門).JPG)砲門から敵船をチェック中 船内は埃っぽいので砲門は普段の換気のためにも使われます。ただし、下層砲列甲板の皆さんは換気にご注意! 突風で砲門から波が入る危険アリ。 とっても運が悪いと船が沈没しちゃいます。ってことで、砲門蓋はちょびっとだけ開けられるように工夫。 } #blockquote(){&u(){&bold(){砲門蓋の開け方}} 砲門蓋を開けるには、繋止鏈(けいしれん)をスルスルしてナントカ(名前不明)にグルグルして止めます。 船の外側の壁に引っかける方法もあり。 繋止鏈は「坂の上の雲」に書いてあったんだけど、マイナーな言葉なんでしょか?これ以上は分かりませんでした。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Gun_port]] &ref(大砲_砲列甲板(砲門と砲門蓋:砲門蓋).JPG)砲列甲板 ちなみにアレコレ図面(?)を見たら、砲列甲板の床は中央から砲門に向かって下ってる船が多かったです。 下ってると大砲を動かしやすいのかも。 何もかもが力仕事の帆船時代はこーゆー工夫がアッチコッチにあるんだと思います。 } #endregion **大砲の発射 大砲は一発撃つと反動で後退しちゃうから「狙い」の修正は不可能です。だからとにかく撃ちまくる。なるべく近付いて撃ちまくる。 っといっても一発のドーンが大仕事。 ポンポン撃てません。砲弾は陸上では「キャノン・ボール」、船上では「ショット」と呼び方が違います。数え方は1発、1個、1弾。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Cannon_operation]] &ref(大砲_発射.GIF)一発のドーン 大砲は砲口(Muzzle)、マスケット銃は銃口(Muzzle)から砲弾を入れます(先込め:[[マズルローダー>http://en.wikipedia.org/wiki/Muzzleloader]])。 19世紀[[隔螺式ネジ>http://en.wikipedia.org/wiki/Interrupted_screw]]が登場すると砲弾は後ろから([[元込め>http://en.wikipedia.org/wiki/Breech-loading_weapon]])。 元込めは火薬が爆発するトコだからネジで尾栓をキッチリ閉じないとキケンなの。14世紀にも爆発が弱い[[フランキ砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Breech-loading_swivel_gun]]とかはあります。 #region(close,一発のドーンは大仕事) 大砲を一発撃つにはこーんなにたくさんの作業が必要です。だからポンポン撃てないの。 あと長時間の御使用もヤバイ。 撃ちまくってると大砲が熱くなって、砲身が火薬の圧力に耐えきれずに破裂(腔発)しちゃいます。火傷もきけん、きけん。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Muzzleloader]] &ref(大砲_発射(一発のドーン).JPG) |BGCOLOR(lightgrey):掃除|BGCOLOR(lightgrey):1|Wormer(螺旋コイル付きの木の棒)で筒の中のゴミを取り除く。| |BGCOLOR(lightgrey):雑巾がけ|BGCOLOR(lightgrey):2|空気の出入り防止に[[火門/火口>http://en.wikipedia.org/wiki/Touch_hole]](Vent:火薬に点火する穴)を指で塞ぐ。&br()[[洗桿>http://en.wikipedia.org/wiki/Cannon_operation]](Sponge:湿った羊皮で覆われたスポンジ)で前回発射の燃えカスや残り火を完全に取り除く。&br()※とっても重要な作業だから2回やる。ちゃんと掃除しないと↓で火薬ボーン。| |BGCOLOR(lightgrey):火薬のセット|BGCOLOR(lightgrey):3|[[さく杖>http://en.wikipedia.org/wiki/Ramrod]](Rammer)で薬包(Fabric Bag:火薬の入った袋)を筒の中に込める。奥までビシッと突っ込む。&br()ついでにギューギューして、火薬の粒の間の空気をちゃんと押し出す。残ってると全力で火薬ボーンしない。&br()※さく杖程度の圧力じゃ火薬ボーンしないから大丈夫。| |BGCOLOR(lightgrey):砲弾のセット|BGCOLOR(lightgrey):4|Scraperで砲弾を筒の中に込める。急いでるときは火薬と一緒に入れる。&br()※火薬と砲弾の間に[[ワッズ>http://en.wikipedia.org/wiki/Wadding]](Wadding:火薬をギュッっと押し込んでおく紙や布)を入れる方法もある。&br()※船は波や風でプカプカ揺れるから砲弾を込めた後、ゴロゴロ転がらないように麦わらを詰め込む方法もある。| |BGCOLOR(lightgrey):発射準備|BGCOLOR(lightgrey):5|火門から[[火門針>http://en.wikipedia.org/wiki/Cannon_operation]](Priming iron:火門を掃除する針)を刺して薬包に穴を開ける。| |~|BGCOLOR(lightgrey):6|火薬が詰まった[[羽ペン>http://en.wikipedia.org/wiki/Fuse_%28explosives%29]]を火門にプスッと刺す。刺した人は「PRIMED」と叫ぶ。&br()※[[角製火薬筒>http://en.wikipedia.org/wiki/Powder_horn]](Powder Horn:角製の火薬入れ)を使って火門に火薬を入れる方法もある。| |BGCOLOR(lightgrey):発射|BGCOLOR(lightgrey):7|後ろの人(船長とか)の指示で大砲の照準を合わせる。&br()左右の移動はテコ棒(Hand spikes)、角度の調整はクォイン(Quoin)で動かす。&br()&ref(大砲_発射(一発のドーン:クォイン).JPG)クォイン(HMS[[ヴィクトリー>http://en.wikipedia.org/wiki/HMS_Victory]]の[[カロネード砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Carronade]])| |~|BGCOLOR(lightgrey):8|後ろの人の「GIVE FIRE」で、[[導火桿>http://en.wikipedia.org/wiki/Linstock]](Linstock:火縄の付いた棒)を羽ペンに置いて点火する。&br()みんなは大砲から離れる。砲弾ドーン!大砲後ろにガー!白煙ブワー!| #blockquote(){&u(){&bold(){21世紀のドーンは楽チン}} 21世紀は機械がタマを大砲に込めてくれます([[自動装填装置>http://en.wikipedia.org/wiki/Autoloader]])。大砲もタマも大きすぎて人間がやるのはムリ。 狙いはコンピューター。発射はボタンをポチ。 こちらはちょびっと昔の自動装填装置。緑色がタマで黄色が薬包です。あっ、21世紀は火薬がタマの中に入ってます。 &ref(大砲_発射(一発のドーン:21世紀).GIF)[[BL 15 inch Mk I naval gun>http://en.wikipedia.org/wiki/BL_15_inch_Mk_I_naval_gun]](1915-1959年:イギリス) 火薬庫の火薬が爆発するとヤバイ!ってことで、火薬庫は大砲ドーンの火が入らないように自動開閉のドアが付いてます。 自動開閉は大砲ドーンと連動。 ボーっと立ってる方は身長172cmです。大砲の大きさもご堪能下さい。BLって何の略語でしょね? } #endregion #region(close,流れ作業で効率アップ) それぞれの作業は担当が決まってるので、流れ作業でパパッとやって大砲を撃つ時間を短縮してます。 こちらは18世紀初めのアメリカ陸軍。 時代や陸海軍でビミョーに違うんだと思います。F&B時代は分かりませんでした。 &ref(大砲_発射(流れ作業).JPG) #endregion **大砲の火薬 F&B時代の火薬は黒色火薬。一発撃つとすさまじい白煙を出すので、船内は何も見えずの手探り状態です。敵が見えない。 風上に向かって撃つと白煙がなかなか抜けずに危険倍増。 おまけに成分も体に悪い。煙と音の動画はこちらhttp://www.youtube.com/watch?v=L2WdU3Zkeigをどうぞ。 ←曲が終わると突然バンバンなのでご注意! [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Black_powder]] &ref(大砲_火薬.JPG)ちっちゃい大砲でも煙はスゴイ #region(close,火薬を運ぶのは子供達) 黒色火薬は簡単に爆発しちゃいます。大砲の横に置いたらヤバイ!ってことで、火薬庫(船庫のどこか)に厳重保存。 パンパン撃ち合うときは一回ごとに火薬庫から火薬を補充。 補充の担当はちっこくて素早く動ける少年達([[パウダー・モンキー>http://en.wikipedia.org/wiki/Powder_monkey]])。皮製の火薬筒(Cordite Bucket?)に火薬を入れて運んでました。 &ref(大砲_火薬(パウダー・モンキー).JPG)Daniel Maclise画「[[The Death of Nelson>http://en.wikipedia.org/wiki/The_Death_of_Nelson_(Maclise_painting)]]」(1859年頃:イングランド) #blockquote(){&u(){&bold(){火薬はとっても取扱注意}} 黒色火薬を厳重保存する火薬庫はちょっとの火や静電気や衝撃も危険。入る時はなめ皮やフェルト製のスリッパ履きます。 危険なのは21世紀も一緒。 もし爆発したら[[90式戦車>http://en.wikipedia.org/wiki/Type_90_Ky%C5%AB-maru]](きゅうまるしきせんしゃ)のバナナ砲身みたいになっちゃいます。 &ref(大砲_火薬(パウダー・モンキー:取扱注意).JPG) えっと…バナナ砲身は戦車が曲がるとき砲身が土手にぶつかって、砲口に土が詰まったまま砲撃したらしいです。 すごい破壊力。 火薬はとっても取扱注意です。こちらは国土交通省の『危険物船舶運送及び貯蔵規則』の一部。 ・火薬類を積載してある場所においては、&bold(){防爆型の懐中電灯以外の照明を用いてはならない}。(第47条) ・火薬類の荷役をする場所又はこれを積載してある場所及びこれらの付近においては、マッチ、むきだしの鉄製工具その他火花を発しやすい物品を所持し、又は&bold(){鉄びようの付いているくつ類をはいてはならない}。(第47条) ←どんな靴? ・火薬類を積載する船倉若しくは区画の出入口又は火薬庫の開閉扉は、施錠その他関係者以外の者が立入ることができないような措置を講じなければならない。(第52条) } #blockquote(){&u(){&bold(){火薬庫は吃水線の下}} もし火薬が爆発したら一緒に船も壊れちゃうかもしれません。ヤバイ!ってことで、火薬庫は吃水線の下(海の中)。 この船はWater line(送水管?)も設置。 スプリンクラーっぽいヤツ?グローリア号やサンティアゴ号にも付いてるのかしら?送水管の詳細は分かりませんでした。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Magazine_%28artillery%29]] &ref(大砲_火薬(パウダー・モンキー:火薬庫).JPG)吃水線はこんな感じ? } #endregion #region(close,21世紀の火薬) 21世紀の火薬は煙の少ない[[無煙火薬>http://en.wikipedia.org/wiki/Smokeless_powder]]です。っていうか、煙がどーのこーのってレベルじゃないっっっ!火がー!火がー! こちらはアメリカ海軍の戦艦[[アイオワBB-61>http://en.wikipedia.org/wiki/USS_Iowa_%28BB-61%29]](進水:1942-1990年)。 お魚が心配になる威力です。1989年装薬が静電気の引火で爆発([[戦艦アイオワ砲塔爆発事故>http://en.wikipedia.org/wiki/USS_Iowa_turret_explosion]])。47名が亡くなりました。 &ref(大砲_火薬(21世紀).JPG)50口径40.6cm砲の発射 |BGCOLOR(lightgrey):|BGCOLOR(lightgrey):搭載数|BGCOLOR(lightgrey):口径&br()(inches)|BGCOLOR(lightgrey):砲身長&br()(feet)|BGCOLOR(lightgrey):重量&br()(pounds)|BGCOLOR(lightgrey):砲弾重量&br()(pounds)|BGCOLOR(lightgrey):火薬量&br()(pounds)|BGCOLOR(lightgrey):射程距離&br()(yards)| |BGCOLOR(lightgrey):[[50口径40.6cm砲>http://en.wikipedia.org/wiki/16-50_Mark_7]]|7門|16(40.64cm)|66′8″(20m32cm)&br()50calibers|267,904(122t)|AP Mark 8:&br()2,700(1.23t)|660(300kg)|41,622(38km)| #endregion **射程距離 射程距離が知りたいだけなのに…こんな表になってしまいました。世の中はこのワケ分かんないデータが重要だそうです。ふぇー。 とりあえず大砲って重い。 砲手の皆さんは大変なんですね。詳細は歴史学者[[Albert Manucy>http://en.wikipedia.org/wiki/Albert_Manucy]]著「Artillery Through the Ages」(1949年:アメリカ)をどうぞ。 &ref(大砲_射程距離.JPG)[[ゴールデン・ハインド号>http://en.wikipedia.org/wiki/Golden_Hind]]の大砲(レプリカ) |>|>|>|>|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:イングランド(16世紀)| |BGCOLOR(lightgrey):|BGCOLOR(lightgrey):口径&br()(inches)|BGCOLOR(lightgrey):砲身長&br()(feet)|BGCOLOR(lightgrey):重量&br()(pounds)|BGCOLOR(lightgrey):砲弾重量&br()(pounds)|BGCOLOR(lightgrey):火薬量&br()(pounds)|BGCOLOR(lightgrey):射程距離&br()(yards)| |BGCOLOR(lightgrey):Rabinet|1(2.54cm)|?|300(136kg)|0.3(0.14kg)|0.18(0.08kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):Serpentine|1.5(3.81cm)|?|400(181kg)|0.5(0.23kg)|0.3(0.14kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):[[ファルコネット砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Falconet_%28cannon%29]]|2(5.08cm)|3′9″(1m14cm)|500(227kg)|1(0.45kg)|0.4(0.18kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):Falcon|2.5(6.35cm)|6′0″(1m83cm)|680(308kg)|2(0.91kg)|1.2(0.54kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):[[ミニオン砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Minion_%28cannon%29]]|3.5(8.89cm)|6′6″(1m98cm)|1,050(476kg)|5.2(2.36kg)|3(1.36kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):[[セーカー砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Saker_%28cannon%29]]|3.65(9.27cm)|6′11″(2m11cm)|1,400(635kg)|6(2.72kg)|4(1.81kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):[[デミ・カルバリン砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Demi-culverin]]|4(10.16cm)|?|3,400(1,542kg)|8(3.63kg)|6(2.72kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):Culverin bastard|4.56(11.58cm)|8′6″(2m59cm)|3,000(1,361kg)|11(4.99kg)|5.7(2.59kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):[[バシリスク砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Basilisk_%28cannon%29]]|5(12.70cm)|?|4,000(1,814kg)|14(6.35kg)|9(4.08kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):[[カルバリン砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Culverin]]|5.2(13.21cm)|10′11″(3m33cm)|4,840(2,195kg)|18(8.17kg)|12(5.44kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):Pedrero|6(15.24cm)|?|3,800(1,724kg)|26(11.79kg)|14(6.35kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):[[デミ・カノン砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Demi-cannon]]|6.4(16.26cm)|11′0″(3m35cm)|4,000(1,814kg)|32(14.51kg)|18(8.17kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):Bastard cannon|7(17.78cm)|?|4,500(2,041kg)|42(19.05kg)|20(9.07kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):Cannon serpentine|7(17.78cm)|?|5,500(2,495kg)|42(19.05kg)|25(11.34kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):[[カノン砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Cannon]]|8(20.32cm)|?|6,000(2,722kg)|60(27.22kg)|27(12.25kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):Cannon royal|8.54(21.69cm)|8′6″(2m59cm)|8,000(3,629kg)|74(33.57kg)|30(13.61kg)|| |>|>|>|>|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:スペイン(16世紀)&br()&ref(大砲_射程距離(ポイント・ブランク).JPG)射程距離は上段:[[ポイント・ブランク>http://en.wikipedia.org/wiki/Point-blank_range]](大砲を敵船に真っ直ぐに向けた時)、下段:最大(大砲が一番飛ぶ角度の時)| |BGCOLOR(lightgrey):|BGCOLOR(lightgrey):口径&br()(inches)|BGCOLOR(lightgrey):砲身長&br()([[calibers>http://en.wikipedia.org/wiki/Caliber_%28artillery%29]])|BGCOLOR(lightgrey):重量&br()(pounds)|BGCOLOR(lightgrey):砲弾重量&br()(pounds)|BGCOLOR(lightgrey):火薬量&br()(pounds)|BGCOLOR(lightgrey):射程距離&br()(yards)| |BGCOLOR(lightgrey):Esmeril||||1/2 (0.14kg)||208(190m)&br()750(686m)| |BGCOLOR(lightgrey):[[ファルコネット砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Falconet_%28cannon%29]]||||1 (0.45kg)||| |BGCOLOR(lightgrey):Falcón ||||3 (1.36kg)||417(381m)&br()2,500(2,286m)| |BGCOLOR(lightgrey):Pasavolante||40~44||6 (2.72kg)||500(457m)&br()4,166(3,809m)| |BGCOLOR(lightgrey):Media sacre||||6 (2.72kg)||417(381m)&br()3,750(3,429m)| |BGCOLOR(lightgrey):Sacre||||9 (4.08kg)||| |BGCOLOR(lightgrey):Moyana||||9 (4.08kg)||| |BGCOLOR(lightgrey):Media culebrina||||12 (5.44kg)||833(762m)&br()5,000(4,572m)| |BGCOLOR(lightgrey):Tercio de culebrina||||18 (8.16kg)||| |BGCOLOR(lightgrey):[[カルバリン砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Culverin]]||30~32||24 (10.89kg)||1,742 (1,593m)&br()6,666(6,095m)| |BGCOLOR(lightgrey):Culebrina real||30~32||32 (14.52kg)||| |BGCOLOR(lightgrey):Doble culebrina||30~32||48 (21.77kg)||| #region(close,射程距離は口径、砲身長、砲弾重量、火薬量で変わるっぽい(弾道学)) もし戦うなら大砲は「遠くまでピューっと飛ぶ」「敵にバッチリ当たる」「敵をドカーンと壊す」がいいですよね。 これを研究したのが[[弾道学>http://en.wikipedia.org/wiki/Ballistics]]。 大砲のタマは地球の重力や空気とかが影響するそうで…とってもムズカシイ学問らしいです。[[弾道振り子>http://en.wikipedia.org/wiki/Ballistic_pendulum]]なんかも弾道学の1つ。 &ref(大砲_射程距離(弾道学).JPG)砲口初速が分かる弾道振り子(高校物理で習います) #blockquote(){&u(){&bold(){砲身が長いと「遠くまでピューっと飛ぶ」}} タマは火薬がバーン!と爆発したエネルギーで前へ進みます。エネルギー満杯の砲身の中でどーんどん加速。 でも長ければオケじゃないのでご注意。 タマが砲口を出たときの速度([[砲口初速>http://en.wikipedia.org/wiki/Muzzle_velocity]])が絶好調の「きゃー♥」になる長さがちょうど良い砲身長です。 &ref(大砲_射程距離(弾道学:ピュー).PNG) 逆に砲身が短いとタマが「きゃー♥」になる前に飛び出しちゃいます。加速が足りないからピューっと飛べない。 そんなときは火薬を増やせばオケ。 絶好調の「きゃー♥」は砲身長、火薬の質(燃焼速度と膨張率)、火薬の量、タマの大きさ(重量)…などなどが影響します。 &ref(大砲_射程距離(角度).JPG)Diego Ufano著「Theoretical mechanics(?)」(1628年:ドイツ) 砲身の角度は45度くらいでタマが一番遠くまでピューっと飛ぶそうです。ふぇー。理由は聞かないで…世の中そーゆーもん。 F&B時代はとってもピューでも大丈夫なのかしら? なんか遠くの敵の船が見えなさそう。船がプカプカ揺れるから当てるの大変そう。砲身が砲門にぶつかりそうです。 ~[[Yahoo!知恵袋>http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1319276808]]さんより~ } #blockquote(){&u(){&bold(){砲身の中(砲膣)が螺旋状の溝だと「敵にバッチリ当たる」}} F&B時代の大砲のタマは丸い形をした[[砲丸>http://en.wikipedia.org/wiki/Round_shot]]([[弾丸>http://en.wikipedia.org/wiki/Bullet]])です。大砲ドーン!で飛び出したタマはヘロヘロと飛びます。 丸いタマは先っぽが尖ったタマより空気抵抗が大きいの。 弾軸が不安定だからドコへ飛んでいくのかイマイチ分からない。狙った敵に当てるのがとっても大変です。困っちゃうねー。 &ref(大砲_射程距離(弾道学:弾丸).JPG)[[メアリー・ローズ>http://en.wikipedia.org/wiki/Mary_Rose]]の砲丸(16世紀:イングランド) 弾軸を安定させるにはタマの先っぽを尖らせて、大砲ドーン!で飛び出すタマをクルクル回転させたらオケです。 クルクルすると弾軸が安定([[ジャイロ効果>http://en.wikipedia.org/wiki/Gyroscope]])。 火薬バーン!で膨張したタマが砲膣の[[ライフリング>http://en.wikipedia.org/wiki/Rifling]](螺旋状の溝)に押し付けられるとクルクル回転します。 &ref(大砲_射程距離(弾道学:バッチリ).JPG) ジャイロ効果は[[弓矢>http://en.wikipedia.org/wiki/Bow_and_arrow]]の時代から気が付いてました。15世紀末にはドイツでライフリングのライフル砲が登場。 でも爆発した黒色火薬が出す大量のゴミで溝が埋るから掃除が大変。 螺旋状の溝を彫るのも難しい。F&B時代の主流は砲膣がツルツルの[[滑腔砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Smoothbore]]です。ライフル砲は19世紀までお待ち下さい。 &ref(大砲_射程距離(弾道学:線条痕).JPG) ライフリング(施条)に押し付けられたタマには跡(線条痕)が付きます。線条痕は指紋みたいに撃った大砲で模様が違う。 ドラマで「線条痕が一致した!犯人はお前だ!」のアレ。 21世紀の大砲や銃はライフリングが大活躍。F&B時代は砲膣がツルツルの滑腔砲だから犯人を逮捕できないのね。 } #blockquote(){&u(){&bold(){口径が大きいと「敵をドカーンと壊す」}} タマが砲口を出たときの絶好調の「きゃー♥」が同じ砲口初速なら、小さいタマより大きいタマに当たる方が痛いです。 力士1人より2人に体当たりされる方がダメージ大って感じ。 大きいタマを撃つには大砲の砲身([[口径>http://en.wikipedia.org/wiki/Caliber]])を太くすればオケです。タマの大きさが同じなら、砲口初速が早い方が痛いです。 &ref(大砲_射程距離(弾道学:ドカーン).PNG)[[運動量>http://en.wikipedia.org/wiki/Momentum]](高校物理で習います) もし戦うなら大砲は太くて長い方が安心♥ ってことで、20世紀初め大砲がどーんどん巨大化します(大艦巨砲主義)。 でも太くて長い大砲を撃つには大量のエネルギーが必要。 ものすごーく丈夫な大砲じゃないと大きな火薬バーン!には耐えられません。耐えられない大砲は爆発しちゃいます。 &ref(大砲_射程距離(弾道学:大艦巨砲主義).JPG)[[BL 18 inch Mk I naval gun>http://en.wikipedia.org/wiki/BL_18_inch_Mk_I_naval_gun]](1917年:HMS Furious) こちらはイギリス海軍で最大の砲身長(18.3m)、最大の重量(151t)の大砲です。大砲の下にいる黒いのが人。でか! こんなのに当たったら痛いどころの騒ぎじゃなさそう。 大艦巨砲主義は第一次世界大戦で大人気。その後、戦艦の建造費、維持費が莫大過ぎて終焉を迎えます。 } #endregion #region(close,敵船が見えるのは水平線まで) いくら大砲が「遠くまでピューっと飛ぶ」でも敵船は水平線までしか見えません。地球は丸いから水平線の向こうは隠れちゃうの。 身長1.6mで水平線までの距離は約4.5km。 