令嬢モノ03 セリカを尋ねて


「差し出がましいことですが、よろしいでしょうかカーリア御嬢様」
「いいわ、発言を許します」
「フリマ第二王子殿下は、セリカ御嬢様に会うために礼節を尽くしくださいました。
 その行為を無碍にすることは、公爵家であるハートハート家といえできません」

カーリア嬢がはその言葉に思案をめぐらせながら、扇を何度か開いては閉じる。
ふぅとため息をつく。

「ネエサン」
「はい、なんでございましょうかアーリカ御嬢様」
「今の時間ならセリカ御姉様の御機嫌も悪いということはないと思います。
 フリマ王子をセリカ御姉様の寝室へご案内しなさい」
「承知いたしました。」

「フリマ第二王子殿下、セリカ御嬢様の寝室へ案内させていただきます」
そういい、恭しく頭を下げる。
その時間きっかり10秒。そして3秒かけて顔を上げる。
王族に対しての礼はきっかり10秒というのは古くにある礼節だ。
最近の貴族と従者は長ければ長いほど相手に礼を尽くせると思っていると講師のセルファが怒りながら言っていたことを思い出す。

兄さんも同じことを思い出したのかほぅと関心の声を出す。
「今は15秒の礼をするものばかりだというのによく知っているね。流石は公爵家の侍女だ」
「侍女をお褒めいただきありがとうございますわ、ユーキ王子。」
「といってもセルファ先生がちょっと前に言ってたから覚えていただけだけどね」


「案内してくれ」

「おい、フリマ。」
「わかってるよ兄さん。今回は間違えない」


凛と背筋を伸ばして歩く侍女の後をついていく。
その侍女は足音を一切たてる様子もない。

この侍女はアーリカ嬢が社交界につれている三人侍女のだったはずだ。
何度か見た覚えがある。


「こちらが、セリカ御姉様の寝室となります」
「そうか案内ご苦労」
「ワタクシのようなものに、もったいないお言葉です」

ドアを四度叩く。
ドアを叩く回数も用件、身分によって厳密に決められているというのはセルファの言。
王家の一員である俺にってはあまり覚えているようなものでもないし
現在の王家は煩わしすぎるルールはあまり好きではないので今の時代では廃れている礼節の一つのはずだ。
どうやらこのネイサンという侍女はかなりの教養があるようだ。
それも当然といえば当然なk

「セリカ御嬢様、フリマ第二王子殿下をお連れいたしました」
その言葉に、部屋の中からの反応は寝ているのか数秒たってもまったくない。
さ、流石に俺と兄さんが今日来るというのは聞いているはずだ、それを無視して寝ているというのはないと思いたいが。

「セリカ御嬢様は二人だけなら入室を許可していただきました」
「は?何も反応はなかったと思うが」
「拒否なされるときは拒否なされます。意志の疎通には決まった手順がいくつかあります。呼び鈴を鳴らしたりなどです」
「そ、そうか」
これも奇行のうちの一つか?そう考えれば不思議ではないか

「ハートハート公爵家の侍女として、フリマ第二王子殿下とセリカ御嬢様が何を話されたかというのは報告しなければなりません。
 もし私の同席をお断りになられるのなら、フリマ第二王子殿下をセリカ御嬢様と御合わせすることはできません」

「貴様、侍女がなんという口を!」
「まて、彼女の言うとおりだ」
手で護衛の行動を制する。
「王族とはいえ俺がやったことを考えれば、ここに居ること自体、公爵家としてはいいとは思わないのだ
 俺が一人ではいるなら、問題ないんだな?」
「はい、私も同席いたしますが」
「わかった、お前達はここで待て」

「御嬢様、失礼いたします」
侍女に先導され俺はセリカ嬢の寝室へとはいる。


そこは寝室とは思えないような部屋だった
まず目に付くのは棚一面の書架。
とても令嬢の寝室とは思えない、書斎であるかの錯覚を覚えるほどだ。

しかし、窓から少しはなれたところに天蓋つきの寝台がある。
傍のテーブルには呼び鈴と銅製のコップが置かれている。


「セリカ嬢はどこにいる?どこにもいないではないか」
「フリマ第二王子殿下。セリカ御嬢様はお会いになられたいと望んでおります」
「だがそのセリカ嬢はこの部屋のどこにも居ない」
「私はセリカ御嬢様の寝室へ案内いたしました」
女性は頭を下げる。
きっかり10秒。そして3秒かけて顔を上げる。

「それは寝室に案内はしたが、公爵家としてはやはりセリカ嬢と私を会わせる気はないということか?」
「フリマ第二王子殿下。先ほども申しましたようにセリカ御嬢様はお会いになられたいと望んでおります。
 フリマ第二王子殿下に見つけて欲しいのです」

「見つけて欲しい、といわれてもな」
改めて寝室を見渡す。



まさか、そんなはずはない。公爵家の第一令嬢だぞ!?
頬に汗が浮かび上がるのがわかる。それほどに俺は動揺しながらつい見につけた、婚約者の前に立つ。

「セリカ・ハートハート嬢。俺の婚約者である貴女が、公爵令嬢である貴女が、まさかそのような場所に居るとは思わなかった」
「ありがたいお言葉です。フリマ王子。」

女性は頭を下げる。
その時間はやはり、きっかり10秒。そして3秒かけて顔を上げる。

この部屋にいる侍女服に身を纏った女性はゆっくりと口を開く
「ワタクシのような貴族の価値がないものを見つけていだだけるとは思っておりませんでした」

光の全て飲み込んでいた漆黒の髪がゆっくりと金色の輝く髪に変わっていく。
俺を見抜くその瞳はあの時みた光を失ったものではく煌々とした紅い瞳だった。



「セリカ嬢。聞いていいだろうか?」
「なんなりとお申し付けくださいませフリマ王子。ワタクシが答えれるものならお答えいたします」

「なぜそのような侍女の格好をしているのか聞かせてもらえないだろうか」
それは、俺が君との婚約を破棄してくれといったのが原因なのかとはきけなかった。
セリカは少しだけなやんでいるようにみえる。

「ワタクシが侍女の姿をしているのは、時期をみて廃女されることが決まっているからですわ」
「なぜ!?噂にあるような心が病んでいるとか、死んでいるというわけではないではないか」

いやこの瞳は力強い。
心が病んでいるというのはない
奇行に関していてば、まあ彼女の今の行動は奇行以外でもなんでもないが、
裕福でない貴族のなかには、酒場で歌う令嬢もいると耳にしたこともある。
まだ御遊びの範疇でもんだいない範囲だ。

「貴族の価値がないからでございます」
「っそれは」

貴族の価値・・その言葉はどうしても俺は言葉を詰まらせる。
セリカ嬢を追い詰めたのが貴族の価値であり、俺がセリカ嬢の貴族としての価値を肯定できなかったからだ。

「ワタクシの価値は今のところ、フリマ王子」


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2019年06月18日 23:16