実際は大気の屈折とかアレコレ小難しいことが影響してもっと遠くまで見えます(視地平距離:Distance of Visible Horizon)。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Horizon]] &ref(大砲_射程距離(水平線).JPG)水平線と[[HMS Bounty>http://en.wikipedia.org/wiki/HMS_Bounty]] #blockquote(){&u(){&bold(){ゴールデン・ハインド号から見える水平線(屈折とかいろいろ難しいコトは無視だ)}} 檣楼手ユアンは「水平線に見え隠れする小さな船影も見逃さない」です。ってことで、萌える勢いでちょびっと計算。 グローリア号のデータが無いからゴールデン・ハインド号で我慢。 吃水線からメイン・マストの高さは28m。メイン・マストから見える水平線は約19km以上先です。ユアンの視力すごーい! &ref(大砲_射程距離(水平線:ゴールデン・ハインド号).PNG)[[三平方の定理>http://en.wikipedia.org/wiki/Pythagorean_theorem]](中学数学で習います) } #blockquote(){&u(){&bold(){見えない敵船には間接射撃}} 水平線の向こうの敵船は隠れちゃうけど、大砲はどんどん「水平線の向こうまでピューっと飛ぶ」に進化していきます。 見えない敵船には間接射撃でオケ。 観測班(FO)がアレコレ敵船を調べて、射撃指揮所(FDC)がアレコレ計算して大砲ドーン。当たるまで繰り返します。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Indirect_fire]] &ref(大砲_射程距離(水平線:間接射撃).PNG)こんな感じ? 間接射撃は「Livre de Canonerie」(1561年:本かなあ?)で報告されてるらしいです。詳細は分かりませんでした。 とりあえず19世紀後半からは皆さんご使用。 見えない敵船に照準(間接照準)して大砲ドーンだと当たっても見えないから、砲撃手は「やったー♥」って喜べないですね。 } #endregion *手投げ弾 こちらは1685年沈没した[[La Belle号>http://en.wikipedia.org/wiki/La_Belle_%28ship%29]](フランス)から発見された手投げ弾です。火薬が詰まった陶器で、取っ手に火縄を結んでご使用。 火縄に火を点けて敵の船に投げると陶器が割れてボーン。 火薬の代わりにウニャニャ油(分かりませんでした)を入れたら[[煙幕弾>http://en.wikipedia.org/wiki/Smoke_grenade]]に変身。敵に投げれば煙で何も見えずの手探り状態です。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Fire_pot]] &ref(手投げ弾.JPG) **煙幕弾 煙幕弾は[[煙幕>https://en.wikipedia.org/wiki/Smoke_screen]]をブハーっとだして部隊の活動や位置を隠蔽するタマ。上陸戦で煙モクモクにして敵の視界を遮断します。 軍艦が[[蒸気船>https://en.wikipedia.org/wiki/Steamboat]]の時代はボイラーを不完全燃焼(空気の供給を制限)にした黒い煙幕。 黒色だと煙幕が太陽の熱を吸収して水温が上げるからマズイそうです。ってことで、21世紀は白色…理由は分かりませんでした。 &ref(手投げ弾_煙幕.JPG) 左側:上陸が丸見えの1944年6月6日[[オマハ・ビーチ作戦>https://en.wikipedia.org/wiki/Omaha_Beach]](1998年:映画プライベート・ライアン) 右側:煙幕を使った1941年10月9日イギリス陸軍兵[[ジャック・チャーチル>https://en.wikipedia.org/wiki/Jack_Churchill]]の上陸訓練 煙幕がないと上陸が丸見えで映画[[プライベート・ライアン>https://en.wikipedia.org/wiki/Saving_Private_Ryan]]みたいに敵の機関銃でバババババっと撃たれちゃいます(左側)。 そんなときは煙幕を使えば安心(右側)。 別名「Bloody Omaha:血のオマハ」のオマハ・ビーチ作戦も煙幕を使ってたら戦死者がぐっと減ったのかもしれません。 #region(close,煙幕弾は海から、空から、地上から) 煙幕弾は海から、空から、地上から撒きます。地上のSmoke pot(発煙筒?)は船の船尾に置いてもオケ。 使うときは風向きと風力にご注意。 撒き終わったら皆さん上陸だー!もしアルマダ海戦でスペインがイングランドに上陸したら煙幕を撒くのかしら? &ref(手投げ弾_煙幕(煙幕弾).JPG) #blockquote(){&u(){&bold(){実はオマハ・ビーチ作戦も煙幕を使ってます}} 海上は[[自由フランス軍>https://en.wikipedia.org/wiki/Free_France]]飛行隊Lorraine(イギリス空軍[[第342航空隊>https://en.wikipedia.org/wiki/No._342_Squadron_RAF]]所属)の戦闘機[[Boston IIIA>https://en.wikipedia.org/wiki/Douglas_A-20_Havoc]]が弾幕を撒いてます。 飛行隊のお仕事は「海岸へ上陸する[[上陸用舟艇>https://en.wikipedia.org/wiki/Landing_craft]](兵士を運ぶ船)と兵士を守る」。 海面に弾幕を撒いてドイツ戦闘機の攻撃から上陸用舟艇を守りました。ドイツ戦闘機と戦いながら煙幕も撒くから大忙し! ~[[RAF>http://www.raf.mod.uk/]](French Participation- D-Day role)さんより~ &ref(手投げ弾_煙幕(煙幕弾_オマハ・ビーチ作戦).JPG)こんな感じ?(航空母艦[[USSラングレー>https://en.wikipedia.org/wiki/USS_Langley_(CV-1)]]に煙幕を撒く戦闘機[[F4U>https://en.wikipedia.org/wiki/Vought_F4U_Corsair]]) } #blockquote(){&u(){&bold(){21世紀の上陸作戦}} こちらの画は装甲兵員輸送車[[LVT-7>https://en.wikipedia.org/wiki/Assault_Amphibious_Vehicle]](兵士を運ぶ車)が煙幕をブハーっとだしながら海から海岸へそのまま上陸してます。 装甲兵員輸送車LVT-7は水陸両用車。 うーん、この画だけじゃちんぷんかんぷん…詳細は[[https://www.youtube.com/watch?v=5Nz_V3UQxJU]]をどうぞ。 &ref(手投げ弾_煙幕(煙幕弾_21世紀).JPG)South Korea marks 60th anniversary(2010年) } #endregion *マスケット銃 マスケット銃は先っぽの銃口からタマを込める銃です。F&B時代は[[マッチロック式>http://en.wikipedia.org/wiki/Matchlock]](火縄で点火)の[[アルケブス銃>http://en.wikipedia.org/wiki/Arquebus]]。 1543年種子島(日本)に来た[[火縄銃>http://en.wikipedia.org/wiki/Tanegashima_(Japanese_matchlock)]]もコレ。 初めての登場は15世紀[[フス戦争>http://en.wikipedia.org/wiki/Hussite_Wars]](中央ヨーロッパ)らしい。大量のご使用は15世紀ハンガリー王[[マーチャーシュ1世>http://en.wikipedia.org/wiki/Matthias_Corvinus]]の[[黒軍>http://en.wikipedia.org/wiki/Black_Army_of_Hungary]]からです。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Musket]] &ref(マスケット銃.JPG)[[ヤコブ・ド・ギュイエン>http://en.wikipedia.org/wiki/Jacob_de_Gheyn_II]]画「Wapenhandelingen van Roers, Musquetten ende Spiesen」(1608年:ネーデルラント) #region(close,マッチロック式ってなに?) マッチロック式は火縄で火薬に点火してバーンと撃つ銃です。雨の日は火縄の火が消えたり、火薬が湿ったりでほぼ使用不可。 火縄を使わない[[ホイールロック式>http://en.wikipedia.org/wiki/Wheellock]]([[黄鉄鉱>http://en.wikipedia.org/wiki/Pyrite]]で点火)もあったけど故障が多くて不人気。 1610年フランスで故障しない[[フリントロック式>http://en.wikipedia.org/wiki/Flintlock]]([[火打ち石>http://en.wikipedia.org/wiki/Flint]]で点火)が誕生します。1630年頃にはヨーロッパ中で大人気。 &ref(マスケット銃(マッチロック式).GIF)マッチロック式 |BGCOLOR(lightgrey):発射準備|BGCOLOR(lightgrey):1|火縄に火を点ける。&br()&ref(マスケット銃(マッチロック式:火縄).PNG)| |~|BGCOLOR(lightgrey):2|火蓋(火薬を盛った[[火皿>http://en.wikipedia.org/wiki/Flash_pan]]のカバー)を開く。これが「火蓋を切る」ってやつ。&br()&ref(マスケット銃(マッチロック式:火皿).JPG)火皿(17世紀:イングランド)| |BGCOLOR(lightgrey):発射|BGCOLOR(lightgrey):3|[[トリガー>http://en.wikipedia.org/wiki/Trigger_(firearms)]](引き金)を引く。&br()サーペンタイン(Serpentine:[[撃鉄>http://en.wikipedia.org/wiki/Hammer_(firearm)]]っぽいやつ)が火皿の方へ下がる。| |~|BGCOLOR(lightgrey):4|火薬(火皿)に火縄が接触してボーン!火穴経由で火薬(銃身)もボーン!この勢いで銃弾がバーンと発射する。| #blockquote(){&u(){&bold(){故障が多かったホイールロック式}} ホイールロック式の発明者はハッキリしないけど、1517年[[Johann Kiefuss>http://en.wikipedia.org/wiki/Johann_Kiefuss]](ドイツ)が発明したという説があります。 1530年スペイン王カルロス1世(王フェリペ2世の父親)はKiefussをスペインに呼び寄せたらしい。 F&B時代のホイールロック式に故障が多かったのは、歯車(ホイール)やバネやネジがアレコレで構造が複雑だったから。 &ref(マスケット銃(マッチロック式:ホイールロック式).JPG)ホイールロック式(16世紀:ドイツ) たぶん引き金を引くとホイールがグルリと廻ってサーペインタインが降りると火縄の火が火皿の火薬に接触する仕組みです。 部品は50個以上。 何はともあれ、こんな技術があったことがスゴイです。 } #blockquote(){&u(){&bold(){日本に火縄銃「種子島」がやって来た!}} 1543年ポルトガル宣教師が種子島(鹿児島県)に漂着。種子島島主は宣教師が所有するアルケブス銃を2挺購入します。 もっちろんコピーするぜ! 種子島に伝来したので火縄銃は別名「種子島」「種子島銃」です。あっ、鉄砲伝来は諸説あり。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Tanegashima_(Japanese_matchlock)]] &ref(マスケット銃(マッチロック式:種子島).JPG)種子島伝来火縄銃馬上長筒(21世紀:レプリカ) コピーを担当したのは刀鍛冶の八板金兵衛さん。とりあえずコピーできたけど、発射の衝撃に耐える強度が作れません。 なぜかしら?なぜかしら? ってことで、娘をポルトガル人に嫁がせて秘密をゲトしたという伝説があります。答えは「[[ネジ>http://en.wikipedia.org/wiki/Screw]]」。 } #endregion #region(close,マッチロック式ピストル) マッチロック式ピストル(短銃)も16世紀から使われています。マッチロック式の詳細は分かりませんでした。 とりあえずフリントロック式ピストルは射程距離が短い。 ってことで、剣の付属品としてご使用。18世紀後半になるとイギリスの[[決闘>http://en.wikipedia.org/wiki/Duel]]はレイピアから[[決闘ピストル>http://en.wikipedia.org/wiki/Duelling_pistol]]になります。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Pistol]] &ref(マスケット銃(ピストル).JPG)[[Cornelis Ketel>http://en.wikipedia.org/wiki/Cornelis_Ketel]]画「[[マーティン・フロビッシャー>http://en.wikipedia.org/wiki/Martin_Frobisher]]」(1577年:イングランド) #endregion #region(close,21世紀のマスケット銃) [[イギリス海兵隊>http://en.wikipedia.org/wiki/Royal_Marines]]はイギリス海軍の歩兵部隊。マスケット銃とは全く違う感じの銃をアレコレいっぱい使ってます。 ってことで、形が似てるっぽい銃をご紹介。 こちらは[[7.62x51mm NATO弾>http://en.wikipedia.org/wiki/7.62%C3%9751mm_NATO]](ベルギー製)をバババババと毎分650–1,000発撃つ[[機関銃>http://en.wikipedia.org/wiki/General-purpose_machine_gun]]。いろんな国が使ってます。 &ref(マスケット銃_21世紀.JPG)バババババ中のイギリス海兵隊(タマは[[ベルト給弾式>http://en.wikipedia.org/wiki/Belt-fed]]) |BGCOLOR(lightgrey):|BGCOLOR(lightgrey):口径|BGCOLOR(lightgrey):全長/銃身長|BGCOLOR(lightgrey):重量|BGCOLOR(lightgrey):銃弾重量|BGCOLOR(lightgrey):火薬量|BGCOLOR(lightgrey):射程距離| |[[7.62mm General Purpose Machine Gun>http://en.wikipedia.org/wiki/FN_MAG]]|7.62mm|126.3/63cm|11.79kg|||| #blockquote(){&u(){&bold(){イギリス海兵隊はマッスル♥マッスル♥}} あらあら、銃の重さがお米級…海兵隊は女性不可侵の過酷なお仕事だそうです。そのせいなのか皆さんマッスル♥マッスル♥ こちらはイギリス海兵隊の公式カレンダー。 水陸両用作戦のエキスパートだけあって鍛えた体を惜しみなくお披露目してます。お腹がシーチキン過ぎる。 &ref(マスケット銃_21世紀(イギリス海兵隊).JPG,,height=350)Go Commando 2013 Calendar(£9.99) } #blockquote(){&u(){&bold(){指が痒くなってもても大丈夫}} 銃は引き金を引いてもタマが出ない[[切換レバー>http://en.wikipedia.org/wiki/Selective_fire]]が付いてます。「指掻いたら出ちゃいましたー!」になっちゃうもんね。 海上自衛隊の[[89式5.56mm>http://en.wikipedia.org/wiki/Howa_Type_89]]小銃は、ア(安全)・レ(連射)・3(3点制限点射)・タ(単射)の4種類。 連射はバババババのフルオート、3点制限点射はバンバンバンの3ショット・バースト、単射はバンのセミオートです。 &ref(マスケット銃_21世紀(切換レバー).JPG)別名「当たれサン:アタレ3」 バババババは目詰まりしないの?薬莢は顔に当たらないの?銃身は熱くならないの?などなど疑問いっぱいでござる。 でもF&Bに登場しないと調べる意欲に萌えませんのよ。 } #endregion **マスケット銃の発射 マスケット銃も大砲と同じでバンバン撃てません。大砲と同じでメンドクサイです。大砲と同じで命中率低いです。 火縄は「両方に種火」「片方に種火」の2タイプ。 銃身がとーっても長い、とーっても重い(F&B時代は9kg?)ので、撃つときは先っぽが二股の支え棒(名称不明)で支えます。 &ref(マスケット銃の発射.JPG) #region(close,ペーパーカートリッジで効率アップ) ペーパーカートリッジは銃弾と火薬を包んだ紙製・布製の弾薬包。火薬はキッチリ計量してます。 包は[[蜜蝋>http://en.wikipedia.org/wiki/Beeswax]]・[[ラード>http://en.wikipedia.org/wiki/Lard]]・[[獣脂>http://en.wikipedia.org/wiki/Tallow]]でコーティング。 防水もバッチリだし、弾を込めるときの潤滑剤にもなります。登場は14世紀後半頃で、17世紀になるとアッチコッチでご使用。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Paper_cartridge]] &ref(マスケット銃の発射(ペーパーカートリッジ).JPG) #blockquote(){&u(){&bold(){一発のバーンが楽チン♥}} ペーパーカートリッジを使えばいちいち火薬を計らなくていいし、包が火薬の燃えカスと混ざってお掃除が楽チンです。 包のお尻は食いちぎってもオケ。 日本も[[安土桃山時代>http://en.wikipedia.org/wiki/Azuchi%E2%80%93Momoyama_period]](1573–1603年:織田信長~豊臣秀吉)に銃弾と火薬を包んだ早合(はやごう)が登場します。 &ref(マスケット銃の発射(ペーパーカートリッジ:一発のバーン).GIF)&space(1)&ref(マスケット銃の発射(ペーパーカートリッジ:実弾).JPG) 21世紀は火皿・火薬・火縄・弾丸が1つになった[[実弾(実包)>http://en.wikipedia.org/wiki/Cartridge_(firearms)]]です。 撃鉄が雷管(これは[[センターファイア型>http://en.wikipedia.org/wiki/Centerfire_ammunition]])を叩くと発火して、火薬(これは黒色火薬)がボーン!弾丸がバーン! 撃ったときに出てくるゴミは[[薬莢>http://en.wikipedia.org/wiki/Casing_(ammunition)]]。映画で使うのは弾丸が付いてない[[空砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Blank_(cartridge)]]です。 } #blockquote(){&u(){&bold(){ペーパーカートリッジでインド大反乱}} 17世紀になると[[イギリス東インド会社>http://en.wikipedia.org/wiki/East_India_Company]](設立:1600年)は植民地インドから紅茶を輸入します。インド人の傭兵も編成。 インド人の宗教はヒンドゥー教徒(牛ダメ)やイスラム教徒(豚ダメ)。 配給されたペーパーカートリッジに傭兵は「これって牛や豚の獣脂でコーティングされてるじゃない?」と疑問を抱きます。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Indian_Rebellion_of_1857]] &ref(マスケット銃の発射(ペーパーカートリッジ:インド大反乱).JPG)紅茶の積送品に張られるラベル(1870年) 東インド会社は「獣脂は使ってない」と噂を否定。でもアレコレ酷い目にあってる傭兵はイギリス人を信じられません。 そして1857年インドの反乱が勃発。 インド人は命中率の低い旧式の滑腔銃、イギリス人は命中率の高い新式のライフル銃を使用。反乱は失敗します。 } #endregion **マスケット銃の火薬 F&B時代のマスケット銃も大砲と同じ黒色火薬です。撃つとやっぱり白煙ブワ-。 銃も先っぽから火がー!火がー! 煙と音の動画はこちら[[http://www.youtube.com/watch?v=9i2UknmFbqM]](17世紀:[[イングランド内戦>http://en.wikipedia.org/wiki/English_Civil_War]])をどうぞ。←いきなりバーン。 &ref(マスケット銃の火薬.JPG)マッチロック式ズール銃(レプリカ) |BGCOLOR(lightgrey):|BGCOLOR(lightgrey):口径|BGCOLOR(lightgrey):全長/銃身長|BGCOLOR(lightgrey):重量|BGCOLOR(lightgrey):銃弾重量|BGCOLOR(lightgrey):火薬量|BGCOLOR(lightgrey):射程距離| |マッチロック式ズール銃(1630年頃:ドイツ)|19.7mm|142/102.5cm|4.6kg|||| *火縄、誘火線(Slow match) 火縄は火をキープしておくロープです。硝酸カリウムが混ざった[[麻>http://en.wikipedia.org/wiki/Hemp]]や[[アマ>http://en.wikipedia.org/wiki/Flax]]のロープで、1時間に30cmくらいジワジワ燃える。 映画でフーフーしてるアレ。 大砲に点火するときは火縄を巻いた[[導火桿>http://en.wikipedia.org/wiki/Linstock]]を使います。爆弾でお馴染みの元気に燃える導火線は黒色火薬が混ざった別物。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Slow_match]] &ref(マッチ_火縄と導火桿.JPG)[[Agostino Ramelli>http://en.wikipedia.org/wiki/Agostino_Ramelli]]著「Le diverse et artificiose machine」(1588年:イタリア) **火起こし マッチは19世紀になってから。ライターなんてドラえもんくらい未来のお話しです。 F&B時代の火起こしはこんな感じっぽい? とりあえず[[チューダー朝>http://en.wikipedia.org/wiki/Tudor_dynasty]]の動画は[[http://www.youtube.com/watch?v=uTytLaLL5ls]]こちらをどうぞ。意外と簡単でビックリ! [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Firelighting]] |&ref(マッチ_火起こし道具.PNG)道具|&ref(マッチ_火起こし.PNG)[[Judgement Day>>http://en.wikipedia.org/wiki/St._George%27s_Church,_Haguenau]](15世紀)| #region(close,火起こしのやり方) いっぱいある火起こしサイトは、皆さん広大な大地で大らかにカンカンしてます。 でも船でやる時はご注意!とってもご注意! たぶんバケツの様な燃えにくい入れ物の中でチンマリやるんだと思うけど、ビシッとは分かりませんでした。 &ref(マッチ_火起こし方法.PNG) |BGCOLOR(lightgrey):1|[[火打ち石>http://en.wikipedia.org/wiki/Flint]]と[[金属板>http://en.wikipedia.org/wiki/Fire_striker]]をカンカンする。&br()※火打ち石と[[炭布>http://en.wikipedia.org/wiki/Char_cloth]](低温でも発火する布)を一緒に持つ場合もあります。| |BGCOLOR(lightgrey):2|カンカンで出た火花を炭布に飛ばす。炭布にジワジワ燃える火種ができるまでカンカンする。&br()※綱麻、[[キノコの消し炭>http://en.wikipedia.org/wiki/Amadou]]…燃えやすいモノならなんでもオケです。| |BGCOLOR(lightgrey):3|火種の点いた炭布を[[綱麻>http://en.wikipedia.org/wiki/Jute]](綱麻を解いてモシャモシャにしたもの)に合体。フーフーして火を大きくする。| |BGCOLOR(lightgrey):4|火縄に火を点けてキープ。&br()※火縄持ってウロウロは危なくない?『ホーンブロワー・シリーズ』には火縄桶が登場します。んが、正体不明orz&br()※戦国時代の日本には火縄持ってウロウロできる胴火があります。| #endregion #region(close,ファイヤー!) 火縄に火を点けるにはローソクくらいの火が必要です。モシャモシャの綱麻じゃすぐ燃えちゃうよなぁ…。 ってことで、火を大きくする方法も。 こちらは船でも安心っぽそうなチンマリした方法です。ここまでやれば確実に火縄にも火が点くんじゃないかしら? &ref(マッチ_火起こし(ファイヤー).PNG) #endregion **火口箱 火口箱(ティンダーボックス)は火打ち石とかを入れとく道具ケース。このタイプは金属板をチェーンにぶら下げておきます。 お出かけ先でカンカン火起し。 火の点いた火縄を入れておくと説明してる人もいるけど、詳しいことはぜーんぜん分からなかったです。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Tinderbox]] &ref(マッチ_導火線ケース.JPG,,height=200)真鍮ケースと木製蓋の火口箱(時代不明) *軍制改革だー!スペインのテルシオ vs マスケット銃 スペインのテルシオ(Tercio:スペイン方陣)は鉄壁の守りの常備軍。訓練バッチリな最精鋭で誰も勝てません。とにかく強かった。 負け続けのネーデルラントはマスケット銃に注目。 ネーデルラント軍を「マスケット銃兵>パイク兵」に変更(軍制改革)。スペインのテルシオを打ち破ります。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Tercio]] &ref(軍制改革.JPG)ネーデルラントが勝利した[[ニーウポールトの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Nieuwpoort]](1600年) **テルシオ(スペイン方陣) テルシオ(英語:Third)はパイク方陣、銃兵(マスケット銃兵やアルケブス銃兵)、剣兵で構成された部隊です。 お名前の由来は「パイク兵、銃兵、剣兵の3部隊」や「Tercio di Lombardia、di Napoli、di Siciliaの1/3部隊(1534年編成)」らしい。 16世紀のマスケット銃は「大きくて威力の高いアルケブス銃」17世紀から「先込め銃」って分類になります。 &ref(軍制改革_テルシオ.JPG)ニーウポールトの戦い(1600年) #region(close,軍制改革だー!パイク方陣の誕生(残酷な画があるのでご注意下さい)) パイクは中世~1700年頃に使われた両手で持つ[[長柄武器>http://en.wikipedia.org/wiki/Pole_weapon]]です。長さ3~7.5m(16世紀後半:4.5~6.5m)、重さ2.5~6kg。 長さ分の距離を保って相手をプスプス。 でも運悪く敵が突破して接近戦になるとパイクはぜーんぜん役に立ちません。接近戦に備えて必ず剣も装備しましょう。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Pike_(weapon)]] &ref(軍制改革_テルシオ(パイク方陣).JPG)八十年戦争の映画[[アラトリステ>http://en.wikipedia.org/wiki/Alatriste]](2006年:スペイン) #blockquote(){&u(){&bold(){パイクの構え}} 相手をプスプスするときは「Charge」の構え。戦闘中は前の3~5列が「Charge」の構えをします。 後列のパイク兵は前列を怪我させない「Port」の構え。 交代したら「Charge」の構えになります。「Charge for horse」の構えは分かりませんでした。騎兵をプスプス? &ref(軍制改革_テルシオ(パイク方陣:構え).JPG) パイクはベランダの物干し竿みたいに長いから相手が近づく前にプスッと倒せます。でも長くて重いから扱いづらい。 どっちかっていうとディフェンスの武器。 1人ぼっちで戦かったらあっという間にヤられちゃいます。ってことで、パイク兵は[[パイク方陣>http://en.wikipedia.org/wiki/Pike_square]]を組んで防護力アップ。 } #blockquote(){&u(){&bold(){パイク方陣で防護力アップ}} パイク方陣は15世紀[[スイス誓約同盟>http://en.wikipedia.org/wiki/Old_Swiss_Confederacy]]で誕生した10×10のパイク兵で構成された方陣です。前列のパイク兵が相手をプスプス。 方向転換するだけで四方八方の相手をプスプス。 良く訓練された規律ある部隊だから、命令に合わせて前進や方向転換がとーっても速い。ヤマアラシみたいですね。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Pike_square]] &ref(軍制改革_テルシオ(パイク方陣:スイス).JPG)[[ドルナッハの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Dornach]](1499年) パイク方陣は1477年[[ナンシーの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Nancy]]で[[ブルゴーニュ公国>http://en.wikipedia.org/wiki/Duchy_of_Burgundy]]の[[勅令部隊>http://en.wikipedia.org/wiki/Compagnie_d%27ordonnance]](騎兵、槍兵、弓兵、砲兵の混合部隊)を破ります。 方向転換しながら騎兵をプスプス、前進しながら相手をプスプス。 超強い勅令部隊に勝ったパイク方陣すげー!その後も勝ち続けるパイク方陣すげー!ってことで、他の国も模倣します。 } #blockquote(){&u(){&bold(){プスプスするとどうなるの?}} 敵味方の[[縦隊>https://en.wikipedia.org/wiki/Column_(formation)]](縦列に並んだ部隊)が衝突すると、パイク兵はChargeの構えで前進しながら相手をプスプスします。 前列が倒れたら次列のパイク兵と交代。 どちらかのパイク方陣が崩れて道を譲るまでプスプス。ってことで、膨大な犠牲者が出ます。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Push_of_pike]] &ref(軍制改革_テルシオ(パイク方陣:プスプス).JPG)[[ハンス・ホルバイン>https://en.wikipedia.org/wiki/Hans_Holbein_the_Younger]]画「Battle Scene」(16世紀:神聖ローマ帝国) } #endregion #region(close,軍制改革だー!テルシオ(スペイン方陣)の誕生(残酷な画があるのでご注意下さい)) テルシオは16世紀スペインで誕生した「パイク方陣を銃兵(マスケット銃やアルケブス銃)で守る」の方陣です。 スペインのテルシオは鉄壁の守りの常備軍。 初期のテルシオには剣兵もいたけど銃の性能が上がるにつれ減少していきます。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Pike_and_shot]] &ref(軍制改革_テルシオ(スペイン方陣).JPG)テルシオ断面図(17世紀) #blockquote(){&u(){&bold(){テルシオ(コロネリア) の誕生}} [[ハプスブルク家>http://en.wikipedia.org/wiki/House_of_Habsburg]](スペイン)はナポリやミラノの王位継承を巡ってフランスと[[イタリア戦争>http://en.wikipedia.org/wiki/Italian_Wars]](1494–1559年)します。 スペインは剣と円盾を装備する[[歩兵ロデレロ>http://en.wikipedia.org/wiki/Rodeleros]]と[[軽騎兵>http://en.wikipedia.org/wiki/Jinete]]。 でも超強いフランスの[[スイス槍兵のパイク方陣>http://en.wikipedia.org/wiki/Swiss_mercenaries]]と[[重騎兵ジャンダルメ>http://en.wikipedia.org/wiki/Gendarme_(historical)]]に勝てません。このままじゃダメだ…。 &ref(軍制改革_テルシオ(スペイン方陣:誕生_セミナラ).JPG)フランスに負けたセミナラの戦い ってことで、[[セミナラの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Seminara]](1495年)に負けた将軍[[ゴンサロ・フェルナンデス・デ・コルドバ>http://en.wikipedia.org/wiki/Gonzalo_Fern%C3%A1ndez_de_C%C3%B3rdoba]]は軍制改革します。 歩兵は剣と円盾を捨ててパイクを装備。 当時の先端技術「銃」を採用してパイク方陣を守ります。テルシオは[[チェリニョーラの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Cerignola]](1503年)でフランスに勝利。 &ref(軍制改革_テルシオ(スペイン方陣:誕生_チェリニョーラ ).JPG)フランスに勝ったチェリニョーラの戦い パイク方陣と銃兵のテルシオは鉄壁の守り。フランスのパイク方陣と重騎兵はテルシオを破れません。 スペインはイタリア戦争に勝利。 超強いフランスに勝ったテルシオすげー!その後も勝ち続けるテルシオすげー!ってことで、他の国も模倣します。 } #blockquote(){&u(){&bold(){将軍コルドバのテルシオ(コロネリア)}} コロネリアは「防護力のパイク方陣」と「攻撃力の銃兵」の混合部隊です。パイク方陣の両サイドにユルっと銃兵を配置。 最初に銃兵が離れてる敵をバーン、敵が近づいたらパイク方陣がプスプス。 こちらは[[Olicanalad's Games>http://olicanalad.blogspot.jp/]](Cerignola 28th April 1503)さん考察のチェリニョーラの戦い。配置は資料によってびみょーに違います。 [[wikipedia>http://es.wikipedia.org/wiki/Coronel%C3%ADa]] &ref(軍制改革_テルシオ(スペイン方陣:コロネリア).JPG)コロネリア(この部隊は前面にユルっと銃兵を配置) コロネリアのもう1つの特徴は士官を増やしたこと。それぞれの部隊はa~eの指揮官[[コロネル(大佐)>http://en.wikipedia.org/wiki/Colonel]]が指揮します。 指揮官ごとに動くから部隊の柔軟性が高まる。 スペインを超強くした将軍コルドバは「偉大なカピタン(El Gran Capitán)」「[[塹壕>http://en.wikipedia.org/wiki/Trench_warfare]]の父」と呼ばれてます。 |>|>|>|>|>|>|>|&ref(軍制改革_テルシオ(スペイン方陣:コロネリア_配置).PNG)配置| |BGCOLOR(lightgrey):CENTER:フランス|BGCOLOR(lightgrey):1|重騎兵(ジャンダルメ)|5部隊×8人|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:スペイン|BGCOLOR(lightgrey):1|パイク方陣([[ランツクネヒト>http://en.wikipedia.org/wiki/Landsknecht]])|1部隊×54人| |~|BGCOLOR(lightgrey):2|投射騎兵([[クロスボウ>http://en.wikipedia.org/wiki/Crossbow]])|2部隊×8人|~|BGCOLOR(lightgrey):2|テルシオ([[コロネリア>http://es.wikipedia.org/wiki/Coronel%C3%ADa]])|4部隊×36人| |~|BGCOLOR(lightgrey):3|軽騎兵([[ストラティオティス>http://en.wikipedia.org/wiki/Stratioti]])|1部隊×8人|~|BGCOLOR(lightgrey):3|重騎兵|2部隊×8人| |~|BGCOLOR(lightgrey):4|パイク方陣(スイス槍兵)|1部隊×108人|~|BGCOLOR(lightgrey):4|軽騎兵([[ジネテ/Genitor>http://en.wikipedia.org/wiki/Jinete]])|2部隊×8人| |~|BGCOLOR(lightgrey):5|パイク方陣(フランス槍兵)|1部隊×54人|~|BGCOLOR(lightgrey):5|投射騎兵(クロスボウ)|1部隊×8人| |~|BGCOLOR(lightgrey):6|投射兵(クロスボウ)|4部隊×48人|~|BGCOLOR(lightgrey):6|大砲(Light gun)|2部隊×1門| |~|BGCOLOR(lightgrey):7|大砲(Medium gun)|3部隊×1門|~|BGCOLOR(lightgrey):||| } #blockquote(){&u(){&bold(){小規模なテルシオ(コロネリア)から大規模なテルシオ(スペイン方陣)へ}} コロネリアは1534年までにパイク方陣の周囲にビシっと銃兵を配置するスペイン方陣になります。四隅にも配置の場合あり。 四方八方どこから見ても隙のない鉄壁の守り。 指揮官1人が最大3,000人(1,500人が一般的)を担当。大規模だから敵にいくら倒されても崩れない「要塞の方陣」です。 &ref(軍制改革_テルシオ(スペイン方陣:大規模).JPG)神聖ローマ帝国のスペイン方陣(1632年:[[リュッツェンの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_L%C3%BCtzen_(1632)]]) ただしスペイン方陣は大規模過ぎて移動や方向転換がとーっても大変です。う、動けない…敵を迎え撃つしかない。 敵を追撃は不可能。 あと21世紀の視点から見ると「敵をビビらせるためには必要だろうけど、戦う機会がない余分な兵士」もいます。 } #blockquote(){&u(){&bold(){テルシオ(スペイン方陣)の終焉}} 16世紀後半戦場に銃や大砲が増えてくると、大規模過ぎるテルシオは「狙いやすい的」になっちゃいます。あちゃー。 これはヤバイ! ってことで、テルシオは「狙われにくい小さな方陣」に縮小化していきます。 &ref(軍制改革_テルシオ(スペイン方陣:終焉).JPG)ロクロワの戦い 1643年[[ロクロワの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Rocroi]]でスペイン方陣は劣勢フランス軍の戦術[[カラコール>http://en.wikipedia.org/wiki/Caracole]](騎兵が射撃)に大敗します。 スペイン軍が誇る「無敵のテルシオ」のターニングポイント。 映画[[アラトリステ>http://en.wikipedia.org/wiki/Alatriste]]のラストシーンもこの戦い。テルシオの戦い方がよく分かるけど…スペイン組には悲し過ぎてツライです。 &ref(軍制改革_テルシオ(スペイン方陣:終焉_銃剣).JPG)イギリス兵の銃剣(1746年:[[カロデンの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Culloden]]) 17世紀末になると[[銃剣>http://en.wikipedia.org/wiki/Bayonet]](先っぽにナイフを刺した銃)が誕生。銃剣はパイクみたいに相手をプスプス刺せます。 もうパイク兵がいなくてもへーきへーき! ってことで、テルシオは終焉します。ちなみにイギリスは1697年[[レイスウェイク条約>http://en.wikipedia.org/wiki/Treaty_of_Ryswick]]の後にパイクを廃止して銃剣を採用。 } #blockquote(){&u(){&bold(){海兵隊テルシオはスペイン海兵隊へ}} スペインのテルシオは1704年陸軍の[[連隊>http://en.wikipedia.org/wiki/Regiment]](陸軍の部隊編制上の一単位。詳細は[[軍隊の編制>http://en.wikipedia.org/wiki/Military_organization]]をどうぞ)になります。 でもアルマダ(スペイン海軍)の海兵隊テルシオはそのまま続行。 なんやかんやで21世紀の[[スペイン海兵隊>http://en.wikipedia.org/wiki/Spanish_Navy_Marines]]です。[[水陸両用作戦>http://en.wikipedia.org/wiki/Amphibious_warfare]]するんだって…ふぇー、ちんぷんかんぷん。 &ref(軍制改革_テルシオ(スペイン方陣:スペイン海兵隊).JPG) } #endregion **三段撃ち 三段撃ちは[[銃兵>http://en.wikipedia.org/wiki/Musketeer]]がn列×3段(準備・待つ・撃つ)の配置です。[[一斉射撃>http://en.wikipedia.org/wiki/Volley_fire_(infantry_tactic)]]でバーンと撃ったら最後尾に移動。 バンバン撃てない銃でバンバン連続発射。 火縄銃がいっぱい必要ですね。1575年[[織田信長>http://en.wikipedia.org/wiki/Oda_Nobunaga]]が[[長篠の戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Nagashino]]で武田軍を殲滅した新戦法です。実は作り話かもしれないって噂有り。 &ref(軍制改革_三段撃ち.JPG) 左側:「長篠合戦図屏風/長久手合戦屏風絵8枚」の下絵または模本(19世紀:東京国立博物館) 右側:1634年[[ネルトリンゲンの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_N%C3%B6rdlingen_(1634)]] #region(close,ネーデルラントの三段撃ちは反転行進射撃(Counter-march)) 反転行進射撃は[[八十年戦争>http://en.wikipedia.org/wiki/Eighty_Years%27_War]](1568–1648年)でスペインと戦うオラニエ公[[マウリッツ>http://en.wikipedia.org/wiki/Maurice,_Prince_of_Orange]](ネーデルラント)が考えた新戦法です。 銃兵が12列×6段(または8段)で連続発射。 他に兵士を歩兵・騎兵・砲兵の3つに区分してお互いに援護する三兵戦術(スペインの[[テルシオ>http://en.wikipedia.org/wiki/Tercio]]に対抗する戦法)も考えてます。 &ref(軍制改革_三段撃ち(反転行進射撃).JPG)反転行進射撃 #blockquote(){&u(){&bold(){3人ご一緒に一斉射撃}} 三兵戦術は1632年神聖ローマ帝国と戦うスウェーデン王[[グスタフ2世アドルフ>http://en.wikipedia.org/wiki/Gustavus_Adolphus_of_Sweden]]が[[リュッツェンの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_L%C3%BCtzen_(1632)]]で更に発展させます。 銃兵は膝立ち・中腰・立ちの3段で一斉射撃。 3段だと…えーっと、きっと1段より火力が強力になってすごいんです。これは銃が軽量化したから可能だそうです。 &ref(軍制改革_三段撃ち(反転行進射撃:一斉射撃).JPG)これは2段の一斉射撃(1642–1649年:[[イングランド内戦>http://en.wikipedia.org/wiki/English_Civil_War]]のショー) } #endregion #region(close,軍制改革だー!テルシオと銃兵の進化) #blockquote(){&u(){&bold(){スペインのテルシオ}} 将軍ゴンサロが誕生させたテルシオはその後どーんどん巨大化。最大6,000人の巨大テルシオに成長します。 四方に隙のない守りで防御力バッチリ。 ただ巨大過ぎて移動や方向転換がとーっても大変。機動力ダメダメだから動かずに敵を迎え撃ちます。 &ref(軍制改革_テルシオ(誕生と進化:スペイン).JPG) 機動力ダメダメな巨大テルシオは敵が来ないと攻撃できません。防御力バッチリでも機動力ダメダメはヤバイ! ってことで、1534年までに最大3,000人に縮小。 その後もどーんどん縮小化。 } #blockquote(){&u(){&bold(){ネーデルラントのオランダ式テルシオ}} ネーデルラントはスペインからの独立を目指して[[八十年戦争>http://en.wikipedia.org/wiki/Eighty_Years%27_War]](1568–1648年)します。スペインのテルシオを模倣して戦う。 でもスペインのテルシオは超強い。 このままじゃダメだ…。ってことで、ネーデルラント総督オラニエ公[[マウリッツ>http://en.wikipedia.org/wiki/Maurice,_Prince_of_Orange]] は軍制改革します。 &ref(軍制改革_テルシオ(誕生と進化:ネーデルラント).JPG) 機動力ダメダメなスペインのテルシオはマスケット銃でバンバン撃っちゃえばいいんです(反転行進射撃)。 命中率が低くても的が巨大だからオケ。 ついでにネーデルラントのテルシオを縮小化で機動力バッチリ。[[ニーウポールトの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Nieuwpoort]](1600年)でスペインに勝利します。 } #blockquote(){&u(){&bold(){スウェーデンのスウェーデン式テルシオ}} &ref(軍制改革_テルシオ(誕生と進化:スウェーデン).JPG) } #endregion *防具 防具は武器などの攻撃から人体へのダメージを防ぐヘルメット、鎧、楯、服…などなどの道具です。 武器が進化すると防具も進化。 すごーい種類があるのでF&Bに登場する防具だけざっくり調べました。 &ref(防具.JPG)武器と防具(1608年) #region(close,21世紀の防具) こちらはイギリス軍が[[Operation Herrick>https://en.wikipedia.org/wiki/Operation_Herrick]](2002–2014年)から採用してる防弾ベスト[[Osprey body armour>https://en.wikipedia.org/wiki/Osprey_body_armour]](Mk 4)です。 イギリスのCQC社が提供。 生地は[[ナイロン6>https://en.wikipedia.org/wiki/Nylon_6]]か[[ナイロン66>https://en.wikipedia.org/wiki/Nylon_66]]。それ以外は「当社はイギリス軍の標準仕様に沿った防具を提供しております」だそうです。 &ref(防具(21世紀).JPG) 防弾ベストは砂漠、森、…戦地の色に合わせた迷彩色パターンがあります。ヘルメット[[Mk 7 helmet>https://en.wikipedia.org/wiki/Mk_7_helmet]]もお揃いの色。 イギリスのNP Aerospace社が提供。 寝そべって銃を撃ちやすいように後部の縁ナシ。逆に撃たれても時速650m/sのタマには負けません。それ以外は…やっぱり不明。 #blockquote(){&u(){&bold(){防弾ベストはポケットがいっぱい}} 必要に応じてヘルメットMk7には[[マスク>https://en.wikipedia.org/wiki/Respirator]]、[[ 耳覆い>https://en.wikipedia.org/wiki/Earmuffs]]、[[ゴーグル>https://en.wikipedia.org/wiki/Goggles]]、ラジオ、[[暗視装置>https://en.wikipedia.org/wiki/Night_vision_device]]を装備できます。 防弾ベストOspreyもアレコレ脱着が可能。 ポケット、ポーチ型ポケット、…などなどを自分のお好みで装着可能です(モジュラー ・システム:Modular system)。 ~[[The British Army>http://www.army.mod.uk/home.aspx]](Combat body armour)さんより~ &ref(防具(21世紀_ポケット).JPG)Osprey(レプリカ) イギリス陸軍の皆さんは防弾ベストOspreyと一緒に23個のポケットを支給さるそうです。入れるモノが決まってるのね。 弾倉はバババババっと撃ってタマが無くなったら入れ替えるタマ。 数え方が分からなかったのでとりあえず「本」で。あと「round」はちんぷんかんぷんでした。 ・3本×[[SA80>https://en.wikipedia.org/wiki/SA80]]のsingle[[弾倉>https://en.wikipedia.org/wiki/Magazine_(firearms)]] ・4本×SA80のdouble弾倉 ・3本×single SA80の弾倉 with elastic pull-cord ・2本×[[発煙弾>https://en.wikipedia.org/wiki/Smoke_grenade]] ・2個×[[手榴弾>https://en.wikipedia.org/wiki/Hand_grenade]] ・sharpshooterの弾倉 ・[[軽機関銃>https://en.wikipedia.org/wiki/Light_machine_gun]]の弾倉 - 100 round ・2本×9mm pistolの弾倉 ・underslung grenade launcher - 8 round ・水筒 ・救命キット ・commander's pouch(ペン、ノート、懐中電灯が入ってるポーチ。指揮官がアレコレ指示するのにご使用) } #blockquote(){&u(){&bold(){イロイロと進化したけどお荷物がスゴイことに!}} 夏になると50℃を超える[[アフガニスタン紛争>https://en.wikipedia.org/wiki/War_in_Afghanistan_(2001%E2%80%93present)]](2001年-)に参加したイギリス海兵隊のお荷物は66kgもあるそうです。 それに加えて防弾ベストOsprey(9kg)、通信機器、機関銃、お水…。 2009年The US Armed Forces Health Surveillance(米軍健康監視?)の報告によると怪我のほとんどは椎間板疾患です。 ~[[Daily Express>http://www.express.co.uk/]](British soldiers suffer injuries from too-heavy weights)さんより~ &ref(防具(21世紀_お荷物).JPG) 左側:イギリス海兵隊(2015年:Operation Silica) 左側:[[イギリス陸軍工兵隊>https://en.wikipedia.org/wiki/Royal_Engineers]](2014年) これで何キロも歩くなんて信じられません。バックパッカーさんならピンとくると思うけど66kgを背負ったら死ぬ。 っていうか、立ち上がるのもムリ。 ちなみに私の場合は10Kgでもヤバイから旅立つ前に荷物を測りまくって1gでも減らします。それくらい重いのは大変なの。 } #endregion **ヘルメット 戦闘用ヘルメットは頭を防護する最古で最小の防具。紀元前23世紀[[シュメール人>http://en.wikipedia.org/wiki/Sumer]]の頃からご使用してます。 16中頃~17世紀ヨーロッパの主流はスペインで誕生した[[モリオン>http://en.wikipedia.org/wiki/Morion_(helmet)]]。 [[やかん帽子>http://en.wikipedia.org/wiki/Kettle_hat]]の進化形で上部が強化さたデザイン。士官達は富と威厳を示すために精巧な彫刻や装飾で差別化してます。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Combat_helmet]] &ref(防具_ヘルメット.JPG)カバセットはモリオンの進化形 低コストのモリオンはヨーロッパで大流行。イングランドも[[王エドワード6世>http://en.wikipedia.org/wiki/Edward_VI_of_England]](女王エリザベス1世の異母弟)が採用してます。 16世紀はカバセット(イタリア式モリオン)。 その後the pikeman 's pot(パイク兵のポット)に進化します。バチカン[[スイス衛兵隊>http://en.wikipedia.org/wiki/Swiss_Guard]]は21世紀もモリオンをご使用。 #region(close,モリオンの重量) こちらは[[ミラノ公国>https://en.wikipedia.org/wiki/Duchy_of_Milan]]で作られた鉄製モリオン(1570年頃:スペイン)です。彫刻と金メッキで装飾。後ろに真鍮製の[[羽根>https://en.wikipedia.org/wiki/Plume_(feather)]]差し。 重量は約1.3Kg。 オートバイのフルフェイスくらいの重量です。うーん、モリオンとカバセットの違いが分からない…。 &ref(防具_ヘルメット(重量).JPG)大英博物館 #blockquote(){&u(){&bold(){固いヘルメットを被ったら頭痛くないの?}} こちらは現役時代のままっぽい鋼製ヘルメット(1575年頃:アントワープ)です。 重量は1.695Kg。 固いヘルメットの内側にビロードやウールの中敷が入ってるから激しい運動でガコガコしても頭痛くないです。ほー! &ref(防具_ヘルメット(重量_頭痛).JPG)メトロポリタン美術館 } #endregion **胸当て 胸当ては胴を防護する防具。大昔からご使用(ただし10~13世紀ヨーロッパは胸当ての代わりに[[鎖帷子>https://en.wikipedia.org/wiki/Mail_(armour)]]が主流)してます。 21世紀の胸当ては[[防弾ベスト>https://en.wikipedia.org/wiki/Bulletproof_vest]]。 F&B時代の主流は分かりませんでした。[[ジェームズタウン>https://en.wikipedia.org/wiki/Jamestown,_Virginia]](アメリカ)は1607年イングランド初の北アメリカ植民地です。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Breastplate]] &ref(防具_胸当て.JPG) 左側:カバセットと胸当て(16世紀:[[ジェームスタウン島>https://en.wikipedia.org/wiki/Jamestown_Island]]で発見) 右側:[[Peter Paul Rubens>https://en.wikipedia.org/wiki/Peter_Paul_Rubens]]画「Portrait of [[Ambrogio Spinola, 1st Marquis of the Balbases>https://en.wikipedia.org/wiki/Ambrogio_Spinola,_1st_Marquis_of_the_Balbases]]」(1630年頃:ネーデルラント) #region(close,胸当ての重量) こちらは鋼製ヘルメットと鋼製胸当て(1575年頃:アントワープ)です。ヒモの部分はビロードやウール。 ヘルメットと胸当ての総重量は約5.5Kg。 バックプレート(胸当ての背中側)には製造者のお名前「D.G.V.Lochorst」が彫刻されてます。 |&ref(防具_胸当て(重量).JPG)|BGCOLOR(lightgrey):ヘルメット|BGCOLOR(lightgrey):サイズ|高さ39.37cm| |~|~|BGCOLOR(lightgrey):重量|1.695Kg| |~|BGCOLOR(lightgrey):胸当て|BGCOLOR(lightgrey):サイズ|高さ46.99cm×幅30.48cm| |~|~|BGCOLOR(lightgrey):重量|2.073Kg| |~|BGCOLOR(lightgrey):バックプレート|BGCOLOR(lightgrey):サイズ|高さ38.1cm×幅30.48cm| |~|~|BGCOLOR(lightgrey):重量|1.765Kg| #blockquote(){&u(){&bold(){胸当てはバックプレートとご一緒に?}} たぶん上の画のようにバックプレートとご一緒に装着する胸当てを[[クィラス>https://en.wikipedia.org/wiki/Cuirass]]といいます。14~17世紀にご使用。 1550年頃から真ん中が縦に尖った「the tapul」のデザイン。 重騎兵の1つ[[胸甲騎兵>https://en.wikipedia.org/wiki/Cuirassier]](馬に乗った兵士)のクィラスは歩兵より頑丈で重い造りです。 [[wikipedia>https://en.wikipedia.org/wiki/Components_of_medieval_armour]] &ref(防具_胸当て(重量_バックプレート).JPG) } #endregion #region(close,士官は胸当て以外にもイロイロ装備するっぽい?) いくつかの絵画をチェックしたら馬に乗った士官(指揮官)や兵士は胸当て以外にもイロイロ装備してました。 馬に乗ってれば防具が重くてもへーきへーき。 ちなみにオッサン(左側)が右手に持ってる棒は王様や上級士官の地位・名誉を表章する[[元帥杖(Baton)>https://en.wikipedia.org/wiki/Baton_(military)]]です。 &ref(防具_胸当て(士官).JPG)[[Battle of Fleurus>https://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Fleurus_(1622)]](1622年) #blockquote(){&u(){&bold(){イロイロな装備}} 左側は16世紀後半の有名な兵器製造者[[Pompeo della Cesa>https://it.wikipedia.org/wiki/Pompeo_della_Cesa]](ミラノ公国)の1/2甲冑(1587年頃)です。 総重量は約17.56Kg。 ミラノ公国を支配するスペイン王フェリペ2世やパルマ公[[アレッサンドロ・ファルネーゼ>https://en.wikipedia.org/wiki/Alexander_Farnese,_Duke_of_Parma]]はPompeoの後援者です。 &ref(防具_胸当て(士官_装備).JPG) 右側は21世紀の防弾ベストDanish body armour(これもCQC社だけどOsprey body armourとは違うタイプっぽい)です。 どちらも即死しそうな[[人体の急所>https://en.wikipedia.org/wiki/Pressure_point]]を防御? もし急に指揮官がいなくなったら現場の皆さんは大混乱しちゃいます。イロイロ装備は重くて大変だけど我慢だ! } #endregion **軍服 戦場で皆さん同じ防具だと敵味方の区別がつきません。ゴチャゴチャしてるテルシオでは間違って味方にヤられちゃう悲劇も…。 軍服が登場する前は飾り帯で区別。 イギリス初の軍服は1645年[[レッド・コート>http://en.wikipedia.org/wiki/Red_coat_(British_army)]](海軍は1748年から)です。スペインは分かりませんでした。 &ref(防具_軍服.JPG)軍服がないと敵も味方も分かりにくい(1634年:[[ネルトリンゲンの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_N%C3%B6rdlingen_(1634)]]) #region(close,飾り帯とバフコート) 飾り帯は14世紀頃から使われてる幅広の帯です。肩から掛けたり、腰や首に巻いたり装いはイロイロ。 敵味方だけじゃなく所属の区別もオケ。 たとえば[[南北戦争>https://en.wikipedia.org/wiki/American_Civil_War]](1861–65年:アメリカ)では将官(灰色/クリーム)、軍曹(赤)、騎兵隊(金)、歩兵連隊(ワインレッド)、従軍牧師(黒)、医者(緑/青)です。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Sash]] &ref(防具_軍服(飾り帯).JPG)[[フランス・ハルス>https://en.wikipedia.org/wiki/Frans_Hals]]画「Meeting of the officers of the Kloveniersschutterij in Haarlem」(1633年:ネーデルラント) #blockquote(){&u(){&bold(){戦うときはお洋服も頑丈じゃないとね♥}} 油を塗った皮製[[ジャーキン>https://en.wikipedia.org/wiki/Jerkin_(garment)]]は16~17世紀ヨーロッパの兵士や猟師のお洋服です。[[ダブレット>https://en.wikipedia.org/wiki/Doublet_(clothing)]]の上に着用。 16世紀は首もとだけボタンを留める。 逆に17世紀になると腰をスッキリ見せるように下のボタンを留めて胸元を開ける着こなしになります。 &ref(防具_軍服(飾り帯_お洋服).JPG) ジャーキンを厚く頑丈にしたのが牛革製[[バフコート>https://en.wikipedia.org/wiki/Buff_coat]]。17世紀ヨーロッパの士官、一部の歩兵、騎兵隊のお洋服です。 丈夫で柔軟で雨風に強い。 袖があるときは肘から手首までの革は薄めにして動きやすくしてます。もっちろん士官の皆さんは金や銀のモールで差別化。 &ref(防具_軍服(飾り帯_F&B).JPG)ナイジェル…首だけでゴメンなさい!(F&B13巻カラーページ) ジェフリーが着てる上着をジーっと見た感じだと肩先辺りに革のカッリチ感があるようなないような。 これもジャーキンでしょか? もしそうならジャーキンやバフコートの基本色は薄黄色なので、わざわざ染めたのねー♥ 刺繍もハンパない凝りまくりねー♥ } #endregion #region(close,イングランドのレッド・コート) レッド・コートは[[王チャールズ1世>https://en.wikipedia.org/wiki/Charles_I_of_England]]を処刑した[[議会派>http://en.wikipedia.org/wiki/Roundhead]]の[[ニュー・モデル軍>http://en.wikipedia.org/wiki/New_Model_Army]](1645-1660年)の軍服が始まりです。 ベネチアンレッドに白の襟章。 1660年[[イングランド王政復古>https://en.wikipedia.org/wiki/Restoration_(1660)]]の後もレッド・コートを継続。これは赤の染料が安かったからだそうです。なんて夢のない…。 [[wikipedia>https://en.wikipedia.org/wiki/British_Army_uniform]] &ref(防具_軍服(レッド・コート).JPG)パイク兵(1642–1651年:[[イングランド内戦>http://en.wikipedia.org/wiki/English_Civil_War]]) #blockquote(){&u(){&bold(){武器が進化すると軍服も進化しなくちゃいけません}} 戦場がマスケット銃と黒色火薬の時代は煙モクモク。見通しが悪いから敵味方の区別がつきません。 モクモクでも赤色は目立つ。 目立てば敵味方の区別もバッチリ。もし敵に発見されてもマスケット銃の射程距離と命中率が低いから危険じゃないです。 &ref(防具_軍服(レッド・コート_進化).JPG)赤色は目立ちすぎ(1745年:[[フォントノワの戦い>https://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Fontenoy]]) 戦場が[[ライフル銃>https://en.wikipedia.org/wiki/Rifle]]と[[無煙火薬>https://en.wikipedia.org/wiki/Smokeless_powder]]の時代になると赤色は目立ちすぎの的になります。戦場で目立つとヤバイ!とってもヤバイ! ってことで、1902年イギリスの軍服はカーキ色の[[Service Dress>https://en.wikipedia.org/wiki/Service_Dress_(British_Army)]]に変更。 1938年にはもっと目立たない[[Battle Dress>https://en.wikipedia.org/wiki/Battle_Dress]]を開発。おー!Battle Dressってイイね!っと皆さんも採用してます。 } #blockquote(){&u(){&bold(){コチニールで染めたレッド・コート}} 18世紀上級士官のレッド・コートは[[コチニール>https://en.wikipedia.org/wiki/Carmine]]で染められた「完璧な[[スカーレットレッド>https://en.wikipedia.org/wiki/Scarlet_(color)]]」です。 とーってもお高級。 下士官はコチニールと[[Rose madder>https://en.wikipedia.org/wiki/Rose_madder]]が混合の「劣ったスカーレットレッド(The warrant of 1768)」で経費節減します。 &ref(防具_軍服(レッド・コート_コチニール).JPG)[[Joseph Wright of Derby>https://en.wikipedia.org/wiki/Joseph_Wright_of_Derby]]画「Fleetwood Hesketh」(1769年:イギリス) 19世紀後半になるとレッド・コートはとーってもお手頃な化学染料を使います。 } #blockquote(){&u(){&bold(){21世紀のレッド・コート}} 戦場ではちょっと…のレッド・コートだけど、21世紀もwalking out dress(儀礼服?)としてちゃんと残ってます。 生地は[[ワーテルローの戦い>https://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Waterloo]](1815年)の頃からAbimelech Hainsworth社が提供。 横隊防御で有名な[[シン・レッド・ライン>https://en.wikipedia.org/wiki/The_Thin_Red_Line_(Battle_of_Balaclava)]]もこの会社の赤色です。こちらはThe Queen's Diamond Jubilee 2015の儀礼服。 |>|>|>|&ref(防具_軍服(レッド・コート_21世紀).JPG)海軍はRNです♥| |>|>|>|BGCOLOR(lightgrey):上段(左から)| |[[RM>https://en.wikipedia.org/wiki/Royal_Marines]] Captain|[[PWRR>https://en.wikipedia.org/wiki/Princess_of_Wales%27s_Royal_Regiment]] soldier|[[WG>https://en.wikipedia.org/wiki/Welsh_Guards]] soldier|[[COLDM GDS>https://en.wikipedia.org/wiki/Coldstream_Guards]] soldier| |WG Corporal|RAF Regiment Aircraftman|RAF Regiment Officer|| |>|>|>|BGCOLOR(lightgrey):中段(左から)| |RM Bandmaster|[[RN>https://en.wikipedia.org/wiki/Royal_Navy]] Warrant Officer|RN Lt Commander|RN rating from HMS Dauntless| |[[GREN GDS>https://en.wikipedia.org/wiki/Grenadier_Guards]] guardsman|[[SG>https://en.wikipedia.org/wiki/Scots_Guards]] guardsman|WG guardsman|[[IG>https://en.wikipedia.org/wiki/Irish_Guards]] guardsman| |COLDM GDS guardsman|TA soldier of [[HAC>https://en.wikipedia.org/wiki/Honourable_Artillery_Company]]||| |>|>|>|BGCOLOR(lightgrey):下段(左から)| |RM band drummers×2人|GREN GDS drum major|SG officer|COLDM GDS bandsman with tuba| |PWRR pipes and drums|[[King's Troop RHA>https://en.wikipedia.org/wiki/King%27s_Troop,_Royal_Horse_Artillery]] Sergeant|RAF band musicians×2人|RAF regiment aircraftman| ちなみに下段のPWRRやRMの[[ドラム隊>https://en.wikipedia.org/wiki/Corps_of_drums]]は軍服の上にヒョウ毛皮(21世紀はフェイクファー )を羽織ってます。 軍服の擦り切れ&軍服のボタンで楽器の傷つき防止。 なぜヒョウなのかは分かりませんでした。他の連隊は普通の革やエプロンを羽織ってます。 } #endregion ---- ---- ※ものすごーくお世話になったサイト。詳細はこちらをご覧下さい。 ・[[金獅子亭 Kinjishi-Tei>http://nassaublue.net/]] ---- ----
#contents_line(level=2,sep=/) *アルマダ海戦でスペインは斬り込み、イングランドは砲撃 ジェフリーやビセンテがやってる[[斬り込み>http://en.wikipedia.org/wiki/Naval_boarding]]は16世紀ヨーロッパの一般的な海戦術です。大砲で一斉射撃したら敵船に接舷。 戦闘員が敵船に乗り込んで白兵戦。 アルマダ海戦でイングランドは脇役の大砲を主役に軍制改革。大砲を撃ちまくってスペインの斬り込みを阻止します。 &ref(アルマダ海戦.PNG) 左側:1795年[[イギリス東インド会社>https://en.wikipedia.org/wiki/East_India_Company]]Triton号に斬り込んだ[[コルセール>https://en.wikipedia.org/wiki/French_corsairs]](フランスの[[私掠船>https://en.wikipedia.org/wiki/Privateer]])。船長は[[Robert Surcouf>https://en.wikipedia.org/wiki/Robert_Surcouf]]。 **斬り込みを工夫したスペイン 1537年スペイン王[[カルロス1世>http://en.wikipedia.org/wiki/Charles_V,_Holy_Roman_Emperor]](王フェリペ2世の父親)は海軍歩兵Infantería de Armada(世界最古の[[海兵隊>http://en.wikipedia.org/wiki/Marines]])を設立します。 海戦を重視した王フェリペ2世は[[海兵隊テルシオ>https://en.wikipedia.org/wiki/Tercio]]Tercio de Galerasにバージョンアップ。 砲撃や斬り込みなどの海戦と[[上陸戦>https://en.wikipedia.org/wiki/Landing_operation]]の専門部隊です。3,000人の海兵隊テルシオが[[ガレー船>http://en.wikipedia.org/wiki/Galley]]や[[ガレオン船>http://en.wikipedia.org/wiki/Galleon]]に常駐。 &ref(アルマダ海戦_スペイン.JPG)スポントゥーンの練習(USS[[コンスティチューション号>https://en.wikipedia.org/wiki/USS_Constitution]]) 斬り込みの武器は[[手榴弾>https://en.wikipedia.org/wiki/Hand_grenade]]、[[マスケット銃>https://en.wikipedia.org/wiki/Musket]]、[[ピストル>https://en.wikipedia.org/wiki/Pistol]]、レイピア(17世紀から短い[[カットラス>https://en.wikipedia.org/wiki/Cutlass]])、…その他アレコレの刃物です。 とっても使えるのは斬り込み斧(boarding axe)。 逆に斬り込まれそうならパイク(17世紀から短い[[スポントゥーン>https://en.wikipedia.org/wiki/Spontoon]])で相手をプスプスします。ヤードから手榴弾を投げてもオケ。 **大砲を工夫したイングランド アンガス・コンスタム著「図説スペイン無敵艦隊」によると、イングランドはスペインの2~3倍多く発射できたそうです。 海戦は大砲を撃ちまくった方が有利だぜ! こちらは1588年アルマダ海戦で使用した大砲です。なんでイングランドの大砲がオマーンにあるんでしょね? &ref(アルマダ海戦_イングランド.JPG) 左:帰還中に[[Glenagivney Bay>http://en.wikipedia.org/wiki/Kinnagoe_Bay]](アイルランド)で沈没したLa Trinidad Valencera号のブロンズ製大砲([[Ulster Museum>http://en.wikipedia.org/wiki/Ulster_Museum]])。 右:最高司令官[[エフィンガム男爵チャールズ・ハワード>http://en.wikipedia.org/wiki/Charles_Howard,_1st_Earl_of_Nottingham]]が乗船した[[Ark Royal号>http://en.wikipedia.org/wiki/English_ship_Ark_Royal_(1587)]]の大砲(オマーン:Barka Castle)。 #region(close,スペインは大砲ドーン!イングランドは大砲ドーンドーンドーン!) スペインの大砲は16世紀のヨーロッパで一般的な2輪の砲台です。大きいし、船の中だと扱いにくいし、とーっても大変。 担当したのは斬り込みがお仕事の兵士(海兵隊テルシオ?)。 タマの装塡が終わると「よーし!敵に乗り込むぜー!」と砲列甲板から離れちゃいます。砲手長が1人ぼっちで大砲ドーン。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Gun_carriage]] &ref(アルマダ海戦_イングランド(大砲).PNG)スペインの砲台は2輪、イングランドの砲台は4輪 イングランドは4輪の砲台を開発します。大きくないし、船の中でも扱いやすいし、とっても楽チン。 担当したのは砲撃がお仕事の兵士(砲撃手)。 砲撃手は「コイツの癖は知り尽くしてるぜー!」だからタマの装塡も早いです。横列甲板でずっと大砲ドーンドーンドーン。 #blockquote(){&u(){&bold(){イングランドは大砲ドーンドーンドーン!}} 大砲はドーンと撃つとガー!と後退します。砲台が4輪だと後ろにガー!の力が分散するから車輪が小さくてもオケ。 車輪が小さいと大砲を砲門の側まで出せて照準が楽チン。 あとロープを引っ張れば大砲を砲門へ出せる[[滑車装置>http://en.wikipedia.org/wiki/Pulley]]も開発。楽チンだから撃ちまくるぜー! &ref(アルマダ海戦_イングランド(大砲_滑車装置).JPG)こんな感じ? アルマダ海戦でイングランドはタマ不足になるまで撃ちまくります。でもスペイン船を破壊する威力はなかった。あちゃー! 実は扱いが大変な2輪のスペインもあちゃー! 沈没したスペイン船を調べると、扱いが大変な2輪の大型大砲より楽チンな小型([[旋回砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Swivel_gun]]とか)が多く使われたそうです。 &ref(アルマダ海戦_イングランド(大砲_砲撃戦).JPG)イングランドの大砲 左:1587年製造の刻印。 右:テューダー朝の花紋[[テューダー・ローズ>http://en.wikipedia.org/wiki/Tudor_rose]]の刻印かしら? その後、アルマダ海戦に負けちゃったスペインも4輪の砲台や滑車装置を採用します。 アルマダ海戦は海戦のターニングポイント。 だんだんヨーロッパの海戦はお互いに大砲ドーンドーンドーン!の砲撃戦が主流になっていきます。大砲もどんどん進化。 } #endregion **ついでに武器 #include(【共通】アルマダ海戦の武器と装備) #region(close,マントもお忘れなく) 16世紀末ジェフリーやビセンテのお洋服3大アイテムはダブレット、ホーズ、マント([[クローク>https://en.wikipedia.org/wiki/Cloak]])のアンサンブルです。 マントは寒さや雨風を防ぐ必須アイテム。 ファッションにも萌えにも欠かせない重要アイテム。18世紀後半になると[[オーバーコート>https://en.wikipedia.org/wiki/Overcoat]]が軍隊で使われます。 &ref(アルマダ海戦_武器と防具(マント).JPG)ひらひらサイコー♥ 右側はコチニールで染めた赤色のサテン製マント(1580-1600年:フランス)です。赤色のマントはとーっても高価。 [[タッセル>https://en.wikipedia.org/wiki/Tassel]]や刺繍は銀、銀糸、絹糸。 マントの刺繍は1590年代に流行。雷文模様(fretwork)の刺繍は1530年代フランスで始まってヨーロッパ中に広まります。 #blockquote(){&u(){&bold(){ジェフリーの着こなし}} 16世紀の絵画を眺めてみるとマントを肩に掛ける自画像が少々あります。 こちらは女王エリザベス1世に「カエル」と呼ばれたアンジュー公[[フランソワ>https://en.wikipedia.org/wiki/Francis,_Duke_of_Anjou]](1555–1584年:フランス王アンリ3世の弟)。 おしゃれなカエルさんだったんですね。 &ref(アルマダ海戦_武器と防具(マント_ジェフリー1).JPG)[[フランソワ・クルーエ>https://en.wikipedia.org/wiki/Fran%C3%A7ois_Clouet]]画「François, duc d'Alençon」(フランス) こちらはマントの胸元リボンを脇の下で結んでる着こなし。胸元リボンを肩の上で結ぶのもアリ。 ジェフリーは襟下に通したベルト? 映画「[[エリザベス:ゴールデン・エイジ>https://en.wikipedia.org/wiki/Elizabeth:_The_Golden_Age]]」(2007年)でも[[ウォルター・ローリー>https://en.wikipedia.org/wiki/Walter_Raleigh]]がマントをアレコレ着こなしてます。 &ref(アルマダ海戦_武器と防具(マント_ジェフリー2).JPG) } #blockquote(){&u(){&bold(){コチニール}} コチニールは[[アステカ>https://en.wikipedia.org/wiki/Aztec]]や[[マヤ>https://en.wikipedia.org/wiki/Maya_civilization]](メキシコ)で愛用された染料です。原材料は検索ご注意な[[コチニールカイガラムシ>https://en.wikipedia.org/wiki/Cochineal]]。 16世紀初めスペインが[[アメリカ大陸を植民地化>https://en.wikipedia.org/wiki/Spanish_colonization_of_the_Americas]]。 銀と一緒にメキシコからガッポガッポ輸入してヨーロッパ中で珍重されます。でもお高級品。 [[wikipedia>https://en.wikipedia.org/wiki/Carmine]] &ref(アルマダ海戦_武器と防具(マント_コチニール).JPG)コチニールの赤色 イングランドはコチニールをスペインから輸入してます。[[英西戦争>https://en.wikipedia.org/wiki/Anglo-Spanish_War_(1585%E2%80%931604)]](1585–1604年)の間は貿易をほぼ中止。 ってことで、スペイン在住イングランド人がこっそり貿易。 イングランド私掠船もコチニールを運ぶスペイン[[インディアス艦隊>https://en.wikipedia.org/wiki/Spanish_treasure_fleet]]から略奪してたらしいです。 } #endregion #region(close,帽子はCopintank?カヴァリエ?) Copintank帽子はぜーんぜん分かりませんでした。 右側の[[Caravaggio>https://en.wikipedia.org/wiki/Caravaggio]]画「The Fortune Teller」(1594年:イタリア)がCopintank帽子に似てるっぽい? でもジェフリーやビセンテの帽子はもっとツバが広い感じがします。 &ref(アルマダ海戦_武器と防具(帽子).JPG) #blockquote(){&u(){&bold(){ビセンテの帽子はカヴァリエっぽい?}} [[カヴァリエ>https://en.wikipedia.org/wiki/Cavalier_hat]]は17世紀に人気のダチョウの羽で飾り付けされたツバが広い帽子です。 ツバの一方をクラウンにピンで留めるのがおしゃれ。 お名前の由来は[[イングランド内戦>https://en.wikipedia.org/wiki/English_Civil_War]](1642–1651年)で王チャールズ1世を支持する[[騎士党(Cavalier)>https://en.wikipedia.org/wiki/Cavalier]]が被ってたからです。 &ref(アルマダ海戦_武器と防具(帽子_カヴァリエ).JPG)詳細不明(1630年頃らしい) } #endregion *大砲 大砲は先っぽの砲口から[[砲弾>http://en.wikipedia.org/wiki/Round_shot]](鉄の丸いタマ)を入れて、薬包の火薬を爆発させた勢いでドーンと撃ちます。 タマを敵の船にぶつけて破壊。 お名前は陸上では「キャノン」、船上では「ガン([[艦砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Naval_artillery]])」と呼び方が違います。数え方は1門、2門、3門…。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Naval_artillery_in_the_Age_of_Sail]] &ref(大砲.PNG)32ポンド砲 32ポンド砲(32-pounders)は重さが32ポンド(≒15kg)のタマを撃つ大砲です。 砲撃手って腰痛になりそう…。 あと砲身を樽(バレル)と呼ぶのは、技術や資材のない人々が木で大砲を作ってたから。樽作りの応用で虚弱ながらも撃てます。 #region(close,大砲は動かないようにロープで固定) 船は波や風でプカプカ揺れます。ってことで、大砲は動かないようにロープで固定。大砲を撃つときは固定ロープをほどく。 ジェフリーが「ロープを解くのは左舷」と命令したアレ。 固定ロープと後退防止ロープは駐退索(breeching)というっぽいです。 &ref(大砲(ロープ).JPG)普段はロープで固定([[36-pounder long gun>http://en.wikipedia.org/wiki/36-pounder_long_gun]]) #blockquote(){&u(){&bold(){ロープは大砲を発射するときも大活躍}} 大砲をドーンと撃った勢いはものすごくて、一発撃つとその反動で大砲がガーっと後退しちゃいます。 巻き込まれたら怪我するくらいハデ。 ってことで、砲台には華麗に後退するようにガン・テークルと、華麗に後退し過ぎないようにロープが付いてます。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Recoil]] &ref(大砲(ロープ:発射).JPG)一発撃つと大砲は&arrow(2)へ動く たぶん大砲を床に固定すると発射の反動で床がベリベリ壊れます。だからガン・テークルなのね。 } #endregion #region(close,大砲ってけっこう身近!?夏を彩る花火も大砲でドーン) なーんと!花火も[[迫撃砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Mortar_(weapon)]](はくげきほう)という大砲を使ってドーンっと打ち上げるそうです。大砲が身近でビックリ。 迫撃砲は大昔の[[投石機>http://en.wikipedia.org/wiki/Catapult]]、[[射石砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Bombard_(weapon)]]の進化形。 持ち運びも使い方も簡単だから戦場でも大活躍。お名前の由来は「敵に迫って砲撃する大砲」です。 &ref(大砲(花火).JPG) #blockquote(){&u(){&bold(){迫撃砲ってなに?}} 迫撃砲は射程距離(小難しく言うと[[砲口初速>http://en.wikipedia.org/wiki/Muzzle_velocity]])を抑えた大砲です。 火薬バーン!が小さいから大砲の強度も下げられるし、大砲ドーン!の反動が小さいから[[ガン・テークル>http://en.wikipedia.org/wiki/Recoil_buffer]]も不要。 ってことで、大砲の構造も簡単です。 &ref(大砲(花火:迫撃砲).JPG) 大砲は構造や用途によって種類がいっぱい。例えば[[高射砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Anti-aircraft_warfare]]は飛んでる戦闘機、[[対戦車砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Anti-tank_warfare]]は堅い戦車を撃つ大砲です。 迫撃砲は自動車や人を撃つ大砲。 命中率は低いけどドーンドーンドーンと撃ちまくれば敵をノンビリさせません([[制圧射撃>http://en.wikipedia.org/wiki/Suppressive_fire]])。 &ref(大砲(花火:制圧射撃).JPG)制圧射撃(ロシア:[[自走多連装ロケット砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Multiple_rocket_launcher]][[BM-21 Grad>http://en.wikipedia.org/wiki/BM-21_Grad]]) 制圧射撃で敵をノンビリさせないことを「[[弾幕を張る>http://en.wikipedia.org/wiki/Barrage_(artillery)]]」と言います。敵がアワアワしてる間に攻撃や撤退できちゃうの。 歩兵の基本戦術の1つ。 初めてのご使用は[[第二次ボーア戦争>http://en.wikipedia.org/wiki/Second_Boer_War]](1899–1902年)のイギリス軍です。 } #endregion #region(close,21世紀の大砲) こちらは21世紀イギリス海軍の主力艦[[45型駆逐艦>http://en.wikipedia.org/wiki/Type_45_destroyer]]。防空能力(戦闘機やミサイルによる攻撃の防御)に優れてるそうです。 グローリア号やサンティアゴ号もビックリなスゴイ武器っぽそう。 イギリス海軍のサイトには戦艦と位置、戦艦の大砲と性能が紹介されてます。あらま!ナイショじゃないのね。 &ref(大砲(21世紀)-1.PNG)&ref(大砲(21世紀)-2.PNG) |BGCOLOR(lightgrey):CENTER:|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:搭載数|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:射程距離|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:解説(えーっと、よく分かってないまま書いてます)| |③[[4.5Mk8 Gun>http://en.wikipedia.org/wiki/4.5_inch_Mark_8_naval_gun]]|1基|22km|穴から113mm口径弾をドンドンドンと毎分25発撃つ大砲。| |④[[Sea Viper>http://en.wikipedia.org/wiki/PAAMS]]|6モジュール|Aster15:&br()1.7–30km&br()Aster30:&br()3–120km|穴から[[Aster15/30ミサイル>http://en.wikipedia.org/wiki/Aster_(missile_family)]]をドーンと発射。&br()②[[Operations room>http://en.wikipedia.org/wiki/Operations_room]]の人達が①[[SAMPSONレーダ>http://en.wikipedia.org/wiki/SAMPSON]]で行き先を操作。&br()ミサイルは最大8発(1モジュール)を同時に発射、最大16発を同時に操作できる。&br()フランス、イタリアとお揃い。| |⑤[[30mm Gun>http://en.wikipedia.org/wiki/30mm_DS30M_Mark_2_Automated_Small_Calibre_Gun]]|2基||穴から[[30mm口径弾>http://en.wikipedia.org/wiki/30_mm_caliber]]をドンドンドンと毎分100-200発撃つ大砲。| |⑥[[Phalanx>http://en.wikipedia.org/wiki/Phalanx_CIWS]]|2基|3.6km|穴から[[20mm口径弾>http://en.wikipedia.org/wiki/20_mm_caliber]]をバババババと毎分4,500発撃つ[[ガトリング砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Gatling_gun]]。&br()銃身は6本。これがものすごーい速さでクルクル回転しながら順番に発射する。&br()アメリカ、海上自衛隊…とお揃い。&br()&ref(大砲(21世紀:ガトリング砲).PNG)ガトリング砲を装備したタチコマ♥| |⑦[[S1850M>http://en.wikipedia.org/wiki/S1850M]]|CENTER:-|CENTER:-|400kmの範囲にいる敵を発見できるレーダ。1,000個の目標を同時に対処できる。&br()監視してるのは②Operations roomの人達。| |⑧[[Life rafts>http://en.wikipedia.org/wiki/Lifeboat_(shipboard)]]|CENTER:-|CENTER:-|救命ボート。普段は船内にしまってあるので見た目がスッキリ。| |⑨[[Lynx Mk8>http://en.wikipedia.org/wiki/Westland_Lynx]]|CENTER:-|CENTER:-|Sea Sprayレーダ(対潜水艦?)を装備、[[Sea Skua>http://en.wikipedia.org/wiki/Sea_Skua]]ミサイルを搭載したヘリコプター。&br()フランス、ドイツ…とお揃い。| #blockquote(){&u(){&bold(){ミサイルによる攻撃ってなに?}} 21世紀は遠くまであっという間に飛ぶ[[弾道ミサイル>http://en.wikipedia.org/wiki/Ballistic_missile]]があります。とーっても遠くまで飛ぶのは[[大陸間弾道ミサイル>http://en.wikipedia.org/wiki/Intercontinental_ballistic_missile]]。 先っぽに核を載せてもオケ。 2015年[[アメリカ国防総省>http://en.wikipedia.org/wiki/United_States_Department_of_Defense]]の[[レポート>http://www.defense.gov/pubs/2015_China_Military_Power_Report.pdf]](pdf)によると中国は全米に届く核ミサイルをいっぱい持ってるそうです。 &ref(大砲(21世紀:ミサイルによる攻撃).JPG)弾道ミサイルの射程距離(2013年:中国) 弾道ミサイルは潜水艦にも載せられます。ウチの弾道ミサイルはそんなに飛ばないわ…の国は潜水艦で近所へ行ってドーン。 こちらはイギリス海軍の潜水艦[[HMS Vanguard>http://en.wikipedia.org/wiki/HMS_Vanguard_(S28)]]の核ミサイル発射テスト(2012年)。 ボタンをポチで発射したミサイルは[[誘導>http://en.wikipedia.org/wiki/Missile_guidance]]されて標的をドカーン。自分で標的を探すミサイルもあります(自立誘導)。 &ref(大砲(21世紀:ミサイルによる攻撃_発射).JPG) この発射テストはイランとアルゼンチンに向けて軍事力の警告(相手をビビらせる)を含んだテストだそうです。 HMS Vanguardは16発の核ミサイルを装備。 ちなみにミサイルには部品や火薬の劣化で有効期限があります。 } #blockquote(){&u(){&bold(){ミサイルによる攻撃の防御ってなに?}} 潜水艦発射弾道ミサイル[[UGM-133 Trident II>http://en.wikipedia.org/wiki/UGM-133_Trident_II]]はマッハ24で飛びます。弾道ミサイルは遠くからあっという間に飛んで来る。 ってことで、迎撃がとーっても難しいの。 皆さん一生懸命[[ミサイル防衛>http://en.wikipedia.org/wiki/Missile_defense]]を考えてます。イギリス海軍の主力艦45型駆逐艦の④Sea Viperも[[対ミサイル>http://en.wikipedia.org/wiki/Aster_(missile_family)]]。 &ref(大砲(21世紀:ミサイルによる攻撃_防衛).JPG)ミサイル防衛 あっという間に飛んで来る弾道ミサイルは、一国で対応するより大勢で協力した方が撃墜の可能性が高くなります。 イギリスやスペインはNATOでご一緒にミサイル防衛。 NATOのミサイル防衛は[[ALTBMD>http://en.wikipedia.org/wiki/NATO_missile_defence_system]](Active-Layered Theatre Ballistic Missile Defense)というっぽいです。 &ref(大砲(21世紀:ミサイルによる攻撃_日本).JPG) 日本のミサイル防衛はBMD(Ballistic Missile Defense)というっぽいです。アメリカとご一緒にミサイル防衛? こちらは護衛艦[[きりしま>http://en.wikipedia.org/wiki/JDS_Kirishima]]の弾道ミサイル迎撃テスト。 飛んできた弾道ミサイルを迎撃したのは艦船発射型弾道弾迎撃ミサイル[[SM-3>http://en.wikipedia.org/wiki/RIM-161_Standard_Missile_3]]です。ちゃんと当たりました♥ } #endregion **ぶつけるタマは「shot」、爆発するタマは「shell」 大砲で撃つタマは砲弾です。中に火薬が入って無い砲弾は[[ショット>http://en.wikipedia.org/wiki/Round_shot]]、火薬が入ってる砲弾は[[シェル(榴弾)>http://en.wikipedia.org/wiki/Shell_(projectile)]]っぽい。 初めて海戦で使われたシェルは1822年[[ペクサン砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Paixhans_gun]](フランス)。 陸戦は16世紀から一般的に迫撃砲などでご使用。19世紀中頃まで[[導火線>http://en.wikipedia.org/wiki/Artillery_fuze]](slow burning fuse)で爆発します。 &ref(大砲(タマ).JPG) 左側:[[Castel Nuovo>http://en.wikipedia.org/wiki/Castel_Nuovo]](イタリア)のブロンズ製ドアにぶつけたスペイン将軍[[ゴンサロ・フェルナンデス・デ・コルドバ>http://en.wikipedia.org/wiki/Gonzalo_Fern%C3%A1ndez_de_C%C3%B3rdoba]]が撃ったショット(1503年:Siege of Naples) 右側:[[Keeler Tavern>http://en.wikipedia.org/wiki/Keeler_Tavern]](アメリカ)の木製柱にぶつけたイギリスが撃ったショット(1777年:[[リッジフィールドの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Ridgefield]]) #region(close,タマはいっぱい種類がある) こちらは昔の皆さんがご使用したタマの一部。ジェフリーやビセンテはたぶんIron shotをご使用してます。 Iron shotはぶつけて相手を破壊。 破壊できるのはタマがすごーい速さで飛ぶからです。気が付いたら「あらま!ぶつかってた!」ってくらい速い。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_cannon_projectiles]] |&ref(大砲(タマ:種類).PNG)|BGCOLOR(lightgrey):①|[[円弾>http://en.wikipedia.org/wiki/Round_shot]]|石弾|石製タマ(gunstone)は17世紀までに鉄製タマに交代。&br()最初の焼玉式焼夷弾は1579年ポーランド王[[ステファン・バートリ>http://en.wikipedia.org/wiki/Stephen_B%C3%A1thory]]。&br()炉で焼いたアツアツの鉄製タマだから相手は火事になる。| |~|BGCOLOR(lightgrey):②|~|Iron shot|~| |~|BGCOLOR(lightgrey):③|>|[[焼玉式焼夷弾>http://en.wikipedia.org/wiki/Heated_shot]]|~| |~|BGCOLOR(lightgrey):④|>|[[ぶどう弾>http://en.wikipedia.org/wiki/Grapeshot]]|最初のぶどう弾は[[フス戦争>http://en.wikipedia.org/wiki/Hussite_Wars]](1419–1434年)。&br()帆船時代の海戦で活躍。&br()中の鉄球が散乱して相手は広範囲の人や[[索具>http://en.wikipedia.org/wiki/Rigging]]が被害を受ける。| |~|BGCOLOR(lightgrey):⑤|>|[[チェーンショット>http://en.wikipedia.org/wiki/Chain-shot]]|最初のチェーンショットは1631年[[マクデブルクの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Sack_of_Magdeburg]]。&br()帆船時代の海戦で活躍。相手の索具を斬って船を動かせなくする。| |~|BGCOLOR(lightgrey):⑥|>|[[バーショット>http://en.wikipedia.org/wiki/Chain-shot]]|~| |~|BGCOLOR(lightgrey):⑦|>|[[カーカス弾>http://en.wikipedia.org/wiki/Carcass_(projectile)]]?|最初のカーカス弾は1672年フランス王[[ルイ14世>http://en.wikipedia.org/wiki/Louis_XIV_of_France]]。&br()中の可燃物が爆発して相手は広範囲の人が死ぬ。火事になる。| |~|BGCOLOR(lightgrey):⑧|>|[[キャニスター弾>http://en.wikipedia.org/wiki/Canister_shot]]|18~19世紀の戦場で活躍。&br()中の鉄球、鉄くず、釘…が散乱して相手は広範囲の人が死ぬ。| |~|BGCOLOR(lightgrey):⑨|>|[[榴散弾>http://en.wikipedia.org/wiki/Shrapnel_shell]]|1784年[[イギリス陸軍砲兵隊>http://en.wikipedia.org/wiki/Royal_Artillery]]が開発。&br()中の鉄球、鉛球が散乱して相手は広範囲の人が死ぬ。| #blockquote(){&u(){&bold(){ぶどう弾ってなに?}} ぶどう弾は帆布製の袋に鉄球が入ったブドウみたいな形のタマです。大砲ドーンで袋が破れて鉄球がブハーと飛び出す。 18~19世紀に大人気っぽい。 大量の鉄球が散乱して相手の帆、帆を繋ぐロープ、甲板にいる水夫…手前のアレコレを一気に破壊します。 &ref(大砲(タマ:ぶどう弾).PNG) 逆にぶどう弾を撃たれそうなら舷側に鉄製ハンモック・ネッティング(hammock netting)を張れば鉄球を止められます。 ついでに斬り込みも阻止。 これは18世紀後半からで斬り込み防止網(anti boarding net)というっぽいです。 &ref(大砲(タマ:ぶどう弾_キャニスター弾).JPG) 19世紀末[[ライフリング>http://en.wikipedia.org/wiki/Rifling]](砲膣が螺旋状の溝)の大砲が登場します。溝があるとタマが「敵にバッチリ当たる」の。 溝の大砲でぶどう弾は使用不可。 あらま!ってことで、[[スズ>http://en.wikipedia.org/wiki/Tin]]や[[黄銅>http://en.wikipedia.org/wiki/Brass]]の容器を[[装弾筒>http://en.wikipedia.org/wiki/Sabot]](たぶん木製)でカバーしたキャニスター弾に代替わりします。 } #endregion #region(close,どうやってシェルは爆発するの?) シェルの中には火薬(起爆剤)が入ってます。火薬を爆発させるのは[[信管>http://en.wikipedia.org/wiki/Fuse_(explosives)]]。爆発のタイミングを調整する時限信管もあります。 F&B時代に大活躍の[[火縄>http://en.wikipedia.org/wiki/Slow_match]]も信管の1つ。 タマの信管構造は複雑でちんぷんかんぷん。ってことで、こちらはシンプルな西洋式花火(aerial shell)の信管構造です。 &ref(大砲(タマ:爆発).JPG)日本式花火とは構造が違う #blockquote(){&u(){&bold(){榴散弾の爆発}} 榴散弾は遠くまで飛ぶタマです。信管から火が出て炸薬が爆発。炸薬の爆発で容器が破れて鉄球がブハーと飛び出す。 信管は相手の近所でブハーとなる時限信管。 皆さんいろいろ考えるんだなぁ。逆に榴散弾を撃たれそうなら[[有刺鉄線>http://en.wikipedia.org/wiki/Barbed_wire]]、[[砂袋>http://en.wikipedia.org/wiki/Sandbag]]、[[ヘルメット>http://en.wikipedia.org/wiki/Combat_helmet]]で鉄球を止められます。 &ref(大砲(タマ:榴散弾).JPG) } #endregion **砲列甲板 砲列甲板は大砲がズラーっと並んでる場所です。撃つときは窓(砲門:Gun port)から先っぽを外に出して、敵船を狙って、ドーン。 ジェフリーが「まだだ…」って覗いてたアレ。 砲門は海水が入らない高さにあるけど、波が荒れると海水が入り込んじゃうから砲門蓋(lid)が付いてます。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Gun_deck]] &ref(大砲_砲列甲板.JPG) #region(close,砲列甲板は大混雑) 砲列甲板はとっても狭いです。戦闘中は人がいっぱいで大混雑。いろんな道具も置いてあってますます大混雑。 もわもわしてるのは大砲を撃った煙のせい。 上半身裸族の絵画が多かったです。パンパン中の砲列甲板は暑いのかも。それにしても皆さん良い体してますのぉ♥ &ref(大砲_砲列甲板(大混雑).JPG)Robert Sticker画「砲列甲板」(1812年:[[米英戦争>http://en.wikipedia.org/wiki/War_of_1812]]) #endregion #region(close,砲門と砲門蓋) 砲門の起源はハッキリしてないげど15世紀後半には登場。16世紀になると砲列についてアレコレ研究が進みます。 こちらは一般的な帆船時代の砲門サイズ([[36-pounder long gun>http://en.wikipedia.org/wiki/36-pounder_long_gun]]の場合)と間隔。 船体に穴を開けてもなるべく軟弱にならないような砲門を考えなくちゃいけません。船尾にも砲門があるんですね。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Gun_port]] &ref(大砲_砲列甲板(砲門と砲門蓋).JPG)[[ジョン・パイン>http://en.wikipedia.org/wiki/John_Pine]]画「Armada 1588」(1739年:イギリス) #blockquote(){&u(){&bold(){砲門は大砲の先っぽを外に出すだけじゃない}} 大砲を撃つときは砲門から先っぽを外に出して、敵船を狙って、ドーンです。火薬のせいで砲列甲板はすさまじい白煙。 何も見えずの手探り状態。 戦闘中にこれはヤバイ!とってもヤバイです!ってことで白煙の換気にも砲門は重要です。 &ref(大砲_砲列甲板(砲門と砲門蓋:砲門).JPG)砲門から敵船をチェック中 船内は埃っぽいので砲門は普段の換気のためにも使われます。ただし、下層砲列甲板の皆さんは換気にご注意! 突風で砲門から波が入る危険アリ。 とっても運が悪いと船が沈没しちゃいます。ってことで、砲門蓋はちょびっとだけ開けられるように工夫。 } #blockquote(){&u(){&bold(){砲門蓋の開け方}} 砲門蓋を開けるには、繋止鏈(けいしれん)をスルスルしてナントカ(名前不明)にグルグルして止めます。 船の外側の壁に引っかける方法もあり。 繋止鏈は「坂の上の雲」に書いてあったんだけど、マイナーな言葉なんでしょか?これ以上は分かりませんでした。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Gun_port]] &ref(大砲_砲列甲板(砲門と砲門蓋:砲門蓋).JPG)砲列甲板 ちなみにアレコレ図面(?)を見たら、砲列甲板の床は中央から砲門に向かって下ってる船が多かったです。 下ってると大砲を動かしやすいのかも。 何もかもが力仕事の帆船時代はこーゆー工夫がアッチコッチにあるんだと思います。 } #endregion **大砲の発射 大砲は一発撃つと反動で後退しちゃうから「狙い」の修正は不可能です。だからとにかく撃ちまくる。なるべく近付いて撃ちまくる。 っといっても一発のドーンが大仕事。 ポンポン撃てません。砲弾は陸上では「キャノン・ボール」、船上では「ショット」と呼び方が違います。数え方は1発、1個、1弾。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Cannon_operation]] &ref(大砲_発射.GIF)一発のドーン 大砲は砲口(Muzzle)、マスケット銃は銃口(Muzzle)から砲弾を入れます(先込め:[[マズルローダー>http://en.wikipedia.org/wiki/Muzzleloader]])。 19世紀[[隔螺式ネジ>http://en.wikipedia.org/wiki/Interrupted_screw]]が登場すると砲弾は後ろから([[元込め>http://en.wikipedia.org/wiki/Breech-loading_weapon]])。 元込めは火薬が爆発するトコだからネジで尾栓をキッチリ閉じないとキケンなの。14世紀にも爆発が弱い[[フランキ砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Breech-loading_swivel_gun]]とかはあります。 #region(close,一発のドーンは大仕事) 大砲を一発撃つにはこーんなにたくさんの作業が必要です。だからポンポン撃てないの。 あと長時間の御使用もヤバイ。 撃ちまくってると大砲が熱くなって、砲身が火薬の圧力に耐えきれずに破裂(腔発)しちゃいます。火傷もきけん、きけん。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Muzzleloader]] &ref(大砲_発射(一発のドーン).JPG) |BGCOLOR(lightgrey):掃除|BGCOLOR(lightgrey):1|Wormer(螺旋コイル付きの木の棒)で筒の中のゴミを取り除く。| |BGCOLOR(lightgrey):雑巾がけ|BGCOLOR(lightgrey):2|空気の出入り防止に[[火門/火口>http://en.wikipedia.org/wiki/Touch_hole]](Vent:火薬に点火する穴)を指で塞ぐ。&br()[[洗桿>http://en.wikipedia.org/wiki/Cannon_operation]](Sponge:湿った羊皮で覆われたスポンジ)で前回発射の燃えカスや残り火を完全に取り除く。&br()※とっても重要な作業だから2回やる。ちゃんと掃除しないと↓で火薬ボーン。| |BGCOLOR(lightgrey):火薬のセット|BGCOLOR(lightgrey):3|[[さく杖>http://en.wikipedia.org/wiki/Ramrod]](Rammer)で薬包(Fabric Bag:火薬の入った袋)を筒の中に込める。奥までビシッと突っ込む。&br()ついでにギューギューして、火薬の粒の間の空気をちゃんと押し出す。残ってると全力で火薬ボーンしない。&br()※さく杖程度の圧力じゃ火薬ボーンしないから大丈夫。| |BGCOLOR(lightgrey):砲弾のセット|BGCOLOR(lightgrey):4|Scraperで砲弾を筒の中に込める。急いでるときは火薬と一緒に入れる。&br()※火薬と砲弾の間に[[ワッズ>http://en.wikipedia.org/wiki/Wadding]](Wadding:火薬をギュッっと押し込んでおく紙や布)を入れる方法もある。&br()※船は波や風でプカプカ揺れるから砲弾を込めた後、ゴロゴロ転がらないように麦わらを詰め込む方法もある。| |BGCOLOR(lightgrey):発射準備|BGCOLOR(lightgrey):5|火門から[[火門針>http://en.wikipedia.org/wiki/Cannon_operation]](Priming iron:火門を掃除する針)を刺して薬包に穴を開ける。| |~|BGCOLOR(lightgrey):6|火薬が詰まった[[羽ペン>http://en.wikipedia.org/wiki/Fuse_%28explosives%29]]を火門にプスッと刺す。刺した人は「PRIMED」と叫ぶ。&br()※[[角製火薬筒>http://en.wikipedia.org/wiki/Powder_horn]](Powder Horn:角製の火薬入れ)を使って火門に火薬を入れる方法もある。| |BGCOLOR(lightgrey):発射|BGCOLOR(lightgrey):7|後ろの人(船長とか)の指示で大砲の照準を合わせる。&br()左右の移動はテコ棒(Hand spikes)、角度の調整はクォイン(Quoin)で動かす。&br()&ref(大砲_発射(一発のドーン:クォイン).JPG)クォイン(HMS[[ヴィクトリー>http://en.wikipedia.org/wiki/HMS_Victory]]の[[カロネード砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Carronade]])| |~|BGCOLOR(lightgrey):8|後ろの人の「GIVE FIRE」で、[[導火桿>http://en.wikipedia.org/wiki/Linstock]](Linstock:火縄の付いた棒)を羽ペンに置いて点火する。&br()みんなは大砲から離れる。砲弾ドーン!大砲後ろにガー!白煙ブワー!| #blockquote(){&u(){&bold(){21世紀のドーンは楽チン}} 21世紀は機械がタマを大砲に込めてくれます([[自動装填装置>http://en.wikipedia.org/wiki/Autoloader]])。大砲もタマも大きすぎて人間がやるのはムリ。 狙いはコンピューター。発射はボタンをポチ。 こちらはちょびっと昔の自動装填装置。緑色がタマで黄色が薬包です。あっ、21世紀は火薬がタマの中に入ってます。 &ref(大砲_発射(一発のドーン:21世紀).GIF)[[BL 15 inch Mk I naval gun>http://en.wikipedia.org/wiki/BL_15_inch_Mk_I_naval_gun]](1915-1959年:イギリス) 火薬庫の火薬が爆発するとヤバイ!ってことで、火薬庫は大砲ドーンの火が入らないように自動開閉のドアが付いてます。 自動開閉は大砲ドーンと連動。 ボーっと立ってる方は身長172cmです。大砲の大きさもご堪能下さい。BLって何の略語でしょね? } #endregion #region(close,流れ作業で効率アップ) それぞれの作業は担当が決まってるので、流れ作業でパパッとやって大砲を撃つ時間を短縮してます。 こちらは18世紀初めのアメリカ陸軍。 時代や陸海軍でビミョーに違うんだと思います。F&B時代は分かりませんでした。 &ref(大砲_発射(流れ作業).JPG) #endregion **大砲の火薬 F&B時代の火薬は黒色火薬。一発撃つとすさまじい白煙を出すので、船内は何も見えずの手探り状態です。敵が見えない。 風上に向かって撃つと白煙がなかなか抜けずに危険倍増。 おまけに成分も体に悪い。煙と音の動画はこちらhttp://www.youtube.com/watch?v=L2WdU3Zkeigをどうぞ。 ←曲が終わると突然バンバンなのでご注意! [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Black_powder]] &ref(大砲_火薬.JPG)ちっちゃい大砲でも煙はスゴイ #region(close,火薬を運ぶのは子供達) 黒色火薬は簡単に爆発しちゃいます。大砲の横に置いたらヤバイ!ってことで、火薬庫(船庫のどこか)に厳重保存。 パンパン撃ち合うときは一回ごとに火薬庫から火薬を補充。 補充の担当はちっこくて素早く動ける少年達([[パウダー・モンキー>http://en.wikipedia.org/wiki/Powder_monkey]])。皮製の火薬筒(Cordite Bucket?)に火薬を入れて運びます。 &ref(大砲_火薬(パウダー・モンキー).JPG)Daniel Maclise画「[[The Death of Nelson>http://en.wikipedia.org/wiki/The_Death_of_Nelson_(Maclise_painting)]]」(1859年頃:イングランド) #blockquote(){&u(){&bold(){火薬はとっても取扱注意}} 黒色火薬を厳重保存する火薬庫はちょっとの火や静電気や衝撃も危険。入る時はなめ皮やフェルト製のスリッパ履きます。 危険なのは21世紀も一緒。 もし爆発したら[[90式戦車>http://en.wikipedia.org/wiki/Type_90_Ky%C5%AB-maru]](きゅうまるしきせんしゃ)のバナナ砲身みたいになっちゃいます。 &ref(大砲_火薬(パウダー・モンキー:取扱注意).JPG) えっと…バナナ砲身は戦車が曲がるとき砲身が土手にぶつかって、砲口に土が詰まったまま砲撃したらしいです。 すごい破壊力。 火薬はとっても取扱注意です。こちらは国土交通省の『危険物船舶運送及び貯蔵規則』の一部。 ・火薬類を積載してある場所においては、&bold(){防爆型の懐中電灯以外の照明を用いてはならない}。(第47条) ・火薬類の荷役をする場所又はこれを積載してある場所及びこれらの付近においては、マッチ、むきだしの鉄製工具その他火花を発しやすい物品を所持し、又は&bold(){鉄びようの付いているくつ類をはいてはならない}。(第47条) ←どんな靴? ・火薬類を積載する船倉若しくは区画の出入口又は火薬庫の開閉扉は、施錠その他関係者以外の者が立入ることができないような措置を講じなければならない。(第52条) } #blockquote(){&u(){&bold(){火薬庫は吃水線の下}} もし火薬が爆発したら一緒に船も壊れちゃうかもしれません。ヤバイ!ってことで、火薬庫は吃水線の下(海の中)。 この船はWater line(送水管?)も設置。 スプリンクラーっぽいヤツ?グローリア号やサンティアゴ号にも付いてるのかしら?送水管の詳細は分かりませんでした。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Magazine_%28artillery%29]] &ref(大砲_火薬(パウダー・モンキー:火薬庫).JPG)吃水線はこんな感じ? } #endregion #region(close,21世紀の火薬) 21世紀の火薬は煙の少ない[[無煙火薬>http://en.wikipedia.org/wiki/Smokeless_powder]]です。っていうか、煙がどーのこーのってレベルじゃないっっっ!火がー!火がー! こちらはアメリカ海軍の戦艦[[アイオワBB-61>http://en.wikipedia.org/wiki/USS_Iowa_%28BB-61%29]](進水:1942-1990年)。 お魚が心配になる威力です。1989年装薬が静電気の引火で爆発([[戦艦アイオワ砲塔爆発事故>http://en.wikipedia.org/wiki/USS_Iowa_turret_explosion]])。47名が亡くなりました。 &ref(大砲_火薬(21世紀).JPG)50口径40.6cm砲の発射 |BGCOLOR(lightgrey):|BGCOLOR(lightgrey):搭載数|BGCOLOR(lightgrey):口径&br()(inches)|BGCOLOR(lightgrey):砲身長&br()(feet)|BGCOLOR(lightgrey):重量&br()(pounds)|BGCOLOR(lightgrey):砲弾重量&br()(pounds)|BGCOLOR(lightgrey):火薬量&br()(pounds)|BGCOLOR(lightgrey):射程距離&br()(yards)| |BGCOLOR(lightgrey):[[50口径40.6cm砲>http://en.wikipedia.org/wiki/16-50_Mark_7]]|7門|16(40.64cm)|66′8″(20m32cm)&br()50calibers|267,904(122t)|AP Mark 8:&br()2,700(1.23t)|660(300kg)|41,622(38km)| #endregion **射程距離 射程距離が知りたいだけなのに…こんな表になってしまいました。世の中はこのワケ分かんないデータが重要だそうです。ふぇー。 とりあえず大砲って重い。 砲手の皆さんは大変なんですね。詳細は歴史学者[[Albert Manucy>http://en.wikipedia.org/wiki/Albert_Manucy]]著「Artillery Through the Ages」(1949年:アメリカ)をどうぞ。 &ref(大砲_射程距離.JPG)[[ゴールデン・ハインド号>http://en.wikipedia.org/wiki/Golden_Hind]]の大砲(レプリカ) |>|>|>|>|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:イングランド(16世紀)| |BGCOLOR(lightgrey):|BGCOLOR(lightgrey):口径&br()(inches)|BGCOLOR(lightgrey):砲身長&br()(feet)|BGCOLOR(lightgrey):重量&br()(pounds)|BGCOLOR(lightgrey):砲弾重量&br()(pounds)|BGCOLOR(lightgrey):火薬量&br()(pounds)|BGCOLOR(lightgrey):射程距離&br()(yards)| |BGCOLOR(lightgrey):Rabinet|1(2.54cm)|?|300(136kg)|0.3(0.14kg)|0.18(0.08kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):Serpentine|1.5(3.81cm)|?|400(181kg)|0.5(0.23kg)|0.3(0.14kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):[[ファルコネット砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Falconet_%28cannon%29]]|2(5.08cm)|3′9″(1m14cm)|500(227kg)|1(0.45kg)|0.4(0.18kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):Falcon|2.5(6.35cm)|6′0″(1m83cm)|680(308kg)|2(0.91kg)|1.2(0.54kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):[[ミニオン砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Minion_%28cannon%29]]|3.5(8.89cm)|6′6″(1m98cm)|1,050(476kg)|5.2(2.36kg)|3(1.36kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):[[セーカー砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Saker_%28cannon%29]]|3.65(9.27cm)|6′11″(2m11cm)|1,400(635kg)|6(2.72kg)|4(1.81kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):[[デミ・カルバリン砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Demi-culverin]]|4(10.16cm)|?|3,400(1,542kg)|8(3.63kg)|6(2.72kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):Culverin bastard|4.56(11.58cm)|8′6″(2m59cm)|3,000(1,361kg)|11(4.99kg)|5.7(2.59kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):[[バシリスク砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Basilisk_%28cannon%29]]|5(12.70cm)|?|4,000(1,814kg)|14(6.35kg)|9(4.08kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):[[カルバリン砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Culverin]]|5.2(13.21cm)|10′11″(3m33cm)|4,840(2,195kg)|18(8.17kg)|12(5.44kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):Pedrero|6(15.24cm)|?|3,800(1,724kg)|26(11.79kg)|14(6.35kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):[[デミ・カノン砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Demi-cannon]]|6.4(16.26cm)|11′0″(3m35cm)|4,000(1,814kg)|32(14.51kg)|18(8.17kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):Bastard cannon|7(17.78cm)|?|4,500(2,041kg)|42(19.05kg)|20(9.07kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):Cannon serpentine|7(17.78cm)|?|5,500(2,495kg)|42(19.05kg)|25(11.34kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):[[カノン砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Cannon]]|8(20.32cm)|?|6,000(2,722kg)|60(27.22kg)|27(12.25kg)|| |BGCOLOR(lightgrey):Cannon royal|8.54(21.69cm)|8′6″(2m59cm)|8,000(3,629kg)|74(33.57kg)|30(13.61kg)|| |>|>|>|>|>|>|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:スペイン(16世紀)&br()&ref(大砲_射程距離(ポイント・ブランク).JPG)射程距離は上段:[[ポイント・ブランク>http://en.wikipedia.org/wiki/Point-blank_range]](大砲を敵船に真っ直ぐに向けた時)、下段:最大(大砲が一番飛ぶ角度の時)| |BGCOLOR(lightgrey):|BGCOLOR(lightgrey):口径&br()(inches)|BGCOLOR(lightgrey):砲身長&br()([[calibers>http://en.wikipedia.org/wiki/Caliber_%28artillery%29]])|BGCOLOR(lightgrey):重量&br()(pounds)|BGCOLOR(lightgrey):砲弾重量&br()(pounds)|BGCOLOR(lightgrey):火薬量&br()(pounds)|BGCOLOR(lightgrey):射程距離&br()(yards)| |BGCOLOR(lightgrey):Esmeril||||1/2 (0.14kg)||208(190m)&br()750(686m)| |BGCOLOR(lightgrey):[[ファルコネット砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Falconet_%28cannon%29]]||||1 (0.45kg)||| |BGCOLOR(lightgrey):Falcón ||||3 (1.36kg)||417(381m)&br()2,500(2,286m)| |BGCOLOR(lightgrey):Pasavolante||40~44||6 (2.72kg)||500(457m)&br()4,166(3,809m)| |BGCOLOR(lightgrey):Media sacre||||6 (2.72kg)||417(381m)&br()3,750(3,429m)| |BGCOLOR(lightgrey):Sacre||||9 (4.08kg)||| |BGCOLOR(lightgrey):Moyana||||9 (4.08kg)||| |BGCOLOR(lightgrey):Media culebrina||||12 (5.44kg)||833(762m)&br()5,000(4,572m)| |BGCOLOR(lightgrey):Tercio de culebrina||||18 (8.16kg)||| |BGCOLOR(lightgrey):[[カルバリン砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Culverin]]||30~32||24 (10.89kg)||1,742 (1,593m)&br()6,666(6,095m)| |BGCOLOR(lightgrey):Culebrina real||30~32||32 (14.52kg)||| |BGCOLOR(lightgrey):Doble culebrina||30~32||48 (21.77kg)||| #region(close,射程距離は口径、砲身長、砲弾重量、火薬量で変わるっぽい(弾道学)) もし戦うなら大砲は「遠くまでピューっと飛ぶ」「敵にバッチリ当たる」「敵をドカーンと壊す」がいいですよね。 これを研究したのが[[弾道学>http://en.wikipedia.org/wiki/Ballistics]]。 大砲のタマは地球の重力や空気とかが影響するそうで…とってもムズカシイ学問らしいです。[[弾道振り子>http://en.wikipedia.org/wiki/Ballistic_pendulum]]なんかも弾道学の1つ。 &ref(大砲_射程距離(弾道学).JPG)砲口初速が分かる弾道振り子(高校物理で習います) #blockquote(){&u(){&bold(){砲身が長いと「遠くまでピューっと飛ぶ」}} タマは火薬がバーン!と爆発したエネルギーで前へ進みます。エネルギー満杯の砲身の中でどーんどん加速。 でも長ければオケじゃないのでご注意。 タマが砲口を出たときの速度([[砲口初速>http://en.wikipedia.org/wiki/Muzzle_velocity]])が絶好調の「きゃー♥」になる長さがちょうど良い砲身長です。 &ref(大砲_射程距離(弾道学:ピュー).PNG) 逆に砲身が短いとタマが「きゃー♥」になる前に飛び出しちゃいます。加速が足りないからピューっと飛べない。 そんなときは火薬を増やせばオケ。 絶好調の「きゃー♥」は砲身長、火薬の質(燃焼速度と膨張率)、火薬の量、タマの大きさ(重量)…などなどが影響します。 &ref(大砲_射程距離(角度).JPG)Diego Ufano著「Theoretical mechanics(?)」(1628年:ドイツ) 砲身の角度は45度くらいでタマが一番遠くまでピューっと飛ぶそうです。ふぇー。理由は聞かないで…世の中そーゆーもん。 F&B時代はとってもピューでも大丈夫なのかしら? なんか遠くの敵の船が見えなさそう。船がプカプカ揺れるから当てるの大変そう。砲身が砲門にぶつかりそうです。 ~[[Yahoo!知恵袋>http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1319276808]]さんより~ } #blockquote(){&u(){&bold(){砲身の中(砲膣)が螺旋状の溝だと「敵にバッチリ当たる」}} F&B時代の大砲のタマは丸い形をした[[砲丸>http://en.wikipedia.org/wiki/Round_shot]]([[弾丸>http://en.wikipedia.org/wiki/Bullet]])です。大砲ドーン!で飛び出したタマはヘロヘロと飛びます。 丸いタマは先っぽが尖ったタマより空気抵抗が大きいの。 弾軸が不安定だからドコへ飛んでいくのかイマイチ分からない。狙った敵に当てるのがとっても大変です。困っちゃうねー。 &ref(大砲_射程距離(弾道学:弾丸).JPG)[[メアリー・ローズ>http://en.wikipedia.org/wiki/Mary_Rose]]の砲丸(16世紀:イングランド) 弾軸を安定させるにはタマの先っぽを尖らせて、大砲ドーン!で飛び出すタマをクルクル回転させたらオケです。 クルクルすると弾軸が安定([[ジャイロ効果>http://en.wikipedia.org/wiki/Gyroscope]])。 火薬バーン!で膨張したタマが砲膣の[[ライフリング>http://en.wikipedia.org/wiki/Rifling]](螺旋状の溝)に押し付けられるとクルクル回転します。 &ref(大砲_射程距離(弾道学:バッチリ).JPG) ジャイロ効果は[[弓矢>http://en.wikipedia.org/wiki/Bow_and_arrow]]の時代から気が付いてました。15世紀末にはドイツでライフリングのライフル砲が登場。 でも爆発した黒色火薬が出す大量のゴミで溝が埋るから掃除が大変。 螺旋状の溝を彫るのも難しい。F&B時代の主流は砲膣がツルツルの[[滑腔砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Smoothbore]]です。ライフル砲は19世紀までお待ち下さい。 &ref(大砲_射程距離(弾道学:線条痕).JPG) ライフリング(施条)に押し付けられたタマには跡(線条痕)が付きます。線条痕は指紋みたいに撃った大砲で模様が違う。 ドラマで「線条痕が一致した!犯人はお前だ!」のアレ。 21世紀の大砲や銃はライフリングが大活躍。F&B時代は砲膣がツルツルの滑腔砲だから犯人を逮捕できないのね。 } #blockquote(){&u(){&bold(){口径が大きいと「敵をドカーンと壊す」}} タマが砲口を出たときの絶好調の「きゃー♥」が同じ砲口初速なら、小さいタマより大きいタマに当たる方が痛いです。 力士1人より2人に体当たりされる方がダメージ大って感じ。 大きいタマを撃つには大砲の砲身([[口径>http://en.wikipedia.org/wiki/Caliber]])を太くすればオケです。タマの大きさが同じなら、砲口初速が早い方が痛いです。 &ref(大砲_射程距離(弾道学:ドカーン).PNG)[[運動量>http://en.wikipedia.org/wiki/Momentum]](高校物理で習います) もし戦うなら大砲は太くて長い方が安心♥ ってことで、20世紀初め大砲がどーんどん巨大化します(大艦巨砲主義)。 でも太くて長い大砲を撃つには大量のエネルギーが必要。 ものすごーく丈夫な大砲じゃないと大きな火薬バーン!には耐えられません。耐えられない大砲は爆発しちゃいます。 &ref(大砲_射程距離(弾道学:大艦巨砲主義).JPG)[[BL 18 inch Mk I naval gun>http://en.wikipedia.org/wiki/BL_18_inch_Mk_I_naval_gun]](1917年:HMS Furious) こちらはイギリス海軍で最大の砲身長(18.3m)、最大の重量(151t)の大砲です。大砲の下にいる黒いのが人。でか! こんなのに当たったら痛いどころの騒ぎじゃなさそう。 大艦巨砲主義は第一次世界大戦で大人気。その後、戦艦の建造費、維持費が莫大過ぎて終焉を迎えます。 } #endregion #region(close,敵船が見えるのは水平線まで) いくら大砲が「遠くまでピューっと飛ぶ」でも敵船は水平線までしか見えません。地球は丸いから水平線の向こうは隠れちゃうの。 身長1.6mで水平線までの距離は約4.5km。 実際は大気の屈折とかアレコレ小難しいことが影響してもっと遠くまで見えます(視地平距離:Distance of Visible Horizon)。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Horizon]] &ref(大砲_射程距離(水平線).JPG)水平線と[[HMS Bounty>http://en.wikipedia.org/wiki/HMS_Bounty]] #blockquote(){&u(){&bold(){ゴールデン・ハインド号から見える水平線(屈折とかいろいろ難しいコトは無視だ)}} 檣楼手ユアンは「水平線に見え隠れする小さな船影も見逃さない」です。ってことで、萌える勢いでちょびっと計算。 グローリア号のデータが無いからゴールデン・ハインド号で我慢。 吃水線からメイン・マストの高さは28m。メイン・マストから見える水平線は約19km以上先です。ユアンの視力すごーい! &ref(大砲_射程距離(水平線:ゴールデン・ハインド号).PNG)[[三平方の定理>http://en.wikipedia.org/wiki/Pythagorean_theorem]](中学数学で習います) } #blockquote(){&u(){&bold(){見えない敵船には間接射撃}} 水平線の向こうの敵船は隠れちゃうけど、大砲はどんどん「水平線の向こうまでピューっと飛ぶ」に進化していきます。 見えない敵船には間接射撃でオケ。 観測班(FO)がアレコレ敵船を調べて、射撃指揮所(FDC)がアレコレ計算して大砲ドーン。当たるまで繰り返します。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Indirect_fire]] &ref(大砲_射程距離(水平線:間接射撃).PNG)こんな感じ? 間接射撃は「Livre de Canonerie」(1561年:本かなあ?)で報告されてるらしいです。詳細は分かりませんでした。 とりあえず19世紀後半からは皆さんご使用。 見えない敵船に照準(間接照準)して大砲ドーンだと当たっても見えないから、砲撃手は「やったー♥」って喜べないですね。 } #endregion *手投げ弾 こちらは1685年沈没した[[La Belle号>http://en.wikipedia.org/wiki/La_Belle_%28ship%29]](フランス)から発見された手投げ弾です。火薬が詰まった陶器で、取っ手に火縄を結んでご使用。 火縄に火を点けて敵の船に投げると陶器が割れてボーン。 火薬の代わりにウニャニャ油(分かりませんでした)を入れたら[[煙幕弾>http://en.wikipedia.org/wiki/Smoke_grenade]]に変身。敵に投げれば煙で何も見えずの手探り状態です。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Fire_pot]] &ref(手投げ弾.JPG) **煙幕弾 煙幕弾は[[煙幕>https://en.wikipedia.org/wiki/Smoke_screen]]をブハーっとだして部隊の活動や位置を隠蔽するタマ。上陸戦で煙モクモクにして敵の視界を遮断します。 軍艦が[[蒸気船>https://en.wikipedia.org/wiki/Steamboat]]の時代はボイラーを不完全燃焼(空気の供給を制限)にした黒い煙幕。 黒色だと煙幕が太陽の熱を吸収して水温が上げるからマズイそうです。ってことで、21世紀は白色…理由は分かりませんでした。 &ref(手投げ弾_煙幕.JPG) 左側:上陸が丸見えの1944年6月6日[[オマハ・ビーチ作戦>https://en.wikipedia.org/wiki/Omaha_Beach]](1998年:映画プライベート・ライアン) 右側:煙幕を使った1941年10月9日イギリス陸軍兵[[ジャック・チャーチル>https://en.wikipedia.org/wiki/Jack_Churchill]]の上陸訓練 煙幕がないと上陸が丸見えで映画[[プライベート・ライアン>https://en.wikipedia.org/wiki/Saving_Private_Ryan]]みたいに敵の機関銃でバババババっと撃たれちゃいます(左側)。 そんなときは煙幕を使えば安心(右側)。 別名「Bloody Omaha:血のオマハ」のオマハ・ビーチ作戦も煙幕を使ってたら戦死者がぐっと減ったのかもしれません。 #region(close,煙幕弾は海から、空から、地上から) 煙幕弾は海から、空から、地上から撒きます。地上のSmoke pot(発煙筒?)は船の船尾に置いてもオケ。 使うときは風向きと風力にご注意。 撒き終わったら皆さん上陸だー!もしアルマダ海戦でスペインがイングランドに上陸したら煙幕を撒くのかしら? &ref(手投げ弾_煙幕(煙幕弾).JPG) #blockquote(){&u(){&bold(){実はオマハ・ビーチ作戦も煙幕を使ってます}} 海上は[[自由フランス軍>https://en.wikipedia.org/wiki/Free_France]]飛行隊Lorraine(イギリス空軍[[第342航空隊>https://en.wikipedia.org/wiki/No._342_Squadron_RAF]]所属)の戦闘機[[Boston IIIA>https://en.wikipedia.org/wiki/Douglas_A-20_Havoc]]が弾幕を撒いてます。 飛行隊のお仕事は「海岸へ上陸する[[上陸用舟艇>https://en.wikipedia.org/wiki/Landing_craft]](兵士を運ぶ船)と兵士を守る」。 海面に弾幕を撒いてドイツ戦闘機の攻撃から上陸用舟艇を守りました。ドイツ戦闘機と戦いながら煙幕も撒くから大忙し! ~[[RAF>http://www.raf.mod.uk/]](French Participation- D-Day role)さんより~ &ref(手投げ弾_煙幕(煙幕弾_オマハ・ビーチ作戦).JPG)こんな感じ?(航空母艦[[USSラングレー>https://en.wikipedia.org/wiki/USS_Langley_(CV-1)]]に煙幕を撒く戦闘機[[F4U>https://en.wikipedia.org/wiki/Vought_F4U_Corsair]]) } #blockquote(){&u(){&bold(){21世紀の上陸作戦}} こちらの画は装甲兵員輸送車[[LVT-7>https://en.wikipedia.org/wiki/Assault_Amphibious_Vehicle]](兵士を運ぶ車)が煙幕をブハーっとだしながら海から海岸へそのまま上陸してます。 装甲兵員輸送車LVT-7は水陸両用車。 うーん、この画だけじゃちんぷんかんぷん…詳細は[[https://www.youtube.com/watch?v=5Nz_V3UQxJU]]をどうぞ。 &ref(手投げ弾_煙幕(煙幕弾_21世紀).JPG)South Korea marks 60th anniversary(2010年) } #endregion *マスケット銃 マスケット銃は先っぽの銃口からタマを込める銃です。F&B時代は[[マッチロック式>http://en.wikipedia.org/wiki/Matchlock]](火縄で点火)の[[アルケブス銃>http://en.wikipedia.org/wiki/Arquebus]]。 1543年種子島(日本)に来た[[火縄銃>http://en.wikipedia.org/wiki/Tanegashima_(Japanese_matchlock)]]もコレ。 初めての登場は15世紀[[フス戦争>http://en.wikipedia.org/wiki/Hussite_Wars]](中央ヨーロッパ)らしい。大量のご使用は15世紀ハンガリー王[[マーチャーシュ1世>http://en.wikipedia.org/wiki/Matthias_Corvinus]]の[[黒軍>http://en.wikipedia.org/wiki/Black_Army_of_Hungary]]からです。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Musket]] &ref(マスケット銃.JPG)[[ヤコブ・ド・ギュイエン>http://en.wikipedia.org/wiki/Jacob_de_Gheyn_II]]画「Wapenhandelingen van Roers, Musquetten ende Spiesen」(1608年:ネーデルラント) #region(close,マッチロック式ってなに?) マッチロック式は火縄で火薬に点火してバーンと撃つ銃です。雨の日は火縄の火が消えたり、火薬が湿ったりでほぼ使用不可。 火縄を使わない[[ホイールロック式>http://en.wikipedia.org/wiki/Wheellock]]([[黄鉄鉱>http://en.wikipedia.org/wiki/Pyrite]]で点火)もあったけど故障が多くて不人気。 1610年フランスで故障しない[[フリントロック式>http://en.wikipedia.org/wiki/Flintlock]]([[火打ち石>http://en.wikipedia.org/wiki/Flint]]で点火)が誕生します。1630年頃にはヨーロッパ中で大人気。 &ref(マスケット銃(マッチロック式).GIF)マッチロック式 |BGCOLOR(lightgrey):発射準備|BGCOLOR(lightgrey):1|火縄に火を点ける。&br()&ref(マスケット銃(マッチロック式:火縄).PNG)| |~|BGCOLOR(lightgrey):2|火蓋(火薬を盛った[[火皿>http://en.wikipedia.org/wiki/Flash_pan]]のカバー)を開く。これが「火蓋を切る」ってやつ。&br()&ref(マスケット銃(マッチロック式:火皿).JPG)火皿(17世紀:イングランド)| |BGCOLOR(lightgrey):発射|BGCOLOR(lightgrey):3|[[トリガー>http://en.wikipedia.org/wiki/Trigger_(firearms)]](引き金)を引く。&br()サーペンタイン(Serpentine:[[撃鉄>http://en.wikipedia.org/wiki/Hammer_(firearm)]]っぽいやつ)が火皿の方へ下がる。| |~|BGCOLOR(lightgrey):4|火薬(火皿)に火縄が接触してボーン!火穴経由で火薬(銃身)もボーン!この勢いで銃弾がバーンと発射する。| #blockquote(){&u(){&bold(){故障が多かったホイールロック式}} ホイールロック式の発明者はハッキリしないけど、1517年[[Johann Kiefuss>http://en.wikipedia.org/wiki/Johann_Kiefuss]](ドイツ)が発明したという説があります。 1530年スペイン王カルロス1世(王フェリペ2世の父親)はKiefussをスペインに呼び寄せたらしい。 F&B時代のホイールロック式に故障が多かったのは、歯車(ホイール)やバネやネジがアレコレで構造が複雑だったから。 &ref(マスケット銃(マッチロック式:ホイールロック式).JPG)ホイールロック式(16世紀:ドイツ) たぶん引き金を引くとホイールがグルリと廻ってサーペインタインが降りると火縄の火が火皿の火薬に接触する仕組みです。 部品は50個以上。 何はともあれ、こんな技術があったことがスゴイです。 } #blockquote(){&u(){&bold(){日本に火縄銃「種子島」がやって来た!}} 1543年ポルトガル宣教師が種子島(鹿児島県)に漂着。種子島島主は宣教師が所有するアルケブス銃を2挺購入します。 もっちろんコピーするぜ! 種子島に伝来したので火縄銃は別名「種子島」「種子島銃」です。あっ、鉄砲伝来は諸説あり。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Tanegashima_(Japanese_matchlock)]] &ref(マスケット銃(マッチロック式:種子島).JPG)種子島伝来火縄銃馬上長筒(21世紀:レプリカ) コピーを担当したのは刀鍛冶の八板金兵衛さん。とりあえずコピーできたけど、発射の衝撃に耐える強度が作れません。 なぜかしら?なぜかしら? ってことで、娘をポルトガル人に嫁がせて秘密をゲトしたという伝説があります。答えは「[[ネジ>http://en.wikipedia.org/wiki/Screw]]」。 } #endregion #region(close,マッチロック式ピストル) マッチロック式ピストル(短銃)も16世紀から使われています。マッチロック式の詳細は分かりませんでした。 とりあえずフリントロック式ピストルは射程距離が短い。 ってことで、剣の付属品としてご使用。18世紀後半になるとイギリスの[[決闘>http://en.wikipedia.org/wiki/Duel]]はレイピアから[[決闘ピストル>http://en.wikipedia.org/wiki/Duelling_pistol]]になります。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Pistol]] &ref(マスケット銃(ピストル).JPG)[[Cornelis Ketel>http://en.wikipedia.org/wiki/Cornelis_Ketel]]画「[[マーティン・フロビッシャー>http://en.wikipedia.org/wiki/Martin_Frobisher]]」(1577年:イングランド) #endregion #region(close,21世紀のマスケット銃) [[イギリス海兵隊>http://en.wikipedia.org/wiki/Royal_Marines]]はイギリス海軍の歩兵部隊。マスケット銃とは全く違う感じの銃をアレコレいっぱい使ってます。 ってことで、形が似てるっぽい銃をご紹介。 こちらは[[7.62x51mm NATO弾>http://en.wikipedia.org/wiki/7.62%C3%9751mm_NATO]](ベルギー製)をバババババと毎分650–1,000発撃つ[[機関銃>http://en.wikipedia.org/wiki/General-purpose_machine_gun]]。いろんな国が使ってます。 &ref(マスケット銃_21世紀.JPG)バババババ中のイギリス海兵隊(タマは[[ベルト給弾式>http://en.wikipedia.org/wiki/Belt-fed]]) |BGCOLOR(lightgrey):|BGCOLOR(lightgrey):口径|BGCOLOR(lightgrey):全長/銃身長|BGCOLOR(lightgrey):重量|BGCOLOR(lightgrey):銃弾重量|BGCOLOR(lightgrey):火薬量|BGCOLOR(lightgrey):射程距離| |[[7.62mm General Purpose Machine Gun>http://en.wikipedia.org/wiki/FN_MAG]]|7.62mm|126.3/63cm|11.79kg|||| #blockquote(){&u(){&bold(){イギリス海兵隊はマッスル♥マッスル♥}} あらあら、銃の重さがお米級…海兵隊は女性不可侵の過酷なお仕事だそうです。そのせいなのか皆さんマッスル♥マッスル♥ こちらはイギリス海兵隊の公式カレンダー。 水陸両用作戦のエキスパートだけあって鍛えた体を惜しみなくお披露目してます。お腹がシーチキン過ぎる。 &ref(マスケット銃_21世紀(イギリス海兵隊).JPG,,height=350)Go Commando 2013 Calendar(£9.99) } #blockquote(){&u(){&bold(){指が痒くなってもても大丈夫}} 銃は引き金を引いてもタマが出ない[[切換レバー>http://en.wikipedia.org/wiki/Selective_fire]]が付いてます。「指掻いたら出ちゃいましたー!」になっちゃうもんね。 海上自衛隊の[[89式5.56mm>http://en.wikipedia.org/wiki/Howa_Type_89]]小銃は、ア(安全)・レ(連射)・3(3点制限点射)・タ(単射)の4種類。 連射はバババババのフルオート、3点制限点射はバンバンバンの3ショット・バースト、単射はバンのセミオートです。 &ref(マスケット銃_21世紀(切換レバー).JPG)別名「当たれサン:アタレ3」 バババババは目詰まりしないの?薬莢は顔に当たらないの?銃身は熱くならないの?などなど疑問いっぱいでござる。 でもF&Bに登場しないと調べる意欲に萌えませんのよ。 } #endregion **マスケット銃の発射 マスケット銃も大砲と同じでバンバン撃てません。大砲と同じでメンドクサイです。大砲と同じで命中率低いです。 火縄は「両方に種火」「片方に種火」の2タイプ。 銃身がとーっても長い、とーっても重い(F&B時代は9kg?)ので、撃つときは先っぽが二股の支え棒(名称不明)で支えます。 &ref(マスケット銃の発射.JPG) #region(close,ペーパーカートリッジで効率アップ) ペーパーカートリッジは銃弾と火薬を包んだ紙製・布製の弾薬包。火薬はキッチリ計量してます。 包は[[蜜蝋>http://en.wikipedia.org/wiki/Beeswax]]・[[ラード>http://en.wikipedia.org/wiki/Lard]]・[[獣脂>http://en.wikipedia.org/wiki/Tallow]]でコーティング。 防水もバッチリだし、弾を込めるときの潤滑剤にもなります。登場は14世紀後半頃で、17世紀になるとアッチコッチでご使用。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Paper_cartridge]] &ref(マスケット銃の発射(ペーパーカートリッジ).JPG) #blockquote(){&u(){&bold(){一発のバーンが楽チン♥}} ペーパーカートリッジを使えばいちいち火薬を計らなくていいし、包が火薬の燃えカスと混ざってお掃除が楽チンです。 包のお尻は食いちぎってもオケ。 日本も[[安土桃山時代>http://en.wikipedia.org/wiki/Azuchi%E2%80%93Momoyama_period]](1573–1603年:織田信長~豊臣秀吉)に銃弾と火薬を包んだ早合(はやごう)が登場します。 &ref(マスケット銃の発射(ペーパーカートリッジ:一発のバーン).GIF)&space(1)&ref(マスケット銃の発射(ペーパーカートリッジ:実弾).JPG) 21世紀は火皿・火薬・火縄・弾丸が1つになった[[実弾(実包)>http://en.wikipedia.org/wiki/Cartridge_(firearms)]]です。 撃鉄が雷管(これは[[センターファイア型>http://en.wikipedia.org/wiki/Centerfire_ammunition]])を叩くと発火して、火薬(これは黒色火薬)がボーン!弾丸がバーン! 撃ったときに出てくるゴミは[[薬莢>http://en.wikipedia.org/wiki/Casing_(ammunition)]]。映画で使うのは弾丸が付いてない[[空砲>http://en.wikipedia.org/wiki/Blank_(cartridge)]]です。 } #blockquote(){&u(){&bold(){ペーパーカートリッジでインド大反乱}} 17世紀になると[[イギリス東インド会社>http://en.wikipedia.org/wiki/East_India_Company]](設立:1600年)は植民地インドから紅茶を輸入します。インド人の傭兵も編成。 インド人の宗教はヒンドゥー教徒(牛ダメ)やイスラム教徒(豚ダメ)。 配給されたペーパーカートリッジに傭兵は「これって牛や豚の獣脂でコーティングされてるじゃない?」と疑問を抱きます。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Indian_Rebellion_of_1857]] &ref(マスケット銃の発射(ペーパーカートリッジ:インド大反乱).JPG)紅茶の積送品に張られるラベル(1870年) 東インド会社は「獣脂は使ってない」と噂を否定。でもアレコレ酷い目にあってる傭兵はイギリス人を信じられません。 そして1857年インドの反乱が勃発。 インド人は命中率の低い旧式の滑腔銃、イギリス人は命中率の高い新式のライフル銃を使用。反乱は失敗します。 } #endregion **マスケット銃の火薬 F&B時代のマスケット銃も大砲と同じ黒色火薬です。撃つとやっぱり白煙ブワ-。 銃も先っぽから火がー!火がー! 煙と音の動画はこちら[[http://www.youtube.com/watch?v=9i2UknmFbqM]](17世紀:[[イングランド内戦>http://en.wikipedia.org/wiki/English_Civil_War]])をどうぞ。←いきなりバーン。 &ref(マスケット銃の火薬.JPG)マッチロック式ズール銃(レプリカ) |BGCOLOR(lightgrey):|BGCOLOR(lightgrey):口径|BGCOLOR(lightgrey):全長/銃身長|BGCOLOR(lightgrey):重量|BGCOLOR(lightgrey):銃弾重量|BGCOLOR(lightgrey):火薬量|BGCOLOR(lightgrey):射程距離| |マッチロック式ズール銃(1630年頃:ドイツ)|19.7mm|142/102.5cm|4.6kg|||| *火縄、誘火線(Slow match) 火縄は火をキープしておくロープです。硝酸カリウムが混ざった[[麻>http://en.wikipedia.org/wiki/Hemp]]や[[アマ>http://en.wikipedia.org/wiki/Flax]]のロープで、1時間に30cmくらいジワジワ燃える。 映画でフーフーしてるアレ。 大砲に点火するときは火縄を巻いた[[導火桿>http://en.wikipedia.org/wiki/Linstock]]を使います。爆弾でお馴染みの元気に燃える導火線は黒色火薬が混ざった別物。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Slow_match]] &ref(マッチ_火縄と導火桿.JPG)[[Agostino Ramelli>http://en.wikipedia.org/wiki/Agostino_Ramelli]]著「Le diverse et artificiose machine」(1588年:イタリア) **火起こし マッチは19世紀になってから。ライターなんてドラえもんくらい未来のお話しです。 F&B時代の火起こしはこんな感じっぽい? とりあえず[[チューダー朝>http://en.wikipedia.org/wiki/Tudor_dynasty]]の動画は[[http://www.youtube.com/watch?v=uTytLaLL5ls]]こちらをどうぞ。意外と簡単でビックリ! [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Firelighting]] |&ref(マッチ_火起こし道具.PNG)道具|&ref(マッチ_火起こし.PNG)[[Judgement Day>>http://en.wikipedia.org/wiki/St._George%27s_Church,_Haguenau]](15世紀)| #region(close,火起こしのやり方) いっぱいある火起こしサイトは、皆さん広大な大地で大らかにカンカンしてます。 でも船でやる時はご注意!とってもご注意! たぶんバケツの様な燃えにくい入れ物の中でチンマリやるんだと思うけど、ビシッとは分かりませんでした。 &ref(マッチ_火起こし方法.PNG) |BGCOLOR(lightgrey):1|[[火打ち石>http://en.wikipedia.org/wiki/Flint]]と[[金属板>http://en.wikipedia.org/wiki/Fire_striker]]をカンカンする。&br()※火打ち石と[[炭布>http://en.wikipedia.org/wiki/Char_cloth]](低温でも発火する布)を一緒に持つ場合もあります。| |BGCOLOR(lightgrey):2|カンカンで出た火花を炭布に飛ばす。炭布にジワジワ燃える火種ができるまでカンカンする。&br()※綱麻、[[キノコの消し炭>http://en.wikipedia.org/wiki/Amadou]]…燃えやすいモノならなんでもオケです。| |BGCOLOR(lightgrey):3|火種の点いた炭布を[[綱麻>http://en.wikipedia.org/wiki/Jute]](綱麻を解いてモシャモシャにしたもの)に合体。フーフーして火を大きくする。| |BGCOLOR(lightgrey):4|火縄に火を点けてキープ。&br()※火縄持ってウロウロは危なくない?『ホーンブロワー・シリーズ』には火縄桶が登場します。んが、正体不明orz&br()※戦国時代の日本には火縄持ってウロウロできる胴火があります。| #endregion #region(close,ファイヤー!) 火縄に火を点けるにはローソクくらいの火が必要です。モシャモシャの綱麻じゃすぐ燃えちゃうよなぁ…。 ってことで、火を大きくする方法も。 こちらは船でも安心っぽそうなチンマリした方法です。ここまでやれば確実に火縄にも火が点くんじゃないかしら? &ref(マッチ_火起こし(ファイヤー).PNG) #endregion **火口箱 火口箱(ティンダーボックス)は火打ち石とかを入れとく道具ケース。このタイプは金属板をチェーンにぶら下げておきます。 お出かけ先でカンカン火起し。 火の点いた火縄を入れておくと説明してる人もいるけど、詳しいことはぜーんぜん分からなかったです。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Tinderbox]] &ref(マッチ_導火線ケース.JPG,,height=200)真鍮ケースと木製蓋の火口箱(時代不明) *軍制改革だー!スペインのテルシオ vs マスケット銃 スペインのテルシオ(Tercio:スペイン方陣)は鉄壁の守りの常備軍。訓練バッチリな最精鋭で誰も勝てません。とにかく強かった。 負け続けのネーデルラントはマスケット銃に注目。 ネーデルラント軍を「マスケット銃兵>パイク兵」に変更(軍制改革)。スペインのテルシオを打ち破ります。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Tercio]] &ref(軍制改革.JPG)ネーデルラントが勝利した[[ニーウポールトの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Nieuwpoort]](1600年) **テルシオ(スペイン方陣) テルシオ(英語:Third)はパイク方陣、銃兵(マスケット銃兵やアルケブス銃兵)、剣兵で構成された部隊です。 お名前の由来は「パイク兵、銃兵、剣兵の3部隊」や「Tercio di Lombardia、di Napoli、di Siciliaの1/3部隊(1534年編成)」らしい。 16世紀のマスケット銃は「大きくて威力の高いアルケブス銃」17世紀から「先込め銃」って分類になります。 &ref(軍制改革_テルシオ.JPG)ニーウポールトの戦い(1600年) #region(close,軍制改革だー!パイク方陣の誕生(残酷な画があるのでご注意下さい)) パイクは中世~1700年頃に使われた両手で持つ[[長柄武器>http://en.wikipedia.org/wiki/Pole_weapon]]です。長さ3~7.5m(16世紀後半:4.5~6.5m)、重さ2.5~6kg。 長さ分の距離を保って相手をプスプス。 でも運悪く敵が突破して接近戦になるとパイクはぜーんぜん役に立ちません。接近戦に備えて必ず剣も装備しましょう。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Pike_(weapon)]] &ref(軍制改革_テルシオ(パイク方陣).JPG)八十年戦争の映画[[アラトリステ>http://en.wikipedia.org/wiki/Alatriste]](2006年:スペイン) #blockquote(){&u(){&bold(){パイクの構え}} 相手をプスプスするときは「Charge」の構え。戦闘中は前の3~5列が「Charge」の構えをします。 後列のパイク兵は前列を怪我させない「Port」の構え。 交代したら「Charge」の構えになります。「Charge for horse」の構えは分かりませんでした。騎兵をプスプス? &ref(軍制改革_テルシオ(パイク方陣:構え).JPG) パイクはベランダの物干し竿みたいに長いから相手が近づく前にプスッと倒せます。でも長くて重いから扱いづらい。 どっちかっていうとディフェンスの武器。 1人ぼっちで戦かったらあっという間にヤられちゃいます。ってことで、パイク兵は[[パイク方陣>http://en.wikipedia.org/wiki/Pike_square]]を組んで防護力アップ。 } #blockquote(){&u(){&bold(){パイク方陣で防護力アップ}} パイク方陣は15世紀[[スイス誓約同盟>http://en.wikipedia.org/wiki/Old_Swiss_Confederacy]]で誕生した10×10のパイク兵で構成された方陣です。前列のパイク兵が相手をプスプス。 方向転換するだけで四方八方の相手をプスプス。 良く訓練された規律ある部隊だから、命令に合わせて前進や方向転換がとーっても速い。ヤマアラシみたいですね。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Pike_square]] &ref(軍制改革_テルシオ(パイク方陣:スイス).JPG)[[ドルナッハの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Dornach]](1499年) パイク方陣は1477年[[ナンシーの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Nancy]]で[[ブルゴーニュ公国>http://en.wikipedia.org/wiki/Duchy_of_Burgundy]]の[[勅令部隊>http://en.wikipedia.org/wiki/Compagnie_d%27ordonnance]](騎兵、槍兵、弓兵、砲兵の混合部隊)を破ります。 方向転換しながら騎兵をプスプス、前進しながら相手をプスプス。 超強い勅令部隊に勝ったパイク方陣すげー!その後も勝ち続けるパイク方陣すげー!ってことで、他の国も模倣します。 } #blockquote(){&u(){&bold(){プスプスするとどうなるの?}} 敵味方の[[縦隊>https://en.wikipedia.org/wiki/Column_(formation)]](縦列に並んだ部隊)が衝突すると、パイク兵はChargeの構えで前進しながら相手をプスプスします。 前列が倒れたら次列のパイク兵と交代。 どちらかのパイク方陣が崩れて道を譲るまでプスプス。ってことで、膨大な犠牲者が出ます。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Push_of_pike]] &ref(軍制改革_テルシオ(パイク方陣:プスプス).JPG)[[ハンス・ホルバイン>https://en.wikipedia.org/wiki/Hans_Holbein_the_Younger]]画「Battle Scene」(16世紀:神聖ローマ帝国) } #endregion #region(close,軍制改革だー!テルシオ(スペイン方陣)の誕生(残酷な画があるのでご注意下さい)) テルシオは16世紀スペインで誕生した「パイク方陣を銃兵(マスケット銃やアルケブス銃)で守る」の方陣です。 スペインのテルシオは鉄壁の守りの常備軍。 初期のテルシオには剣兵もいたけど銃の性能が上がるにつれ減少していきます。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Pike_and_shot]] &ref(軍制改革_テルシオ(スペイン方陣).JPG)テルシオ断面図(17世紀) #blockquote(){&u(){&bold(){テルシオ(コロネリア) の誕生}} [[ハプスブルク家>http://en.wikipedia.org/wiki/House_of_Habsburg]](スペイン)はナポリやミラノの王位継承を巡ってフランスと[[イタリア戦争>http://en.wikipedia.org/wiki/Italian_Wars]](1494–1559年)します。 スペインは剣と円盾を装備する[[歩兵ロデレロ>http://en.wikipedia.org/wiki/Rodeleros]]と[[軽騎兵>http://en.wikipedia.org/wiki/Jinete]]。 でも超強いフランスの[[スイス槍兵のパイク方陣>http://en.wikipedia.org/wiki/Swiss_mercenaries]]と[[重騎兵ジャンダルメ>http://en.wikipedia.org/wiki/Gendarme_(historical)]]に勝てません。このままじゃダメだ…。 &ref(軍制改革_テルシオ(スペイン方陣:誕生_セミナラ).JPG)フランスに負けたセミナラの戦い ってことで、[[セミナラの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Seminara]](1495年)に負けた将軍[[ゴンサロ・フェルナンデス・デ・コルドバ>http://en.wikipedia.org/wiki/Gonzalo_Fern%C3%A1ndez_de_C%C3%B3rdoba]]は軍制改革します。 歩兵は剣と円盾を捨ててパイクを装備。 当時の先端技術「銃」を採用してパイク方陣を守ります。テルシオは[[チェリニョーラの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Cerignola]](1503年)でフランスに勝利。 &ref(軍制改革_テルシオ(スペイン方陣:誕生_チェリニョーラ ).JPG)フランスに勝ったチェリニョーラの戦い パイク方陣と銃兵のテルシオは鉄壁の守り。フランスのパイク方陣と重騎兵はテルシオを破れません。 スペインはイタリア戦争に勝利。 超強いフランスに勝ったテルシオすげー!その後も勝ち続けるテルシオすげー!ってことで、他の国も模倣します。 } #blockquote(){&u(){&bold(){将軍コルドバのテルシオ(コロネリア)}} コロネリアは「防護力のパイク方陣」と「攻撃力の銃兵」の混合部隊です。パイク方陣の両サイドにユルっと銃兵を配置。 最初に銃兵が離れてる敵をバーン、敵が近づいたらパイク方陣がプスプス。 こちらは[[Olicanalad's Games>http://olicanalad.blogspot.jp/]](Cerignola 28th April 1503)さん考察のチェリニョーラの戦い。配置は資料によってびみょーに違います。 [[wikipedia>http://es.wikipedia.org/wiki/Coronel%C3%ADa]] &ref(軍制改革_テルシオ(スペイン方陣:コロネリア).JPG)コロネリア(この部隊は前面にユルっと銃兵を配置) コロネリアのもう1つの特徴は士官を増やしたこと。それぞれの部隊はa~eの指揮官[[コロネル(大佐)>http://en.wikipedia.org/wiki/Colonel]]が指揮します。 指揮官ごとに動くから部隊の柔軟性が高まる。 スペインを超強くした将軍コルドバは「偉大なカピタン(El Gran Capitán)」「[[塹壕>http://en.wikipedia.org/wiki/Trench_warfare]]の父」と呼ばれてます。 |>|>|>|>|>|>|>|&ref(軍制改革_テルシオ(スペイン方陣:コロネリア_配置).PNG)配置| |BGCOLOR(lightgrey):CENTER:フランス|BGCOLOR(lightgrey):1|重騎兵(ジャンダルメ)|5部隊×8人|BGCOLOR(lightgrey):CENTER:スペイン|BGCOLOR(lightgrey):1|パイク方陣([[ランツクネヒト>http://en.wikipedia.org/wiki/Landsknecht]])|1部隊×54人| |~|BGCOLOR(lightgrey):2|投射騎兵([[クロスボウ>http://en.wikipedia.org/wiki/Crossbow]])|2部隊×8人|~|BGCOLOR(lightgrey):2|テルシオ([[コロネリア>http://es.wikipedia.org/wiki/Coronel%C3%ADa]])|4部隊×36人| |~|BGCOLOR(lightgrey):3|軽騎兵([[ストラティオティス>http://en.wikipedia.org/wiki/Stratioti]])|1部隊×8人|~|BGCOLOR(lightgrey):3|重騎兵|2部隊×8人| |~|BGCOLOR(lightgrey):4|パイク方陣(スイス槍兵)|1部隊×108人|~|BGCOLOR(lightgrey):4|軽騎兵([[ジネテ/Genitor>http://en.wikipedia.org/wiki/Jinete]])|2部隊×8人| |~|BGCOLOR(lightgrey):5|パイク方陣(フランス槍兵)|1部隊×54人|~|BGCOLOR(lightgrey):5|投射騎兵(クロスボウ)|1部隊×8人| |~|BGCOLOR(lightgrey):6|投射兵(クロスボウ)|4部隊×48人|~|BGCOLOR(lightgrey):6|大砲(Light gun)|2部隊×1門| |~|BGCOLOR(lightgrey):7|大砲(Medium gun)|3部隊×1門|~|BGCOLOR(lightgrey):||| } #blockquote(){&u(){&bold(){小規模なテルシオ(コロネリア)から大規模なテルシオ(スペイン方陣)へ}} コロネリアは1534年までにパイク方陣の周囲にビシっと銃兵を配置するスペイン方陣になります。四隅にも配置の場合あり。 四方八方どこから見ても隙のない鉄壁の守り。 指揮官1人が最大3,000人(1,500人が一般的)を担当。大規模だから敵にいくら倒されても崩れない「要塞の方陣」です。 &ref(軍制改革_テルシオ(スペイン方陣:大規模).JPG)神聖ローマ帝国のスペイン方陣(1632年:[[リュッツェンの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_L%C3%BCtzen_(1632)]]) ただしスペイン方陣は大規模過ぎて移動や方向転換がとーっても大変です。う、動けない…敵を迎え撃つしかない。 敵を追撃は不可能。 あと21世紀の視点から見ると「敵をビビらせるためには必要だろうけど、戦う機会がない余分な兵士」もいます。 } #blockquote(){&u(){&bold(){テルシオ(スペイン方陣)の終焉}} 16世紀後半戦場に銃や大砲が増えてくると、大規模過ぎるテルシオは「狙いやすい的」になっちゃいます。あちゃー。 これはヤバイ! ってことで、テルシオは「狙われにくい小さな方陣」に縮小化していきます。 &ref(軍制改革_テルシオ(スペイン方陣:終焉).JPG)ロクロワの戦い 1643年[[ロクロワの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Rocroi]]でスペイン方陣は劣勢フランス軍の戦術[[カラコール>http://en.wikipedia.org/wiki/Caracole]](騎兵が射撃)に大敗します。 スペイン軍が誇る「無敵のテルシオ」のターニングポイント。 映画[[アラトリステ>http://en.wikipedia.org/wiki/Alatriste]]のラストシーンもこの戦い。テルシオの戦い方がよく分かるけど…スペイン組には悲し過ぎてツライです。 &ref(軍制改革_テルシオ(スペイン方陣:終焉_銃剣).JPG)イギリス兵の銃剣(1746年:[[カロデンの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Culloden]]) 17世紀末になると[[銃剣>http://en.wikipedia.org/wiki/Bayonet]](先っぽにナイフを刺した銃)が誕生。銃剣はパイクみたいに相手をプスプス刺せます。 もうパイク兵がいなくてもへーきへーき! ってことで、テルシオは終焉します。ちなみにイギリスは1697年[[レイスウェイク条約>http://en.wikipedia.org/wiki/Treaty_of_Ryswick]]の後にパイクを廃止して銃剣を採用。 } #blockquote(){&u(){&bold(){海兵隊テルシオはスペイン海兵隊へ}} スペインのテルシオは1704年陸軍の[[連隊>http://en.wikipedia.org/wiki/Regiment]](陸軍の部隊編制上の一単位。詳細は[[軍隊の編制>http://en.wikipedia.org/wiki/Military_organization]]をどうぞ)になります。 でもアルマダ(スペイン海軍)の海兵隊テルシオはそのまま続行。 なんやかんやで21世紀の[[スペイン海兵隊>http://en.wikipedia.org/wiki/Spanish_Navy_Marines]]です。[[水陸両用作戦>http://en.wikipedia.org/wiki/Amphibious_warfare]]するんだって…ふぇー、ちんぷんかんぷん。 &ref(軍制改革_テルシオ(スペイン方陣:スペイン海兵隊).JPG) } #endregion **三段撃ち 三段撃ちは[[銃兵>http://en.wikipedia.org/wiki/Musketeer]]がn列×3段(準備・待つ・撃つ)の配置です。[[一斉射撃>http://en.wikipedia.org/wiki/Volley_fire_(infantry_tactic)]]でバーンと撃ったら最後尾に移動。 バンバン撃てない銃でバンバン連続発射。 火縄銃がいっぱい必要ですね。1575年[[織田信長>http://en.wikipedia.org/wiki/Oda_Nobunaga]]が[[長篠の戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Nagashino]]で武田軍を殲滅した新戦法です。実は作り話かもしれないって噂有り。 &ref(軍制改革_三段撃ち.JPG) 左側:「長篠合戦図屏風/長久手合戦屏風絵8枚」の下絵または模本(19世紀:東京国立博物館) 右側:1634年[[ネルトリンゲンの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_N%C3%B6rdlingen_(1634)]] #region(close,ネーデルラントの三段撃ちは反転行進射撃(Counter-march)) 反転行進射撃は[[八十年戦争>http://en.wikipedia.org/wiki/Eighty_Years%27_War]](1568–1648年)でスペインと戦うオラニエ公[[マウリッツ>http://en.wikipedia.org/wiki/Maurice,_Prince_of_Orange]](ネーデルラント)が考えた新戦法です。 銃兵が12列×6段(または8段)で連続発射。 他に兵士を歩兵・騎兵・砲兵の3つに区分してお互いに援護する三兵戦術(スペインの[[テルシオ>http://en.wikipedia.org/wiki/Tercio]]に対抗する戦法)も考えてます。 &ref(軍制改革_三段撃ち(反転行進射撃).JPG)反転行進射撃 #blockquote(){&u(){&bold(){3人ご一緒に一斉射撃}} 三兵戦術は1632年神聖ローマ帝国と戦うスウェーデン王[[グスタフ2世アドルフ>http://en.wikipedia.org/wiki/Gustavus_Adolphus_of_Sweden]]が[[リュッツェンの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_L%C3%BCtzen_(1632)]]で更に発展させます。 銃兵は膝立ち・中腰・立ちの3段で一斉射撃。 3段だと…えーっと、きっと1段より火力が強力になってすごいんです。これは銃が軽量化したから可能だそうです。 &ref(軍制改革_三段撃ち(反転行進射撃:一斉射撃).JPG)これは2段の一斉射撃(1642–1649年:[[イングランド内戦>http://en.wikipedia.org/wiki/English_Civil_War]]のショー) } #endregion #region(close,軍制改革だー!テルシオと銃兵の進化) #blockquote(){&u(){&bold(){スペインのテルシオ}} 将軍ゴンサロが誕生させたテルシオはその後どーんどん巨大化。最大6,000人の巨大テルシオに成長します。 四方に隙のない守りで防御力バッチリ。 ただ巨大過ぎて移動や方向転換がとーっても大変。機動力ダメダメだから動かずに敵を迎え撃ちます。 &ref(軍制改革_テルシオ(誕生と進化:スペイン).JPG) 機動力ダメダメな巨大テルシオは敵が来ないと攻撃できません。防御力バッチリでも機動力ダメダメはヤバイ! ってことで、1534年までに最大3,000人に縮小。 その後もどーんどん縮小化。 } #blockquote(){&u(){&bold(){ネーデルラントのオランダ式テルシオ}} ネーデルラントはスペインからの独立を目指して[[八十年戦争>http://en.wikipedia.org/wiki/Eighty_Years%27_War]](1568–1648年)します。スペインのテルシオを模倣して戦う。 でもスペインのテルシオは超強い。 このままじゃダメだ…。ってことで、ネーデルラント総督オラニエ公[[マウリッツ>http://en.wikipedia.org/wiki/Maurice,_Prince_of_Orange]] は軍制改革します。 &ref(軍制改革_テルシオ(誕生と進化:ネーデルラント).JPG) 機動力ダメダメなスペインのテルシオはマスケット銃でバンバン撃っちゃえばいいんです(反転行進射撃)。 命中率が低くても的が巨大だからオケ。 ついでにネーデルラントのテルシオを縮小化で機動力バッチリ。[[ニーウポールトの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Nieuwpoort]](1600年)でスペインに勝利します。 } #blockquote(){&u(){&bold(){スウェーデンのスウェーデン式テルシオ}} &ref(軍制改革_テルシオ(誕生と進化:スウェーデン).JPG) } #endregion *防具 防具は武器などの攻撃から人体へのダメージを防ぐヘルメット、鎧、楯、服…などなどの道具です。 武器が進化すると防具も進化。 すごーい種類があるのでF&Bに登場する防具だけざっくり調べました。 &ref(防具.JPG)武器と防具(1608年) #region(close,21世紀の防具) こちらはイギリス軍が[[Operation Herrick>https://en.wikipedia.org/wiki/Operation_Herrick]](2002–2014年)から採用してる防弾ベスト[[Osprey body armour>https://en.wikipedia.org/wiki/Osprey_body_armour]](Mk 4)です。 イギリスのCQC社が提供。 生地は[[ナイロン6>https://en.wikipedia.org/wiki/Nylon_6]]か[[ナイロン66>https://en.wikipedia.org/wiki/Nylon_66]]。それ以外は「当社はイギリス軍の標準仕様に沿った防具を提供しております」だそうです。 &ref(防具(21世紀).JPG) 防弾ベストは砂漠、森、…戦地の色に合わせた迷彩色パターンがあります。ヘルメット[[Mk 7 helmet>https://en.wikipedia.org/wiki/Mk_7_helmet]]もお揃いの色。 イギリスのNP Aerospace社が提供。 寝そべって銃を撃ちやすいように後部の縁ナシ。逆に撃たれても時速650m/sのタマには負けません。それ以外は…やっぱり不明。 #blockquote(){&u(){&bold(){防弾ベストはポケットがいっぱい}} 必要に応じてヘルメットMk7には[[マスク>https://en.wikipedia.org/wiki/Respirator]]、[[ 耳覆い>https://en.wikipedia.org/wiki/Earmuffs]]、[[ゴーグル>https://en.wikipedia.org/wiki/Goggles]]、ラジオ、[[暗視装置>https://en.wikipedia.org/wiki/Night_vision_device]]を装備できます。 防弾ベストOspreyもアレコレ脱着が可能。 ポケット、ポーチ型ポケット、…などなどを自分のお好みで装着可能です(モジュラー ・システム:Modular system)。 ~[[The British Army>http://www.army.mod.uk/home.aspx]](Combat body armour)さんより~ &ref(防具(21世紀_ポケット).JPG)Osprey(レプリカ) イギリス陸軍の皆さんは防弾ベストOspreyと一緒に23個のポケットを支給さるそうです。入れるモノが決まってるのね。 弾倉はバババババっと撃ってタマが無くなったら入れ替えるタマ。 数え方が分からなかったのでとりあえず「本」で。あと「round」はちんぷんかんぷんでした。 ・3本×[[SA80>https://en.wikipedia.org/wiki/SA80]]のsingle[[弾倉>https://en.wikipedia.org/wiki/Magazine_(firearms)]] ・4本×SA80のdouble弾倉 ・3本×single SA80の弾倉 with elastic pull-cord ・2本×[[発煙弾>https://en.wikipedia.org/wiki/Smoke_grenade]] ・2個×[[手榴弾>https://en.wikipedia.org/wiki/Hand_grenade]] ・sharpshooterの弾倉 ・[[軽機関銃>https://en.wikipedia.org/wiki/Light_machine_gun]]の弾倉 - 100 round ・2本×9mm pistolの弾倉 ・underslung grenade launcher - 8 round ・水筒 ・救命キット ・commander's pouch(ペン、ノート、懐中電灯が入ってるポーチ。指揮官がアレコレ指示するのにご使用) } #blockquote(){&u(){&bold(){イロイロと進化したけどお荷物がスゴイことに!}} 夏になると50℃を超える[[アフガニスタン紛争>https://en.wikipedia.org/wiki/War_in_Afghanistan_(2001%E2%80%93present)]](2001年-)に参加したイギリス海兵隊のお荷物は66kgもあるそうです。 それに加えて防弾ベストOsprey(9kg)、通信機器、機関銃、お水…。 2009年The US Armed Forces Health Surveillance(米軍健康監視?)の報告によると怪我のほとんどは椎間板疾患です。 ~[[Daily Express>http://www.express.co.uk/]](British soldiers suffer injuries from too-heavy weights)さんより~ &ref(防具(21世紀_お荷物).JPG) 左側:イギリス海兵隊(2015年:Operation Silica) 左側:[[イギリス陸軍工兵隊>https://en.wikipedia.org/wiki/Royal_Engineers]](2014年) これで何キロも歩くなんて信じられません。バックパッカーさんならピンとくると思うけど66kgを背負ったら死ぬ。 っていうか、立ち上がるのもムリ。 ちなみに私の場合は10Kgでもヤバイから旅立つ前に荷物を測りまくって1gでも減らします。それくらい重いのは大変なの。 } #endregion **ヘルメット 戦闘用ヘルメットは頭を防護する最古で最小の防具。紀元前23世紀[[シュメール人>http://en.wikipedia.org/wiki/Sumer]]の頃からご使用してます。 16中頃~17世紀ヨーロッパの主流はスペインで誕生した[[モリオン>http://en.wikipedia.org/wiki/Morion_(helmet)]]。 [[やかん帽子>http://en.wikipedia.org/wiki/Kettle_hat]]の進化形で上部が強化さたデザイン。士官達は富と威厳を示すために精巧な彫刻や装飾で差別化してます。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Combat_helmet]] &ref(防具_ヘルメット.JPG)カバセットはモリオンの進化形 低コストのモリオンはヨーロッパで大流行。イングランドも[[王エドワード6世>http://en.wikipedia.org/wiki/Edward_VI_of_England]](女王エリザベス1世の異母弟)が採用してます。 16世紀はカバセット(イタリア式モリオン)。 その後the pikeman 's pot(パイク兵のポット)に進化します。バチカン[[スイス衛兵隊>http://en.wikipedia.org/wiki/Swiss_Guard]]は21世紀もモリオンをご使用。 #region(close,モリオンの重量) こちらは[[ミラノ公国>https://en.wikipedia.org/wiki/Duchy_of_Milan]]で作られた鉄製モリオン(1570年頃:スペイン)です。彫刻と金メッキで装飾。後ろに真鍮製の[[羽根>https://en.wikipedia.org/wiki/Plume_(feather)]]差し。 重量は約1.3Kg。 オートバイのフルフェイスくらいの重量です。うーん、モリオンとカバセットの違いが分からない…。 &ref(防具_ヘルメット(重量).JPG)大英博物館 #blockquote(){&u(){&bold(){固いヘルメットを被ったら頭痛くないの?}} こちらは現役時代のままっぽい鋼製ヘルメット(1575年頃:アントワープ)です。 重量は1.695Kg。 固いヘルメットの内側にビロードやウールの中敷が入ってるから激しい運動でガコガコしても頭痛くないです。ほー! &ref(防具_ヘルメット(重量_頭痛).JPG)メトロポリタン美術館 } #endregion **胸当て 胸当ては胴を防護する防具。大昔からご使用(ただし10~13世紀ヨーロッパは胸当ての代わりに[[鎖帷子>https://en.wikipedia.org/wiki/Mail_(armour)]]が主流)してます。 21世紀の胸当ては[[防弾ベスト>https://en.wikipedia.org/wiki/Bulletproof_vest]]。 F&B時代の主流は分かりませんでした。[[ジェームズタウン>https://en.wikipedia.org/wiki/Jamestown,_Virginia]](アメリカ)は1607年イングランド初の北アメリカ植民地です。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Breastplate]] &ref(防具_胸当て.JPG) 左側:カバセットと胸当て(16世紀:[[ジェームスタウン島>https://en.wikipedia.org/wiki/Jamestown_Island]]で発見) 右側:[[Peter Paul Rubens>https://en.wikipedia.org/wiki/Peter_Paul_Rubens]]画「Portrait of [[Ambrogio Spinola, 1st Marquis of the Balbases>https://en.wikipedia.org/wiki/Ambrogio_Spinola,_1st_Marquis_of_the_Balbases]]」(1630年頃:ネーデルラント) #region(close,胸当ての重量) こちらは鋼製ヘルメットと鋼製胸当て(1575年頃:アントワープ)です。ヒモの部分はビロードやウール。 ヘルメットと胸当ての総重量は約5.5Kg。 バックプレート(胸当ての背中側)には製造者のお名前「D.G.V.Lochorst」が彫刻されてます。 |&ref(防具_胸当て(重量).JPG)|BGCOLOR(lightgrey):ヘルメット|BGCOLOR(lightgrey):サイズ|高さ39.37cm| |~|~|BGCOLOR(lightgrey):重量|1.695Kg| |~|BGCOLOR(lightgrey):胸当て|BGCOLOR(lightgrey):サイズ|高さ46.99cm×幅30.48cm| |~|~|BGCOLOR(lightgrey):重量|2.073Kg| |~|BGCOLOR(lightgrey):バックプレート|BGCOLOR(lightgrey):サイズ|高さ38.1cm×幅30.48cm| |~|~|BGCOLOR(lightgrey):重量|1.765Kg| #blockquote(){&u(){&bold(){胸当てはバックプレートとご一緒に?}} たぶん上の画のようにバックプレートとご一緒に装着する胸当てを[[クィラス>https://en.wikipedia.org/wiki/Cuirass]]といいます。14~17世紀にご使用。 1550年頃から真ん中が縦に尖った「the tapul」のデザイン。 重騎兵の1つ[[胸甲騎兵>https://en.wikipedia.org/wiki/Cuirassier]](馬に乗った兵士)のクィラスは歩兵より頑丈で重い造りです。 [[wikipedia>https://en.wikipedia.org/wiki/Components_of_medieval_armour]] &ref(防具_胸当て(重量_バックプレート).JPG) } #endregion #region(close,士官は胸当て以外にもイロイロ装備するっぽい?) いくつかの絵画をチェックしたら馬に乗った士官(指揮官)や兵士は胸当て以外にもイロイロ装備してました。 馬に乗ってれば防具が重くてもへーきへーき。 ちなみにオッサン(左側)が右手に持ってる棒は王様や上級士官の地位・名誉を表章する[[元帥杖(Baton)>https://en.wikipedia.org/wiki/Baton_(military)]]です。 &ref(防具_胸当て(士官).JPG)[[Battle of Fleurus>https://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Fleurus_(1622)]](1622年) #blockquote(){&u(){&bold(){イロイロな装備}} 左側は16世紀後半の有名な兵器製造者[[Pompeo della Cesa>https://it.wikipedia.org/wiki/Pompeo_della_Cesa]](ミラノ公国)の1/2甲冑(1587年頃)です。 総重量は約17.56Kg。 ミラノ公国を支配するスペイン王フェリペ2世やパルマ公[[アレッサンドロ・ファルネーゼ>https://en.wikipedia.org/wiki/Alexander_Farnese,_Duke_of_Parma]]はPompeoの後援者です。 &ref(防具_胸当て(士官_装備).JPG) 右側は21世紀の防弾ベストDanish body armour(これもCQC社だけどOsprey body armourとは違うタイプっぽい)です。 どちらも即死しそうな[[人体の急所>https://en.wikipedia.org/wiki/Pressure_point]]を防御? もし急に指揮官がいなくなったら現場の皆さんは大混乱しちゃいます。イロイロ装備は重くて大変だけど我慢だ! } #endregion **軍服 戦場で皆さん同じ防具だと敵味方の区別がつきません。ゴチャゴチャしてるテルシオでは間違って味方にヤられちゃう悲劇も…。 軍服が登場する前は飾り帯で区別。 イギリス初の軍服は1645年[[レッド・コート>http://en.wikipedia.org/wiki/Red_coat_(British_army)]](海軍は1748年から)です。スペインは分かりませんでした。 &ref(防具_軍服.JPG)軍服がないと敵も味方も分かりにくい(1634年:[[ネルトリンゲンの戦い>http://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_N%C3%B6rdlingen_(1634)]]) #region(close,飾り帯とバフコート) 飾り帯は14世紀頃から使われてる幅広の帯です。肩から掛けたり、腰や首に巻いたり装いはイロイロ。 敵味方だけじゃなく所属の区別もオケ。 たとえば[[南北戦争>https://en.wikipedia.org/wiki/American_Civil_War]](1861–65年:アメリカ)では将官(灰色/クリーム)、軍曹(赤)、騎兵隊(金)、歩兵連隊(ワインレッド)、従軍牧師(黒)、医者(緑/青)です。 [[wikipedia>http://en.wikipedia.org/wiki/Sash]] &ref(防具_軍服(飾り帯).JPG)[[フランス・ハルス>https://en.wikipedia.org/wiki/Frans_Hals]]画「Meeting of the officers of the Kloveniersschutterij in Haarlem」(1633年:ネーデルラント) #blockquote(){&u(){&bold(){戦うときはお洋服も頑丈じゃないとね♥}} 油を塗った皮製[[ジャーキン>https://en.wikipedia.org/wiki/Jerkin_(garment)]]は16~17世紀ヨーロッパの兵士や猟師のお洋服です。[[ダブレット>https://en.wikipedia.org/wiki/Doublet_(clothing)]]の上に着用。 16世紀は首もとだけボタンを留める。 逆に17世紀になると腰をスッキリ見せるように下のボタンを留めて胸元を開ける着こなしになります。 &ref(防具_軍服(飾り帯_お洋服).JPG) ジャーキンを厚く頑丈にしたのが牛革製[[バフコート>https://en.wikipedia.org/wiki/Buff_coat]]。17世紀ヨーロッパの士官、一部の歩兵、騎兵隊のお洋服です。 丈夫で柔軟で雨風に強い。 袖があるときは肘から手首までの革は薄めにして動きやすくしてます。もっちろん士官の皆さんは金や銀のモールで差別化。 &ref(防具_軍服(飾り帯_F&B).JPG)ナイジェル…首だけでゴメンなさい!(F&B13巻カラーページ) ジェフリーが着てる上着をジーっと見た感じだと肩先辺りに革のカッリチ感があるようなないような。 これもジャーキンでしょか? もしそうならジャーキンやバフコートの基本色は薄黄色なので、わざわざ染めたのねー♥ 刺繍もハンパない凝りまくりねー♥ } #endregion #region(close,イングランドのレッド・コート) レッド・コートは[[王チャールズ1世>https://en.wikipedia.org/wiki/Charles_I_of_England]]を処刑した[[議会派>http://en.wikipedia.org/wiki/Roundhead]]の[[ニュー・モデル軍>http://en.wikipedia.org/wiki/New_Model_Army]](1645-1660年)の軍服が始まりです。 ベネチアンレッドに白の襟章。 1660年[[イングランド王政復古>https://en.wikipedia.org/wiki/Restoration_(1660)]]の後もレッド・コートを継続。これは赤の染料が安かったからだそうです。なんて夢のない…。 [[wikipedia>https://en.wikipedia.org/wiki/British_Army_uniform]] &ref(防具_軍服(レッド・コート).JPG)パイク兵(1642–1651年:[[イングランド内戦>http://en.wikipedia.org/wiki/English_Civil_War]]) #blockquote(){&u(){&bold(){武器が進化すると軍服も進化しなくちゃいけません}} 戦場がマスケット銃と黒色火薬の時代は煙モクモク。見通しが悪いから敵味方の区別がつきません。 モクモクでも赤色は目立つ。 目立てば敵味方の区別もバッチリ。もし敵に発見されてもマスケット銃の射程距離と命中率が低いから危険じゃないです。 &ref(防具_軍服(レッド・コート_進化).JPG)赤色は目立ちすぎ(1745年:[[フォントノワの戦い>https://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Fontenoy]]) 戦場が[[ライフル銃>https://en.wikipedia.org/wiki/Rifle]]と[[無煙火薬>https://en.wikipedia.org/wiki/Smokeless_powder]]の時代になると赤色は目立ちすぎの的になります。戦場で目立つとヤバイ!とってもヤバイ! ってことで、1902年イギリスの軍服はカーキ色の[[Service Dress>https://en.wikipedia.org/wiki/Service_Dress_(British_Army)]]に変更。 1938年にはもっと目立たない[[Battle Dress>https://en.wikipedia.org/wiki/Battle_Dress]]を開発。おー!Battle Dressってイイね!っと皆さんも採用してます。 } #blockquote(){&u(){&bold(){コチニールで染めたレッド・コート}} 18世紀上級士官のレッド・コートは[[コチニール>https://en.wikipedia.org/wiki/Carmine]]で染められた「完璧な[[スカーレットレッド>https://en.wikipedia.org/wiki/Scarlet_(color)]]」です。 とーってもお高級。 下士官はコチニールと[[Rose madder>https://en.wikipedia.org/wiki/Rose_madder]]が混合の「劣ったスカーレットレッド(The warrant of 1768)」で経費節減します。 &ref(防具_軍服(レッド・コート_コチニール).JPG)[[Joseph Wright of Derby>https://en.wikipedia.org/wiki/Joseph_Wright_of_Derby]]画「Fleetwood Hesketh」(1769年:イギリス) 19世紀後半になるとレッド・コートはとーってもお手頃な化学染料を使います。 } #blockquote(){&u(){&bold(){21世紀のレッド・コート}} 戦場ではちょっと…のレッド・コートだけど、21世紀もwalking out dress(儀礼服?)としてちゃんと残ってます。 生地は[[ワーテルローの戦い>https://en.wikipedia.org/wiki/Battle_of_Waterloo]](1815年)の頃からAbimelech Hainsworth社が提供。 横隊防御で有名な[[シン・レッド・ライン>https://en.wikipedia.org/wiki/The_Thin_Red_Line_(Battle_of_Balaclava)]]もこの会社の赤色です。こちらはThe Queen's Diamond Jubilee 2015の儀礼服。 |>|>|>|&ref(防具_軍服(レッド・コート_21世紀).JPG)海軍はRNです♥| |>|>|>|BGCOLOR(lightgrey):上段(左から)| |[[RM>https://en.wikipedia.org/wiki/Royal_Marines]] Captain|[[PWRR>https://en.wikipedia.org/wiki/Princess_of_Wales%27s_Royal_Regiment]] soldier|[[WG>https://en.wikipedia.org/wiki/Welsh_Guards]] soldier|[[COLDM GDS>https://en.wikipedia.org/wiki/Coldstream_Guards]] soldier| |WG Corporal|RAF Regiment Aircraftman|RAF Regiment Officer|| |>|>|>|BGCOLOR(lightgrey):中段(左から)| |RM Bandmaster|[[RN>https://en.wikipedia.org/wiki/Royal_Navy]] Warrant Officer|RN Lt Commander|RN rating from HMS Dauntless| |[[GREN GDS>https://en.wikipedia.org/wiki/Grenadier_Guards]] guardsman|[[SG>https://en.wikipedia.org/wiki/Scots_Guards]] guardsman|WG guardsman|[[IG>https://en.wikipedia.org/wiki/Irish_Guards]] guardsman| |COLDM GDS guardsman|TA soldier of [[HAC>https://en.wikipedia.org/wiki/Honourable_Artillery_Company]]||| |>|>|>|BGCOLOR(lightgrey):下段(左から)| |RM band drummers×2人|GREN GDS drum major|SG officer|COLDM GDS bandsman with tuba| |PWRR pipes and drums|[[King's Troop RHA>https://en.wikipedia.org/wiki/King%27s_Troop,_Royal_Horse_Artillery]] Sergeant|RAF band musicians×2人|RAF regiment aircraftman| ちなみに下段のPWRRやRMの[[ドラム隊>https://en.wikipedia.org/wiki/Corps_of_drums]]は軍服の上にヒョウ毛皮(21世紀はフェイクファー )を羽織ってます。 軍服の擦り切れ&軍服のボタンで楽器の傷つき防止。 なぜヒョウなのかは分かりませんでした。他の連隊は普通の革やエプロンを羽織ってます。 } #endregion ---- ---- ※ものすごーくお世話になったサイト。詳細はこちらをご覧下さい。 ・[[金獅子亭 Kinjishi-Tei>http://nassaublue.net/]] ---- ----

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